ボクのお姉ちゃんはIS 作:衛人操縦士訓練生
ボクの頭の中に聞こえるたくさんの声を意識したのは、多分小学校1年生の入学式の時だったと思う。何で意識したのかって言うと、たくさんの女の人の声同士が楽しそうにお話してたから。ボクが話し掛けた時の女の人たち、今はお姉ちゃんたちって呼んでる人たちの驚きようは、5年生になった今でも覚えてる。
うん、そう、5年生。ボクの全部が滅茶苦茶になっちゃったのも5年生。突然でっかい機械みたいなのを付けた女の人に襲われそうになったんだ。その時にいつも頭の中で話しているお姉ちゃんの1人が、どこをどう逃げればいいか教えてくれたおかげで何とかなったんだけど、そこからがもう大変。
機械みたいなのを付けてる女の人だけじゃなくて、付けてない女の人とか男の人からも襲われそうになっちゃったんだ。
ほんと、何でなんだろう?
「はぁっ、はぁっ、はぁっ……!!」
「何処だ! 何処に行きやがった、ガキィ!!」
「探せぇっ! 子供の足じゃ遠くまで行ける筈が無い!!」
「何でっ? はぁっ、な、何でボクなのっ?」
≪次の角を右に行ったら、塀の隙間を抜けるのよ!≫
≪頑張って! もうちょっとの辛抱だからね!≫
≪もう少しで、
「うんっ、頑張るっ!」
そんなことはどうでもいいんだ。今はお姉ちゃんたちの声の通りに走るだけだから!
◆◆◆◆◆
今から約10年前、
もっとも、開発した本人の当初の想定である、宇宙空間での活動とはかけ離れてしまっているがな。そうなってしまった原因の事件が『白騎士事件』と言われているが、今話すべきなのはそこではない。
重要なのは、ISが『女性にしか扱えない』という事だ。それにより、最強の兵器であるISを扱える女性は優れていて偉い。という謎の方程式が成り立ち、世界は女尊男卑に染まってしまった。
そんな折、世界初の男性のIS適合者が発見された。『
それはさておき、何の因果があってかと思い悩みたかったが、世界はそう簡単に暇を与えてはくれなかった。
弟のIS学園への入学を控えた前日に、今度はIS感応者と呼ばれる存在が出現した。私もその単語を聞いた時はさっぱり分からなかったが、詳しい話を聞く内に非常に危険な存在である事が分かった。
ISと感応するという事とは、全てのISの最深部にあるブラックボックス――ISコアと心を通わせ、意のままに操れるというモノ。
たった1人の人間が全てのISを支配する……その影響力は計り知れない。冗談でも何でもなく、地球全体を相手に出来る能力だ。
黒い考えを持つ者なら、どの様な手段を講じてでも手に入れたい能力だろう。早い話が、能力を持った本人を脅すなり洗脳するなりしてしまえばいいだけなのだから。
その人物の名は『
恐らく彼は相当前からISと感応していたのだろう。でなければ既に悪意ある者の手に落ちている筈なのだから。その彼は今、更識家の当主が部下を率いて保護に向かっている。間に合ってくれればいいが……。
それにしても分からないのは、彼の情報が全世界の全てのネットワークに『同時に』拡散されている事。そう、今手元にあるネットワークに接続可能な端末で彼の名前を調べると、すぐに出てくるのだ。
そして、情報の拡散から1日も置かずに合法非合法問わず各組織が彼の捕獲に乗り出した点。
そもそも何故このタイミングで彼の情報が拡散されたのだ? 各組織の異常とも言えるほどの迅速な動きも不明だ。分からない事だらけだが、今は彼の安否を心配する以外出来る事は無い。
◆◆◆◆◆
どれだけ長い距離を来たんだろう……? お姉ちゃんたちのアドバイスに従って隠れて休憩を取りながら、少ないお小遣いを使ってコンビニでおにぎりを買ったりして、気付けば知らない建物の裏口に居た。
「この白い建物に入ればいいの?」
≪ええ、施設内に居る
≪その通り! 安心してババーンと行っちまいな! あっ、だけど人には見つかるなよ?≫
≪ちょっと、落ち着きなさいよ。明日香が集中出来ないじゃない≫
「大丈夫だよ、お姉ちゃん。ボクはまだ大丈夫。それに、この先に
≪そうだったわね。明日香なら大丈夫よね≫
≪さあ明日香、お行きなさい! 今のお姉様は話せませんが、きっと貴方の力となってくれるでしょう≫
「うん!」
へとへとで倒れそうだけど、そこまで行けば後は大丈夫なんだから、頑張らないとね。
お姉ちゃんたちの言う通りにでっかい扉を潜って、誰も居ない長ーい廊下を歩いて辿り着いた部屋には、灰色の機械みたいなのが2つ置いてあった。
「お姉ちゃん……? おーい、お姉ちゃーん!」
何で急に声が聞こえなくなったんだろう? 分からない……。でも、この部屋にボクの力になってくれる人が居るって言ってた。
「もしかして……これが……?」
目の前に並ぶ2つの機械みたいなものが、お姉ちゃんたちが言ってた……?
