よし、頑張ろう
スカルリーパーとの激戦は、一時間にも及んだ
まるで無限にも思える戦いの果てに、スカルリーパーは雄叫びを上げてその巨体を爆散させた
スカルリーパーが爆散しても、誰一人として、歓声を上げなかった
正確には、歓声を上げる余裕すらなかったのだ
全員武器も仕舞わずに、倒れるように床に座り込んだり仰向けになって荒い呼吸を繰り返していた
(終わった……の……?)
(ああ……終わった……)
その以心伝心を最後に、キリトとアスナの繋がりも終わり二人は背中合わせに座り込んだ
キリトとアスナは二人とも生き残った
だが、二人は手放しに喜べなかった
あまりにも犠牲者が出過ぎた
戦闘開始直後に三人が散った後、ほぼ一定のペースで破砕音が響き渡り、キリトは六人まで覚えていたがそこで無理矢理に止めていた
「何人……死んだ……?」
キリトの近くに座り込んで、額を斧の柄に当てていたサジが息絶え絶えに聞いてきた
壁に背中を預けて座っていたヒデは視線だけだったが、同じように問いかけていた
キリトは右手を振ってマップを表示させて、映っている
「十四人……十四人、死んだ……」
キリトは俯きながら呟いた
「……うそだろ……」
「……全員、歴戦の攻略組のプレイヤーなのに……」
キリトの言葉を聞いて、エギルとヨシアキは絶望に包まれていた
いや、二人だけではなかった
生き残っているほぼ全員が、絶望に襲われていた
今の時点で、七十五層
ようやく、四分の三なのだ
まだ二十五層も残っている
確かに、アインクラッドには約六千人のプレイヤーが居るが、攻略に動いているのは僅か数百人
一層攻略するだけでこれほどの犠牲者が出たら、百層に到達する頃には、たった一人だけということすら起きてしまう
((そうなると……生き残ってるのは、あの男だろうな……))
そう思ったキリトとヨシアキの二人は、視線を部屋の奥へと向けた
そこに居たのは、全員が床に座ったり倒れたりしているのに、一人背筋を伸ばし毅然としている紅衣の騎士
ヒースクリフだった
もちろん、ヒースクリフも無傷ではなかった
二人の視界に表示されているヒースクリフのHPバーは、かなり減っていた
ヒースクリフは、キリトとアスナが二人掛かりで捌いていた鎌をほぼ単独で捌ききっていた
ヨシアキは周囲への細かい指示と、フォローに回っていたた
だが、その姿に疲労は感じられなかった
驚くべき精神力だろう
キリトとヨシアキは、疲労で鈍くなった意識のまま、ぼーっとヒースクリフの顔を見ていた
ヒースクリフの表情は穏やかだった
穏やかな顔で、床に座り込んでいるKOBの団員や他の生き残ったプレイヤー達を見渡していた
暖かく、慈しみの視線
言うなれば、まるで精緻な模型で遊んでる子ネズミの群れを見ているように……
その考えが頭に浮かんだ瞬間、キリトとヨシアキに戦慄が走った
二人の意識は一気に覚醒して、全身が急速に冷えた
二人の中に生まれた、ある予感と微かな発想がみるみる強くなり、疑念が大きくなった
((ヒースクリフのあの視線、あの穏やかな表情……あれは傷ついた仲間を労る顔じゃない……ヒースクリフは俺〈僕〉達と同じ場所に立ってない。あれは、遥か高みから慈悲を垂れる神の顔だ……))
二人は、以前ヒースクリフとデュエルした時のことを思い出した
キリトは、ヒースクリフがSAOシステムに許されたプレイヤーの限界速度を超えた速さを
ヨシアキは、自分の繰り出した攻撃の防がれかたを
そして、ヒースクリフの日頃の態度
最強ギルドのリーダーなのに、自ら命令を出さないで他のプレイヤー達に全てを任せて、見守り続けていた
それは、配下を信頼していたからではなく……一般のプレイヤー達は知らないことを知ってることからの自制だったのでは?
