ソードアート・オンライン 黄昏の剣士   作:京勇樹

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幻影の弾丸

琴音が中に入ると、一人の女性看護師が上半身裸の明久に半ば覆い被さるようにしていた

その人物を見て、和人と明日奈が

 

「あれ、安岐さん?」

 

「ヨシアキ君の担当って、安岐さんだったんですか?」

 

と問い掛けた。

すると、安岐と呼ばれた女性は軽い調子で

 

「そだよー」

 

と言った

そして、和人に歩み寄ると

 

「それで、桐ケ谷君はちゃんと御飯食べてるのかい? まだ細いみたいだけど」

 

と和人に問い掛けた

すると、明日奈と直葉が

 

「それなら」

 

「私たちで栄養管理してるから、大丈夫です」

 

と答えた

そして、真剣な表情を浮かべると明日奈が

 

「それで、何があったんですか?」

 

と問い掛けた

すると、安岐は壁のパネルを指さして

 

「彼の心拍数が、一気に跳ね上がったのよ」

 

と言った

そこに表示されてる数字は、185だった

確かに、普通の心拍数の倍近くだった

その時

 

『皆さん、テレビを見てください!』

 

とユイの声が聞こえて、テレビが点いた

そこに見えたのは、長い茶髪が特徴の少女に見える美少年が赤目のマスクを被った相手と戦っていた

表示されてる名前は、YOSHIAKIとSterbenだった

 

「この、茶髪のが彼なの?」

 

『はい、間違いありません』

 

安岐の問い掛けに、ユイが答えた

だがそれよりも、元攻略組

その中でも、かの討伐に参戦したメンバーは相手の武装に目が行っていた

 

「あれは、刺突剣(エストック)ね……」

 

「ああ……クソッ、喉元まで名前が出掛かってるのにっ」

 

明日奈の後に和人はそう言うと、頭を乱雑に掻いた

刺突剣(エストック)

この剣はその名前の通りに、突き刺すことに特化した剣であり、刃が無いために斬ることは出来ない

そして確かに、かのギルドにはそれの使い手が居た

和人や明日奈も、戦った記憶がある

だが、その肝心の名前が思い出せなかった

和人がそれに苛だつ傍ら、雄二は相手の名前を見て

 

「これ、なんて読むんだ?」

 

と首を傾げた

すると安岐が、目を細めながら

 

「ドイツ語でステルベン……病院で使われる隠語だよ。意味は、死」

 

と告げた

それを聞いて殆どが沈黙する中、琴音がベッドに近寄り

 

「頑張って、明久……」

 

と言いながら、明久の手を優しく包み込んだ

 

◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

 

(一瞬、ほんの一瞬でいい……この流れを変えられたら!)

 

明久はそう思いながら、回避し続けていた

死銃の刺突剣は、ヨシアキの光剣と相性が悪かった

なんでも、嘗ての宇宙戦艦の装甲から作った剣らしく、ヨシアキの光剣で切れるどころか、すり抜けてしまうのだ

だから時折、剣弾き(パリイ)しようとしてすり抜けて、ダメージを受けてしまうのだ

今現在、ヨシアキの体力は約六割ほど

それに対して、死銃の体力はほぼ満タンだ

現状では、ヨシアキが圧倒的に不利なのは否めない

だが、光剣の威力ならば一撃当たれば逆転は確実なのだ

しかし、その一撃を入れるためには死銃の連撃を一度止めなければならない

だが、ヨシアキにはその余裕がなかった

恐らく、シノンもだろうとヨシアキは予想していた

すると死銃が

 

「ヨシアキ……貴様は、現実世界の、腐った空気を吸いすぎた……前よりも、遥かに、弱い」

 

と喋った

それを聞いて、ヨシアキは

 

「確かに、前よりかは弱くなってるかもね……だけど、お前達に負けるつもりは無いよ」

 

と返した

この会話の間にも、死銃の攻撃は続いている

この時ヨシアキは、必死に思い出していた

笑う棺桶討伐戦の前に行ったブリーフィング

そこで提示された、要注意三名

一人はもちろん、笑う棺桶のリーダー

PoH

注意すべき点は、その実力の高さと悪のカリスマ性

そして何より、その容赦の無さ

これらが噛み合わさり、笑う棺桶は産まれたと言っても過言ではない

そして、PoHの近くには常に二人の幹部が居た

一人はずだ袋を被り、毒短剣を使う少年

ジョニー・ブラック

ジョニー・ブラックは残虐な性格であり、その残虐さから優先対象の一人か挙げられていた

なお、ジョニー・ブラックのイメージカラーは黒であり、キリトは戦うなと言われた

その理由は、もし乱戦に陥った場合は間違えてしまうかもしれなかったからだ

実際、そいつとはヨシアキが戦った

そして、最後の一人

通称が……

 

「思い出した……」

 

ヨシアキがそう呟いた時、死銃はヨシアキの頭を狙って刺突剣を引いていた

だが、ヨシアキは慌てず

 

XAXA(ザザ)……お前は、赤目のザザだ!」

 

ヨシアキがその名前を言った時、死銃

いや、ザザの動きが僅かに止まった

その時だった

ヨシアキの頭の右横を、赤いライン

弾道予測線が走った

それは、ザザの頭に当たっていて、ザザは反射的に回避行動を取り、悔しそうな声を滲ませた

そしてヨシアキは、その弾道予測線がシノンのものだと気付いた

それは、シノンの気迫が生み出した幻影の弾(ファントム・バレット)だと

それを無駄にしない為にも、今ここでザザを倒す

ヨシアキはそう思って、一歩前に踏み出した

だがその時、ザザの体が透明になり始めたのだ

それは、ザザが着ているギリーマント

光歪曲迷彩だった

少しずつ消えていくザザを見て、ヨシアキは焦った

このままじゃあ、ザザを逃がすと

その時、ヨシアキの右手が自然に動き出した

右手はそのまま、太股に延びた

そして、ヨシアキも忘れていた武装

FNファイブセブンを掴んで、構えた

そして、発動したのはかの世界(SAO)でヨシアキが使っていた剣聖スキルの重突撃スキル

パンツァー・シュピーゲルだった

本来ならば、投げ剣を三本投げてから剣で袈裟懸けに斬るスキルだ

しかし、その投げ剣を銃でしてはいけないと、誰が決めた?

ヨシアキがファイブセブンを三発撃つと、その内の二発が命中

それによって、消えていたザザの姿が見えた

ザザの姿を見たヨシアキは、距離を修正するために更に大きく一歩踏み出して

 

「アアァァァァァァァ!!」

 

と叫びながら、独楽のように回りながら光剣を振るった

ヨシアキの振るった剣はザザの左肩から右腰を切り裂いた

その直後、右腰に装備していた黒星が爆発を起こして、ザザの体は少しばかり飛んで地面に落ちた

すると

 

「まだ、終わりじゃない……終わらせ、ない……いつか、あの方が、お前を殺しに、行く……イッツ・ア・ショウタイム……」

 

と言って、ザザの頭上に死亡タグが表示された

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