ソードアート・オンライン 黄昏の剣士   作:京勇樹

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裏切り者

オーシャンタートル副管制室。

そこには、神代博士と重村教授、菊岡が居た。比嘉が居ないのは、和人と明久の復活に繋がるかもしれない方法を思い付き、それを試す為に点検用端末のある通路に向かったのだ。

比嘉が試している間は、三人には何も出来ないので、相手に動きが無いか監視するのも含めて、三人は残っていた。

その時、神代博士はある1つのモニターに赤い文字が出ていることに気付いて、そのモニターを覗き込んで少ししてから

 

「……ねえ、菊岡くん。これ、何かしら?」

 

と菊岡を呼んだ。呼ばれた菊岡は、眠いのかあくびをしながら

 

「どうしました、神代博士?」

 

と歩み寄った。すると神代博士は、その赤い文字。《コード871》と表示されている部分を指差して

 

「このコード、知ってる?」

 

そのコードを見た菊岡は、一瞬怪訝そうな表情を浮かべてから、キーボードを叩き始めた。すると

 

「なんだと!?」

 

と声を上げた。

 

「なに!? どうしたの!?」

 

「何があったのかね、菊岡くん!?」

 

突如大声を上げた菊岡に、神代博士と重村教授が驚きながら問い掛けた。すると菊岡は、頭を掻きながら

 

「これは、フラクライトがALICEに覚醒するのを、妨害する為のプログラムだ!!」

 

そう言って、机を叩いた。

それでは、本来の目的から考えたら、本末転倒である。計画側の人間ならば、やる理由が無い。ならば考えられるのは、妨害工作。しかも、反対派か今回の相手からのスパイになる。

 

「こういうのは大概、自分の名前からもじるけど……」

 

「871……871……ヤナイ……?」

 

「待て、ヤナイという名前には、聞き覚えが……」

 

重村教授と菊岡の言葉を聞いた神代博士は、自分の手を素早く退けて、座席の背もたれに掛けられていた白衣の襟元に視線を向けた。

そこに記されているのは、柳井という名前。

その名前を見た直後、菊岡は振り向き様に

 

「君、拳銃を!!」

 

と言って、入り口付近に居た自衛隊隊員から半ば奪うようにして拳銃を受け取ると、ドアを開けた。

 

「菊岡君!」

 

「お二人はここに居て下さい! 君たち、お二人を頼んだぞ!」

 

菊岡は残った自衛隊隊員達に指示すると、すぐに走り出した。点検用の端末のある通路に向かった。

その場所自体は、副管制室から然程離れていない。しかし、比嘉と柳井の二人が向かってから数分が経過している。

柳井が武器を隠し持ち、更にその気ならば、比嘉は既に死んでいる可能性すらあった。

 

(頼む、間に合ってくれ!!)

 

菊岡は祈りながら、通路に向かった。

時はほんの少し戻り、点検用端末の場所。

そこで比嘉は、オーシャンタートルと六本木の支社のSTLから入った少女達のフラクライトと、和人と明久のフラクライトを短時間繋げて、二人を復活させようとしていた。

だがそれは、一緒に来ていた柳井の拳銃で妨げられた。

やはり素人だからか、柳井と比嘉の距離は2m程しか離れてないのに、肩を掠めるだけだった。

 

「柳井さん……あんたは……」

 

「裏切り者とか言うなよ、比嘉さんよ……俺は元々、反対派の手引きで入れられたんだが、襲撃してきた連中からも良い金を貰ってね……」

 

聞いてもいないのに、柳井は語り始めた。

 

「実はな、俺は須郷さんの部下で洗脳の実験もしてたんだよ……ただまあ、あのガキ共のせいで実験が出来なくなって……まあ、仲間に全部押し付けて、俺は何も知らなかったゲーム開発関係者ってことで、すぐに解放された……そこで、一度はあのガキ共への復讐を諦めた……だが、まさかこんな所で会えるとは思ってなかったよ!」

 

確かに。柳井からしたら、和人と明久は須郷の仇になる。

 

「それでチャンスを伺ってたら、今度は可愛いアドミーちゃんまであのガキ共に殺されてさ……」

 

「まさか……あんたが、時々内部に通信をしていたんすか!?」

 

実は以前から、誰か分からないがUWに通信している人物が居ることが分かっており、探していたのだ。それがまさか、柳井とは思っていなかったのである。

 

「須郷さんだけでなく、アドミーちゃんまで……だからさ、あのガキ共に復活されたら、俺の怒りが収まらないんだよ! 今、その端末機器を壊したら、あのガキ共は復活出来ない……そしてあんたを始末して、俺は何食わぬ顔で副管制室に戻ってあのガキ共のSTLに細工すれば……始末出来る!」

 

そう言って、柳井が端末に銃口を向けたら、比嘉がその前に移動した。

 

「あんた、他人を助ける為に命を捨てるのか? とんだ大バカだな!!」

 

嘲笑しながら、柳井は撃とうとした。その時

 

「ガッ!?」

 

炸裂音がしたと思ったら、柳井の右肩から激しく血が吹き出し、拳銃を落とした柳井は傷口を抑えながらフラついた。その直後、低い柵に足を引っ掛けて

 

「あ、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……!」

 

そのまま、落ちていった。あっという間の出来事に、比嘉が呆然としていると

 

「比嘉くん、大丈夫か!?」

 

と頭上のハッチから、菊岡の声が聞こえた。

 

「菊さん、ありがとうっす!」

 

比嘉は返事をすると、すぐにパソコンに戻り

 

「戻ってくるっす……二人共!!」

 

一縷の希望を賭けて、エンターキーを叩いた。

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