長々とありがとうございました(エイプリルフールネタではありません)
「うーん……久しぶりって感じはしないけど、実際は久しぶりなんだよねぇ」
数ヶ月振りに帰宅した明久は、とりあえず冷蔵庫の中身を処分し終わり、これからどうしようかなと考えていた。
その時、チャイムが聞こえた。
「ん? 誰か来たのかな?」
はて、約束してたかな。明久はそう思いながら、玄関に向かった。そして、覗き窓から外を見ると、見慣れた黒猫の宅急便の帽子が見えたので
「はい」
『宅急便です! お荷物をお持ちしました!』
予想通りの言葉を聞きながら明久は、判子を用意。そして、ドアを開けると
「こちらになります。お間違いないでしょうか?」
「……はい、大丈夫です」
届け先が自分なのを確認した明久は、配送票に判子を捺印した。
「重いですので、お気をつけください。それでは」
配達員を見送った明久は、その荷物の配送票を改めて確認し
「ん? ラースの六本木支社から?」
予想外だった場所の名前が記載されていて、明久は首を傾げながらも荷物をなんとかリビングまで運んだ。
「やけに重たかったけど……何が入ってるの、これ?」
明久はガムテープを破り、段ボールの蓋を開けて、固まった。何故ならば、どちらかは分からないが、人の物と分かる目と自分の目が合ったからだ。
「ようやく、到着したようですね」
その声を聞いた瞬間、明久は我に返って蓋を閉めた。
「……うん、気のせいだよね」
そう言って明久は、その段ボールから離れた。
その直後
「いきなり閉めるとは、酷いですね」
金属質な音を鳴らしながら、段ボールの中からライカが出てきた。
「キャアアァァァァァァァ!?」
それを見た明久は、思わず悲鳴を挙げた。
そして、数分後
「……お願いだから、普通に来て」
ライカの話を聞いた明久は、思わず頭を抱えながら注げた。
「仕方ないでしょう。本来、今の私は気軽に外出出来ないのですから」
明久の言葉に、ライカは少し不機嫌そうに答えた。
以前に行った記者会見以来、ライカとアリスはかなり注目されており、外に出たらあっという間に記者や誰かに囲まれてしまうのだ。
そうならないように、アリスとライカは外出制限が掛けられている。
そこでアリスとライカは、ラースの六本木支社にあった段ボールと配送票を使って、ある計画を思い付いた。
それは、荷物として送られるという事だった。
これは、二人が生身の人間じゃないから出来た事だった。
やり方は簡単。
まず、身体中の関節のロックを外した状態で入れるサイズの段ボールを探し、ある程度組み立てる。
そして、配送票にそれぞれの配送先の住所を書いて貼る。最後に、足から関節のロックを外しながら入っていき、蓋を閉めればOKである。
軽くガムテープが剥がれていたら、それは回収に来た業者が貼り直す事も計算に入っているだろう。
後は、配達されるのを待つだけになる。
「ここが、お前が一人暮らししているという場所ですか……一人暮らしにしては、広いですね」
「まあ、母さんの紹介物件でね……母さん、弁護士だから色んな伝があるんだよ」
ライカの問い掛けに、明久は答えながら携帯を操作した。ラース六本木支社では、今頃探してるだろうな、と思ったので知らせようと思ったからだ。
この時明久は知らなかったが、実は和人の方にもアリスが同じ方法で行っており、同じ状況になっていた。
その時、明久は着信メールに不思議なメールを見つけた。
「なんだ、このメール」
迷惑メールだったら、フィルタリング機能で分別・廃棄される筈なのに、それを突破して入ってきている。
最初は処理しようとしたが、差出人のKというのが気になって開いてしまった。
「ん、んん?」
その内容は、ランダムな数字の羅列。それの意味が分からず、明久は首を傾げた。するとライカが覗き込んできて
「それは……何かの座標では?」
「座標……? まさか……」
明久はある可能性を考えて、そのメール内容をそのまま和人の方に転送した。すると、即座に電話が掛かってきて
「和人!」
『明久にも来てたんだな!』
どうやら、和人にも同じ内容のメールが来ていたようだ。
「あのメールって……」
『ユイが教えてくれたんだが、あれはUWの座標を示してる! つまり、アドレスだ!』
今、彼らに一塁の希望が見えた。
ほぼ同時刻、ラースの比嘉の研究室
「……つまり、茅場先輩はまだネット世界で生きてると?」
『ああ』
『僕達は、そう確信してる』
今比嘉が会話しているのは、比嘉がコピーした和人と明久のフラクライトだ。ただしそれは、200年間UWで過ごした方のフラクライトである。
比嘉は消す前の短時間に、和人と明久のフラクライトをコピーしていたのだ。
もしかしたら、何か聞けるのではないか、と思ったからだ。そして、それは当たりだった。
まず、UWを巡る戦いがまた始まるということ。そして何より、ニエモンを動かし、ニエモンが壊れたことで消えたと思っていた茅場がまだネット世界に生きていると二人が言ってきたからだ。
「けど、どうやって探せば……」
『暗号を送ればいい』
『僕達と茅場が分かる内容で、暗号を送るんだ……そうすれば、茅場は動く筈だ』
そして、UWとVRMMO世界を巡る戦いが幕を開ける。