ソードアート・オンライン 黄昏の剣士   作:京勇樹

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ちょっとばかし中途半端ですが、投稿します


互いの真実と少女の慟哭

「お兄ちゃん……?」

 

「え? ……スグ? 直葉……なのか?」

 

桐ヶ谷和人ことキリトは、目の前のシルフ族の少女

 

リーファの呼び方を聞いて、思わず固まってしまった

 

二人が居るのは、央都アルンの世界樹の根元のグランドクエストドームの前である

 

なぜ、そんな所に居るのか

 

理由としては、キリト達が世界樹を見上げていたらユイが

 

『上の方に、ママのIDがあります!』

 

と言ったのである

 

それを聞いたキリトは、リーファの制止を聞かずに急上昇

 

高度制限の壁にぶつかるが、キリトはそれでも尚、登ろうとした

 

その時、ユイがエマージェンシーモードなら声が届くかもと提案し実行した

 

その声にアスナが気づき、アスナは自分が居ることを知らせる為に、須郷のラボで入手した銀色のカードを投げた

 

それを受け取ったキリトは、アスナが居ることを確信

 

再びリーファの制止を振り切って、グランドクエストに挑戦した

 

序盤はキリトの剣戟の威力で行けたが、結局はNPCガーディアンの数に負けて撃破されてしまった

 

撃破されたキリトは、リメインライトになって漂いながら半ば諦めていた

 

その時、リーファがキリトを助けるために突撃してきたのだ

 

リーファはキリトのリメインライトを抱き締めると、背中にNPCガーディアンの矢を受けながら出入り口目掛けて急降下

 

なんとか脱出すると、リーファは世界樹の雫というアイテムを使いキリトを蘇生させた

 

その後リーファはキリトに、なんでそんなに頑張るのか。と問い掛けた

 

するとキリトは、会いたい人が居るからと答えた

 

その言葉にリーファが首を傾げていると、キリトは会いたい人の名前

 

アスナの名を呟くように呼んだ

 

その名を聞いて、リーファ、直葉は気づいてしまった

 

キリトが、自分の兄である和人だということに

 

実を言うと、キリトに対してはヒントはいくつも有った

 

キリトは読まなかったので気づいてなかったが、説明書の注意点の欄に《同じ家やアパートに他のプレイヤーが居る場合、そのプレイヤーとログイン情報が混線する場合があります》

 

という文があったのだ

 

更に言うと、リーファという名前も直葉を英語読み化しただけなのだ

 

だが、キリトは気付かなかったし、リーファが直葉だとは思わなかった

 

「……酷いよ、そんなの……あんまりだよ……」

 

リーファは涙ながらにそう言いながら、メニューを開いて操作を始めた

 

「スグ、待ってくれ……スグ!」

 

リーファはキリトの制止を聞かず、ログアウトした

 

それを追うように、和人もログアウトして直葉の部屋へと向かった

 

せめて、謝ろうと思ったのである

 

「……スグ、いいか?」

 

『やめて!! 開けないで!』

 

和人がノックしながら問いかけると、ドアの向こうから直葉の叫び声のような制止の声が聞こえた

 

その声に和人がドアノブに伸ばしていた手を止めると、続いて消えそうな声で

 

『一人に……しておいて……』

 

という言葉

 

「……どうしたんだよ、スグ。そりゃ、俺も驚いたけどさ……またナーヴギアを使ったことを怒ってるなら、謝るよ。でも、どうしても必要だったんだ」

 

和人が戸惑い気味にしながらそう言うと、ドアが開き

 

「違うよ、そうじゃない……」

 

直葉はそこで一旦区切り、涙を流しながら

 

「あたし……あたし……あたし、自分の心を裏切った! お兄ちゃんを好きな気持ちを裏切った……」

 

ようやく口に出来た、自分の気持ち

 

だというのに、その《好き》という言葉はまるで刃のように、直葉の胸を、喉を、唇を切り裂いていった

 

「全部忘れて、諦めて、キリト君のことを好きになろうと思った……ううん、もうなってたよ……なのに……それなのに……」

 

掠れた声で、直葉は自身の思いを紡いだ

 

「え……」

 

直葉の言葉を聞いて、和人は数舜絶句してから囁くように

 

「好きって……だって、俺たち……」

 

「知ってるの」

 

和人が最後まで言い終わる前に、直葉は被せるように言った

 

「……え……?」

 

知ってるという直葉の言葉に、和人は固まった

 

その隙を突く形で

 

「あたし、もう、知ってるんだよ」

 

そこまで言った時点で、もはや止まれなくなっていた

 

内心では、言ってはいけないと分かっていた

 

だが、止まれなかった

 

