「偵察隊が全滅!?」
「そんな……」
「っ……」
ギルド血盟騎士団の会議室で、ヒースクリフの言葉を聞いたキリト、アスナ、ヨシアキの三人は顔を青ざめた
「ああ……昨日のことだ。七十五層のマッピング自体は、多少時間が掛かったが問題なく終了し、ボス部屋を見つけた。だが、ボス戦はかなりの苦戦が予想された……」
ボス戦の苦戦はキリト達も予想していた
なぜならば、今まで攻略してきた数多のフロアのうち、二十五層と五十層のボスモンスターだけは、とてつもない巨体と戦闘力を誇っていて、その二つの攻略において、多大な犠牲が出たからだ
二十五層の双頭巨人型ボスモンスター戦では、軍の精鋭がほぼ全滅して現在の弱体化の原因となり、五十層の戦いでは、金属製の仏像を彷彿した多腕型ボスモンスターの猛攻に怯んで、勝手に緊急脱出するプレイヤーが続出
それにより、戦線が一度崩壊したのだ
もし、援護部隊の到着がもう少し遅れていたら、先発部隊も全滅していたのは間違いなかったのだ
そして、その崩壊した戦線を独力で支え続けたのが、ヒースクリフなのだ
クォーター・ポイントごとに強力なボスモンスターが用意されてるならば、七十五層も同じように用意されている可能性が高かった
「……そこで、我々は五ギルド合同のパーティー二十人を偵察隊として送り込んだ。偵察は慎重を期して行われた。十人が後衛としてボス部屋入り口で待機し……最初の十人が部屋の中央に到達して、ボスが出現した瞬間、入り口の扉が閉じてしまったのだ。ここからは、ムッツ君の報告になる。扉は五分以上開かなかった。鍵開けスキルや直接の打撃等、何をしても無駄だったらしい。ようやく扉が開いた時……」
そこで一旦区切ると、ヒースクリフの口許が固く引き結ばれて、一瞬目を閉じてから、口を開いた
「部屋の中には、何も無かったそうだ。十人の姿も、ボスも消えていた。転移脱出した形跡も無かった。彼らは帰ってこなかった……念の為、基部フロアの黒鉄宮までモニュメントの名簿を確認しに行かせたが……」
ヒースクリフはそこで言葉を区切り、首を振った
「十……人も……なんで、そんなことに……」
「結晶無効化空間……?」
「だね。前の層のボス部屋がそうだったし……」
キリトの問い掛けにヨシアキが答えると、ヒースクリフも頷き
「そうとしか考えられない。今ヨシアキくんが言ったように、七十四層もそうだったということだから、おそらく、今後全てのボス部屋が結晶無効化空間と思っていいだろう」
「バカな……」
ヒースクリフの言葉に、キリトは嘆息した
緊急脱出不可能となれば、思わぬアクシデントによって死亡するプレイヤーが出る可能性が飛躍的に高まるのは必然である
死者を出さない
それは、このゲーム《ソードアート・オンライン》をクリアする上での大前提である
だが、ボスを倒さないとクリアは不可能
「いよいよ、本格的なデスゲームになってきたわけだ……」
「だからといって、攻略を諦めることはできない」
キリトの呟きに、ヒースクリフは目を閉じながら、囁くように、だが、きっぱりとした声で断言した
「結晶による脱出が不可な上に、今回はボス出現と同時に背後の退路も絶たれてしまう構造らしい。ならば、統制の取れる範囲で可能な限り大部隊をもって当たるしかない。新婚の君達を召喚するのは本意ではなかったが、了解してくれ給え」
ヒースクリフの言葉に、キリトは肩をすくめて
「協力はさせて貰いますよ。だが、俺にとってはアスナの安全が最優先です。もし危険な状況になったら、パーティー全体よりも彼女を助けます」
キリトの言葉に、ヒースクリフはかすかに笑みを浮かべて
「何かを守ろうとする人間は強いものだ。君の勇戦を期待するよ。もちろん、ヨシアキくんもな。攻略開始は三時間後。予定人数は君達を入れて三十八人。七十五層コリニア市ゲートに午後一時に集合だ。では、解散」
ヒースクリフの一言で、会議室に集まっていた全員は部屋から出た
場所は変わり、ギルド黄昏の風本部
二階、ロビー
この日、ヨシアキは全員に依頼を停止させてロビーに集めた
「みんな、もう知ってると思うけど。午後一時から七十五層のボス攻略を始める」
ヨシアキの言葉に全員、沈黙して視線を向けた
「はっきり言って、今回は激戦が予想出来る。理由は三つ……まずは、クォーターポイント。今まで二十五層と五十層の攻略の時にはかなりの犠牲が出てる」
