ソードアート・オンライン 黄昏の剣士   作:京勇樹

25 / 201
遅くなりました
仕事が始まって、なかなか書く暇がないんです
しかも、社内ではインフルエンザが大流行
パンデミックですよ


出会い

「フムグっ!?」

 

彼、影妖精(スプリガン)のキリトは顔面から着地していた

 

彼、キリトこと桐ヶ谷和人が居るのは、ALOことアルヴヘイム・オンラインというVRMMOである

 

なぜ、彼がこの世界に居るのか

 

それは、2024年11月末にSAOから解放されてからである

 

史上初にして史上最悪のVRMMO事件

 

SAO事件に巻き込まれた一万人のうち、生き残った約六千人の人間は無事に解放される筈だった

 

しかし、事件が解決して2ヶ月が経過するというのに、未だに約三百人もの人達が眠り続けているのだ

 

当初、この現象は一斉解放のタイムラグと予想されたが、一日経ち、二日経ったが目覚めなかった

 

調査しようにも、稼動しているSAOの一部メインサーバーはブラックボックスと化して、調べようがなかった

 

そして、その三百人の中に桐ヶ谷和人の恋人

 

結城明日菜の姿も有った

 

政府の役人達が手を尽くす中、和人はどうしていいか分からず、それでも毎日、明日菜の病室を訪れていた

 

そして先日、明日菜の病室に明日菜の父親で総合電子機器メーカー《レクト》のCEOの結城彰三(ゆうきしょうぞう)と明日菜の婚約者と名乗る男、須郷伸之(すごうのぶゆき)が現れた

 

そして和人は、須郷の言葉に絶望して失意に呑まれてしまった

 

そんな和人を励ましたのは、和人の妹の直葉だった

 

そして今日の朝、エギルことアンドリュー・ギルバート・ミルズから来たメールに添付された写真を見て、和人は居ても経っても居られず、彼と奥さんが経営する喫茶店に向かった

 

そして、彼が出したコーヒーを一口飲んで写真について問い掛けた

 

その理由は、写真に写っていたのは明日菜によく似ていたからだった

 

そして、その写真はALOで撮影されたことがわかった

 

さらに、そのALOがレクトの須郷が責任者を勤めるVR部門ということ

 

そして和人は、病室での須郷の言葉を思い出した

 

そして、和人は彼からソフトを貰い自宅に帰ると無理を言って手元に残していたナーヴギアを使ってログインしたのだ

 

「あ、あった……」

 

メニューウィンドウを開いた和人ことキリトは、SAOと違ってログアウト機能があることを確認した

 

理由としては、キリトが選んだ影妖精は本来だったら遺跡がホームタウンとして始まるはずだったが、何故か空中に放り出されて森の中に落下した

 

そのことを不安に感じたキリトは、最初にそれを確認した

 

そして、スキル一覧を開いて固まった

 

「な、なんだこれ!?」

 

そこには、始めたばかりでは有り得ないスキル熟練度が表示されていた

 

「ん? 待てよ……見覚えがあるな……」

 

だがよく見ると、そのスキル熟練度には見覚えがあった

 

「あ……これ、SAOで鍛えた数値だ……」

 

その数値は、キリトがSAOで二年間に渡って鍛えたスキルだった

 

なぜ、SAOで鍛えたスキル熟練度がALOで反映されているのか

 

そのことに首を傾げながら、キリトはアイテム一覧を開いた

 

「うわ……文字化けだらけだ……」

 

そこに表示されているのは、文字化けばかりだった

 

そしてキリトは、あることを思い出して縋る思いでアイテム一覧を下にスクロールしていった

 

(頼む……無事であってくれ……)

 

そう思いながら、スクロールしていたその時だった

 

文字化けばかりの文字群の中に、MHCP01の文字があった

 

それを見つけ出したキリトは、震える指でその部分をダブルタップしてオブジェクト化して再び叩いた

 

その直後、涙形の宝石が光りだして一人の少女の姿を作り出した

 

「俺だよ……ユイ。解るか……?」

 

そこまで言って、キリトはハッとした

 

今のキリトの姿は、SAOとは全然違う

 

キリトがそう危惧していると、ユイは微笑んで

 

「また、会えましたね。パパ」

 

と言った直後、ユイは大粒の涙を流しながら、キリトの胸に飛び込んだ

 

「パパ……パパ!!」

 

ユイは何度もパパと呼びながら、キリトの胸の中で泣いた

 

そしてキリトも、現実世界に帰還してから初めて、もう一度、アスナと出会って、SAOでのたった三日間経験した生活を取り戻せると確信した

 

◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

 

