ソードアート・オンライン 黄昏の剣士   作:京勇樹

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救済

バイクを走らせて、約10分後

明久と詩乃の二人は、ある喫茶店の前に到着した

 

「ダイシィ・カフェ?」

 

「そ、知り合いの店だよ」

 

明久はそう言うと、CLOSEの看板を無視してドアを開けた

カウベルが鳴り、明久と詩乃は中に入った

すると聞こえたのは、何かのゲームBGMらしい曲だった

 

「いらっしゃい」

 

と見事なバリトンで迎えたのは、カウンターに立っている大柄な黒人男性だった

すると明久が

 

「この人が店主のエギルさん。ALOでは頼れる盾役と店を経営してるんだ」

 

と言った

それを聞いて、詩乃は驚いていた

まさか、目の前の人物がVRMMOプレイヤーだとはと

 

「アンドリュー・ギルバート・ミルズだ。エギルとでも、呼んでくれ」

 

「朝田詩乃です」

 

二人が挨拶したのを確認すると、明久は

 

「で、こっちに座ってるのが、手前から順番に、キリト」

 

「桐ヶ谷和人だ。よろしく」

 

「次は、アスナちゃん」

 

「結城明日奈です。よろしくね」

 

「最後に、腕利き鍛治師のリズベット」

 

「篠崎理佳よ。よろしく」

 

三人を立て続けに紹介した

そして明久の紹介で、三人もVRMMOプレイヤーだと気付いた

しかも明久の感じから察するに、かなり長いと分かった

 

「で、あっちのボックスに座ってるのが、僕が率いるギルドのメンバーだよ」

 

と明久が指差した先に居たのは、十数人の男女だった

すると明久は

 

「今紹介すると時間が掛かるから、各自でお願いねー」

 

と言った

 

「おいこら!」

 

「投げ出しおったのう」

 

「……まあ、人数居るからな」

 

赤い髪の男子は怒ったが、他は納得した様子だった

すると、再びドアが開いて

 

「ごめーん! 遅れた!」

 

と一人の少女が入ってきた

すると明久が

 

「あ、フィリア」

 

と名前を呼んだ

すると呼ばれた少女は、明久を見て

 

「あ、ヨシアキ! 家の用事で少し遅れちゃったよ」

 

と言った

そして、詩乃を見て

 

「貴女が、シノンだよね? 私は、天川琴音。好きに呼んで」

 

「私は、朝田詩乃です」

 

二人は互いに自己紹介すると、握手した

その瞬間

 

(ライバルだ!)

 

と二人は確信したそうな

すると明日奈が

 

「女性のVRMMOプレイヤーは珍しいから、友達になりたいなぁ」

 

と微笑みながら言った

それに同意するように、理佳が

 

「そうね。銃の世界がどんなんだったのか、気になるし」

 

と言った

それを聞いて、詩乃は辛そうに俯いた

それは、詩乃の経験からだった

今まで、何度も求めた友達

しかし、求めた度に裏切られてきた

詩乃の過去を知る度に、殆どが詩乃の手を振り払った

それがまた繰り返されると思うと、詩乃は手を差し出せなかった

すると明久が

 

「大丈夫だよ、詩乃」

 

と言った

そんな明久に顔を向けると、明久は

 

「ちょっと言いづらいけどね……ここに居る皆は、詩乃の過去を知ってる」

 

と言った

それを聞いて、詩乃は息を飲んだ

なぜ、知ってるのかと

 

「なんで……」

 

「実はね、ヨシアキ君から頼まれたの。シノンさんに会わせたい人が居るから、探してほしいって」

 

詩乃が呟くように明久に問い掛けると、明日奈がそう言った

 

「会わせたい……人?」

 

と詩乃が首を傾げると、エギルがカウンター奥のドアを開けた

そこから現れたのは、一組の親子だった

しかも一人は、幼稚園児位の女の子だった

女性はどうやら、その母親らしい

女性は抱えていた女の子を椅子に座らせると、詩乃に向き合い

 

「初めまして。私の名前は、水野幸枝と言います。この子は、瑞穂と言います」

 

と名乗った

 

「私は」

 

「朝田詩乃さん、ですよね?」

 

詩乃が名乗ろうとした時、幸枝が被せるように詩乃の名前を言った

そして、詩乃が驚いていると

 

「今は東京に住んでいますが、前住んでいたのは……」

 

と幸枝は、前に住んでいた住所

そして、働いていた場所を言った

その場所は、あの事件の現場だった

 

「あの事件の後私は、あの街から逃げるように東京に越してきました。あの事件を忘れたかったから……でも、昨日の夜に電話が来て、話を聞きました……ごめんなさい、詩乃さん。本当だったら、直ぐにでも貴女に会わないといけなかったのに」

 

幸枝はそう言うと、涙を流した

その状況に詩乃が混乱していると、幸枝は瑞穂を見て

 

「実はあの時、私は妊娠していたんです……もしあの時犯人に撃たれていたら、私だけでなく、この子も死んでいたでしょう」

 

と言った

確かに、見た目から考えると約一年後に産まれたのだろう

その時、瑞穂が椅子から降りて詩乃に歩み寄ると、肩から掛けていたバッグの中から一枚の折り畳まれた画用紙を取り出して

 

「おかあさんと、みずほを、たすけてくれて、ありがとう、しのおねえさん」

 

と舌ったらずに喋りながら、その画用紙を詩乃に差し出した

その画用紙には、両親に挟まれているのだろう瑞穂の絵とひらがなで

 

『ありがとう、しのおねえさん』

 

と書かれてあった

その光景に詩乃が固まっていると、明久が

 

「あのね、シノン……確かに、過去の罪は消えない……けどね、一方向だけじゃなく、誰かを助けたって結果があるはずなんだ……そしてシノンは、彼女達二人の命を救ってたんだ」

 

と諭すように言った

その直後、詩乃の両目から涙が溢れた

何故かは、詩乃には分からない

そして詩乃は、気付けば瑞穂を抱き締めた

涙を流しながら、瑞穂を抱き締めた

瑞穂は何故詩乃が泣いてるのかわからず、首を傾げながら

 

「どうしたの、しのおねえさん?」

 

と問い掛けたが、詩乃には答えられなかった

その光景を明久達は、嬉しそうに眺めていた

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