和人が最後まで言い終わる前に、直葉は被せるように言った

 

「……え……?」

 

知ってるという直葉の言葉に、和人は固まった

 

その隙を突く形で

 

「あたし、もう、知ってるんだよ」

 

そこまで言った時点で、もはや止まれなくなっていた

 

内心では、言ってはいけないと分かっていた

 

だが、止まれなかった

 

心の底から溢れてくる激情を、直葉は抑えきれなかった

 

激情に任せて、直葉は和人を睨みつけながら

 

「あたしとお兄ちゃんは、ほんとの兄弟じゃない! あたしはそのことを、もう二年も前から知ってるの!!」

 

(ダメ……お母さんに頼んで、あたしがその事を知ったことをお兄ちゃんに教えるのを待ってもらったのは、こんな風に感情任せで言うつもりじゃなかったのに……この事の意味を、時間を掛けて考えたいって、思ってたのに……)

 

直葉のそんな思いとは裏腹に、口は動き続けた

 

「お兄ちゃんが剣道を辞めて、あたしを避けるようになったのは、ずっと昔からそれを知ってたからなんでしょ!? あたしがほんとの妹じゃないから遠ざけてたんでしょ!? なら、なんで今更優しくするのよ!!」

 

本当は、こんなことを言いたくはなかった

 

だが、もはや止めることなど出来なかった

 

直葉の叫びが廊下に響く度に、和人の瞳から光が徐々に消えていった

 

「あたし……お兄ちゃんがSAOから戻ってきてくれて嬉しかった。小さい頃みたいに仲良くしてくれて、すごく嬉しかった。ようやくちゃんと、あたしを見てくれたって、そう思った……」

 

そこまで言って、直葉は流れていた涙を乱暴に拭い去ると大きく息を吸い込み

 

「……でも……こんなことなら、冷たくされたままのほうが良かった。それなら、お兄ちゃんを好きだって気付くことも……アスナさんのことを知って悲しくなることも……お兄ちゃんの代わりにキリト君を好きになることもなかったのに!!」

 

直葉のその言葉を聞いて、和人は僅かに目を見開いてから表情を凍りつかせた

 

全てが止まったかのような時間が過ぎて、和人は俯いてポツリと

 

「……ごめんな……」

 

と呟いた

 

和人の表情とその言葉を聞いて、直葉は激痛を伴いながら後悔した

 

SAOから帰ってきてから二か月の間、和人の直葉を見る瞳は常に、慈しむような穏やかな光に彩られていたのだ

 

それが今や、深い暗闇が広がり、絶望に染まっていた

 

それの原因が、自分が言った言葉だと分かって直葉は歯を食いしばり

 

「……もう、放っておいて」

 

と呟いてから、ドアを閉めてベッドに倒れ込んだ

 

そして、直葉はベッドの上で丸くなると声を上げて泣き始めた

 

直葉の泣き声を聞いて、和人はドアの背中を預けてズルズルと座り込んだ

 

それからどれ程経ったのか

 

和人は立ち上がると、ドアをノックして

 

「スグ……アルン北側のテラスで待ってる」

 

と言うと、自室へと戻った

 

そして、ナーヴギアを被ると

 

「リンク・スタート……」

 

呟くようにキーワードを唱えて、ALOのスプリガンのキリトになった

 

キリトは目を開くと、周囲を確認してから羽を開いてその場から飛び立った

 

目指すは、一方的ではあるが約束した場所の北側のテラスだ

 

キリトは到着すると、羽を閉じながら周囲を確認した

 

当たり前かもしれないが、リーファの姿はない

 

もしかしたら、来ないかもしれない。とも思ったが、来るのを信じてキリトは待つことにした

 

どれくらい待っただろうか

 

目を閉じてジッと待っていたキリトの耳に、風切り音が聞こえてきた

 

その音を聞いたキリトは、ゆっくりと目を開いて音のする方向に視線を向けた

 

そこには、こちらに向かってくるリーファの姿があった

 

リーファはキリトの近くに着地すると、キリトに視線を向けた

 

「スグ……俺は……」

「お兄ちゃん……勝負しよ」

 

キリトが何かを言おうとしたタイミングで、リーファはそう提案した

 

リーファの提案にキリトは戸惑いから固まるが、リーファは無視して腰の愛刀を抜いた

 

「あの日の続き……しよ」

 

リーファはそう言いながら、愛刀を大上段に構えた

 

「本気……なんだな……」

 

キリトはそう言うと、背中の大剣を抜いて構えた

 

剣を持った右手を後ろに、左半身を前にした構え

 

その構えを見て、リーファは納得した

 

その構えは、あの鋼鉄浮遊城でキリトが二年間に渡り培った構えだと

 