ヨシアキが指を一本立てて言うと、その場の全員は苦い顔をした
「確かにな……」
「ワシも死ぬかと思ったぞい……」
「……激戦だった」
サジとヒデ。ムッツの三人は攻略に参加した時を思い出したのか
三人揃って、苦い顔をしていた
「そして、二つ目……ムッツは知ってるけど……今回のボスの攻撃パターンは一切不明なんだ。偵察隊が全滅したからね……」
ヨシアキの言葉に、ムッツ以外の全員は息を呑んだ
「偵察隊が全滅って……」
「なんで、そんなことに……」
「転移結晶は……使えなかったんですか?」
サチ、リズベット、シリカの言葉にヨシアキは頷くと
「脱出出来なかったのは、三つ目に繋がるんだ……三つ目は、結晶無効化空間」
静かに、しかしはっきりと告げた
「結晶無効化空間!?」
「そんな……」
ミナミとミズキは、ヨシアキの言葉に顔を青ざめた
しかし、七十四層の攻略に参加した四人は落ち着いていた
「七十四層のボス部屋がそうだったんだ。これ以降も同じだろうな」
「……予想出来る」
「ですね……」
「しかし、とうとう本格的なデスゲームになってきたのう……」
ヒデの言葉に全員、暗い顔で頷いた
「そうだね……もしかしたら、この戦いで誰か倒れるかもしれない……だけど、これだけは言わせて」
ヨシアキはそこで区切ると、全員の顔を見て
「絶対に生きて帰ろう!」
「「「「「おう(はい)!」」」」」
ヨシアキの激励に全員、意気込んで返した
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
七十五層主街区コリニア 転移ゲート前
そこには既に、三十人近いハイレベルプレイヤー達が集まっていた
その中には、黄昏の風メンバーも全員居た
集まっていたプレイヤー達は各々談笑していて、おそらく、装備の確認などをやっているのだろう
その時、ゲートが光り、新たに二人現れた
その新たな二人、キリトとアスナの二人を見て、ほとんどのプレイヤーは口を閉じて背筋を伸ばした
そんなプレイヤー達を見て、キリトはキョトンとした
すると、アスナが肘でキリトを小突き
「キリト君はリーダー格なんだから、ちゃんと挨拶しないとだめだよ!」
「んな……」
ここにきて、キリトの対人コミュニケーション能力の低さが徒となっていた
アスナはKOB副団長という立場上、挨拶などはお手の物である
だがキリトは、そのほとんどをソロプレイヤーとして活動してきたので、どう言えばいいのかわからなかった
キリトは数秒間考えてから、ぎこちない仕草で敬礼した
「よう!」
そんなキリトの肩を、誰かが景気よく叩いた
キリトは聞き覚えのある声に、眉をひそめながら振り向いた
そこに居たのは、ギルド風林火山のリーダーでカタナ使いのクラインと両手戦斧使いのエギルだった
「なんだ……お前らも参加するのか」
「なんだってことはないだろう!」
キリトの言い草に、エギルは憤慨したように野太い声を上げた
「今回はえらい苦戦しそうだって言うから、商売を投げ出して加勢に来たんじゃねえか。この無私無欲の精神を理解できないたぁ……」
エギルが大げさに泣くジェスチャーをしていると、キリトが肩に手を置き
「無私の精神はよーく、わかった。だったら、お前は戦利品の分配から外しておくな」
と言うと、エギルは禿頭に手を当てて
「あ、いや、それは……」
それとこれは別問題らしい
情けなく口ごもるエギルの姿に、クラインやアスナの笑い声が聞こえた
二人の笑いは周囲に居たプレイヤー達にも伝わり、全員の緊張が少しずつ解れていった
そして、午後一時ちょうど
転移ゲートから新たに数名、現れた
真紅のマントに巨大な十字楯を携えたヒースクリフを筆頭に、血盟騎士団の精鋭部隊数名である
その姿を見て、プレイヤー達に再び緊張が満ちた
現れたヒースクリフと四人の精鋭部隊は、プレイヤー達の間を通り、まっすぐにキリト達の方へと近づいた
威圧されたクラインとエギルが数歩下がっているが、アスナは涼しい顔で敬礼している
立ち止まったヒースクリフはキリト達に軽く頷くと、集団に向き直り言葉を発した
「欠員はいないようだな。よく集まってくれた。状況は既に知っていると思う。厳しい戦いになるだろうが、諸君の力なら切り抜けられると信じている。……解放の日のために!」
