ユウキと別れた後明日奈は、また板橋と話し合った
その内容は
「そういえば、ここにはメデュキボイドが置いてあると聞いたんですが……」
だった
すると板橋は
「それもご存知でしたか」
と言いながら、頷いた
そして
「メデュキボイドというのは、医療に転用したVR機器です」
と語りだした
それは、今から約三年前にこの病院に納入された医療用大型VR機械だった
その目的は、体質や何らかの理由により麻酔が使えなかったり、ユウキ達のような重病患者のメンタルケア、もしくは麻酔代わりに使うのだ
そしてユウキは、それが納入されてからずっと
三年間、24時間フルダイブしっぱなしなのだと
ユウキ達の早さの理由に、気付いたのだ
今まで明日奈は、フルダイブに一番慣れているのは、自分を含めた旧SAOプレイヤー達だと思っていた
なにせ、約二年間もフルダイブし続けていたのだから
しかし、ユウキ達はそれを上回る三年間
しかも、メデュキボイドはナーヴギアを上回る素子を使っているのだと言う
その二つが合わさり、ユウキ達の早さが生み出されたのだと気付いた
そして、ヨシアキとキリトの二人も気付いていたのだ
ユウキ達が、メデュキボイドを使っているということに
キリトは、恐らくメデュキボイドを知っていたから
ヨシアキは、その気配りから知っていたのだろう
ヨシアキは普段はバカだが、その気配りから相手の状況を察することが出来る
恐らくは、刃を交えた時に、アミュスフィアではないと気付いた
そこから、相手がナーヴギアの上位機器
メデュキボイドを使っていると察したのだろう
その後、キリトと答え合わせをしたはずだ
だから、キリトと一緒に動いたのだ
その行動の理由を察したから
「実は私は、フルダイブ技術が出た時、それが医療に使えると期待していました……しかし、先にゲームに使われて、落胆もしていました」
板橋はそう言って、眠っているユウキを見た
確かに、フルダイブ技術は医療にも使える
なにせ、ダイブ中は体の全感覚がカットされているのだ
初期のナーヴギア以上の素子を使用しているメデュキボイドならば、フルダイブしながらの手術すら可能だろう
確かに、期待するのも無理からぬことだった
ガン患者やユウキのような白血病患者
更には、今は治っているが、裕也のような難病患者が手術を受けるまで、痛みに苦しまれることも減るだろう
それを考えれば、板橋が期待するのも分かるような気がした
「そして、最初に出来たメデュキボイドがこの病院に納入された後、私はユウキ君に使用を進めました……白血病の治療というのは、患者に苦痛を強います……それを、少しでも和らげてあげたかったのです」
その思いに、明日奈は共感した
そして、板橋は
「しかし、ここ一年……ユウキ君の容態は徐々に悪化してきています……恐らくは持って、後数ヵ月でしょう……」
と言った
すると、明日奈は
「骨髄移植は……」
と呟いた
それを聞いた、板橋は
「ユウキ君に適合する方が中々見つからないんです……そもそも、見つかっても、協力してくれるかは任意です……助かる可能性は、かなり低いでしょう……」
俯きながら、そう言ったのだった
それはまるで、奇跡に祈っているように、明日奈には見えたのだった