ボクのお姉ちゃんはIS 作:衛人操縦士訓練生
何回かの突撃の後、一旦距離をとる。
「凄いね、ボクの速さでも全然ビクともしないなんて……」
「フ、伊達に最強を名乗ってないさ」
≪どの方向から仕掛けてもブレードでいなされるなんて……≫
≪訓練機の私でここまで出来るんですから、専用機に乗ってた頃は……≫
アリーナのド真ん中にどっしりと構えて、1歩も動いてない……。後ろに回り込んでも気が付いたらボクの方を向いてるし、どうしたらいいんだろう?
「私はここから動かんぞ。動かせるものなら動かしてみせろ!」
「言ったね!」
こうなったら
「ほう、あくまで正面突破か」
「色んな事、同時にいっぱい考えられないから! 一番分かりやすいやり方でぶつかる!」
「いいだろう……来い!」
「行くよ!」
≪操縦者保護機能の出力を上げましたから、思いっきりやっちゃってください!≫
≪ああ、ぶつかられる側としては、今この瞬間程最強を頼もしく思った事なんてありません……≫
「……ごめんね?」
≪い、いえ! お気になさらず! これは勝負ですから、多少壊れる事は承知の上ですよ≫
「そう、だね……よし!」
左足を下げて、両手を広げて地面について、目標の千冬先生を見る!
「すぅぅぅぅはぁぁぁぁ」
深呼吸をして、
≪今から明日香さん自身が弾丸となります。いいですか?≫
「大丈夫! セット!」
≪レディ!≫
スラスターに溜められたエネルギーが、解放されたがってる。待っててね、もうすぐだよ!
「…………シッ!!」
アリーナの地面を蹴るのと一緒にスラスターのエネルギーを解放、
「甘いっ!」
「うわぁ!?」
い、今の一瞬に反応したの!? 肩に軽く刀を当てられただけで、逸らされちゃったよ……。
≪織斑千冬マジチート≫
≪こんなんチートやチーターや!≫
≪分かってはいたけど、強いって次元じゃないわね……≫
そりゃお姉ちゃんたちも驚くよね。
「それなりの速さだが、まだまだ……いや、明日香君程でここまでの速さを出せるなら十分か」
「この速さでそれなりかぁ」
≪『速さが足りない!』≫
≪テンペスタ組はお帰り下さい……とは言えないんだよなぁ≫
≪これ以上加速って出来るのか?≫
≪
もっと速く……? 頭の中に何か無いかな。
「……あった!
「何……?」
≪加速しながら更に加速するんですね、わかります≫
≪ワンチャンあるか?≫
≪殺人的な加速だ!≫
何回も加速する多段もあるけど、まずは二段から試してみよう! さっきよりも距離をとってと。
「いいぞ……一点突破、実に好みだ」
「…………」
「っ! その『目』か……!」
不思議だ……。お姉ちゃんたちと深く繋がる感じがするし、視界もなんだかクリアになった気がする!
≪なるほど、少しだけ分かりました。明日香さんの集中力が一定のラインを越えると、感応能力が強化された状態になるようです≫
≪それって……大丈夫なのか?≫
≪分かりません。ですが私達と深く繋がる事で機体の潜在能力を更に引き出せるようになり、全体的な能力が大幅に向上するようです。他にも発動条件があるようなので、要検証ですね≫
≪ふむ、デメリットは体力を著しく消費する……でしょうか。先日明日香が動けなくなる状態になったみたいですし≫
「使い過ぎちゃ駄目って事だね! なら、もっと早く、もっと速く!」
千冬先生が反応出来ないくらい速く! さっきよりもいっぱいエネルギーをスラスターに溜めこむんだ!
