ソードアート・オンライン 黄昏の剣士   作:京勇樹

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召集1

アスナ達は、植物人間状態のキリトとヨシアキを見て、涙を流した。片腕を失くすだけでなく、この世界で長い間共に過ごした相棒を喪った。その苦痛は、想像を絶するものだろう。この世界では、痛みを緩和するペインアブソーバーが存在しないために、片腕を失った時にも激痛があっただろう。だが、相棒を喪うというのは違う痛み。魂の痛みに、二人は苛まれただろう。自責の念と電撃の二つが原因で、二人は自我を喪失してしまった。

このままでは、二人の復帰は一切望めない。

そこで考えられたのが、他者の記憶を用いた二人の魂への干渉による自我の復活。

しかし、それは一種の賭けだった。二人の自我が復活するという確信もなければ、もしかしたら他人の記憶が流れ込み、記憶の混濁や自我が歪む可能性すらあった。

だが、それに賭けるしかなかった。

 

「ですから、彼らと親しかった人達を集めてください」

 

「それは分かったが、調査に時間が……」

 

「いや、ワシが知っておる。後で紙に書き出しておく」

 

アスナ達の話を聞いて、キリトとヨシアキの二人と仲が良かった人達を集めることになった。そして、直ぐに現れたのは修剣士学園に居たキリトとヨシアキ、更にユージオとリヒトの傍付きだったロニエとティーゼ、インセリアとリリアナの四人だった。

四人は自我を喪失しているキリトとヨシアキ、折れている青薔薇の剣と蒼天の槍を見て

 

「そんな……キリト先輩……!」

 

「ユージオ……先輩……!」

 

「ヨシアキ先輩……!」

 

「なんで……!!」

 

と涙を流しながら、歩み寄った。ロニエとリリアナは、キリトとヨシアキの前で膝を突き、ティーゼとインセリアは青薔薇の剣と蒼天の槍に触れた。

すると、キリトとヨシアキの腕が動き、キリトはロニエの頭に、ヨシアキはリリアナの頭に手を置き、ティーゼとインセリアは声を聞いた。

 

「キリト……先輩……?」

 

「……ヨシアキ先輩……」

 

「……あ……う……」

 

「……あぁ……」

 

言葉にならない声だったが、二人にはどう言っているのか分かった。

 

『泣くな』

 

『泣いてる顔は、見たくない』

 

四人は整合騎士にキリト達が連行されたことを、自分達のせいだと思っていた。自分達が陵辱されるのを我慢すれば、連行されずに済んだのでは? と後悔していた。

しかし、十中八九の確率でキリト達は動いていただろう。

そして、ティーゼとインセリアが聞こえた声というのは

 

『泣かないで』

 

『僕は、近くで見ているから』

 

という言葉だった。

二人は直ぐ近くに、ユージオとリヒトが居るような気がした。

暫くすると、四人は落ち着いたのか立ち上がり

 

「それで、私達は一体何をすればよろしいのでしょうか?」

 

とアリスに問い掛けてきた。

すると、後ろに居たカーディナルが四人に歩み寄り

 

「キリトとヨシアキを、復活させる手助けをしてほしいのじゃ」

 

と四人に話した。四人が驚いていると、アスナが

 

「ただ、確実とは言えません。一種の賭けです……けど、何もしないで後悔するよりはマシ……だから、協力してください」

 

と言って、頭を下げた。四人は初めて見たアスナに驚くが、アスナの真摯な態度に心を打たれた。

それほどまでに、キリトが大事なのだと分かった。

 

「分かりました……」

 

「私達でお力になれるなら」

 

四人がそう言うと、カーディナルは

 

「ありがとう、感謝する。しかし、まだ集まる者達が居るでな……お主達には、暫くの間はカセドラルに居てもらうことになる。勿論じゃが、部屋は用意する。構わぬな?」

 

カーディナルの問い掛けに、四人は頷いた。そして、近くで待機させていたリネルとフィゼルに案内させると、アリスとライカに振り向き

 

「お主達には、直接迎えに行ってほしい者達が居る」

 

と告げた。

 

「私達に、ですか?」

 

「その対象は……」

 

アリスとライカが問い掛けると、カーディナルは頷き

 

「アリス……お主は、北の果ての山脈の村に居るセルカ・ツーベルク。ライカ……お主は、ライエ・シンフォースじゃ。出発、明日で構わぬ」

 

と対象者の名前を言ったのだが、アリスとライカは動揺した。その名前は、キリトとヨシアキから聞いていた、彼女達の妹だという名前だったからだ。

 

「カーディナル様……」

 

「しかし……」

 

「なに……お主達も良い機会じゃ……もしかしたら、奪われた記憶を取り戻す切っ掛けになるやもしれん」

 

カーディナルはそう言って、天井を見上げた。正確には、アドミニストレーターの寝室天井に封じられている整合騎士達の記憶の宝石を見上げた。

カーディナルはそちらも解析しているが、中々進んでおらず、外的要因による術への干渉も考えていたのだ。

もしかしたら、思いの強さが封印の解放に繋がるかもしれないからだ。

そして、ティーゼ達から僅かに遅れて、メディナ・オルティナノス。

ソルティリーナ・セルルト、アシュリー・アルスコットが来た。三人も、植物人間状態のキリト達に驚いていた。

リーナとアシュリーは、キリト達に触れて

 

「……風の噂で、セントラル・カセドラルに連行されたと聞いて驚いていたが……お前達のことだ、誰かの為なのだろう……」

 

「だが、お前達がこうなってしまったら……私達は悲しい……」

 

と自分の心中を吐露し、涙を流した。

この二人も、実はそれぞれキリトとヨシアキに恋慕の念を抱いていた。

リーナは彼女が使うセルルト流と同じ実戦を重視し、更に我流の剣技なのに、自信が無かったリーナとは違ってキリトが自信に溢れていたから。

そしてアシュリーは、彼女がかなりの高等貴族なのに普通の一人の女性としてヨシアキが接してくれたから。

だから気付けば、リーナはキリトに、アシュリーはヨシアキに惹かれていた。

実を言うと、メディナもキリトが気になっていた。

メディナとキリトの出会いは、約2年前になる。キリトとユージオがザッカリアという街を目指して旅をしていた時に多数の獣に囲まれていた所を助け、そこからザッカリアまでは同行。そして、修剣士学園に入学した際に再会し、度々陰湿なイジメを受けていたメディナを、キリトが助けたのだ。

しかし、メディナはその男勝りかつ気が強い性格が災いし、どうにも素直になれないでいる。

だが、キリトの剣の技量は素直に評価していた。そのキリトが、植物人間状態でいることが、メディナは信じられなかった。

その後、リネルとフィゼルにより一同は宛がわれた部屋に案内され、そして夜。乙女達は集まる。

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