ソードアート・オンライン 黄昏の剣士   作:京勇樹

54 / 201
因縁の再会

戦闘が終わって数秒後、ヨシアキはあの待機室へと戻った

 

どうやら、次の対戦相手が決まるまで、ここで待機するようだ

 

ヨシアキは対戦前まで座っていたボックス席に視線を向けると、そこにシノンの姿は無かった

 

どうやら、対戦中らしい

 

ふと気付くと、シュピーゲルも画面を見上げていた

 

どうやら、シノンの対戦を見ているようだ

 

ヨシアキもシノンの対戦を見ようと思い、一歩踏み出そうとした

 

その時だった

 

「お前……本物、か……?」

 

という声が耳元でして、ヨシアキは反射的に一気に距離を取った

 

そして振り向くと、先ほどまでヨシアキが居た場所付近に、ボロボロのギリースーツ姿のプレイヤーが居た

 

しかも顔には、特徴的なフェイスを着けている

 

ヨシアキは最初、SAOやALOに居るゴースト系のモンスターと疑ったが、足が見えたので、すぐにプレイヤーと分かった

 

そして、他プレイヤーの耳元で囁くという非マナー行為をした相手を睨み付けて

 

「本物って、何のこと? というか、アンタ誰?」

 

とぶっきらぼうに問い掛けた

 

だが、ギリースーツのプレイヤーは答えずに、無音でヨシアキに近寄ると、包帯を巻いて手袋を着けた左手を出して、ウィンドウを開いた

 

そして可視化したらしく、ヨシアキにも見えるようになった

 

そこに見えたのは、今行われている予選のトーナメント表だった

 

そして、一部を拡大さすると、そこに見えたのは、ヨシアキの名前だった

 

「この名前……そして、あの剣捌き……お前、本物、か?」

 

そう言われた直後、ヨシアキの全身に衝撃が走った

 

目の前のアバターを操っているプレイヤーとヨシアキは、どこかで出会っている

 

(GGOじゃない。ALO? それとも、まさか……SAO(あのデスゲーム)?)

 

と考えている内に、ヨシアキの心拍数は鰻登りに高まった

 

その時、ギリースーツのプレイヤーの左手に巻かれている包帯の隙間から、あるマークが見えた

 

それは、カリュカチュアライズされた棺桶

 

その蓋には不気味な笑顔が描かれており、僅かにズレた蓋の隙間からは、白骨化された腕が不気味に手招きしていた

 

そのマークを見た瞬間、ヨシアキは叫ばなかった自分を褒め称えた

 

そんな趣味の悪いマークを使っていた集団を、ヨシアキは一つだけ知っている

 

かつて、デスゲームと化した伝説のVRMMO

 

ソードアート・オンラインに存在していた鋼鉄浮遊城に住んでいたプレイヤー達を、恐怖のどん底に突き落としたPK集団(レッドギルド)

 

笑う棺桶(ラフィン・コフィン)

 

彼らは、SAOが始まって約一年経った大晦日にあらゆる情報屋に誕生したことを告げた

 

SAOのシステム上には存在しない、殺人者(レッド)を名乗り、数多くのプレイヤー達をその手に掛けた

 

下層や中層だけではなく、攻略組も犠牲者が出ていた

 

犠牲者の数は三桁に登るとされ、判明した手口はすぐさま公開された

 

だというのに、犠牲者は止まらなかった

 

彼らは次々と新しい手口を考案し、それを嬉々として実行した

 

SAOでは、HPが無くなれば、現実でも死ぬ

 

だというのに、彼らは殺しを楽しんだ

 

閉鎖されたこのゲームでは、俺たちは自由だ

 

だから、何をやっても許される

 

彼らの頭となった人物は突出したカリスマ性を活かし、そう嘯いてはプレイヤー達を煽動した

 

そうして集まった、約三十人の殺人者達

 

しかし事態を重く見た有志達により、討伐隊が構成された

 

だが、ラフィン・コフィン達のアジトはなかなか見つからなかった

 

三十人もの集団が住んでるのだから、相手はかなり大きな物件に居る筈だ

 

そういう考えの下、鼠のアルゴを筆頭としたあらゆる情報屋は、該当する物件を探し続けた

 