デスゲームに縛られない存在
だけど、NPCではない
単なるプログラムには、あのような慈悲に満ち溢れた顔は出来ない
NPCでもなく一般のプレイヤーでもないなら、残された答えは一つだけ
だが、それをどうやれば確認できるのか……
確認する方法は、たった一つだけ
二人はヒースクリフのHPバーを見つめた
激戦をくぐり抜けたから、HPは大きく減少していた
だが、それでも半分を下回っていない
本当にギリギリだが、ブルー表示を保っていた
この二年間、ただの一度とて
誰も寄せ付けないその圧倒的防御力
そのヒースクリフがキリトとデュエルした時、表情が動いたのだ
それは、HPが半分を下回ろうとした直前だった
もしそれが、HPがイエローゾーンに入ることに恐れたのではないとしたら?
その答えは……
キリトとヨシアキの二人は同じことを考えたらしく、互いの顔を見ると頷いた
キリトは左手の剣を握り直し、ほんの僅かだが、少しずつ右足を引いて、腰を少し落として低空ダッシュの姿勢を取った
ヨシアキは右手の槍を背中に戻し、太腿《ふともも》に装備されてる投剣を握って片膝立ちの姿勢を取った
その二人の動きに気づいてないらしく、ヒースクリフは穏やかな視線で打ちひしがれているKOB団員のみを見ていた
もし仮に、二人の予想が外れていたら、二人は
そう思った二人は心中で、謝った
キリトは隣に座っていたアスナを、ヨシアキはギルドメンバーを見た
その時、アスナやサジ達の顔もキリト達に向いた
「キリト君……?」
「どうした、ヨシアキ……?」
「何事じゃ……?」
それぞれが二人を見ると、二人が何をしようとしてるのか察したらしく、ハッとして口を開こうとした
だが、その時にはすでにキリトはダッシュを、ヨシアキは投擲を始めていた
その時になってようやく、ヒースクリフは二人の行動に気づき、その顔を驚愕に染めながら流石の反応速度で左手の盾を構えた
その盾により、ヨシアキの投剣は弾かれたが、キリトがヒースクリフの胸目掛けて、片手剣基本突進技の〈レイジスパイク〉を発動させた
もし直撃しても、ヒースクリフのHPはギリギリでイエローゾーン止まりだろう
しかし、キリトの剣はヒースクリフの胸に当たる寸前で見えない障壁に阻まれた
キリトの腕に激しい衝撃が伝わり、紫色の閃光が炸裂した
そして、キリトとヒースクリフの間に紫色のシステムカラーでメッセージが表示された
それは【Immortal Object】という、普通のプレイヤーは決して得られない不死を意味するタグだった
キリトとのデュエルの時、ヒースクリフはこのことが発覚することを恐れたのだ
「キリト君、なにを……」
「ヨシアキ、お前な……」
二人の突然の攻撃に驚き、アスナやサジ達が二人に駆け寄ったが、ヒースクリフの前に表示された文字を見て全員固まった
数秒間、キリトやヨシアキ。ヒースクリフを含めた全員黙っていた
そして、表示されていたメッセージがゆっくりと消えた
キリトは剣を引いて、軽くバックステップして距離を取り、ヨシアキは立ち上がって剣を構えた
固まっていたアスナは、数歩下がってキリトの右横に並ぶと
「システム的不死……? ……って……どういうことですか……団長……?」
戸惑った様子で、ヒースクリフに問いかけるが、ヒースクリフは答えず、厳しい視線でヨシアキとキリトの二人を見据えていた
すると、キリトが右手の剣をヒースクリフに向けて
「これが、伝説の正体だ。この男のHPはどうあろうと、
キリトが言い終わると、それを継いでヨシアキが口を開いた
「……
そして二人は、紅衣聖騎士を見つめて
「「《他人のやってるRPGを傍から眺めるほど詰まらないことはない》……そうだろう、茅場晶彦!」」
その名を叫ぶように告げた
二人がその名を言った瞬間、周囲の空気が凍りついた