ヒースクリフの演説を聞いて、周辺に居たプレイヤー達が鬨の声を上げた
すると、ヒースクリフは姿勢をキリトとヨシアキに向けて
「キリト君、ヨシアキ君、今日は頼りにしているよ。《二刀流》と《剣聖》。存分に揮ってくれたまえ」
ヒースクリフの言葉に二人は、無言で頷いた
二人が頷くと、ヒースクリフは背後に振り向き、軽く片手を上げて
「では、出発しよう。目標のボスモンスタールーム直前の場所まで、
ヒースクリフはそう言うと、腰のバックから濃紺色の結晶アイテムを取り出した
その結晶アイテムを見て、周囲のプレイヤー達からは「おお……」という、声が漏れた
通常の転移結晶は、指定した街の転移ゲート前まで使用者一人だけを転送するのみだが、ヒースクリフが持っている《
しかし、その利便性に比例して希少度もかなり高く、NPCショップでは販売していない
入手するには、迷宮区のトレジャーボックスか、強力なネームドモンスターからのドロップしかないのだ
それ故に、入手しても使おうとするプレイヤーはなかなか居ないのである
先ほどのプレイヤー達の感嘆の声は、非常にレアな回廊結晶を見たというよりは、その回廊結晶をあっさり使用すると宣言したヒースクリフに驚いたというほうが大きい
そんなプレイヤー達の視線を意に介さず、ヒースクリフは結晶を高く掲げ
「コリドー・オープン」
と、発声した
すると、持っていた
「では皆、付いて来てくれたまえ」
ヒースクリフは周囲のプレイヤー達を見渡しながら言うと、マントを翻しながら、青い光の中へと入っていった
するとヒースクリフの姿は瞬時に眩い閃光に包まれて、消えた
間を置かずに、四人のKOB精鋭部隊も続いて入っていった
気づけば、攻略プレイヤー部隊の周囲にかなりの数のプレイヤーの姿があった
ボス攻略戦の話を聞いて、見送りに来たのだ
激励の声援が飛び交う中、剣士達は手を振りながら光の中へと入っていく
すると、ヨシアキがキリトに近づいて
「先に行ってるね」
と言ってから、光の中に入った
そして、キリトとアスナの二人が最後となった
二人は小さく頷きあうと、手を繋いで同時に光の中へと飛び込んだ
何回やっても慣れない転移特有の軽い眩暈感覚の後、目の前はすでに迷宮区の中だった
かなり広い回廊の壁際には、太い柱が並んでいて、少し離れた場所には巨大な扉
七十五層迷宮区は、僅かに透明感がある黒曜石のような素材で出来ていた
以前までの荒削りの岩のような素材とは違い、鏡のように磨き上げられている黒い石が直線状に敷き詰められている
空気は冷たく湿っていて、薄い靄がゆっくりと足下を白く染めている
キリトの隣に立っていたアスナは、寒気を感じたのか、両腕で自身の体を抱いて
「……なんか……やな感じだね……」
と、キリトに視線を向けた
「ああ……」
アスナの言葉に、キリトも同意を示した
ここまでに至る二年間の間、キリト達攻略組は七十四にも及ぶ迷宮区を攻略してボスモンスターを撃破してきた
さすがに、これほどの経験を積むと、棲家を見ただけでボスモンスターの力量がなんとなく分かるようになっていた
周囲では、四十人近いプレイヤー達が三々五々固まってメニューウィンドウを開いて再度の装備やアイテムの確認をしていた
だが、その顔は一様に硬かった
キリトはアスナを伴い、一本の柱の陰に寄ると、アスナの体をそっと抱き締めた
そのタイミングで、今まで押し込めていた不安がキリトを襲い体が震えた
「……だいじょうぶだよ」
気づけば、アスナもキリトを抱きしめていて、耳元で囁いた
「キリト君は、わたしが守る」
「……いや、そうじゃなくて……」
アスナの言葉にキリトは反論しようとしたが、キリトの唇にアスナは人差し指を当てて止めた
「ふふ」
アスナは微笑むと、キリトの目を見詰めて
「……だから、キリト君はわたしを守ってね」
と、小さく首を傾げた
「ああ……必ず」
そう答えたキリトは、一回アスナの体を強く抱きしめてから離した
回廊の中央では、ヒースクリフが十字楯を音を鳴らして構えていた
「皆、準備はいいかな。今回、ボスの攻撃パターンに関しては情報がない。基本的にはKOBが前衛で攻撃を食い止めるので、その間に可能な限りパターンを見切り、柔軟に対応してほしい」
ヒースクリフの言葉に、全員が無言で頷いた
「では……行こうか」
