ソードアート・オンライン 黄昏の剣士   作:京勇樹

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把握

ヨシアキとキリトの二人がアドミニストレーターを倒した2日後。セントラル・カセドラルのある会議室に、整合騎士達が集合していた。

 

「これで、央都に居たのは全員か?」

 

「は……遠方に派遣している騎士以外は、集まりました」

 

相も変わらず着流し姿の騎士長、ベルクーリの問い掛けに、ファナティオが答えた。

アリスとライカとして驚きだったのは、ファナティオが兜を外していたことだ。

ファナティオは殆ど兜を外したことがなく、アリスとライカの二人もファナティオの顔を見たのは二度目だった。

 

「そういやぁ、ファナティオ……確かお前さん、結構な大怪我を負ったんじゃなかったか?」

 

「はっ……確かに、あのキリトと名乗った剣士により、重傷を負ったのは覚えています……ですが……意識が朧気だった時に、強大な神聖力と優しい意志を感じ……気付けば傷が癒えた状態でバラ園に居ました」

 

ベルクーリが気になったことを問い掛けると、ファナティオも記憶を振り返りながら答えた。それを聞いたベルクーリは、少し間を置いてから

 

「ふむ……ということは、カーディナル様か……」

 

と呟いた。そしてベルクーリは、姿勢を直すと

 

「さて、あの4人の襲撃により、我々整合騎士は壊滅状態になり……そして、アドミニストレーター最高司祭様は討ち取られた」

 

ベルクーリのその言葉に、アリスとライカを除いた他の整合騎士は驚きと落胆の様子だった。

 

「そんな……!」

 

「あの、最高司祭様が……」

 

一同が驚きと落胆する中、いち早く立ち直ったエルドリエが

 

「騎士長閣下! なぜあの4人はそのような凶行に及んだのか……いえそれよりも、今すぐにでもあの4人を探しだし、処刑すべきです!」

 

と発言した。しかし、ベルクーリが

 

「その内の二人は、このセントラル・カセドラルに居るが……あの4人が、なぜあんなことをしたのか……ちょいと、俺の後に着いてきてくれ」

 

と言って、歩き始めた。アリスとライカ以外の整合騎士達は、不思議そうにしながらも、ベルクーリの後を追った。

そして到着したのは、元老院と呼ばれる区画。そこに入った一同は、言葉を失った。今まで整合騎士達は、基本的にこの元老院に入ることは出来なかった。

日夜そこでは、大事な話し合いが行われていると考えていた。だが、実際は違った。

 

「これは……人が箱に納められ……監視……しているのか!? それに……壁際には、凍っている騎士達!?」

 

最初に口を開いたのは、ファナティオだった。ファナティオは目の前の光景が信じられないという様子で、呆然としていた。

しかし、無理も無いだろう。壁際には凍り付けの整合騎士達が居て、人がまるで、機械のような扱いなのだから。

一同が呆然としている中、アリスとライカが

 

「カーディナル様!」

 

「ここに居らっしゃったのですね!」

 

と一人の機械化元老院の前に座っていたカーディナルを見つけた。するとカーディナルも、振り向き

 

「ああ、すまぬ。もう、そのような時間じゃったか」

 

と謝罪してきた。

 

「貴様、何者だ!!」

 

カーディナルに気付いたファナティオは、腰に手を伸ばしたが、それをベルクーリが制止して

 

「よせ、ファナティオ……このお方は、もう一人の最高司祭のカーディナル様だ」

 

とカーディナルを紹介した。

 

「もう一人の……最高司祭?」

 

「全員、今から話すことをよく聞いてくれ……かなりショックかもしれんがな……」

 

そう前置きしてから、ベルクーリはアドミニストレーターがしてきたことを語った。

まず、自分達整合騎士が実は天から召喚されたのではないこと。そして、アドミニストレーターが行ってきた非道な実験と自分達に人界を守るように命じながら、相反することをしてきたことを。

それを聞き終えた騎士達は

 

「そんな……」

 

「アドミニストレーター様が、そのようなことを……」

 

騎士達がうちひしがれていると、ベルクーリは

 

「このカーディナル様は、今から約二百年前にそのことに気付き、一度アドミニストレーター様を倒そうとした……しかし、勝てぬと踏んだカーディナル様は、機を伺い続けた……二百年間もの間、一人で大図書館に籠ってな……その機となったのが、あの4人だった訳だ」

 

「結局は、あやつら任せになってしまったがの……それに、二人も死なせてしまった……」

 

後半小さく呟いたカーディナルと、その呟きが聞こえたアリスとライカの脳裏には、ユージオとリヒトの姿が過った。

 

「しかし、あの4人が最高司祭様に刃を立てたのもまた事実! 早急に対処しなければ、人界の者達に示しがつきません!」

 

「だがな、エルドリエ。もしアドミニストレーター様を放置していたら、どうなっていた? ソードゴーレムとかいう化け物を作るために、何万という人が犠牲になっていたのかもしれないんだぞ? それを、見過ごせとでも言うのか?」

 

