現実で比嘉が復活の為に動いていた時、UWでも大きな転換を迎えていた。
暗黒界軍の最前衛部隊は総崩れとなり、一部人界軍が突破。暗黒界軍側は拳闘士部隊を投入していた。
拳闘士
その名前の通りに、武器は使わずに己の肉体のみで戦う者達で、代表は当代のチャンピオンのイスカーン。
その拳闘士部隊と交戦したのは、整合騎士の一人。
通称、無音のシェータ。
黒に近い紫色の鎧に、まるで紙のように薄い黒百合の剣を持った生粋の剣士であり、アドミニストレーターが倒れた後にカーディナルが目覚めさせた整合騎士の一人である。
そしてこのシェータだが、少々曰く付きの整合騎士で、以前に下位整合騎士の一人を斬殺してしまったことがあり、その時に自らアドミニストレーターに凍結してほしいと望んだことから凍結されていたのだ。
その原因となったのが、斬りたくなる衝動だった。
シェータは様々な物や相手を、全て斬りたくなる衝動に襲われているのだ。それを叶える為にアドミニストレーターが、シェータが暗黒界の長年戦場だった場所に一輪だけ咲いていた黒百合を使って精製したのが、神器・黒百合の剣なのだ。
紙のように薄い刀身だが、並の神器を上回る優先度を誇り、シェータの技量と合わせて大抵の物を切り裂くことが出来るのだ。
そのシェータにより、拳闘士部隊は足止めに成功し、一度後退した。
そしてほぼ同時刻、人界軍の物資集積所に暗黒界軍の暗殺者ギルドと暗黒騎士からヴァサゴの選抜による奇襲部隊が襲撃し、一度はキリトとヨシアキの近くまで近づかれていた。
しかし、見回りに出ていた修剣士学院から立候補してきた、ロニエ、ティーゼ、インセリア、リリアナの四人の機転で奇襲は失敗。
ロニエ達四人が決死の防衛戦をしていた所に、アスナが到着し、ステイシアの能力。
無制限地形操作で、暗黒界軍を地の底に落とした。
しかし、この無制限地形操作はアスナのフラクライトに大きな負担を掛け、頭が痛くなった。
実は比嘉からも、あまり多用しないように注意されていた。
そして実は、この物資集積所には前線に居る筈の整合騎士。
レンリ・シンセンス・トゥエニセブンが居た。
このレンリは、シェータと同時にカーディナルによって凍結から解放された上位整合騎士の一人である。
しかしこのレンリは、アドミニストレーターから失敗作の烙印を押されて凍結されていたのだ。
アドミニストレーターによって与えられた神器は、雙翼刃。
雙翼刃はかつて、片方の翼を喪った二羽の神鳥を基にアドミニストレーターによって造られた神器になり、普段はくの字の形状の2つの武器だが、本来はその2つを合わせて十字にして使う。
そして失敗作と呼ばれた理由だが、彼は元々は修剣士学院で非常に優秀な成績を修めた学生だった。
そんな彼には、共に切磋琢磨した親友が居た。
その親友とは、共に騎士を目指し、後少しで騎士になれた筈だった。
だが、大会の最中にレンリは誤って斬ってしまい、それが致命傷となった親友は息を引き取ったのだが
『お前は……騎士になれ……俺の分まで……立派な騎士に……』
とレンリを恨まず、自分の思いを託した。
その後はアドミニストレーターによって整合騎士にされ、学生だったという記憶は抜き取られ、上位整合騎士として雙翼刃を与えられるまでになった。
しかし、レンリはその親友を殺したことがトラウマになり、雙翼刃の本来の性能を引き出せなかったのだ。
記憶解放術も武装完全支配術も使えなかったレンリはアドミニストレーターによって失敗作とされ、凍結された。
そして実は、キリト達によって整合騎士が悉く倒されていた時に凍結から解放されようとしていたが、チュデルキンとハァシリアンの二人が死んだ為に途中で止まり、それをカーディナルが解放したのだ。
解放された後は前線指揮官の一人に抜擢され、第四部隊と共に配置されていたが、いつの間にか物資集積所まで逃げて、隠れていた。
それを見つけたのは、レンリを知っていたリネルとフィゼルの二人だった。