ヒースクリフは無表情のまま、二人をじっと見つめていた
周りのプレイヤー達は、身動き一つすら出来なかった
数瞬後、アスナがゆっくりと前に出て
「団長……本当……なんですか……?」
と感情が欠落した瞳で見ながら、掠れるように問いかけた
しかし、ヒースクリフはアスナからの問いかけに答えず、小さく首を傾げると
「……なぜ気付いたのか、参考までに教えてもらえるかな……?」
と、二人に問いかけた
「……俺が最初におかしいと思ったのは、例のデュエルの時だ。最後の一瞬だけ、あんた余りにも速過ぎたよ」
キリトがそう言うと、ヒースクリフはゆっくりと頷いて
「やはりそうか。あれは私にとっても痛恨事だった。君の動きに圧倒されて、ついシステムのオーバーアシストを使ってしまった」
そう言ってから、ヨシアキに視線を向けて
「それで、ヨシアキ君は?」
と聞いた
「僕も、あなたとのデュエルの時です。あなたは僕の放った〈グン・グニール〉を盾ではなく、剣で弾いた。あれは技の軌道を知らないと出来ない芸当です」
ヨシアキの言葉にヒースクリフは、ああと言って
「そういうことか。流石に予想外だったな……」
と言ってから、初めて表情を見せた
唇の片端を歪めて、ほのかな苦笑を浮かべた
「予定では、攻略が九十五層に達するまでは明かさないつもりだったのだがな」
ヒースクリフそう呟くと、ゆっくりと周囲のプレイヤー達を見回して、超然とした笑みを浮かべ
「……確かに私は茅場晶彦だ。付け加えれば、最上階で君たちを待つはずだったこのゲームの最終ボスでもある」
周囲のプレイヤー達に、驚愕の事実を堂々と告げた
「……趣味がいいとは言えないぜ。最強のプレイヤーが一転最悪のラスボスか」
「だね……」
キリトの言葉にヨシアキが同意すると、ヒースクリフは面白そうに
「なかなかいいシナリオだろう? 盛り上がったと思うが、まさかたかが四分の三地点で看破されてしまうとはな。……君たちは
このゲーム、ソードアート・オンラインの開発者にして、一万もの人間の精神を虜囚にした男、茅場晶彦は薄い笑みを浮かべて肩をすくめた
聖騎士ヒースクリフとしての見た目は、現実の茅場晶彦とは全然違った
だが、その無機質で金属的な気配は、二年前にキリト達の上に現れた無貌のアバターと共通する点があった
茅場は笑みを浮かべたまま、再び口を開いた
「……最終的に私の前に立つのは、君たちだと予想していた。全十種存在するユニークスキルのうち《二刀流》スキルは全てのプレイヤーの中で最大の反応速度を持つ者に与えられ、《剣聖》スキルは十種類の剣を使いこなさないと現れない。そして、この二人は魔王に対する勇者の役割を担うはずだった。勝つにせよ負けるにせよね。だが、君たちは私の予想を超える力を見せた。攻撃速度といい、その洞察力といい、な。まあ……この想定外の展開もネットワークRPGの醍醐味と言うべきかな……」
茅場が言い終わると同時に、凍りついたように動きを止めていたプレイヤーの一人がゆっくりと立ち上がった
KOB精鋭部隊の隊長役を担っていた、幹部の男だった
朴訥そうな細い目に、凄惨な苦悩の光を宿していた
「貴様……貴様が……俺達の忠誠を……希望を……よくも……よくも……」
巨大な
「よくもーーーッ!!」
止める間すらなく、絶叫しながら地を蹴っていた
大きく振りかぶった斧槍が、茅場へとせまり……
だが、そんな男の動きよりも茅場のほうが早かった
《左手》を振り、出現したウィンドウを手早く操作すると、突撃していた男の体が空中で止まり、そのまま床に音を立てて落ちた
視界に表示されているHPバーの周囲に、緑色の枠が点滅していた
麻痺状態の証だった
そんな男を気にせずに、茅場はそのままウィンドウを操作し続けた
その直後