少しして、落ち着いた二人は近くに有った木の切り株に腰掛けた

 

「でだ……どうなってんだ、これ?」

 

キリトの言葉にユイは首を傾げた

 

「いや、ここSAOの中じゃないんだよ、実は……」

 

キリトはユイが消されそうになってからのことを、かいつまんで説明した

 

サーバーから消されそうになったユイを圧縮して、クライアント環境データの一部として保存したこと、ゲームクリアと同時にアインクラッドの消滅と新たな世界のアルヴヘイム

 

そのALOに何故か存在しているSAO時代のキリトのスキル熟練度

 

だがキリトは、未だに目覚めていないアスナのことだけは話せなかった

 

キリトの話を聞いたユイは、指を顎に当てて数瞬考えると

 

「ちょっと待ってくださいね」

 

ユイはそう断ると、自身の額とキリトの額を合わせた

 

数秒後、ユイは閉じていた目を開くと

 

「ここは……この世界は《ソードアート・オンライン》サーバーのコピーだと思われます」

 

「コピー……?」

 

ユイの言葉に、キリトは首を傾げた

 

「はい。基幹プログラムやグラフィック形式は完全に同一です。わたしがこの姿を再現出来ていることからも、それは明らかです。ただ、カーディナル・システムのバージョンが少し古いですね。その上に乗っているゲームコンポーネントはまったく別個のものですが……」

 

「ふむう……」

 

ユイの言葉を聞いたキリトは考え始めた

 

(このアルヴヘイム・オンラインがリリースされたのは、SAO事件の十二ヶ月後……アーガスが消滅し、事後処理をレクトが委託されたしばらく後だ。アーガスの技術資産をレクトが吸収したということになれば、それをそのまま流用して新規のVRMMOゲームを立ち上げるということは充分考えられる……ゲームの根幹たる全感覚シミュレーション/フィードバック・プログラムを出来合いで済ませれば、開発費は大幅に抑えられるだろう……俺がこの世界の精度をSAO並だと驚いたことも、至極当然の話だったんだ……つまり、ALOがSAOのコピーシステムで動いている、という話は理解出来る。だけど……)

 

キリトはそこまで考えると、考えるのをやめて

 

「でも……何で俺個人のデータがここにあったんだろう……」

 

と、呟いた

 

「ちょっとすいませんね」

 

ユイはそう言うと、再び額を合わせた

 

「これは……これは間違い無く、SAO時代のパパのデータです。フォーマットが同じなために、上書き出来る部分は上書きしたみたいです。ただ、HPやMP、エクストラスキルは違うみたいで、上書きされなかったみたいですね」

 

ユイの説明を聞いたキリトは納得した

 

確かに、スキル一覧にはSAOの時に習得した二刀流が無かった

 

「所持アイテムは……破損してしまっているようですね。このままではエラー検出プログラムに引っかかると思います。アイテムは全て破棄したほうがいいです」

 

「そうか、なるほどな」

 

ユイの言葉に頷くと、キリトはアイテム一覧の文字化け部分を一括指定した

 

その中には、アインクラッドでの思い出の品もあるだろう

 

だが、こうなってしまってはわからない

 

ゆえにキリトは意を決して、消去ボタンを押した

 

それにより、アイテム一覧に残ったのは如何にも初期装備といった貧弱な片手剣と今着ている服だけとなった

 

それを確認したキリトは、大きく息を吐くと

 

「にしても……このスキル熟練度はどうしたもんか……」

 

と首を傾げた

 

「確かに、プレイ時間から考えると異常ですが、直接GMが確認しない限りは大丈夫でしょう」

 

ユイの言葉に、キリトは苦笑いすると

 

「こりゃ、ビーターって言うよりも、チーターだな」

 

と呟いた

 

(だけど、キャラクターが強力なことに越したことはない。俺はこれから、世界樹とやらに登って、アスナを探し出さないといけないんだ……まっとうにゲームをプレイする気はもとよりない)

 

アスナが写っていた写真が撮影されたのは、ALO内の中央に存在する世界樹であった

 

このALOはスキル重視、PK推奨というハードな仕様なのだ

 

だというのに、なぜ人気なのか

 

それは、この世界では飛べるからである

 

そもそも、アルヴヘイムというのは妖精を意味している

 

ゆえに、プレイヤーの背中にある羽を使って飛べるのである

 

人というのは、自身で出来ないことを求める性分である

 

魔法然り、飛行然り

 

飛行機とて、そういった願いから作りだされたのである

 

ゆえに、ゲームの世界で空を飛び回りたいと願うのは自然なことだった

 

だが、その飛行には制限があるのだ

 