リネルとフィゼルの二人は、レンリがトラウマに囚われていて、まともに戦えないことを見抜いていたのだ。
レンリは咎められるかと思ったが、リネルとフィゼルは見逃すことにして、前線に戻っていき、そしてレンリは暗殺ギルドや暗黒騎士達と気丈に戦うティーゼに感銘を受け、自ら前線に復帰した。
そして暗黒界側に視点を戻すと、そちらにはテラリアのスーパーアカウントを与えられたリーファが現れていた。
リーファが現れたのは、失意のどん底に居たリルピリンの前だった。リーファはリルピリンを一人の人として扱い、リルピリンはそんなリーファに困惑した。
その時、命からがら逃げ仰せたディー・アイ・エルがリーファを捕らえ、リルピリンに自分に渡すよう命令した。
この戦争中、ディー・アイ・エルはベクタの副官的立ち位置にあり、その命令はベクタからの命令と同等。
暗黒界側の禁忌目録により、反抗することは出来ない筈だった。
だがリルピリンは、右目の封印を突破し、無限の体力を持つリーファから体力を奪っていたディー・アイ・エルに斬りかかった。
スーパーアカウント・テラリアの能力は無尽蔵の体力。
これは、例え瀕死のダメージを負おうが、即座に回復する能力になる。
しかし、ペインアブソーバーの無いUWでは呪いに等しい能力になる。
だがリーファは、その痛みを乗り越えて、ディー・アイ・エルを切り捨てた。
そしてリーファは、リルピリンと行動を共にして、現実世界から投入されたアメリカ人VRMMOプレイヤーと交戦を開始した。
このアメリカ人VRMMOプレイヤーは、グリッターが考えた策だった。暗黒界軍は数はかなり多いが、整合騎士のような特記戦力が少ない。
それを補う為に、アメリカ人VRMMOプレイヤー用に新作VRMMOゲームのオープンβ開始という名目で、呼び込みを開始。その結果、約一万人ものアメリカ人VRMMOプレイヤーがUWにログインし、人界軍だけでなく、暗黒界軍にも攻撃を開始。
これに対し、戦場では暗黒界軍と人界軍が共闘を開始し、アメリカ人VRMMOプレイヤーはなんとか対処出来た。
しかし、今度は韓国VRMMOプレイヤーが約三万人近くログインしてきた。
韓国の方には、新作VRMMOのサーバーが日本からのハッキングを受け、日本人に好き勝手されている。
韓国人プレイヤーの助けが必要だ、として韓国人の日本嫌いを利用した。
中には、それに違和感を覚える人も居た。
だがそれを、Pohのアカウントを使って再ログインしてきたヴァサゴが扇動し、戦わせた。
Pohこと、ヴァサゴ・カザルス
実は彼は、日系アメリカ人になる。その出生は、ある日本企業の社長が内臓疾患を患ってる自分の息子を助ける為に、アメリカの貧乏な女性に代理出産を頼み、ヴァサゴを産ませて、ヴァサゴが一定年齢に達したら日本に呼び込み、ヴァサゴの健康な内臓を自分の息子に移植させた。
そして名前の由来だが、これはアメリカ人女性からしたら本意の出産ではなく、その女性からしたら、悪魔の子だったらしく、悪魔の一体、ヴァサーゴの名前を文字って着けたのだ。
内臓摘出された後ヴァサゴは、裏社会で生き始めた。
その仕事の一つで日本に再び入り、ヴァサゴはSAOにターゲットの一人が居ることを知ると、保管場所からナーヴギアとSAOのソフトを奪取し、ログインしてきたのだ。
SAOで人が死んだら、その全ての罪は開発者たる茅場に向かうのを利用したのだ。
ターゲットを排除した後、ヴァサゴはSAOを楽しみながら過ごし、キリトがクリアしたことで解放された。
その後は、その戦闘力の高さを買われてGDSに所属し、今に至る。
しかし、その悪のカリスマ性の高さは健在。UWの心意と合わせて、韓国人プレイヤー達を操った。
この時、日本のVRMMOプレイヤー数百人もUWにログインしてきて奮戦していたが、戦況は最早絶望的。
その時、二本の黒と黄昏色の光の柱が天を突いた。