「今度は手加減無しだからね……」

 

「ああ……本気で行くぞ……」

 

その会話を皮切りに、二人は激突した

 

二人の剣がぶつかり、激しく火花が散った

 

二人は短く鍔迫り合いをすると、互いに距離を取った

 

そして、リーファが先に羽を広げて空に飛びたつとキリトも後を追った

 

二人は空中でも剣をぶつけ合い、激しく交差した

 

すると、リーファがとある空中小島に着地して構えた

 

それを見たキリトも、腰を低くして構えた

 

そのまま、二人は少しの間動かなかった

 

二人の緊張感により、ビシビシと空気が張り詰めた

 

そして、二人の間を鳥が通り過ぎた直後、二人は同時に動いた

 

しかし、ぶつかったのは剣ではなく互いの体だった

 

「なんで……」

 

「どうして……」

 

その状況に、二人は同時に疑問を口にした

 

二人はしばらくすると、キリトが先に口を開いた

 

「俺……スグに謝ろうと思って……でも……言葉が出なくて……せめて、剣を受けようって……」

 

キリトはそう言いながら、リーファの体を強く抱き締めた

 

「ごめんな……スグ。せっかく帰ってきたのに……俺、お前をちゃんと見てなかった。自分のことばっかり必死になって……お前の言葉を聞こうとしなかった。ごめんな……」

 

キリトのその言葉を聞いて、リーファは不意に涙が溢れた

 

「あたし……あたしのほうこそ……」

 

最後まで言葉にならなかったが、キリトは察したのかリーファの頭を優しく撫でた

 

キリトは近くの小島に着地すると、リーファが泣き止むまで待ってから

 

「俺……本当の意味では、まだあの世界(アインクラッド)から帰ってきてないんだ。終わってないんだよ、まだ彼女(アスナ)が目を醒まさないと、俺の現実は始まらない……だから、今はまだ、スグのことをどう考えていいのかわからないんだ……」

 

「うん……」

 

キリトの話を聞いて、リーファは目元の涙を拭いてから呟くように

 

「あたし、待ってる……お兄ちゃんが、ちゃんとあたし達の家に帰ってくる、その時を……だから、あたしも手伝う。だから教えて、あの人(アスナさん)のことを……なんで、この世界(ALO)に来たのかを……」

 

リーファの言葉にキリトは頷くと、全てを話した

 

◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

 

二人が手放し、どこかに落ちていった剣はツユカとユーヤの二人が持ってきた

 

なんでも、先日消費したアイテムの補充をした帰りに、目の前に落ちてきたらしい

 

その後、フレンド登録から現在地を割り出して持ってきたのだ

 

そのことに感謝しつつ、キリト達は世界樹前広場に到着した

 

すると、そこには行儀よく座って待ってるレコンの姿があった

 

「レコン?」

 

「なんで居るんだよ?」

 

レコンの姿を見たツユカとユーヤの二人は、首を傾げた

 

すると、リーファが呆れた様子で

 

「あたしを追ってきたんですって……一晩掛けて」

 

と言った

 

「いや、それはいいんだけどな……」

 

「レコンの腕で、よくアルンまで来れたな?」

 

ツユカとユーヤの二人が問い掛けると、レコンは胸を張って

 

好戦的(アクティブ)モンスターに乗っては、他のプレイヤーに擦り付けてきたからね! いやー、一晩掛かったよ。マジで!」

 

と語った

 

その途端、ツユカの目つきが鋭くなり

 

「ほう……お前、《トレイン》をやったのか……」

 

と低い声で呟いた

 

「あっ……」

 

レコンは自身の失言に気付くが、時既に遅しである

 

「レコン……そこに正座しろ……」

 

「つ、ツユカさん……?」

 

レコンは涙を端に浮かべながら、ツユカに視線を向けたが、ツユカは右手を背中の槍に持っていき

 

「二度は言わないぞ……」

 

「はい……」

 

ツユカの雰囲気から、レコンは命の危機を感じ取り、その場に正座した

 

その後、ツユカによる説教が始まった

 

その光景を見て、キリトは首を指差しながら首を傾げた

 

すると、リーファが苦笑いしながら

 

「ツユカちゃんはね、非マナー行為が大嫌いなの」

 

「もし、目の前でやってる奴が居たら、相手が誰だろうと説教を始めるな」

 

リーファに続き、ユーヤはヤレヤレと首を振りながら説明した

 

そして十数分後、説教が終わったらしく、ツユカは腕組みしながら

 

「これに懲りたら、以後はやるなよ」

 

と言った

 

「はい……申し訳ありませんでした……」

 

そしてレコンは、深々と土下座した

 

 

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