ベルクーリのその言に、エルドリエは反論することが出来なくなった。エルドリエも、人界を守るための騎士だ。確かに守れと命令されたのもあるが、守りたいという思いが強かった。

 

「エルドリエ」

 

「アリス様……」

 

「あの4人の心の強さは、直接刃を交えた我らがよく知っている筈です……あの4人は、譲れないことがあったから、刃向かうことを決めた……エルドリエ……お前にも、譲れないことがある筈です」

 

「ぐっ……」

 

アリスの言葉に、エルドリエは何も言えなくなった。まだ新人の域だが、彼も騎士。確かに、譲れないことがあり、それに関しては妥協する気持ちは一切無かった。

 

「納得しろとは言いません……ただ、彼らの譲れないことがあった……それだけは、覚えておいてください」

 

「わかり、ました……」

 

エルドリエはまだ不承不承という感じだったが、頷いた。すると、ライカが

 

「カイエン、お前は何も言わないのですか?」

 

とカイエンを見た。

 

「……私は、彼らに敗北した。それが事実であり、彼らの意志の強さを知っています……つまり、私の意志が彼らに負けたということ……ならば、それを受け入れるのみです」

 

カイエンの言葉に、ライカはため息を吐いた。カイエンは良くも悪くも武骨な騎士だ。少々頭が固いが、騎士として潔い面もある。

 

「今ワシは、この者達の解放……そして、凍結されておる整合騎士の解凍も行っておる……ベルクーリ殿の時は、術が不完全だったのと発動されてから短かったから解除出来たが……この者達の解除には、時間が掛かりそうじゃ……」

 

カーディナルはそう言いながら、凍結されている整合騎士達を見た。その人数は居て、全員を解除するには時間が掛かるのは確実だろう。

すると、アリスとライカが

 

「カーディナル様、私たちも手伝います」

 

「カーディナル様には及びませんが、私達も神聖術には自信があります」

 

と提案した。

 

「カーディナル様、この二人は俺達の中ではかなりの神聖術の腕を誇る。使ってやってくれ」

 

「……わかった。助けがあるのは、ありがたいからの」

 

ベルクーリの言を聞いて、カーディナルはアリスとライカの二人にも手伝ってもらうのを承諾した。単独では時間が掛かるが、複数人ならば少しは早くなるかもしれないと判断したようだ。

そしてこの場は一度解散することにしてベルクーリは、上位の騎士達をある会議室に呼んだ。

 

「アリス、ライカ……あの二人はどうだ?」

 

ベルクーリの問い掛けに、二人は首を振り

 

「ダメです……」

 

「あれから、まるで人形のように……」

 

意気消沈した様子で、そう答えた。

 

「閣下、どういうことですか……?」

 

「……キリトとヨシアキの二人はな、相棒を目の前で喪ったことと、恐らくはアドミニストレーター様が仕掛けていた罠で、まるで人形みたいになっちまったんだ」

 

ファナティオの問い掛けに、ベルクーリは神妙そうに答えた。

話は、二人がアドミニストレーターを倒した後まで遡る。アドミニストレーターを倒した二人は、コンソールまで歩み寄ると、外への通信を試みた。

アドミニストレーターが使おうとしたからか、起動と外への通信はすぐに始まった。

一度は上手くいき、通信は繋がった。しかしその直後、二人に突如落雷が直撃。それが原因でか、二人はまるで人形のようになってしまったのだ。

 

「今は、それぞれアリスとライカの部屋に居させてるがな……」

 

「そう、でしたか……」

 

はっきり言って、状況は悪いとしか言えないだろう。

実はつい先日、東方に派遣していた一人の騎士から、ある報告が上がっていた。

それは、暗黒界軍に、大きな動きが見られるというものだった。

 

「……もしかしたら、暗黒神ベクタが現れたのかもしれんな……」

 

「つまりは、暗黒界軍との戦いが……?」

 

「ああ……さしあたって今は、人界軍の再編と再訓練が重要になる……」

 

「確かに……今の人界の剣は、見世物になってしまっている……暗黒界軍の剣に太刀打ち出来るのは、極一部になってしまうでしょう……」

 

ベルクーリの言葉に、アリスは同意した。実は時々だが、整合騎士達の持ち回りで修剣士学園や人界軍の査察のようなことをしていて、人界軍に関しては訓練の手解きもしてきた。

しかし、今の人界の剣は見栄えばかりに気を取られていて、実戦向きではなくなっていた。

そんな剣では、暗黒界軍。特に、連撃技の多い暗黒騎士達の剣には敵わないのは明白だった。

 

「一応、手空きの騎士達で再訓練させましょう……最初は、私が受け持ちます」

 

「頼めるか、ファナティオ」

 

「はっ、お任せを」

 

そこで話し合いは終わり、アリスとライカは部屋に戻った。

そして二人は、人形のようなキリトとヨシアキを見て、本当に偶然だが同じ言葉を口にする。

 

『私は、どうすればいいのですか……教えてください……!』

 

と。

そしてアンダーワールドで、大きな戦争が始まる。

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