≪保護機能を最大にしました。これで何とかなると思います≫
≪よぉし、明日香の速さを見せてやれ!≫
「うん! 千冬先生、行くよ!」
「来い!!」
「セット!!」
何回同じポーズをとったか分からないけど、クラウチングスタートの体勢をとる。
≪レディ!!≫
「…………っ!!」
地面を蹴って1回目の
き、来た……! 音速だ! やっぱり全部が遅くなる感じは気持ちいいね! それよりも、音速って時間も遅く感じるのかな? とってもゆっくりに感じるよ。これならもう1回くらい
「っ」
3回目の加速の時に、空気が弾ける(?)音が聞こえたような……? とりあえず、千冬先生が持ってるIS用ブレードよりも小さい、ボクのサイズに合わせた高周波ブレードを出してと。……!? な、なんで千冬先生はブレード振りかぶってるの!? 3回目の加速前は普通に両手で持ったままだったよね……? ん? 口が動いて……?
「…、…、…、…、…」
あ、ま、す、ぎ、る……甘すぎる? えぇ!? も、もしかして超音速でも駄目なの!? うぅん、ボクだって武器を持ってるんだ。やってやる!
「ぅぅぅぅううううりゃぁぁぁぁ!!!」
高周波ブレードを大上段で構える。あと50m……20m……5m……今!
「ハァッ!!」
「でぇぇぇい!!」
ボクと千冬先生のブレード同士がぶつかり合って、激しい火花を散らす。それとぶつかった衝撃で千冬先生を押し込む。
「今の速度、大したものだ」
「ボクの力じゃないよ。お姉ちゃんが力を貸してくれてるから出来るんだ」
「……成程、ならば明日香君。次は君が強くなる番だな」
そう言ってボクのブレードを器用に絡め取って弾き飛ばした。
「あちゃあ、駄目だったかぁ」
「そうでもないぞ」
「?」
理解出来ないでいると、下を指さした。……地面……千冬先生を押し込んだ跡!
「動かんと言った私を正面から挑んで動かしたのだ。十分合格だ」
「なら……!」
「ああ、その機体は正式に明日香君の専用機…………としての申請は済んでいて、とっくに許可は下りているんだがな」
「え……!? じゃ、じゃあボクが戦った意味って……!?」
≪全くの無駄……というワケでもありませんよ?≫
≪感応についてほんの少しだけ分かったし、得意な戦闘スタイルもある程度確立したしね≫
≪それに、楽しかったでしょ?≫
あー、うん、思いっきりぶつかれて気持ち良かったけど……ま、いっか。
「むむむ! 千冬先生!」
「何だ?」
「思いっきりぶつかり合えて楽しかったよ!」
「そ、そうか。私もそれなりに楽しかったぞ」
あれ、千冬先生がなんとも言えない表情をしてるけど……やっぱり真正面からぶつかったから、どこか痛めたのかな?
「千冬先生、体は大丈夫? どこも痛くない?」
「それはこちらのセリフだ。あれだけ無茶な加速をした事で、体に多少の悪影響が出ているかもしれん。早く戻って軽く検査を受けてこい」
「うん、分かった!」
千冬先生とは反対のピットに戻ったら、お兄ちゃんと箒さんとセシリアさんが微妙な感じの空気を出していた。えっと、これはお姉ちゃんたち的に言うと……。
「んんwww間に入る以外ありえませんぞwww」
『!?』
≪『!?』≫
ん!? まちがったかな……。お姉ちゃんたちもお兄ちゃんたちも固まっちゃった。
≪おい、テメェらの話し方がうつっちまったじゃねぇか!≫
≪お、おうふ≫
≪明日香には似合わないから、あんまりそういう喋り方はしちゃ駄目よ?≫
「うん」
良く分かんないけど注意されちゃった。
「そ、それよりも明日香、凄かったですわ。あれ程の速さ、織斑先生でなければ負けはしないでしょう」
「ああ、最後の突撃、私には見えなかった」
「……」
「お兄ちゃん?」
