キリトとサトライザーの死闘は、苛烈を極めた。
何せ、サトライザーには殺気を込めた攻撃が通用しなかったのだ。
流石のキリトも攻めあぐねて、一時は危機的状況にも陥った。そんなキリトを助けたのは、青薔薇の剣だった。
青薔薇の剣から、死んだキリトの相棒のユージオの声が聞こえたのだ。
『ステイクール、だろ。キリト』
ステイクール
それは、キリトが教えた言葉だった。冷静に、という意味合いで、冷静に見極めれば必ず隙が見つけられる。
そうユージオに教えていた。
ユージオの言葉で、キリトは気付いた。殺気を込めた攻撃が効かないならば、殺気を込めなければいいのだ。
そう判断したキリトは、殺気を一切込めずに攻撃を繰り出した。その甲斐あって、ようやくサトライザーに攻撃が通った。
そこからキリトの反撃が始まり、剣での間合いはキリトが終始優勢だった。
そして、ほんの僅かな隙を突いて、サトライザーの撃破に成功した。
その後、飛んできたヨシアキと合流し、キリト達はダークテリトリーの端。ワールド・エンド・オールターに向かった。だが、そこで予想外の事態になった。
現実世界で、相手チームが加速倍率の上限を突破させ、理論上限界値の2000倍にまで上がってきていること。それに伴い、このままではオーシャンタートル内のSTL組の脱出が出来ないということだった。
六本木のSTL組はスペックが足りない為に自動的にログアウトされ、海外や日本のアミュスフィア組も自動的にログアウトされるらしい。
しかし、残り時間は僅か四分足らずしかない。
はっきり言ってしまうと、かなりギリギリだった。キリト達が戦っていた地点から、ワールド・エンド・オールターまでの距離と飛行速度を考えたら、間に合うか間に合わないかギリギリである。
もし間に合わなかったら、ログアウト出来るまでUW世界でどれだけ掛かるか分からないという。
「分かった。なんとか、間に合うようにするが……間に合わない時は、アスナ達もログアウトさせてくれ」
先に行かせたアスナ達は間に合うと考え、キリトは菊岡にそう提案した。そこで、通信は途切れた。どうやら、加速倍率の関係で出来なくなったようだ。
二人は出せる限界速度で、ワールド・エンド・オールターに向かった。
どうやらワールド・エンド・オールターは空中神殿のような場所らしく、しかもその高さは飛行限界高度だったらしい。階段に着いたら、そこからは走りになった。
長い長い階段を駆け抜けて、最上部。
神殿前に到着したが、既にアスナ達やアリス、ライカの姿は無かった。
「……キリト」
「……間に合わなかったな……」
二人は神殿前広場の石柱に背中を預ける形で、座り込んだ。現実世界では何日かでも、加速倍率が理論上限界値を突破しているUWでは、気の遠くなるような月日が掛かるかもしれない。
耐えられるか分からず、更に長い年月家族や仲間達。何より大事な人達と会えないという事実に、二人は挫けそうになり、俯いた。
その時
「キリトくん」
『ヨシアキ』
と予想していなかった声が聞こえて、キリトとヨシアキの二人は顔を上げた。その先には、ログアウトした筈のアスナ、フィリア、シノンの姿があった。
それは、ほんの僅か前になる。
アスナとシノン、アリス、ライカの四人が階段に到着した時、スーパーアカウント・エアリスの能力を使って、フィリアも階段に到着。
五人は、確かに間に合う時間に神殿前に到着していた。
そしてアスナ達は、アリスとライカをコンソールの前に連れていき、最初は一緒にログアウトしようとしていた。しかしログアウト処理が始まる前、何を考えたのか、アスナ、フィリア、シノンの三人はコンソールから離れた。
アリスとライカは気付き、コンソールから離れようとしたが、既にログアウト処理が始まっていたので、既にコンソールから離れられなくなっていた。
菊岡達も気付いたので、アスナ達にコンソールに触れるように促した。
だがアスナ達が選んだのは、キリトとヨシアキの傍だった。愛しい人達から、もう離れたくないから残ることにしたのだ。
そして、アリスとライカを見送ってから、キリト達を待っていたのだ。
『なんで……』
キリトとヨシアキが不思議そうにしていると、アスナ達は微笑んで
「それはね……」
『もう、離れたくないからだよ』
そう二人に告げた。
それが嬉しかった二人は、キリトはアスナに、ヨシアキはフィリアとシノンを抱き付いた。
その後、五人は東の大門に戻って、暗黒神ベクタの撃破を宣言。人界軍とダークテリトリー軍の戦争は幕を下ろした。
その後、ダークテリトリー側の責任者になったイスカーンとカーディナルにより、終戦・和平が締結され、ダークテリトリーと人界双方で人材交流を目的にした行き来をする為に、人界とダークテリトリーを隔てていた全ての門の開放が決まった。
そして、五人の約200年余りの長いUW世界での生活が始まった。