ゆえに、この世界のグランドクエストは世界樹の攻略なのである

 

正確には、世界樹の根元にあるドームを突破して世界樹の頂上に存在するという空中都市に登って、そこに居る妖精王に謁見して最上位妖精になり、飛行制限を解除するのだ

 

そして、キリトはステータス一覧を眺めていて気づいた

 

ALOではSAOと違って、キャラクターの数値的強さはあまり重視されていないのだ

 

SAOでは存在していた敏捷力や筋力のパラメーターは存在せず、HPやMPの上昇値も微々たるものだ

 

各種武器スキルは上昇しても、装備できる武器の種類が増えるのみで威力には一切影響しない

 

もちろん、SAOで最大の特徴であった各種ソードスキルも存在しない

 

つまりは、このALOではプレイヤー本人の動きと判断力が強さを決定するというアクション重視に作られたゲームなのだ

 

SAOのように、圧倒的にレベルの低い敵ならば、棒立ちで斬られるがままになってもHPはさして減らない、ということはないだろう

 

キリトにとって未知数なのは、SAOでは排除されていた《魔法》である

 

スプリガンの初期スキル欄には《幻属性魔法》というのが明記されているが、どういうものなのかは使うか食らってみないと、キリトには分からなかった

 

そして、キリトはふと気になって、まるで猫のように胸に顔をグリグリとしているユイを見下ろして

 

「そういえば、ユイはこの世界でどういう扱いになってるんだ……?」

 

ユイの正体は人間ではなく、SAOのケアプログラムが異常変化を起こして、それにより誕生した人工知能、ようは《AI》である

 

2025年現在、幾つかの研究所が《限りなく知能に近い人工知能》を発表している

 

プログラムの《知性的振る舞い》は、突き詰めていくと見かけ上は擬似的な知能と真の知能との境目が曖昧になっていき、今現在ではそういった境界上のAIがもっとも先進的なAIとされている

 

ユイはそのような存在なのかもしれないし、あるいは最初に誕生した真のAIなのかもしれない

 

だが、キリトにとってはどうでもよかった

 

キリトはユイを愛しているし、ユイもキリトを慕っている

 

二人にとっては、それで十分だった

 

「えーと、このアルヴヘイム・オンラインにもプレイヤーサポート用の疑似人格プログラムが用意されているようですね。《ナビゲーション・ピクシー》という名称ですが……わたしはそこに分類されています」

 

そう言うとユイはキリトから離れて、ムムムと難しい顔をした

 

その直後、ユイの体が一瞬強く発光して、キリトが目を細めると消えた

 

「お、おい!?」

 

キリトは慌てて声を上げながら立とうとしたが、その時に膝の上にちょこんと立っている存在に気づいた

 

身長は約十センチほどで、ライトマゼンタの花びらのようなミニワンピースを着た小さいユイが居た

 

背中には半透明の羽が一対に、耳は尖っている

 

まさしく、妖精と呼べる愛らしい姿である

 

「これがピクシーとしての姿です」

 

座っていたユイはキリトの膝の上で立ち上がって、両手を腰に当てて、羽をピコピコと動かしながら告げた

 

「おお……」

 

キリトはやや感動した様子で、ユイのほっぺたを指先でつついた

 

「くすぐったいですよー」

 

そうユイは言いながらキリトの指を押さえると、シャランと効果音を立てながら、キリトの目の高さまで舞い上がった

 

「……それじゃあ、前と同じように、管理者権限もあるのか?」

 

SAOでは、ユイには管理者権限があったことを知っていたキリトは、ユイに問い掛けた

 

すると、ユイはシュンとして

 

「いえ……できるは、リファレンスと広域マップデータへのアクセスくらいです。接触したプレイヤーのステータスなら確認できますが、主データベースには入れないようです……」

 

と、落ち込んだ様子で俯いた

 

「そうか……実はな……」

キリトはそこで一旦区切り、意を決すると、ユイを見つめて

 

「ここに、アスナが……ママが居るらしいんだ……」

 

ALOに来た理由を告げた

 

「えっ……ママが……!?」

 

キリトの言葉を聞いたユイは、目を見開いて固まった

 

数秒後、持ち直したユイは、キリトの目を見つめて

 

「どういうことですか……?」

 

と、キリトに問い掛けた

 

「っ……」

 

キリトは須郷のことから説明しようと口を開いたが、寸前で思いとどまった

 

かつて、SAOでユイが崩壊しかけた理由を思い出したのだ

 

SAOは茅場の思想により、クリアするまで脱出不可能のデスゲームと化した

 

