シンフォース家に来たライカは、両親とライエに此処に来ることになった理由を話した。確かに、ライカ・シンフォースの体ではある。だが、ライカ・シンフォースとしての記憶は奪われて、整合騎士にされたこと。そのライカを取り戻すためにリヒトとヨシアキは剣士になり、命懸けでセントラル・カセドラルを上り、そして、リヒトが死に、ヨシアキは自我を失ってしまった。
「……あの子が……」
「……そうか……」
「リヒトが……」
溢した言葉は三者三様だが、その表情は善一悲しそうだ。やはり、古くからの知り合いが死ぬというのは悲しいのだ。
特に、ライエは涙を流していた。ライエは小さい頃からリヒトを知っていたのだから、ひとしおだろう。
そして、ライエが
「それで、記憶を奪われたって、どういうこと……?」
とライカに問い掛けてきた。両親も気になっていたのか、ライカを見ている。ライカは、自身の胸元に手を当てて
「ライカ・シンフォースは、ダークテリトリーに入ったという罪でセントラル・カセドラルに連行され……整合騎士に仕立てるために、この村に住んでいた時の記憶を奪われました……そして、アドミニストレーター様にとって都合の良い偽りの話として、天界から召喚したと教えられました……しかし、それが偽りだと教えてくれたのが……リヒトとヨシアキでした……そして、アドミニストレーター様との戦いで、リヒトが……」
ライカがそこまで語ると、ライエがライカに抱き付いた。
「ライエ……!」
「確かに、記憶は無いかもしれない……けど、それでもライカ姉さんよ……」
アデルトルートが呼び掛けるが、ライエは気にした様子もなく自身の考えを口にした。それが嬉しくて、気付けばライカはライエを優しく抱き締めていた。両親もその姿に何も言えなくなり、見守っていた。
それから少しして
「それで、ヨシアキ君が自我を失ってしまったと言ってましたが……」
「はい……アドミニストレーター様が仕掛けていたらしい最後の神聖術が理由らしく、まるで人形のようになってしまい……それを治すために、ライエに同行してほしいのです」
「え、私!?」
アデルトルートに説明していたのだが、まさか自身の名前が出ると思っていなかったライエは驚いた。
「ええ……カーディナル様が言うには、ヨシアキをよく知る者が必要になると……」
「なるほど……」
ライカの説明を聞いて、コーラッドは頷いた。そして、ライエに視線を向けて
「ライエ……ライカ様に同行し、セントラル・カセドラルに行きなさい……そして、ヨシアキの回復を手伝いなさい」
「は、はい! 分かりました!」
コーラッドは村長として命じて、ライエもそれを受け入れた。既に陽が沈んでいっているので、一晩だけ滞在することにし、ライカはシンフォース家の客間、もといライカの部屋にて寝ることになった。
ライエが言っていたのだが、今は客間として使っている部屋は、昔はライカの部屋だったらしい。
ライカに記憶は無いが、そう言われるとどこか懐かしいような気がしてしまうのが、ライカには不思議だった。
「……体が覚えている……ということでしょうか……」
ライカがそう呟いていると、ドアがノックされ
「ライカ姉さん……入っても、いい?」
とライエが顔を覗かせた。
「構いませんよ……どうしました?」
ライカはライエが入室すると、首を傾げた。昼間は修道服を着ていたライエだが、今は薄青のネグリジェを着ている。恐らくは、寝間着だろう。
「その……一緒に寝ても、いい?」
その問い掛けに、ライカは微笑んで
「ええ、構いませんよ……」
とライエを手招きした。すると、ライエは満面の笑みを浮かべてライカの隣に座った。そしてラッドとライカは、一緒に寝転がり
「ライカ姉さん……」
ライエはライカに抱き付き、ゆっくりと眠りについた。そして翌日には、セントラル・カセドラルに向かうことになる。