ヒースクリフはそう言うと、無造作に黒い大扉に歩み寄って、中央に右手を当てた
その時、全員に緊張が走った
キリトは並んで立っていたエギルとクラインの背後に立ち、二人の肩を強く叩いた
それに驚いたのか、二人は弾かれるように振り返った
それを見たキリトは、笑みを浮かべて
「死ぬなよ?」
と、二人に問い掛けた
すると、クラインは笑みと共に親指を立てて
「へっ! お前こそ!」
と、笑い
エギルは、まっすぐ前を見て
「今日の戦利品で一儲けするまではくたばる気はないぜ」
と、口端を上げた
二人がそう言った直後、重い響きと共に大扉が開いていった
それを見たプレイヤー達は各々、武器を抜いた
キリトは背中から愛剣を二本同時に引き抜き、隣でアスナがランベライトを構えた
ヨシアキは左手に片手剣、右手に槍を持った
それを合図に、黄昏の風も全員武器を構えた
そして最後に、ヒースクリフが十字楯から長剣を音高く抜き、右手を高く掲げて
「……戦闘、開始!」
叫ぶと同時に、開ききった大扉をくぐっていった
それに続いて、プレイヤー達も全員、部屋の中へと突入した
部屋内部は、かなり広いドームのようだった
キリト、ヨシアキ、ヒースクリフの三人がデュエルした闘技場くらい広い
黒い壁が円弧を描いてせり上がっていて、遥か頭上で湾曲して閉じていた
三十八人が全員、無事に部屋に走り込んで自然と円陣を組んで立ち止まった
その直後、轟音を立てて大扉が閉まった
これで最早、開けることも、脱出することは出来なくなった
ボスを倒すか、攻略組が全滅するまでは……
数秒間沈黙が続き全員、広い部屋全体を見回して注意を払っていたが、ボスは現れない
「おい……」
耐え切れなくなった誰かが、声を上げた
その時だった
「上よ!!」
「上だ!!」
キリトの左右に立っていた、アスナとヨシアキが鋭く叫んだ
それに反応して、全員天井を上げた
そして、ドームの天頂に
ソレは張り付くように居た
巨大な、とてつもなく長く、大きい百足
ソレを見た瞬間、誰もがそう思った
全長は十メートルはあるだろう
複数の体節に区切られているその体は、虫よりかは、人間の背骨を彷彿させた
灰白色の円筒形をした体節の一つ一つからは、骨剥き出しの鋭い足が伸びている
その体を追っていくと、徐々に骨は太くなっていき、先頭には、凶悪な形の髑髏が付いていた
それは人の物ではなく、流線型に歪んでいる髑髏には二対四つの鋭くつり上がっている眼窩があって、その内部で青い炎が燃えていた
大きく前に突き出している顎骨からは、鋭い牙が並んでいて、髑髏の両側からは鎌状の尖った巨大な骨の腕が生えていた
視線を集中させると、黄色いカーソルが現れて、モンスターの名前が表示された
《The Skullreaper》
直訳すると、骸骨の刈り手だろう
ソレは無数の足を蠢かせながら、ゆっくりとドームの天井を這っていた
その光景に全員が度肝を抜かれて、声もなく見守っていた
その時、骨百足は不意に全ての足を大きく広げて、パーティーの中心目掛けて落ちてきた
「固まるな! 距離を取れ!!」
「総員、散開! 回避!!」
ヒースクリフとヨシアキの鋭い叫び声が立て続けに響き、凍り付いていた空気を切り裂いた
全員、我に返ったように動き出した
キリト達も骨百足の予想落下地点から慌てて離れたが、真下に居た三人のプレイヤー達の動きがほんの僅かに遅れた
どうやら、どっちに逃げればいいのか迷っているらしく、三人は足を止めて骨百足を見上げていた
「こっちだ!!」
「ぼけっとしてんじゃねぇ!!」
キリトとサジが声を張り上げると、三人は慌てて走り出した
が、その三人の背後に骨百足が地響きを立てながら落下した瞬間
床全体がまるで、大地震のように揺れて三人はバランスを崩した
骨百足はそのスキを見逃さず、人間よりも大きな鎌が、横薙ぎに振り下ろされた
三人は背後から同時に斬り飛ばされて、宙を吹き飛んだ
そして、吹き飛んでいる間にも、三人のHPバーが物凄い勢いで減っていった
安全の緑から注意を示す黄色になり、危険を示す赤に入っていき……
そして、HPバーが消えた
ゼロになった瞬間、空中を飛んでいた三人の体は無数の結晶を撒き散らして爆散した
「……っ!!」
キリトの隣でアスナが息を詰めた
キリトも、自身の体が激しく強張ったのを感じた
(一撃で……死亡だと……!?)