その世界でユイは、プレイヤーのメンタルヘルスケアをするために開発されたのだが、茅場が正式スタート直前にユイに対して

 

《プレイヤーへの直接的接触を禁ずる》という命令を出した

 

それが理由で、ユイは負の感情が爆発しているのにも関わらず、それの監視しか出来ないという矛盾した状況が発生したのだ

 

そして、そんな状況が二年間も続いた結果、ユイは崩壊寸前まで追い詰められてしまったのだ

 

それを考えると、深い理由まで話したら、またユイが追い詰められてしまうのではないか? という懸念がキリトの脳裏をよぎったのだ

 

「……アスナは、SAOサーバーが消滅しても現実に復帰していないんだ。俺はこの世界でアスナに似た人を見たという情報を得て、ここにやってきた。もちろん、他人の空似かもしれないんだけど……藁にもすがる、ってやつかな……」

 

キリトの言葉を聞いたユイは、驚愕で目を見開き、ワンピースをギュッと握りしめて

 

「……そんなことが……ごめんなさいパパ、わたしに権限があれば、プレイヤーデータを走査してすぐに見つけられるのに……」

 

ユイが声を震わせながら言うと、キリトはユイの小さい頭を優しく指先で撫でて

 

「いや、大体の居場所は見当が付いてるんだ。世界樹……とか言ってたな。場所、判るかい?」

 

と問い掛けると、ユイはキリトの指先を掴みながら顔を上げて

 

「あ、はい。ええと……ここから大体、北東の方向ですね。でも、相当に遠いです。リアル距離置換で五十キロメートルはあります」

 

「うわ、そりゃ遠いな。アインクラッドの基部フロアの五倍か……そういえば、なんで俺はこんな森にログインしたんだ?」

 

ユイの言葉にキリトは驚くと、この世界に来た時のことを思い出した

 

キリトの選んだスプリガンは本来だったら、遺跡都市という場所から始まるはずであった

 

だが、アバターを作ってログインした途端、突如チュートリアル空間が割れて今居る森の上から落ちてきたのだ

 

「さあ……位置情報も破損したのか、あるいは近傍の経路からダイブしているプレイヤーと混信したのか、何とも言えません」

 

キリトの言葉を聞いたユイは、首を傾げてからそう告げた

 

「どうせなら、世界樹の近くに落ちてくれればよかったのにな。うーん、そういえば、ここでは飛べるって聞いたなぁ……」

 

キリトはそう言うと、立ち上がって肩越しに背中を見た

 

するとそこには、黒い半透明の羽根があった

 

「おお、羽根がある……どうやって飛ぶんだろ」

 

羽根を見たキリトは喜ぶが、すぐに首を傾げた

 

キリトはマニュアルを読まないタイプなのだ

 

すると、ユイがキリトの目の前まで上がり

 

「補助コントローラーがあるみたいです。左手を立てて、握るような形を作ってみてください」

 

ユイの言葉に従い、キリトは左手を動かした

 

すると、キリトの左手に簡単なジョイスティックのようなオブジェクトが現れた

 

「えと、手前に引くと上昇、押し倒すと下降、左右で旋回、ボタン押し込みで加速、離すと減速となっていますね」

 

飛び疲れたのか、ユイはキリトの肩に座るとそう説明した

 

「ふむふむ」

 

ユイの説明を聞いたキリトは、スティックをゆっくりと手前に倒した

 

すると、背中の羽根がピンと伸びて仄かな燐光を放ち始めた

 

それを確認したキリトは、そのままスティックを引き続けた

 

「おっ?」

 

その時、キリトの体がフワリと浮いた

 

そのままゆっくりとした速度で、森の中を上昇していき、一メートルほど浮いた位置でスティックを戻して、次にてっぺんのボタンを押し込んだ

 

すると、体がまるで滑るように前に移動した

 

その後も様々な操作をしていくうちに、キリトは簡単き操作を覚えた

 

以前に遊んでいた飛行系VRゲームより、単純だったからだ

 

「なるほど、大体わかった。とりあえず……基本的な情報が欲しいよな……ユイ、一番近くの街って、どこだ?」

 

「西のほうに《スイルベーン》という、街がありますね。そこが一番……あっ……」

 

キリトに説明していたユイが、突然ある方向を見た

 

「ユイ、どうした?」

 

キリトが問い掛けると、ユイは見ていた方向を指さして

 

「プレイヤーが接近してきてます。三人が一人を追っているようですが……」

 

「おお、戦闘中かな? 見に行こうぜ」

 

ユイの言葉を聞いたキリトは、野次馬根性を発揮してウズウズとした様子でその方向に体を向けた

 