「あ……キリト君……っ」
「ぐおっ!」
「むぅっ……」
「……ぐっ!」
という声が聞こえて、キリトとヨシアキは振り返った
そこでは、アスナや黄昏の風メンバー
更には、生き残っていたプレイヤー達全員が倒れていた
全員、麻痺状態を示す緑色の枠が点滅していた
キリトは剣を背中に戻すと、アスナを抱き起こし、ヨシアキはメンバーに駆け寄って、二人同時に茅場を見上げて
「……どうするつもりだ。この場で全員殺して、隠蔽する気か……?」
「もしそうなら、僕達が全力で阻止する……」
と聞くと、茅場は首を振り
「まさか。そんな理不尽な真似はしないさ。こうなっては致し方ない。予定を早めて、私は最上層の《紅玉宮》にて、君たちの訪れを待つことにするよ。九十層以上の強力なモンスター群に対抗し得る力として育ててきた血盟騎士団、そして攻略組プレイヤーの諸君を途中で放り出すのは不本意だが、何、君たちの力なら、きっと辿り着けるさ。だが……その前に……」
茅場はそこで言葉を区切り、圧倒的な意志力を感じさせるその両目で、キリトとヨシアキを見つめた
その後、右手に持っていた剣を軽く黒曜石の床に突き立てた
それにより、高く澄んだ金属音が周囲に響いた
「キリト君、ヨシアキ君。君たちには私の正体を看破した
茅場の言葉を聞いた瞬間、キリトの腕の中でアスナが動かない体を必死に動かして
「だめよキリト君……! あなた達を排除する気だわ……今は……今は引きましょう……!」
と、キリトに懇願するように言い、黄昏の風メンバーは
「アスナの言う通りだ……! 今、お前達が死んだら、ヒースクリフに勝てなくなる!」
「戻るのじゃ!」
「……チャンスを待とう!」
「アキ!」
「ヨシアキ君!」
「ヨシアキさん!」
全員が必死な様子で、戻るように促していた
二人の理性も、全員の意見の正しさを認めていた
茅場は、システムそのものに介入できる管理者である
口ではフェアな戦いと言ってるが、どのような操作をするか判らなかった
だからここは一旦退いて、全員で意見を交換して議論を重ねるべきだと判っている
だが、二人は茅場の言った言葉が頭に来ていた
血盟騎士団を育ててきた? きっと辿り着ける……?
「「ふざけるな……」」
二人の口からは、無意識のうちに声が漏れていた
茅場は、自分の創造した世界に一万人もの精神を幽閉して、そのうち約四千人もの意識を電磁波で焼き殺すに飽きたらず、自分のシナリオ通りにプレイヤー達が必死にもがく様子を、すぐそばで見ていた
ゲームマスターとしては、これ以上の快感はないだろう
キリトは二十二層で聞いたアスナの過去を、ヨシアキはホームで聞いたシリカやリズの話を思い出した
世界創造の快感のために、彼女達の心を何度も傷つけ、血と涙を流させた茅場を目の前にして、二人には退くことなど無理だった
「いいだろう。決着をつけよう」
「望むところです」
二人はゆっくりと頷いていた
「キリト君……っ!」
アスナの叫びに、キリトは腕の中のアスナに視線を向けた
キリトの胸に、痛みが走ったが、なんとか笑みを浮かべ
「ごめんな。ここで逃げるわけには……いかないんだ……」
キリトの言葉にアスナは何か言おうとしたのか、一旦口を開いたが、閉じて、代わりに必死に笑みを浮かべて
「死ぬつもりじゃ……ないんだよね……?」
「ああ……必ず勝つ。勝ってこの世界を終わらせる」
「解った。信じてる」
キリトは少し長くアスナの右手を握ると、ゆっくりとアスナを横たえて立ち上がった
その時、ヨシアキは
「落ち着け、ヨシアキ!」
「……勝ち目なんてないっ!」
「そうじゃ!」
全員から呼び止められていたが、ヨシアキは首を振って
「ごめんね。これは僕のエゴなんだ……皆と帰りたいっていう……」
ヨシアキはそう言うと、立ち上がった
