現実世界。襲撃開始から、約一時間後。オーシャンタートルメインコントロールルーム。
そのドアが開かれて、襲撃者達が突入してきた。人数は六人。
二人は自衛官が離脱する前に、弾が運悪く命中し死亡した。しかし、襲撃者達は、それでも止まらずにここまで来た。
「クリア!」
「クリア!」
「オールクリア!」
襲撃者達は内部に誰も居ないことを確認すると、次々と報告し、銃口を下げた。すると、一人が顔を覆うように着けていたバイザーを外した。
その人物こそが、この襲撃者達のリーダー。
アメリカ民間軍治企業、グロージェン・ディフェンス・システムズの社長、ガブリエル・ミラーである。
なぜ、アメリカのPMCが、アメリカの同盟国の日本の自衛隊の施設たるオーシャンタートルを襲撃するのか。
それは、今から数日前に遡る。彼が経営するGDSのオフィスに、NSA。
アメリカ国家安全保障局から、プロジェクト・アリシゼーションのことを聞き、更には依頼されたのである。
依頼内容は、アリスとライカの奪取である。
その依頼を受諾したガブリエルは、なんと社長たる彼自らが指揮を執り、選りすぐりの隊員を伴って襲撃したのである。
しかし、自衛隊の予想外の反撃で被害が出た。
「お前達、すぐに機材を確認しろ」
「了解」
「了解です、ボス」
「OKだぜ、
ガブリエルの指示を受けて、隊員達は三々五々と機材の確認を始めた。
今生き残っているのは、全員が何らかのスペシャリストばかりだ。ガブリエルは作戦の進捗状況を頭の中で確認しながら、考えていた。
(この内部に居た自衛官達から予想外の反撃で、二人ばかり死んだが、概ね予想通りだ……しかし、問題はここからだ……恐らく、機材は殆んどがロックされているだろう……さて……)
とどう進めるか考えていた。その時
「んだと、フォーアイズ! てめぇ、もう一度言ってみやがれ!?」
「何度でも言ってやるよ、脳筋。お前らがチンタラしてたから、機材が軒並みロックされてるんだよ」
「てめぇ……! 調子に乗ってんじゃねぇぞ!? 戦闘中は俺達の後ろでガタガタ震えてやがった癖によぉ!」
気付けば、褐色の肌にドレッドヘアの男。ヴァサゴ・カザルスと眼鏡を掛けた小柄な男。グリッターが喧嘩していた。
どうやら、グリッターがヴァサゴに文句を言って、そこから喧嘩に発展したらしい。そうこうしている内に、ヴァサゴはナイフを抜いて掲げた。その腕を、ガブリエルは掴んで
「やめろ、お前達」
「けどよ、兄弟……こいつは一度絞めてやらねぇと、もっと調子に乗るぞ」
ヴァサゴは止めたガブリエルに不服そうに言うが、ガブリエルは
「だからと言って、喧嘩している場合か。そうやって時間を浪費して、只でさえ短い時間を更に短くする気か? そうやって任務を失敗させて、依頼人に笑われるつもりか? どうなんだ?」
「NO!」
「お前は?」
「NO!」
ガブリエルの問い掛けに、ヴァサゴとグリッターの二人はプロとして返答した。喧嘩していた二人だが、プロとしての意地が有るのは確かだった。
「ならば、方法を考えろ! 考えるのを止めるな。考え続けることこそが、我々にとっての武器となる。ハンス、上層階に行くためのメイン隔壁は爆破突破出来そうか?」
「無理ね。ここの隔壁、無駄に堅いから残りの爆弾では無理ね。それに、メイン隔壁の近くには、メインターゲットのフラクトライトクラスターが有るわ。下手したら、それすら壊してしたうわ」
ガブリエルの問い掛けに、爆弾のプロ。ハンス・クライトは首を左右に振りながら答えた。
ハンスは少々言葉遣いと性癖に難が有るが、仕事はキッチリとこなす性分だ。そのハンスが無理だと言うならば、確かに無理なのだろう。
そう判断したガブリエルは、一度全員を見回し
「今取れる手段で、最善を尽くす! 各員、迅速に動け!」
と指示を下し、ガブリエルはメインモニターに写るアンダーワールドのマップを睨んだ。