ソードアート・オンライン 黄昏の剣士   作:京勇樹

56 / 201
本当に筆が進まんし
精神状態が…………ヤバい…………


予選決勝戦

シノンは降り立つと、まず周囲を見回した

 

シノンが居るのは、長い橋の東の端だった

 

プレイヤーは最初は最低でも五百mは離れてるので、対戦相手であるヨシアキは反対側に居ることになる

 

どこか狙撃に向いてる場所はないかと見回すと、近くに一台の二階建てバスが壁に寄りかかるように止まっていた

 

よし、その中に入って狙撃態勢を取ろう

 

そう判断して、そちらへと一歩踏み出した時

 

シノンはなぜか視線を、ヨシアキが居る方向へと向けた

 

すると、こちらへと猛スピードで駆けてくる姿が見えた

 

姿とは言ったが、このフィールドにはシノン以外には、一人しか他のプレイヤーは居ない

 

美少女に見える中性的な見た目の美少年

 

ヨシアキがその長い髪を靡かせながら、シノンの方へと駆けてきていた

 

「つっ!?」

 

それを見た瞬間、シノンは片膝立ちになり狙撃態勢を取った

 

本当だったら伏せ撃ちがいいのだが、そんな暇は無いだろ

 

何よりも、狙撃態勢を取っている間にヨシアキは既に、距離を半分ほどまでに縮めていた

 

(速過ぎる!?)

 

シノンは驚愕しながらも、スコープを覗き込んで狙おうとした

 

だが、スコープ越しに見た瞬間、ヨシアキは残像を残す勢いで横移動している

 

更には、フィールドたる大陸横断高速道路の至る所に障害物として配置してある廃車も上手く利用し、シノンの狙撃を阻害する

 

そして気づけば、残り数十mにまで迫っていた

 

シノンは焦りから撃ちそうになるが、やはりヨシアキの移動が速過ぎて狙いが定まらない

 

そして残り約十数mに達した時、ヨシアキは左手に光剣を握った

 

そして、次の一歩を踏み出したら構えを取った

 

あの強烈無比な一撃の構えを

 

それを見て、シノンは狙撃を諦めて副武装のMP7マシンガンのグリップを握った

 

次の瞬間、ヨシアキは地面を踏み砕くほどの勢いで飛んだ

 

まるでロケットのように、まっすぐにシノン目掛けて

 

シノンは構えようとしたが、それよりも早く到達すると直感でわかってしまった

 

思わず目を瞑るが、何時まで待っても死んだという表示が出ない

 

恐る恐る目を開くと、眼前に光剣の切っ先があった

 

しかも、倒れかけているシノンをヨシアキが空いている右手で抱くように支えている

 

「どうして……」

 

シノンが呟くと、ヨシアキは

 

「最初はワザと負けようかとも考えたけど、それはシノンに対する侮辱になる……それにこのまま終わったとしても、シノンは満足いかないでしょ? だから、提案があるんだ……」

 

と言った

 

「提案……?」

 

シノンが繰り返し言うと、ヨシアキはシノンを立たせてから

 

「決闘で勝負決めない?」

 

と告げた

 

「決闘で……?」

 

シノンが訝しむと、ヨシアキは頷いて

 

「そう……10m離れて、シノンはそのライフルを、僕はこの光剣を構える……」

 

ヨシアキはそう言うと、次に腰のホルスターから副武装のFN・ファイブセブンを抜いて、一発の弾を取り出した

 

「これを上に弾くから、この弾が地面に落ちたらスタート……どうかな?」

 

ヨシアキの提案を聞いて、シノンはいよいよ分からなくなった

 

そんな回りくどいことをしないで、さっき決めたら良かったのでは? と

 

「アンタ、バカ? 10mなんて、このヘカートの弾速なら一瞬よ? しかも、わざわざ狙うまでもないわ……必中圏内よ?」

 

シノンがそう言うと、ヨシアキは不敵な笑みを浮かべて

 

「さて、やってみないと分からないよ? どうする?」

 

と問い掛けた

 

シノンは数秒間悩むと、頷いて

 

「いいわ。乗ってあげる……」

 

と答えた

 

シノンがヨシアキの提案に乗ったのは、理由がある

 

別にこの至近距離で撃ってもいいが、当たる気がしないこと

 

そして何よりも、ヨシアキの強さを知りたかったからだ

 

シノンが戻った時、ヨシアキは精神的に沈んでいた

 

だというのに、順当に勝ち上がってきた

 

