ヨシアキとキリトの二人と、アドミニストレーターとの激戦は十数分に亘って繰り広げられた。
剣同士がぶつかって火花を散らし、時には神聖術同士がぶつかって、爆発を起こした。
アドミニストレーターは剣の腕は多少上手いという程度だったが、神聖術が厄介だった。
アドミニストレーターは短時間で高度神聖術の詠唱を終わらせ、放ってくる。それさえなければ、二人が圧倒的に優勢なのは間違いなかった。
しかし、幾多のチャンスを神聖術に阻まれてしまい、何度もチャンスを逃した。
だが、二人は諦めなかった。チャンスを見つけた瞬間に素早く攻めこみ続けて、アドミニストレーターの集中力と体力を削り続けた。
アドミニストレーターは、本来は戦う者ではない。
強いて言えば、為政者というところだろうか。しかし、それすらもチュデルキンとハァシリアンが
そして、戦闘の最中にキリトは左腕、ヨシアキは右腕を喪っていた。
ペインアブソーバーの無いこの世界では、少しの傷でも痛みを感じる。それが片腕ともなれば、筆舌し難い痛みが襲ってくる。
痛かったのは、体だけではなかった。相方を喪った二人は、心も痛かった。本当なら、泣き出したい程に。
だが、喪ったからこそ止まれなかった。
もうこれ以上、この世界で生きる人達に要らない犠牲を出させないためにも。
片腕を喪ってから二人は、連携を重視して剣を振るった。死角を無くし、アドミニストレーターに反撃の隙を与えないために。
「この……無礼者がぁぁ!!」
怒り狂ったアドミニストレーターは、怒声を張り上げながら剣を大きく振り上げた。だが、それは致命的な隙となる。
「しいっ!!」
ヨシアキは短い呼気と共に、黄昏の剣を横に一閃。
その一撃で、アドミニストレーターの右手は手首から先が剣諸とも宙を舞った。
その直後
「アアアアァァァァァァァ!!」
キリトは喉が張り裂けんばかりの雄叫びを挙げながら、SSヴォーパルストライクを放ち、アドミニストレーターの胸部を貫いた。
「ま、さか……その剣が全て……金属では、無かったとはな……」
アドミニストレーターは驚いた表情で、二人の剣を見た。アドミニストレーターには、神聖術と金属の武器によるダメージは与えられない。しかし、キリトの夜空の剣は木から削りだされ、ヨシアキの黄昏の剣は岩から作られた。
金属では無かったのだ。
「こうなった、ら……計画より大分早いが……あちらの世界に……行くとしようか……!」
そう言ったアドミニストレーターは、キリトとヨシアキに至近距離で神聖術を放って吹き飛ばすと、ヨタヨタと自身の寝台の方に向かっていく。すると、寝台が横にスライドし、ヨシアキとキリトに見覚えのある台が現れた。
「あれは……!」
「GM用コンソール!」
アドミニストレーターは、それに手を伸ばそうとした。だが、その時
「最高司祭……猊下……様ぁ……!」
と声が聞こえ、誰かがアドミニストレーターの足を掴んだ。驚いたアドミニストレーターが振り向くと、死んだ筈のチュデルキンがアドミニストレーターの足に抱き着いていた。
「チュデルキン……! 貴様、離しなさいっ……!」
アドミニストレーターはまるで汚物を見るような目でチュデルキンに命じるが、チュデルキンは離す処か更に抱き着き
「私、頑張り……ましたよぉ……ですから、ご褒美を……」
「後で挙げるから、離しなさい!!」
アドミニストレーターは、チュデルキンを振り払おうと暴れるが、チュデルキンは離れず
「私の願いはぁ……最高、司祭猊下様とぉ……一つにぃ……なることですぅ……」
そう言って、何を考えたのか火の神聖術を発動した。そしてその火は、チュデルキンだけでなくアドミニストレーターにも燃え移った。
燃え移った火は、あっという間にアドミニストレーターの全身も焼き、アドミニストレーターとチュデルキンは死体すら残さずに消えた。
こうして、永い間生きて悪辣な実験や非人道的行為を行っていたアドミニストレーターは死んだのであった。