今時にしては珍しいガソリンバイクを進ませること、十数分
明久と詩乃の二人は、新宿のあるビル。その喫茶店に入った
そこで待っていたのは、一人のスーツ姿の男
菊岡だった
菊岡は二人に気付くと
「こっちだよ」
と呼んだ
二人が着席すると、ウェイターが現れて
「メニューでございます」
と明久と詩乃にメニューを手渡した
受け取った詩乃は、メニューを開いて固まった
なにせ、メニューに記載されている値段が詩乃からしたら信じられない値段だったからだ
すると明久が
「気にしなくていいよ。公務員の菊岡さんが払うから」
と言った
気のせいか、後半の語気は強かった
そして明久は、遠慮なく注文した
その総額は、五千円を越えた
しかし、菊岡は顔色を一切変えない
どうやら、大丈夫らしい
だから詩乃も、恐る恐ると注文
その総額は、約四千円を越えた
詩乃の金銭感覚からは、信じられない注文だった
注文を受けて、ウェイターは後退
すると、菊岡が
「朝田さん。今回は、危険なことに巻き込んでしまい、申し訳ありませんでした」
と言いながら、頭を下げた
「あ、いえ、あの……」
「素直に受け取っときな。この人がもう少し情報を出してくれれば、危険も少なかった筈だから」
詩乃がアタフタしていると、明久がそう言った
すると菊岡が
「それを言われると、こっちとしては弱いね」
と言いながら、苦笑いを浮かべた
そのタイミングで、ウェイターが一台の台車を押してきて
「お待たせしました」
と言うと、明久と詩乃の前に、皿を置いていった
そして、置き終わり
「では、お楽しみくださいませ」
と言うと、頭を下げてから去った
明久はフォークでアップルパイを崩すと、口に運んだ
詩乃が固まっていると、菊岡が
「遠慮なさらず、どうぞ」
と詩乃に促した
促された詩乃は、注文したモンブランを食べた
その一口で幾らなのか、最早考えたくなかった
そして二人がコーヒーを飲むと、菊岡がカバンの中から一台の端末を取り出して
「今回の事件ですが、逮捕した二人。新川恭二と新川伸一の二人から、様々な情報を入手出来ました」
と語りだした
まず、元赤目のザザこと、新川伸一
彼は、昔から病弱で何回も入退院を繰り返していたらしい
それを見ていた兄弟の父親
新川病院院長は、そんな兄に見切りを付けると恭二に英才教育を施した
自身の病院を継がせるために
だが、それが恭二にとっては重荷になってしまっていた
結果、そんな恭二の成績は最近は低迷
そんな時に、SAOから帰還した兄の話を聞いた
その話を聞いて、恭二は刺激を受けて世界が開けたらしい
そして、GGOをプレイ
しかし、先に死んだゼクシードが流した流言によりアバターの育成に失敗
ゼクシードを憎んでいたという
そんな矢先に、伸一がゼクシードの本名と住所を知ったことを思い出した
それを知った場所が、二人も使った大会参加申請所だった
伸一は
住所を見たのは、まさにそのスニーキングをしていた最中だった
ゼクシードは前の大会で、本名と住所を入力していた
それを、光歪曲迷彩で後を付いてきていた伸一が、部屋の端からスコープで目撃
直ぐにログアウトすると、それをメモに書いていたのだ
そして、薄塩たらこも同上
二人でどうやって殺すか話し合っていくうちに、死銃計画が出来上がったのだ
それが、時間を合わせて銃撃し、その後に病院から盗み出したサクシニルコリン
筋弛緩剤を致死量で注入
毒殺する
というものだった
問題は部屋への侵入だが、これは薬物と同じように病院から盗み出した電子マスターキーを使って侵入したのだ
だが、二人が死んでも誰も死銃を信じなかった
そもそも、死んだとは思わなかったのだ
それに業を煮やした恭二は、更なる死銃計画を敢行
その舞台となったのが、二人が参加したBOBだった
二人はその大会に参加していた中で、シノンを含めて四人居た
一人は、二人の前で撃たれたペイルライダー
後の二人の名前を聞いて、詩乃は黙祷するように目を閉じた
なお今回、以前はアバターを操っていた恭二が、詩乃の薬物注入係りに固執
それにより、伸一がアバターを操ることになった
しかしそうたると、電気スクーターが使えなくなり、時間に間に合わなくなっていたらしい
そこで伸一は、助っ人を二人呼んだ
SAO時代の仲間二人を
その二人は、ジョニー・ブラックこと兼元
そしてもう一人は、D・D
名前は、根本恭二
「あいつが、D・Dだったなんて」
と言ったのは、明久だ
根本は明久達の中学時代の同級生だった
それも、当時から卑怯で有名だった男子だった
考えてみれば、その手口は同一だった
その二人は、未だに捕まっていないという
二人の自宅に向かったが、もぬけの殻
今も、街灯のカメラを使って探しているらしい
そして菊岡は
「今回のことで、判事にもVRをプレイさせてみるか」
と言っていた
その後、明久と詩乃が食べ終わると菊岡は黒塗りのセダンに乗って去った
二人はそれを見送ると、詩乃は明久のバイクに乗った
実は明久が乗っているバイクは、過去に詩乃の祖父が乗っていたバイクと同型だった
だから詩乃は、過去に祖父に乗せられたことを思い出し、明久と一緒にもう一ヶ所に向かった
場所は、御徒町のダイシィカフェだ
そこで詩乃は、再度過去に向き合うことになる