「相変わらず、パパはのんきですねぇ」

 

そんなキリトを見たユイが呆れた様子で呟くと、キリトは指先でユイの頭を軽く小突いた

 

そして、ふと思い背中の片手剣を抜いて数回振って確かめてみた

 

「うわあ……なんかチャッチイ剣だなぁ……軽いし……まぁいっか……」

 

そう言うと、キリトは剣を戻して再びスティックを出現させて握った

 

「ユイ、先導頼む」

 

「了解です」

 

ユイは小さく頷くと、キリトの胸ポケットに入り方向を指さし、キリトはユイの先導に従って飛行を始めた

 

◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

 

少し離れた場所では、一人のシルフ族の少女

 

リーファが三人のサラマンダー族に追い詰められていた

 

リーファは当初、他のシルフ族の仲間達とパーティーを組んでダンジョンに潜っていた

 

そしてある程度、お金とアイテムが集まったのでシルフ族の首都に戻ろうとしたが、ダンジョンから出た直後にサラマンダー族の部隊に遭遇

 

なんとか逃げてきたが、今や、リーファだけになってしまった

 

しかも、先ほどサラマンダーの火炎弾魔法を背中に食らったために羽根が使えなくなってしまった

 

相手は三人。しかも、一人は高位の魔法を使えるようだ

 

どう考えても、絶体絶命のピンチだった

 

「手こずらせてくれるじゃねーの!」

 

右端に居た男が、兜のパイザーを跳ね上げながら興奮した様子で言った

 

すると、中央に居るリーダー格の男が

 

「悪いが、こっちも任務だからな。金とアイテムを置いていけば、見逃す」

 

と、落ち着いた様子で言うが、左側の男が、パイザーを跳ね上げて暴力的な光を宿した瞳でリーファを見ながら

 

「なんだよ! シルフ族の女なんて、久しぶりじゃん! 殺そうぜ!」

 

と語った

 

どうやら、暴力に酔ってるようである

 

そのサラマンダーの発言を聞いたリーファは、眉をひそめて

 

(最低なマンダーね……)

 

と、内心で毒づいた

 

マンダーというのは、サラマンダーの略称である

 

リーファの一年のプレイ経験から言うと、この手の《女性プレイヤー狩り》に執着しているプレイヤーは少ないとは言えないのである

 

リーファは嫌悪感で肌が粟立つのを自覚した

 

卑猥な言葉を発したり、戦闘以外の目的で無闇に体に触ったりしたらハラスメント行為で運営に即座に通報されるが、PK自体はゲームの目的なので自由なのだ

 

VRMMOで女性プレイヤーを殺すのは、ネットにおける最高の快楽と言う部類すら居る

 

(正常に運営されてるALOすらこうなんだから……《あのゲーム》の中は……)

 

そう思うと、リーファの背筋に悪寒が走った

 

リーファは気を引き締めると、腰から愛用の長刀を抜いて大上段に構えてサラマンダー隊を睨みつけて

 

「あと一人は絶対に道連れにするわ。デスペナルティが惜しくない人から、かかってきなさい」

 

リーファが強気にそう言うと、リーダー格の男は首を呆れた様子で

 

「諦めろ。羽根が限界だろ? 我々はまだ飛べるぞ?」

 

と言った

 

ALOにおいて、飛行する敵から地上で襲われたら絶対的に不利である

 

しかも、それが三対一となれば尚更である

 

だが、リーファは諦める気はさらさらなく、金とアイテムを渡しての命乞いこそ、もっての他だった

 

「気の強い子だな……仕方ない」

 

リーダーは肩を竦めると、突撃槍(ランス)を構えて、浮き上がった

 

左右のサラマンダーも、ジョイスティックを使ってリーダー格にならって浮き上がった

 

(たとえ、三本の槍に貫かれても……一人だけでも道連れにしてやる!)

 

そう思うとリーファは腕に力を込めて、サラマンダーも三方向からリーファを囲むと突撃しようとした

 

が、そのタイミングで頭上からガサガサと音がした

 

リーファとサラマンダー隊が視線を向けると、頭上から黒い影が現れて

 

「フムグっ!?」

 

顔面から地面に突っ込んだ

 

予想外の光景に、リーファと三人のサラマンダーは固まった

 

呆然とした様子で落下してきた人物を見ていると

 

「本日二度目の顔面……」

 

と声を震わせながら、起き上がった

 

「痛たた……着地がミソだなこりゃ……」

 

落下してきた人物、スプリガンのキリトは頭を掻きながら呑気に言った

 

 

これが、キリトとリーファの出会いで

 

そして、大冒険の始まりだった

 

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