死銃から逃げていたヨシアキ達は、気付けば砂漠地帯に入っていた
どうやら、廃都市は抜けたらしい
その時、ヨシアキはガスメーターを見た
かなり飛ばしたので、残量は残り僅かだった
「どこか、隠れられる場所は……」
ヨシアキは一旦バギーを止めると、周囲を見回しながら呟いた
すると、シノンがある岩山を指差して
「あそこの岩山……変更されてないなら、洞窟になってるから、そこに」
と言った
それを聞いて、ヨシアキは
「行ってみよう」
とその岩山に向かった
そして、その岩山はシノンの言った通り、洞窟だった
中を偵察し安全を確認してから、ヨシアキはバギーも中に入れた
洞窟の最奥は大体九畳程の広さの広間だった
奥側にシノンが座り、少し手前にヨシアキが座った
バギーは二人を隠すように、広間の入口で止めてある
するとヨシアキは、腰のポシェットからボールペンのような物体を取り出した
それは、大会が始まった時に配布される回復薬である
タイプとしては無針注射と言う物で、それを首筋に当ててボタンを押すと回復するのだ
しかし、即効でHPが全快する訳ではない
時間を掛けて、ゆっくりと回復していくのだ
だから、戦闘中に使っても意味は無い
今のように、どこかで隠れながら回復するほうがいいのだ
そしてこの時になって初めて、シノンはヨシアキの負傷具合を把握した
右肩と左腰に赤い被弾エフェクト
そして、HPは半分近く減っている
シノンとて、ヨシアキの剣の技量は把握している
そのヨシアキが、二発も被弾している
どうして被弾しているのか、シノンは気付いた
(私を助けるため、だよね……)
ヨシアキは恐らく、何らかの理由でシノンが危ないと気付いて、被弾をしながらもシノン、救助に動いたのだろう
「ねえ、どうして……間に合ったの?」
とシノンが問い掛けると、ヨシアキは遠くを見ながら
「あー……うん、実はね……僕達が最初に死銃だと思った銃士X……あ、マスケティア・イクスって読むみたいだよ? その人はね、女性だったんだ……僕みたいな見た目女性じゃなくて、正真正銘のね」
と語りだした
別れて球場跡地に到着したヨシアキは、当初死銃と思っていた銃士Xと接敵
しかし、出会ってすぐに違うと判明
その時ヨシアキは、直感でシノンが危ないと思って高々と名乗りをしていた銃士Xに対して強引に突撃
左腰の一発は、その時に銃士Xの持っていた軽機関銃が当たったらしい
そして倒した後は、その軽機関銃とスモークグレネードを拝借
後は、撃って投げて救出した
という訳である
「後で、謝らないとなあ……かなりプライド高そうな人だったし……」
ヨシアキはそう言うと、入口の方に視線を向けた
どうやら、敵が来ないか心配らしい
「地面が砂地だから、足跡が残る。何よりも、洞窟だから音は響くから、敵が来ても気付けるわ」
シノンがそう言うと、ヨシアキは安堵した様子で深々と息を吐いた
「なら一安心だね……問題は、死銃だ……あいつ、いつの間にシノンに近付いたんだろ……気配もしなかったし、何よりも、直前に見たレーダーに映ってなかったよ?」
ヨシアキがそう言うと、シノンが
「それは多分、あいつが羽織ってたマントが原因……光歪曲迷彩って言うんだけどね……あれは、光を曲げて透明になるって代物なの……本当だったら、ボスmobのアビリティしか確認されてなかったんだけど……装備として実装されたのかしら……それのせいで、見えなくなってたのよ」
と説明した
それを聞いて、ヨシアキは腕組みして
「なるほどね……ってことは、透明化してたらレーダーにも映らなくなると……厄介だなあ……」
と唸り始めた
「あのライフルも全然音がしなかったから、発射したのか分からなかったし」
「あ、それはあの銃自体がそう作られたからよ。別名がサイレント・アサシンなんて呼ばれる位だし……あの銃身自体がサプレッサーなのよ」
シノンがそう説明すると、ヨシアキは少し考えてから
「サプレッサーって、銃口に付けてるアレのことだよね?」
とシノンに問い掛けた
「ええ……日本じゃあ、サイレンサーって呼ばれてるけど、正式名称は
シノンの説明を聞いて、ヨシアキは納得したように頷いて
「つまり、あの銃は銃身自体がサプレッサーなんだ……」
と呟いた
そして
「問題は、あいつをどうやって倒すかだなあ」
と言った
それを聞いて
「待って……あいつが、まだ生きてるの?」
とヨシアキに問い掛けた
すると、ヨシアキは頷き
「あの大型車両が爆発する直前に、機械馬を盾にして跳んでたのを見たからね……流石に無傷じゃないだろうけど、無事なのは確かだ……多分今頃は、僕と同じようにHPを回復してる最中だろうね」
と言った
それを聞いて、シノンは自分の体を抱き締めて
「そんな……また、あいつと戦わないといけないなんて……」
と呟きながら、震えだした
すると、ヨシアキがシノンを優しく抱き寄せて
「大丈夫……大丈夫だから、落ち着いて」
と優しく語りかけた
行為としてはそれだけなのに、シノンは不思議と心が落ち着いていくのを感じた
「……あなた、お母さんみたいね」
「そこはお父さんじゃないのかなぁ? 性別的に」
シノンの言葉を聞いて、ヨシアキはそう返した
すると、シノンは
「私、お父さんのこと知らないの……私が小さかった頃に、事故死しちゃって」
と言った
それを聞いて、ヨシアキは
「ごめん……知らなかったとはいえ……辛いこと言った」
と素直に謝罪した
「いえ、いいわ……お父さんのことは、大して覚えてないし……」
シノンはそう返すと、少ししてから
「少しの間、このままでいいかしら……?」
とヨシアキに問い掛けた
「落ち着くまで、いいよ」
ヨシアキはそう言うと、シノンの頭を優しく撫で続けたのだった