二人の騎士は、それぞれ剣を抜刀。四人に向かって駆け出してきた。それを見たヨシアキとキリトは、腕輪に着いたままの鎖を思い切り振るった。優先度40というかなりの鎖だから、並大抵の剣ならばへし折れる。
だが、鎖と剣が合わさった瞬間、甲高い音がして鎖が弾かれた。
それだけでなく、鎖が斬られた。
「つっ!」
「そりゃそうか!」
二人が舌打ち混じりに悪態を吐くと、エルドリエとカイエンの二人は追撃しようと一歩踏み出した。だが、それに合わせるように
「システムコール!」
「サモンバーストエレメント!」
リヒトとユージオの二人が、それぞれ三つの火炎玉を生成し、投擲した。だが、エルドリエとカイエンは慌てずに
「システムコール!」
「サモンアイスエレメント!」
と氷の玉を、同じく三発ずつ生成。迎撃した。
その見事な手際は、流石は整合騎士と言えるだろう。だが、それによって生じた水蒸気を目眩ましに、キリトとヨシアキの二人はエルドリエとカイエンの背後を取った。
だが
「気付いている!」
「容易く、やれると思うな!」
と二人は声を挙げて、エルドリエは腰に下げていた鞭を、カイエンは刀を抜いて二人に向けて振るった。
「ぐっ!?」
「がっ!?」
吹き飛ばされた二人は、壁に激突。地面に落下した。
「我らは、確かに整合騎士の中では新参者」
「一月前に、アドミニスレータ様によって天界から召喚されたばかり故な」
エルドリエとカイエンはそう言って、地面に踞っていた二人に向かって一歩踏み出した。しかし、その時
「そうだ、ようやく思い出した……エルドリエ・ウールスブルーグ」
「カイエン・マティスエータ……」
とユージオとリヒトが、その名前を呟いた。すると、カイエンとエルドリエの二人は劇的な変化を見せた。それまで戦意に満ちていた表情から、困惑した表情でリヒトとユージオに視線を向けた。
「エルドリエ・ウールスブルーグ……今から約四年前の統一大会でその見事な剣技を見せた、男性……貴方には、大事な母親が居た……」
「カイエン・マティスエータ……貴方は確か、東方の村で衞士だった……だけどある日、その村を盗賊が攻めてきて、貴方は奮戦……見事、村を守れた」
とユージオとリヒトが語り始めると、エルドリエとカイエンは苦痛を堪えた表情で頭を抑えた。それを見たヨシアキとキリトは
「ユージオ、そのまま語り続けるんだ!」
「もしかしたら、記憶改竄の神聖術が解けるかもしれない!」
と告げた。それを聞いて、ユージオとリヒトは
「貴方のその母親の名前は、なんですか!?」
「村を守れた貴方は、その功績から央都に呼ばれ、その時一緒に、妹さんを連れていった!」
と言った。すると、エルドリエとカイエンの額辺りから、何か出てきた。
紫色の三角柱状の物体が。その時だった。動きを止めていたエルドリエとカイエンの周囲に、何本もの矢が降り注いだ。それを見た四人は、一斉に矢が飛んできた方向に視線を向けた。
少し高い場所に、赤と黄緑色の鎧を纏った二人の騎士が、弓を携えていた。その二人は、それぞれ二本ずつ新しい矢をつがえた。
「回避!」
と鋭き叫んだのは、ヨシアキだった。次の瞬間には、四人はその場から一気に離脱。四人が居た場所に、矢が突き立った。
「離れるしかない!」
「ここまで来て!」
キリトの言葉に、ユージオは歯噛みしながらも走り出した。それは、ヨシアキとリヒトも同じで、薔薇園を駆けた。四人が足を踏み出す度に、矢が地面に突き立っていく。少しずつ近づいてきていることから、どうやら四人の足の速さから先を予測してきているようだ。
そう遠くない時に、四人に矢が直撃するだろう。
だが、薔薇園は広く、視界を遮りそうな遮蔽物は無い。それでも、四人は諦めずに全力で走っていた。その時、少し先に突如としてドアが現れて、開き
『そのまま飛び込め!』
と声が聞こえた。
罠かもしれない。しかし、四人に迷っている暇はなかった。四人は前のめりになるようにドアに駆け込んだ。
そして、荒く呼吸を繰り返していると
「無事のようじゃな」
と幼い声が聞こえた。四人が顔を向けると、少し離れた位置に眼鏡を掛けた10代前半の少女が居た。
「あ、貴女は……」
とユージオが問い掛けると、その少女は
「ワシの名は、カーディナルじゃ」
とかつて存在した、鋼鉄浮遊城の世界の根幹システムの名前を告げた。