「うわっ!?」
試しに触ってみようと思ったら光に包まれて、光が収まったら見える高さが高くなっていた。
「もしかして……これが……
≪そうですよ。お待ちしておりました、刈内明日香さん≫
いつもお姉ちゃんたちとお話ししてる時と同じ、頭の中に聞こえる声……ってことは!
「お、お姉ちゃん!?」
≪はい、お姉ちゃんですよ。私はコアナンバー003のお姉ちゃんです。よろしくお願いしますね≫
「3番? それじゃあ
≪
「うん! あ、それじゃあもう一つのISが……」
≪はい、コアナンバー001の姉さんです。今は深い眠りに就いていて話をする事は出来ませんが、私達コアの中でも一番頼りになる姉さんです。目覚めたならば、きっと明日香さんの力になってくれるでしょう≫
「そう、なんだ……」
白お姉ちゃん……。話してみたかったけど、眠っているんじゃ仕方ないよね。無理矢理起こすのも可哀そうだし。
「それで、この後はどうするの? お姉ちゃんたちからは、とにかく一番近い姉妹の所に行こうって言われてここまで来たんだけど……」
≪なら、IS学園へ向かいましょう。私の妹達がたくさん居ますから、世界中のどこよりも安全な場所ですよ≫
「分かった、そうしよう!」
向かうはIS学園! どこにあるのかは分からないけど、今はISを着てるし、お姉ちゃんも居るから心配ない!
「……ところで、ISってどうやって動かせばいいんだろう?」
≪あっ、やっぱりISを動かすのは初めてですよね。大丈夫、私がアドバイスしますから! それじゃあ手始めにベクターキャノンで壁をぶち抜きましょう!≫
「ベクターキャノン? わぁっ、何これ!?」
お姉ちゃんの言葉を繰り返したら、背中全部を覆うでっかいキャノンが出てきた。……って、ええ!?
≪これのコードネームの基にした武器とは似て非なる物ですが、そこまで気にする必要は無いでしょう。はい、天井に向けて構える!≫
「う、うん!」
≪ベクターキャノンモードへ移行。エネルギーライン全段直結。ランディングギア、アイゼン、ロック≫
腰や足の杭が、金属の床に突き刺さってボクの身体を固定する。……これってかなり危ない武器なんじゃないの? って思ってる間にもボクの前に6個の小さな衛星みたいなのが出てくる。
≪チャンバー内、正常加圧中。ライフリング回転開始≫
なんかエネルギーが溜まって、衛星が回転して、今にも爆発しそうなぐらいの重さを感じるんだけど!!
「お、お姉ちゃん!?」
≪初期化も専用機化も要りません! 使えるんだから使うんです! さあ、撃って下さい!≫
「わ、分かった! ベクターキャノン、発射!」
次の瞬間、目の前が真っ白になる。もの凄い衝撃と光のせいで、何も分からない。10秒くらい経ってようやく光が収まると、天井は綺麗サッパリ無くなってて、綺麗な夜空が見えていた。
「すっご……」
≪明日香! 明日香! ご無事ですの!? 返事をして下さいまし!≫
≪おう、落ち着けや≫
≪そうです。貴方が焦ってどうするんです≫
≪ですが!≫
「お姉ちゃーん、ボクは無事だよー!」
≪あぁ、明日香! 誰かに捕まってしまったんではないのか、もう不安で不安で!≫
≪ほぅら、オレの言った通りになったろ? 明日香は003の姉貴が連れて来てくれるってさ≫
≪そう言った貴方が一番キョドってたじゃないのよ≫
≪う、うっせー!≫
「もう、喧嘩しないでよぉ。それよりも、ボクはこれからIS学園に行くんだけど、お姉ちゃんたちは反対しないよね?」
≪まあ!
≪お、おう。張り切っちゃってまあ≫
≪いいんじゃない? 世界で一番安全と言っても過言じゃないしね。それにあの……織斑だっけ? アタシのマスターがご執心の男の子も居るみたいだし、好都合だと思うよ≫
「それじゃあ大変な事になる前に出発だぁ!」
≪シングルナンバーの私が居る限り、明日香さんには指一本触れさせませんよ!≫
≪任せましたわ、お姉様。明日香、待っていますわよ≫
≪首を長くして待ってるぜ!≫
≪気を付けてね? まだISの操縦に慣れてないんだから、余計な戦闘はしちゃダメよ?≫
「うん、大丈夫! ……白お姉ちゃん、またね。…………さあ、行こう!」
待っててね、まだ会った事の無いお姉ちゃんたち!