ヨシアキ達が入学して、早くも一年が経った。
つまりは、卒業式の日である。その前日に行われた模擬戦にて、ソルティリーナは念願だったウォロに勝利。
アシュリーは、年末に行われた剣舞祭(いわゆる学園祭)で、見事な剣舞を見せた。
「ご卒業、おめでとうございます。アシュリー先輩」
「ご卒業、おめでとうございます。リーナ先輩」
ヨシアキとキリト、ユージオ、リヒトの四人は各々の上級生に、花束を手渡した。
なお、ヨシアキとキリトが手渡した花束は、二人が育てた花を束ねたものだ。
「ありがとうな、キリト」
「感謝する、ヨシアキ」
ヨシアキ達に見送られながら、四人は学院を卒業。各々の道を歩み始めた。
それに合わせてヨシアキ達は上級生になり、新入生を傍付きにすることになった。
その傍付きに選んだのは
「し、失礼します! インセリア・リリアナ、ヨシアキ・カーバイド上級修剣士の部屋の清掃を終えました!」
「同じく! レフィア・ローゼンタール! リヒト・アーカイブ上級修剣士の部屋の清掃を終えました!」
インセリア・リリアナとレフィア・ローゼンタールと言う、二人の少女だった。
インセリア・リリアナは肩の辺りで切り揃えた赤混じりの茶髪。蒼い目が特徴で、どうやらアシュリーの家の家臣に当たるらしい。
それもあってか、自ら立候補してきて、ヨシアキはそれを受け入れたのだ。
次に、レフィア・ローゼンタールだが、長い銀髪を後頭部の辺りで一度纏めてから流している。
目は涼しげな水色で、少しつり目気味である。
そんな二人が訪れたのは、上級修剣士用宿舎のカフェテラスで、二人を出迎えたのは
「いや、ごめんね……ヨシアキ、今何処に居るのか分からないんだ……せめて、君達が帰ってくるまでには戻るようにって、言っておいたんだけど……」
リヒト一人で、リヒトの言う通り、ヨシアキの姿は無く、リヒトが申し訳なさそうに頬を掻いた。
今日は学院は休みで、ヨシアキは朝から居なくなっていて、未だに戻ってきていない。
「まあ、ヨシアキが戻ってくるまで、お茶でも飲んでて」
「い、いえ!?」
「そこまでは!?」
リヒトはそう言って、お茶をカップに注いだ。
それを見たインセリアとレフィアの二人は、流石に狼狽えた。まあ、それも仕方ないだろう。本来支えるべき上級生にお茶を注いでもらった挙げ句に、待っていいと言われたのだから。
「大丈夫だよ。多分、そろそろ帰ってくるはずだから」
リヒトはそう言いながら、カップを二人の前に置いた。
その時、階段を誰かが上がってきて
「いやぁ、ごめんねぇ。遅くなった」
とヨシアキが帰ってきた。
そんなヨシアキを見て、リヒトは
「遅いよ、ヨシアキ。何してたんだい?」
と少し怒った表情で、ヨシアキに問いかけた。
「いやまあ、剣を磨ぎに出しに行ってたんだよ。それと、皆で食べようと蜂蜜パイを買ってたら遅くなっちゃったんだ」
ヨシアキはそう言って、布袋を掲げた。確かに、その袋からいい匂いがする。その匂いを嗅いだリヒトは、深々と溜め息を吐いて
「仕方ないなぁ……インセリアとレフィアも食べよう。ヨシアキが買ってきたんだ。遠慮する必要は無いよ」
と二人を手招きした。
それを聞いた二人は、互いに顔を見合わせて躊躇っていたが
「気にしなくていいよ」
とヨシアキ本人にも言われたので、仕方なく食べることにした。その光景を、面白くないと言った風体で睨む輩が居たことを、ヨシアキは視線を感じて気づいていた。
そして、ある日
「ん? 相談事?」
「はい……」
ヨシアキとリヒトの所に、インセリアとレフィアの二人が来て、相談があると告げたのだ。
「えっと、私達の知り合いなんですが……」
「毎日、激しい指導と部屋の清掃を課せられて、辛そうなんです……」
そこから二人は、詳細を告げた。
二人の知り合いの少女の名前は、アイリーズ・カーライルとアン・リーライズというらしい。
その二人は、ライトールとレオニール・カートラルの二人の傍付きらしい。
しかし、その二人からの指導は苛烈で毎日のように怪我もしているという。それを聞いたヨシアキとリヒトの二人は
「ライトールとその腰巾着かぁ……」
「あの二人が、僕達の言うことを聞いてくれるとは思えないけど……」
と呟いた。
レオニール・カートラル。ライトールの家の家臣の家の出で、ライトールと同じように庶民や下の家格の人を強く見下す傾向があった。
その二人の傍付きになったのは、貴族でも最下位の爵位の家の出の少女達。
早目に手を打たないと、取り返しの付かない事態になるだろう。
「分かった。僕達から、二人には言っておくよ」
「だから、心配いらないからね」
『ありがとうございます!』
ヨシアキとリヒトの言葉を聞いて、インセリアとレフィアの二人は頭を下げた。
しかしそれが、後に大変な事態に繋がるとは、この時は思いもしなかったのだった。