ソードアート・オンライン 黄昏の剣士   作:京勇樹

81 / 201
ユウキの頼み

最後の一撃がアスナの胸に当たる直前で、止まった

それは、システム外スキル

スキルキャンセルだった

何故スキルキャンセルを行ったのか分からず、アスナは困惑した表情でユウキを見た

すると、剣を下ろしたユウキが

 

「いいね、お姉さんに決めた!」

 

と言って、子供みたいに笑った

そしてウィンドウを開いて、何かしら操作した

すると、頭上に

 

《勝者、ユウキ!》

 

と表示された

それ自体に否やはない

実際、アスナはユウキに負けそうになっていたのだから

そしてユウキは、羽を出すとアスナに歩み寄り

 

「じゃあ、行くよ!」

 

と言って、アスナの手を握った

 

「い、行くってどこに?」

 

アスナが困惑した表情で問い掛けるが、ユウキは何も言わずにアスナの手を掴んだまま飛んだ

その直後にアスナも、羽を展開

ユウキの後を追った

そして下を見ると、観衆が驚いた表情で飛んでいく二人を見上げていた

その中でらヨシアキとキリト、ケイトの三人は何か確信した表情で飛んでいくアスナ達を見ていた

その後、しばらく飛んでいくと二人は、アインクラッド外に出た

そして二人は、今から最前線間近

45層に入った

45層は洞窟内を彷彿させる層で、全体的に暗い層だ

更に入り組んだ通路が特徴で、SAO当時も攻略するのに少し時間が掛かったのを覚えている

何回かアスナは、何処に行くのかユウキに問い掛けたが、ユウキは答えずにその45層主街区を歩いていく

羽は大陽か月の光がないと、飛ぶ力を失ってしまうのだ

唯一例外的に、インプは短時間だが飛べるようになっている

そしてユウキは、主街区中心部のあるバーに入った

そこはやはり最前線近くだからか、かなり活気に満ちていた

ユウキに引かれたアスナは、奥の方の机に向かった

そこには、五人のプレイヤーが居た

 

「アスナ、紹介するね? ギルド、スリーピング・ナイツのメンバーだよ!」

 

とユウキが言うと、そのメンバーが自己紹介してきた

ウンディーネで回復役のシウネー

サラマンダーで盾役のテッチ

同じくサラマンダーのノリとタルケン、ノームのジュン

そして、リーダーのインプたるユウキ

この六人で、スリーピング・ナイツという

 

「それで……私を連れてきた理由は?」

 

とアスナが問い掛けると、ジュンが

 

「リーダー……まさか、言ってないのか?」

 

と問い掛けた

するとユウキが、少し上を見てから

 

「言ってなかったや」

 

と苦笑いを浮かべながら、後頭部を掻いた

それを聞いて、スリーピング・ナイツのメンバーは全員倒れた

それを見たアスナは、内心で

 

(元気だなぁ……まるで、この世界で生きてるみたい)

 

と思った

すると、ユウキが

 

「あのね、アスナ……僕たち、最前線のフロアボスを倒したいんだ!」

 

と言った

それを聞いたアスナは

 

「それだったら、今度行われる攻略に参加すればいいんじゃ」

 

ないかな

と、アスナは言い掛けた

しかし、ユウキは首を振って

 

「違うんだ、アスナ……僕たちだけで、フロアボスを倒したいんだ!」

 

と衝撃的なことを告げた

そして、その理由はアインクラッド第一層の黒鉄宮

旧SAO時代は生命の碑があった場所に、今は剣士の碑が置かれている

キリトやヨシアキ達は、かつてのことを思い出しそうだから余り寄らないが、その剣士の碑はフロアボスを攻略したパーティーが記されるのだ

とはいえ、攻略に乗り出すのは大抵がレイドパーティー

レイドの場合は、各パーティーのリーダーの名前が記されることになっている

しかし、1パーティーのみの場合は違う

1パーティーのみの場合、そのパーティー全員の名前が記されるのだ

ユウキ達はその機能を使い、自分達の名前を残したいと考えたようだ

それを聞いたアスナは、取り合えずは納得したと頷き

 

「それは分かったけど、何で私なの? 他に適任が居たと思うんだけど……黒い剣士とかオレンジ色の剣士とか」

 

とアスナは言った

するとユウキは、思い出すように

 

「あー、うん。居たね、三人程」

 

と言った

その言い方から、どうやらケイトも挑んでいたらしい

 

「だったら」

 

「でもダメなんだ……彼等は、気付いちゃったから」

 

アスナの言葉に被せるように、ユウキはそう言った

どうやら、三人は何やら気付いたらしい

それが、ユウキが拒む理由のようだ

 

「だからお願い、アスナ……僕たちに、力を貸して!」

 

ユウキはそう言って、深々と頭を下げた

それを聞いたアスナは、少し考えると

 

「分かりました。私で良ければ」

 

と承諾した

その後アスナは、軽く段取りを決めてから主街区中心部の転移門に向かった

承諾した理由は、ワクワクしたからである

それはまるで、キリトと出会った時と似ていたから

 

「ふふ」

 

そしてアスナは、ログハウスに到着してログアウトしようとした

その時、不意に視界が真っ黒になってしまった


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。