光剣で弾丸は弾くという離れ業を駆使して肉薄し、一撃で葬る

 

どうすれば、そんな強さを手に入れることが出来るのか

 

シノンはそれを知りたかった

 

あの悪夢から逃れるために……

 

そして二人で数歩歩き、ちょうど10m離れた

 

すると、シノンはヘカートを構えて、ヨシアキは光剣を左手に持った

 

シノンが構えたのを確認したからか、ヨシアキは右手を上げて

 

「行くよ?」

 

と問い掛けた

 

それに対して、シノンは無言で頷いた

 

その直後、ヨシアキは弾丸を弾き上げた

 

それを合図に、シノンはスコープを覗いた

 

そして、ヨシアキは刃を出力させて構えた

 

右半身になり、左手はダラリと下げている

 

ヨシアキが弾き上げた弾丸が、クルクルと回りながら落ちていく

 

それが酷く遅く感じられて、シノンは今か今かと待った

 

狙いは決まっている

 

狙うのは、ヨシアキの右足である

 

シノンの使っているヘカートの口径は、12、7mm

 

例え致命傷たる上半身へと直撃でなくとも、その威力の高さでヨシアキのHPを吹き飛ばせるのは間違いない

 

だから敢えて狙いをセオリーから外し、足にしたのだ

 

ヨシアキでも弾けないと予想して

 

そして、一瞬の筈が長く感じられたその直後

 

弾丸が地面に落ちた

 

それと同時に、シノンの視界に表示されていたバレットサークルが一瞬で点にまで小さくなった

 

その瞬間、シノンはトリガーを引いた

 

シノンの放った弾丸は、狙い通りにヨシアキの右足目掛けて走った

 

だが次の瞬間、紫色の光が走り、二つの光がヨシアキの両側面を通り抜けた

 

(そんな! 有り得ない!?)

 

シノンはヨシアキの両側面を走った光が、自身が撃ったヘカートの弾丸だと気付いた

 

ヨシアキは亜音速で放たれた弾丸を、切り裂いたのである

 

しかも、上半身ではなく右足を狙ったというのに

 

そしてシノンが驚いている間に、ヨシアキは駆け出していた

 

しかも、既に半分まで距離を縮めていた

 

距離を取ろうと下がろうとしたが、瓦礫に足を取られて後ろに倒れ始めた

 

だがそれをヨシアキが支え、シノンの首筋に光剣を近づけた

 

「勝負あったね……」

 

ヨシアキがそう言うと、シノンは

 

「なんで、私の狙いが分かったの……?」

 

と問い掛けた

 

「ん? スコープ越しに、シノンの目が見えたから」

 

ヨシアキのその返答を聞いて、シノンは驚愕した

 

「私の目を見て、狙いを予測したというの……?」

 

(強い……こんなの、ゲームって枠を越えてる……知りたい……私は、その強さの理由を知りたい!)

 

ヨシアキの話を聞いて、シノンは心からそう思った

 

「ねえ、教えて……どうすれば、その強さを得られるの……?」

 

シノンがそう問いかけると、ヨシアキは首を振って

 

「これは強さじゃないよ。単純な技術さ」

 

と返答した

 

「嘘よ……ただの技術な訳がない……そんなの、ゲームの枠を越えてる……」

 

シノンがそう言うと、ヨシアキは目を伏せて

 

「だったら聞くけどさ……もし、命懸けの状況で、その一撃が人を殺すって分かってて、誰か大切な人を守るためなら……君は引き金を引ける?」

 

ヨシアキがそう問い掛けた直後、シノンは息を飲んだ

 

(知ってるの……? 私の過去を……?)

 

「僕は前なら出来たけど、今は無理かも……」

 

ヨシアキがそう言うと、シノンはヨシアキを見つめて

 

「あなた、まさか、あのゲームの……」

 

と呟いた

 

するとヨシアキが

 

「さて、どうする? まだやる? 出来るなら、降参してほしいなぁ……女の子は斬りたくないし」

 

と言った

 

その時、シノンは自分の状況を思い出して赤面した

 

半ばヨシアキに抱き締められるような形で、首筋に光剣を当てられている

 

その状況に、シノンはギリッと歯噛みしてから

 

降参(リザイン)……」

 

と宣言した

 

その直後、二人の頭上に

 

《ウィナー・ヨシアキ!》

 

と表示された

 

こうして、Fブロックはヨシアキが優勝

 

シノンが準優勝と決まり、本戦参加者30名が決まったのだった

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。