ソードアート・オンライン 黄昏の剣士   作:京勇樹

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帰還者

オーシャンタートルの襲撃事件から、約二ヶ月後。

ダイシィ・カフェ

 

『約二ヶ月前に起きた最新AI実験施設への、襲撃事件により、施設の責任者である菊岡誠二郎二等陸佐が亡くなり……』

 

ニュースキャスターの言葉を聞いて、比嘉が

 

「まさか……菊さんが死ぬなんて……」

 

と複雑そうにしていた。

すると、その比嘉の隣に座っていた厚い髭が特徴の男性。菊岡が

 

「いやぁ、本当だねぇ」

 

と同意した。

なぜ、死んだ筈の菊岡が居るのか。答えは簡単。

本当は死んでおらず、死んだ事にして自衛隊内に居る反対派の内通者を割り出す為である。

その甲斐あり、何人か逮捕しているらしい。

 

「それより、そろそろでしょ? 二人の記者会見」

 

「そっちを見るか」

 

里香の言葉を聞いて、店主のアンドリューがチャンネルを変えると

 

『予定では、そろそろの筈ですが……ラース六本木支社にいる柳田アナウンサー?』

 

『はい! こちら現場の柳田です! 予定ではそろそろの筈……あ、来ました! 始まるようです!』

 

カメラが向きを変えると、神代博士を先頭に二人の少女。アリスとライカの二人が入室してきた。

最初はどよめいたが、直ぐに記者達はアリスとライカにカメラを向けて撮影を始めた。

すると、席に座った神代博士が

 

『ではこれより、ラースの最新AI二名の発表を行います。司会進行並び意見解答役の神代凛子です……そしてこちらが』

 

『私の名前は、アリス・シンセンシス・サーティ』

 

『私は、ライカ・シンセンシス・サーティワンです』 

 

二人の声を聞いた記者達は、どよめいた。

恐らく機械音声で話すと思ったのかもしれないが、二人はそれぞれ違う声音で何ら人間と変わりなく喋った。

ちなみに、二人の体だが新たに比嘉が開発したサンエモンが使われている。

ニエモンはどうなったのかと言うと、二ヶ月前のオーシャンタートル襲撃事件の最後に、襲撃者の一人がオーシャンタートルの原子炉を暴走させ、メルトダウンさせようとしたのだ。

その時、機能停止状態だったニエモンに、なんと茅場が入って動かしたのだ。

襲撃者はニエモンの迎撃をしたが、駆け付けた菊岡の撃った拳銃の数発の弾が命中し、息絶えた。

ニエモンは損傷で一度は機能停止したが、神代博士の声に答えるように再起動し、原子炉のメルトダウンを間一髪で止めたのだ。

まさに、奇跡的としか言い様が無い事だった。

その時の運用データから、ニエモンの欠点が分かり、比嘉は改良型のサンエモンを開発し、それにアリスとライカのライトキューブを搭載。

見た目も二人のものにし、今に至る。

すると、一人の記者がAIだという証拠の為に、頭を開いて見せろと言ってきたが、アリスとライカの怒気の込もった声に押し黙った。

 

「あっちゃぁ……あの記者、二人の結構本気の怒気を受けたな……」

 

「失禁してなきゃいいがな」

 

結華と裕也は気楽に話していたのだが、何かに気付いた様子で佳子が

 

「あれ……そういえば、あの二人が着てるのって……帰還者学校の制服じゃないですか?」

 

と首を傾げた。それを聞いた雄二達は、アリスとライカの二人の服を見て

 

「あ、本当だ」

 

「確かに、帰還者学校の制服だよ!」

 

と話した。すると、菊岡が

 

「まだ非公開だが、二人は暫くの間は帰還者学校に通わせようと考えてるんだ」

 

「本当!?」

 

「うわ、楽しみ!」

 

菊岡の話を聞いて、雄二達は楽しそうに顔を見合わせた。その時、突如としてアリスとライカの二人が立ち上がり、ある方向に顔を向けて固まった。

 

「なんだ?」

 

「どうしたんだ、一体」

 

アンドリューと遼太郎が不思議そうにしていると

 

『申し訳ありません』

 

『私達は急用が出来ましたので、これで』

 

アリスとライカはそう言って、記者会見の会場から去っていった。その時、比嘉が端末を見て

 

「菊さん!」

 

と菊岡にその端末を見せた。すると、菊岡は椅子を蹴倒す勢いで立ち上がり

 

「急いでオーシャンタートルに戻るぞ!」

 

と言って、カウンターにお金を叩きつけるように出して、ダイシィ・カフェから出ていった。

オーシャンタートルが停泊している東京湾沖には、アリスとライカが居る六本木より御徒町の方が近く、しかも御徒町付近にはヘリポートがある。

菊岡と比嘉の二人はそれらを駆使し、アリスとライカの二人より先にオーシャンタートルに到着し、五人が眠るSTLが見えるメイン管制室に入った。

すると、比嘉は

 

「この脳波は……間も無く目覚めます! マイクの集音開始! スピーカーに繋ぐっす!」

 

と機器の操作を始めた。

少しすると、スピーカーからノイズが聞こえて、五人の呼吸音らしいのが聞こえた。

すると、五人の唇が動いていることに気付いた比嘉は、それがフラクトライトの崩壊の前兆のように見えてしまい、思わず悪寒を覚えた。

しかしよく聞けばそれは、非常に流暢な英語だと分かった。

 

「まさか……」

 

菊岡は驚きの声を漏らした。

何故ならば、五人がUWに居た機関は、約200年を超えていたのだ。

普通ならば、魂が耐えられる訳がなく、最悪は廃人になっていると予想していた。しかし、五人は耐えて帰還してみせたのだ。

すると、STLから顔を出した五人が監視カメラの方を見て

 

『見てるんだろ、菊岡さん』

 

『僕達は、役目を終えて帰ってきました……200年分の記憶を消してください』

 

と願った。

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