だがその甲斐虚しく、アジトはなかなか見つからなかった

 

そんなある日、罪悪感に耐えきれなくなったのか

 

匿名でタレコミがあったのだ

 

奴らは物件ではなく、既に攻略された層の外れに有った洞窟をアジトにしていたのだ

 

それも、デザイナーですら配置したのを忘れていただろう程に、端に有った安全ポイントの洞窟に

 

もしかしたら、誤って迷い込んだプレイヤーが居たかもしれない

 

だが、迷い込んだプレイヤーは殺されたから、誰も気付かなかったのだ

 

もちろんだが、偽の情報という事も疑って、情報屋に調べさせた

 

だが、そこに間違いないという答えが出たのだ

 

そこで討伐隊は作戦を練った

 

六十人の内四十人を前から、残りの二十人が後ろから侵入し、挟撃

 

降伏した奴らを、残らずに黒鉄宮に送る

 

討伐隊とは言え、殺すのは最後の手段だった

 

相手だって人間だ

 

自身の命が危機に陥ったら、奴らだって降伏する筈だと

 

誰もがそう思っていた

 

討伐隊が行動を起こす前に、立候補したプレイヤーが投降するように勧告する為に中に入った

 

だが、そのプレイヤーも殺された

 

そして、討伐隊は夜襲する為に時を待った

 

そして作戦が始まり、討伐隊は作戦通りに挟撃の為に突入した

 

だが内通者が居たのか、作戦がバレていたのだ

 

ラフィン・コフィン達は通路の影に隠れて待ち伏せ、討伐隊を背後から襲い掛かったのだ

 

そこから乱戦に陥り、討伐隊とラフィン・コフィンが入り乱れた

 

そんな時、討伐隊の一人のプレイヤーがラフィン・コフィンのプレイヤーに投降するように求めた

 

相手は両手を失い、HPも危険域の赤だった

 

普通だったら、そこで投降するだろう

 

だが、普通ではなかった

 

相手は投降勧告に従わず、討伐隊のプレイヤーの喉元に噛みついた

 

それにより、討伐隊のプレイヤーのHPも危険域に入った

 

それにより、そのプレイヤーは恐慌状態に陥り、持っていた剣を突き刺した

 

その直後、二人のHPが同時に消え去り、二人は爆散した

 

そこからは、血みどろの戦闘だった

 

お互いに殺し合いの戦闘に発展

 

この戦いで、ラフィン・コフィン側は二十人が死亡

 

討伐隊側は十人が死んだ

 

なお、この討伐戦にはキリト、アスナ、クラインの他、ヨシアキ、サジ、ヒデ、ムッツが参加

 

なんとか生還したものの、彼らは一様に暗かった

 

ヨシアキはこの戦いで三人の命を奪ったのだが、その全ては彼らを守るためだった

 

ヒデは麻痺毒により動きを止められ、サジは背後から襲い掛かられて、ムッツは覆い被さられて殺されそうになった

 

その全てを、ヨシアキが助けたのである

 

そして、戦後処理で生き残ったラフィン・コフィンのプレイヤー達は名前を確認しながら黒鉄宮へと送ったのだが、その中にラフィン・コフィンの頭たる男

 

PoHの姿は無かった……

 

「意味が、わからない、か?」

 

ギリースーツプレイヤーがそう問い掛けると、ヨシアキは必死に悟られまいとしながら

 

「そうだね……意味が分からないや……本物って、どういうこと?」

 

と返した

 

この時、待機室の照明が薄暗く、ギリースーツプレイヤーはヨシアキの顔が蒼白になっていることに気付かなかった

 

もし明るかったら、それに気付かれていて、どうなっていたか分からないだろう

 

ヨシアキの言葉を聞いて数秒後、ギリースーツプレイヤーはウィンドウを閉じると、ヨシアキに顔を近付けて

 

「分からないなら、それで、いい……だが、もし、本物か、それを語る偽物だったら……お前を、殺す……」

 

と言うと、ヨシアキから離れていった

 

こうして、因縁深い戦いが幕を開いたと言うと、ヨシアキから離れていった

 

そして、離れてからタップリ数十秒後

 

ヨシアキはヨタヨタと近くのボックス席に後退すると、膝を抱えるように座り込んだ

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。