そして二人は、ほぼ同時に剣を抜いた
「キリト! やめろ……っ!」
「キリトー!」
キリトが声の方向を見ると、エギルとクラインが必死に体を起こそうとしながら叫んでいた
キリトは二人の方に体を向けると、最初にエギルに
「エギル。今まで、剣士クラスのサポート、サンキューな。知ってたぜ、お前が儲けのほとんど全部、中層ゾーンのプレイヤー育成につぎ込んでたこと」
キリトの言葉にエギルは目を見開き、涙した
キリトは続いて、クラインに視線を向けた
クラインは無精髭の浮いている頬を震わせて、言葉を探すように呼吸を繰り返していた
その両目をまっすぐ見て、キリトは喉が詰まり、声を揺らしながら
「クライン……あの時、お前を……置いていって、悪かった。ずっと後悔していた」
キリトが掠れた声でそう言うと、クラインの両目から涙が溢れ、次々と床に落ちた
「て……てめぇ! キリト! 謝ってんじゃねえ! 今謝るんじゃねえよ!! 許さねえぞ! ちゃんと
クラインは泣きながら、必死に起き上がろうともがきながら叫んだ
「解った。約束するよ。次は、向こう側でな」
キリトはそんなクラインに対して、右手の親指を突き立てた
そして、キリトはアスナを見詰めて、胸中で謝りながら茅場に体を向けた
そして、超然とした表情の茅場に対して口を開いた
「……悪いが、一つだけ頼みがある」
「ほう? 何かな?」
「簡単に負けるつもりはないが、もし俺が死んだら……しばらくでいい、アスナが自殺できないように計らってほしい」
茅場が意外そうに片眉を上げると、ヨシアキも
「僕もお願いします。ギルドの皆を自殺できないようにしてください」
と、キリトに続いた
すると茅場は、無造作に頷いて
「良かろう。彼女とメンバーはセルムブルグから出られないように設定しよう」
「キリト君、だめだよーっ! そんなの、そんなのないよーーっ!」
「ふざけんじゃねぇぇ! 戻れヨシアキー! くそったれがぁぁぁ! ヒースクリフーー!」
「戻れ! 戻るのじゃああぁ!」
「……ヨシアキっ!」
「アキ!」
「ヨシアキ君!」
「ヨシアキさん!」
二人の背後から、涙混じりのアスナの絶叫とサジの怒りの叫び
そして、泣くような呼び掛けが聞こえてきた
だが、二人は振り返らなかった
二人は剣を構え、茅場を睨んだ
茅場は左手を動かして、再びウィンドウを操作した
すると、二人と茅場のHPが同じ長さに調整された
レッドゾーンギリギリ手前、強攻撃がクリーンヒットしたら、一発で終わる位置で
更に、茅場の頭上に【changed into mortal object】
不死属性を解除したというシステムメッセージが表示された
茅場そこっウィンドウを消して、床に突き刺していた剣を抜いて十字盾の後ろに戻した
二人の意識は冷たく澄んでいた
二人は胸中で心配してくれた全員に謝った
そして、謝った後は一旦目を閉じて、開けたら、二人の心を闘争本能が凍らせて、意識を研ぎ澄ましはじめた
勝算は、実のところ何とも言えなかった
前回のデュエルでは、剣技に限れば、茅場より劣るという感触は、二人にはなかった
だが、茅場の言う【オーバーアシスト】
それを使われたら、二人でも負ける
戦いの全ては、茅場のプライドにかかっていた
口ぶりから判断するならば、茅場は《神聖剣》の性能の範囲内で二人に勝とうとするはずだ
その隙を突いて、短期決戦に持ち込むしか二人に生きる道はない
三人の間で、緊張感が徐々に高まっていく
空気すらも、そのプレッシャーに震えているような感覚すら二人にはあった
((これはデュエルじゃない……単純な殺し合いだ……そうだ……俺(僕)は、あの男を……))
「「殺す……っ!!」」
鋭い呼気と共に吐き出すように言いながら、二人は床を蹴っていた
こうして、運命の戦いの火蓋は、切って落とされた