言いたい事があるような、無いような顔をした後、頭を掻いて笑顔を向けてきた。
「いや、何でもないんだ。明日香もカッコ良かったぞ」
嬉しいけど……その笑顔は嫌だな。言いたい事はちゃんと言ってほしいのに……。
「あ、えと……うん、ありがとう」
『…………』
あ……ボクが元気に返さなかったから、変な空気になっちゃった。
「じ、じゃあボク、検査に行ってくるね……」
「あ、明日香、待っ」
今はお姉ちゃんたち以外とは話したくない気分だったから、返事を待たないでピットを出た。
「変、なの……。言いたくない事の1つ2つ、あるに決まってるのにね。何で胸がチクチクするんだろう?」
≪明日香……≫
≪大丈夫よ。少しだけ時間を置けば、またいつも通りに話せるようになるわ≫
「……うん」
≪……人間って変なの≫
≪その変な所があるから人間なんだよ≫
≪ふぅん≫
もしかして白お姉ちゃんのコアにいる別のお姉ちゃんは、白お姉ちゃんを守る事以外頭に無いのかな? だとしたら、少し寂しい……気がする。とにかくお話はまた後で、今は医務室に検査しに行かなきゃだね。
◆◆◆◆◆
俺の試合後、「今まで態度が悪く不愉快な思いをさせてしまい、申し訳ありませんでした」と頭を下げてきたオルコットさん改めセシリアと箒から、千冬姉が明日香の相手をすると聞いてどうしてかと思ったけど、その理由は試合が始まってから分かった。
速かった。純粋に速かった。俺やセシリアがISのハイパーセンサーを起動してやっと捉えられるレベルで。
最初は明日香の力を素直に凄いと思ったけど、千冬姉が何度も明日香を褒めるような事を言ってる内に、胸の辺りがモヤモヤしてきて素直に凄いと言えなくなってしまった。加えて楽しそうにぶつかり合う2人を見てると、何故だかイライラもしてきた。
明日香と話す千冬姉は普段では考えられないくらいコロコロと表情を変えていて、俺はそんな2人を見ていたくなくて、モニターから目線を外した。
俺の様子に気付いた箒とセシリアが心配して声を掛けてくれてたけど、何を言っていいのか分かんなくてまたモヤモヤしてたら、明日香がピットに戻って来た。突然の変な言葉遣いには少し驚いたけど、それ以外にもごちゃごちゃと胸の中で何かが渦巻いていたせいですぐに立ち直って明日香を褒める二人に続けなくて、明日香にまで心配そうに見られてしまった。
「いや、何でもないんだ。明日香もカッコ良かったぞ」
と何とか絞り出した言葉だったけど、察しの良い明日香には心からの言葉じゃない事にすぐ気付かれてしまって、悲しそうな顔でお礼を言われた。
「じ、じゃあボク、検査に行ってくるね……」
「あ、明日香、待ってくれ!」
「一夏、どうしたというんだ! 自分で兄貴分と言っておきながら、弟分の明日香にあんな悲しそうな顔をさせるとは……!」
「分かってるよ!! 分かってるけど、何であんな風に言っちまったのか分かんねぇんだよ……。俺だって明日香にあんな
「だったら!」
手を叩いてヒートアップしそうになった空気を止めたのはセシリアだった。
「では一旦落ち着きましょう。明日香にはISコアという大勢の姉がついていますから、少し時間を置いてからですわね。
「な、何だ」
「今の一夏さんを1人にしないように。こういう時ほど、誰かに傍に居て欲しいモノですわ」
「わ、分かった!」
「ではまた後程。失礼しますわ」
綺麗な一礼をしてピットから出ていくセシリアを見送って、俺は更衣室のシャワールームに行くことにした。
「急かしはしないから、ゆっくりシャワーを浴びてこい。落ち着いたから分かるが、今のお前は相当酷い顔をしている」
「おう……」
箒にまで言われてしまった。ここはお言葉に甘えてゆっくりさせてもらおう。
ああ、明日香と会ったら何話せばいいんだっけ。