キリトは驚愕していた
ここSAOでは、スキル・レベル制が併用されているために、レベルが上がるにつれてHPの最大値も上がっていく
そのために、剣の腕前どうこうに拘わらず、レベルさえ高いならば、それだけで死ににくいのだ
特に、今回集められたプレイヤー達は高レベルプレイヤーだけが集められたために、たとえボスの攻撃とはいえ、数発ならば耐えられる
はずだったのだ
しかし、それが、たったの一撃で死んだ
「こんなの……無茶苦茶だわ……」
その光景を見たアスナが、かすれた声で呟いた
一撃で三人を葬った骨百足は上体を高く持ち上げると、空気を震わせるほどの雄叫びを上げて、恐怖で固まっていたプレイヤー集団目掛けて、物凄い勢いで突進した
「わあああーー!!」
その方向に居たプレイヤー達は、先ほどの光景を思い出したのか、恐慌状態に陥り悲鳴を上げて逃げ出した
だが、あっという間に骨百足は追いつき、その凶悪な鎌が振り上げられた
と、その真下に二つの影が飛び込んだ
ヒースクリフとヨシアキだ
ヒースクリフは巨大な楯を掲げて、ヨシアキは剣と槍で鎌を迎撃した
耳をつんざく衝撃音と共に、火花が飛び散った
だが、鎌は二本あるのだ
左手の鎌でヒースクリフとヨシアキを攻撃しながら、右手の鎌を振り上げて、恐慌状態のプレイヤー達に向けて振り下ろそうとした
「くそっ……!」
キリトは歯噛みしながら、飛び出した
まるで宙を飛ぶような速度で一瞬で懐に入り、轟音を立てながら振ってきた鎌を二本の剣を交差させながら受け止めた
途方もない衝撃がキリトを襲った
だが、鎌は止まらずに、火花を散らしながらキリトの剣を弾いてキリトに迫った
(だめだ、重すぎる!)
キリトが驚愕で目を見開いていると、新たに一振りの剣が空を切り裂いて現れて、下方から鎌に命中した
衝撃音がして、骨鎌の勢いが緩んだ隙にキリトは全身の力を振り絞って骨鎌を押し返した
キリトの真横に立ったアスナは、キリトを見て
「二人同時に受ければ……いける! わたしたちなら、できるよ!」
と、目に光を伴いながら言った
「……よし、頼む!」
アスナの言葉にキリトは頷いた
アスナが隣に居てくれるだけで、無限の力が湧いてくる
キリトはそんな気がした
数秒後、再び骨鎌が横薙ぎに繰り出されてきた
キリトとアスナは、同時に左斜め切り下ろし攻撃を放った
完全にシンクロした二人の剣が、二筋の光跡を引いて鎌に命中した
激しい衝撃がして、今度は骨鎌が弾き返された
「大鎌は俺達が食い止める!! 皆は側面から攻撃してくれ!」
「必ず、最低でも
キリトとヨシアキの大声で我に帰ったのか、恐慌状態に陥っていたプレイヤー達は頭を振ってから剣を構えて雄叫びと共に突撃した
数発の攻撃が骨百足に直撃して、ようやく初めてHPバーが僅かに減った
その直後、複数の悲鳴が上がった
キリトは鎌を迎撃しながら、視線を悲鳴のあった方向に向けた
そこでは、骨百足の尾の先端に付いている長い槍状の骨に数人のプレイヤー達が薙払われていた
「くっ……」
キリトは歯噛みしたが、キリトとアスナ。そして、少し離れて左側の鎌を裁いているヒースクリフとヨシアキにも余裕はなかった
「キリト君っ……!」
アスナの声にキリトは、視線をアスナに向けた
(だめだ! 向こうに気を取られると、やられるぞ!)
(そうだね……来るよ……!)
((左斬り上げで受ける!))
二人はアイコンタクトだけて意思疎通を行い、完璧にシンクロした動きで鎌を弾き返した
キリト達は、時々上がるプレイヤーの悲鳴と絶叫を無理矢理意識から締め出して迫ってくる凶悪な鎌を受けることだけに専念した
こうして、死闘は幕を開けた