「戦場で目を閉じるとは!」
「だが、あんたを捉えたぜ!!」
エルバードが驚きの声を挙げると、キリトがエルバードを睨んだ。その直後、エルバードの姿が消えた。しかし
「ユージオ、右!」
「しいっ!」
ヨシアキの指示を受けて、ユージオが剣を振るい、エルバードを捕捉する。
「一度捉えたんだ……簡単には、逃がさない!」
「ならば……!」
一度ユージオを突き飛ばすと、エルバードは再び消えた。そして、ヨシアキの頭上に現れて
「貴様を先に、倒すのみだ!」
とヨシアキに狙いを定めて、大剣を振り下ろした。ヨシアキは目を閉じている為に、即応は出来ない。しかし
「そのために!」
「僕たちが居るんだ!!」
キリトとリヒトの二人が、エルバードに向けて剣と鎗を繰り出した。
「なに!?」
エルバードは驚きながらも、二人の攻撃を裁き離脱。
「今、そいつが何かを言う前に……つっ!?」
エルバードはヨシアキが、空いている右手で自身の頭上を指差していることに気付いた。
「そうか……その動きに気づいて!」
エルバードはキリトとリヒトが反応した理由が、ヨシアキのハンドサインと気付いた。
「確かに、目を閉じてると即応は難しい……けど、手を動かしたりは十分に可能だ……舐めるなよ、整合騎士……!」
ヨシアキはそう言って、剣を突き付けた。それが合図になったのか、エルバードは大剣を肩から下ろし
「そうか……ならば、戦い方を変えるのみだ……!」
と告げて、四人に駆け出した。それに気付いたらしく、ヨシアキは目を開き
「僕が行く!!」
と言って、駆け出した。数秒後、二人の剣が激突。二人を中心に、床にヒビが広がった。それが、二人の攻撃力の高さを物語る。
「なるほど……いい剣だ……敵となったのが惜しいほどに!」
「お褒め感謝!」
短く会話すると、二人は一度離れた。そして
「ハイノルキア流……天山割波!」
「アインクラッド流……ヴォーパルストライク!!」
二人の技が激突し、激しく空気を震わした。それがまるで、二人の信念を現しているかのように互いに一歩も退かない。
そして、二人の技が逸れて二人は交差。だが、即座に駆け出した。
「何故、それ程の剣技を持っていながらにこのようなことを!」
「間違ってるからだ! 人の記憶を書き換えて、整合騎士に仕立てあげる、あの女教皇が! あんたにも、大切な人が居たんじゃないのか!? 思い出せ!!」
エルバードからの問い掛けに、ヨシアキはそう言って、エルバードを蹴り飛ばした。蹴り飛ばされたエルバードは、すぐに体勢を整えて、突撃しようとした。
その直後、エルバードの脳裏に何かが走った。
それは、一人の幼い少女の姿だった。
自分に駆け寄り、腰に抱き付いては
『お兄ちゃん』
と呼び掛けてくる。しかし、その少女の顔と名前が思い出せない。何を忘れている?
「私は……私は……!」
「そうだ、思い出せ!」
ヨシアキの言葉に反応したのか、エルバードは被っていた兜を脱ぎ捨てた。その下から出たのは、精悍な顔つきの若い男だった。年齢は、30代といったところか。その額から、見たことのある物体が出てきていた。
カーディナルが言っていたオブジェクト。
それが、怪しく光り輝く。
「思い出せ!!」
「アアアアアァァァァァァァアァァア!!」
ヨシアキの声に被せるように、エルバードは叫び、倒れた。ゆっくり近づいて見てみれば、エルバードの額から抜けたオブジェクトが砕け散っていた。それを確認したヨシアキは、剣を納めると
「先に進もう」
と三人に促して、階段に向かったのだった。