ソードアート・オンライン 黄昏の剣士   作:京勇樹

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ひとつの決着

二本の光の柱が上がった時、それを見た殆どの人物が止まった。だが、動いたのが何人か居た。

アスナ達と戦っていたヴァサゴ、アスナ達。彼らは一目散に、その光の柱の場所。後方の補給物資集積所に向かう。光の柱は徐々に収まっていくが、アスナ達にはある確信があった。

帰ってきた、と。

そして到着すると、それぞれ片手剣を持って立っていた。その周囲には赤い甲冑を着たプレイヤー達が倒れている。どうやら、後方まで侵攻した海外プレイヤー達が居たようで、それを起き抜けに倒したらしい。

二人が体の調子を確認していると

 

「ようやく見つけたぜ……黒の剣士に黄昏の剣士よぉ!!」

 

とヴァサゴが飛び掛かった。アスナ達は反応が遅れ、ヴァサゴは友切包丁(メイトチョッパー)を振り上げた。

すると、ヨシアキが

 

「キリト、任せて」

 

とだけ言って、素早くヴァサゴの友切包丁を受け流した。その直後

 

「ぜあっ!」

 

体術スキルの弦月で蹴り飛ばした。しかしヴァサゴは、蹴られた瞬間に後ろに跳んでいたようで大したダメージを受けた様子はない。ヨシアキは肩に担ぐように剣を構えて

 

「キリト、こいつは僕が引き受けた……アリスとライカをお願い」

 

「……分かった」

 

「行かせるか……!」

 

キリトが走り出すと、ヴァサゴが邪魔しようとした。だが

 

「させるとでも?」

 

気付けばヴァサゴの前にヨシアキが居て、剣を振りかぶっていた。ヴァサゴは友切包丁で受け止めたが、押し飛ばされた。

 

「てめぇ!?」

 

「今までの借り……全部返すよ……」

 

ヴァサゴは驚くが、ヨシアキはヴァサゴに態勢を建て直させる暇を与えなかった。そこからは、防戦一方になるヴァサゴ。ふと気付けば、キリトだけでなくアスナの姿もない。どうやら、キリトの後を追い掛けたようだ。

それだけを視界の端で確認してからヨシアキは、ヴァサゴを思い切り蹴り飛ばした。

 

「PoH……今までにお前に殺されたプレイヤー達の分……きっちりお返ししてやる……」

 

「調子に乗るんじゃねぇよ……黄昏!!」

 

言葉短く会話すると、二人は再度激突した。

ヴァサゴの持つ友切包丁は、噂では隠しボスのドロップ品とされており、性能はかなりの物と分かっている。

実際の性能は、プレイヤーを倒す度に強度と攻撃力を上げ、モンスターを倒すと逆に強度と攻撃力が下がっていくという対人特化の武器になる。

 

「はああぁぁぁ!!」

 

(シャァァァ)!」

 

二人の剣が激突し、激しく火花が散って顔を照らす。それを見ていたユウキとフィリアは、ヨシアキの援護をしようか迷っていた。

ヨシアキとヴァサゴの戦いが余りにもハイレベルで、下手に入ったら逆に邪魔になると思ったのだ。

 

「ぜあっ!!」

 

「甘いんだよっ!!」

 

ヨシアキの切り上げを友切包丁で防ぐと、ヴァサゴは拳を繰り出した。だがヨシアキは、首を傾けるだけで回避し

 

「こいっ!!」

 

と右手を後ろに伸ばした、その直後、ヨシアキが座っていた車椅子に立て掛けられていたリヒトの槍がまるで跳ねるように動いた。

その勢いのまま槍は、ヨシアキの右手に収まった。

 

「はっ! 穂先の無い槍で何が出来る!!」

 

「舐めるなよ、PoH」

 

穂先が無いことをヴァサゴは嘲笑するが、ヨシアキは頭上で槍を回した。すると、槍に驚きの変化が起きた。

周囲から光が集まり、砕けた筈の穂先が直っていく。

 

「この槍は、この世界の僕の相棒が長く使っていた槍……神器と呼ばれる特別性だ」

 

本来、どんな武器だろうが本体と呼べる刃の部分が砕けたら天命値が無くなって消える筈である。しかし、リヒトの槍。そして、ユージオの剣は消えなかった。

それが意味するのは、ただひとつ。まだ、その二本は生きているのだ。

必要だったのは、切っ掛け。

そして、穂先が直ってヨシアキがかつて鋼鉄浮遊城でした構えをした時

 

『頑張ってくれ、相棒……』

 

と死んだ相棒、リヒトの声が聞こえた。

それを聞いたヨシアキは、左手の剣を突き付けて

 

「ここで終わりだ、PoH……罪を償ってもらうぞ」

 

と宣言した。

 

「はっ……てめぇみたいな甘いガキに、俺を殺せるのかよ!?」

 

「……死ぬより、辛いかもね」

 

ヴァサゴは勢い付けて突撃し、二人は交錯する。それを見ていたロニエ、ティーゼ、インセリア、リリアナの四人は動けなかった。

次元の違う戦いに、気圧されていた。

互いに一撃必殺の意志を込めて、僅かな隙を狙って攻撃を繰り出す。

苛烈とまで表現出来る剣劇の応酬。最早、演武にまで見えるが、その実は殺し合いだ。

しかも、ヨシアキは両手に違う武器。片手剣と槍を持って戦う不思議なスタイルだった。

すると、いつの間にか近づいていたフィリアが

 

「あれが、ヨシアキだけが使える流派……剣聖流……あらゆる武器を使いこなしたヨシアキだけが使える……」

 

と四人に教えた。

初めて聞く流派だが、堂に入った動きと力強さに、特にインセリアとリリアナの二人は引き込まれた。

 

「ユニークスキルか、黄昏!」

 

「誰が教えるか、殺人鬼!!」

 

二人の戦いは、苛烈を極めた。光の残光と火花、音だけが響き渡り、ヨシアキとヴァサゴが戦っていることを報せる。

そして、二人が互いに距離を取る為に後ろに跳んだ。その時、ヨシアキは槍を地面に突き刺して

 

「縛れ!!」

 

叫んだ直後、ヴァサゴの足下から夥しい量の水が噴き出して、ヴァサゴを拘束した。

 

「ちいっ!? だが、この程度……!!」

 

「いや……終わりだよ……この剣はね、長年水を塞き止め、太陽を吸収してきた悪魔の岩から造られた剣だ……PoH……お前の罪が清算されるまで、岩になってろ……!」

 

ヴァサゴが水の拘束を引き千切ろうとしたが、それより早く接近したヨシアキが、剣で腹を刺した。すると、どういう理屈かは分からないが、ヴァサゴの体が岩に変質していく。

 

「な、なにが……!?」

 

「……固まれ……」

 

そしてヴァサゴは、巨大な岩に成り果てた。それを見たヨシアキは、穂先が修復された槍を見て

 

「……ありがとう、リヒト……」

 

と涙を流した。

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