ボクのお姉ちゃんはIS 作:衛人操縦士訓練生
医務室で簡単な検査を受けて特に異常は無いと言われてから、ISスーツのままで制服を更衣室に忘れた事に気付いて取りに行った後、更衣室近くの自動販売機のベンチに座ってどうしようか迷っていると真耶先生と会った。
「あら? 明日香君、どうしたんですか?」
「真耶先生……!」
ぼーっとしてたし嫌でもなかったけど、肩が触れるくらい近くに座られてビックリした。それと真耶先生の笑った顔を見ると、胸の奥が変な感じになるんだよね……。
≪この先生近いよぉ!?≫
≪スルッとパーソナルスペースに入ってきたな≫
「何だか元気がないですね。私で良ければ、理由を聞かせてもらえませんか?」
「でも……」
「無理にとは言いません。ですけど、話す事で少しは楽になるかもしれませんよ?」
どうしよう……? 真耶先生なら内緒にしてくれそうだけど……。
≪せっかくだし、話してみたら?≫
≪いいのか? 時間を置けっつったのお前だろ?≫
≪まぁ、そうなんだけどね。こういうのって時間を置きすぎても余計解決しにくくなるし、それなりに頼りに出来る人がいるなら相談するのも方法の1つよ≫
お姉ちゃんが言うなら、相談してみようかな。
「その……お兄ちゃんの事なんだけどね? 何か隠してるっていうか、本当に言いたい事があるのに言ってくれないのが……何て言えばいいんだろう? えっと……」
「もどかしい?」
「うん……」
お兄ちゃん以外にも隠し事をされた事だってあるのに、どうしてだろう……?
「胸が、チクチクするんだ。こんなの初めてだから、よく分かんなくなっちゃって……」
「初めて、ですか。そうですね…………まず聞きますけど、明日香君は織斑君の事をどう思っていますか?」
「どうって言われても……」
「んー」
顎に人差し指をつけて考え込む真耶先生を見て、可愛いなって思ったのはここだけの秘密だよ。
「あっ! 織斑君の事、好きですか?」
「好き? うん、好きだよ」
「即答出来るって事は良いですね! それじゃあ次に、織斑君の事を好きになった理由は何ですか?」
「それは……初めてボクの目をちゃんと見て、言葉をぶつけて来たから……かな」
大事な人を傷付けられたら許せないって、ハッキリと言ってくれたから。たったこれだけって思うかもしれないけど、ボクにとっては凄く大事な事。
「ちゃんと相手の目を見て自分の意見を言うのって、簡単そうですけどとっても難しいんですよね。大人になると実感します」
「自分の意見……」
「そこで質問です。明日香君は織斑君にどうしてほしいですか?」
「ボクは……お兄ちゃんに、ハッキリと言ってほしい。言いたくない事なら仕方ないと思うけど、ずっと抱えたままモヤモヤするのは嫌だから」
真耶先生はまるでボクがそう言うって分かってたみたいに笑って、ピンと人差し指を立てるとある事を提案してきた。
「なら、やる事は1つです!」
「え……?」
◆◆◆◆◆
「では、本題に入りましょうか」
シャワーを浴びた後、戻ってくる気配の無かった明日香を除いた俺と箒とセシリアの3人で、食堂で夕食を食べているとセシリアが話を切り出した。
「試合後の一夏さんの態度、あれは一体何なんですの?」
「それは……」
俺自身、何であんな態度をとってしまったのか分からないから説明しようがない。けど、セシリアはそれじゃあ納得しないだろうな。
「待て。確かにあれは良くなかったとは思うが、一夏がそうなった原因は何なのだ? 私はそこが分からない」
一瞬、箒ってこんなに鋭かったっけと思った俺は悪くない筈……。
「そうですわ。あの時は織斑先生と明日香の試合を見ていただけですが……」
「あぁ、あれは凄かったな……。目で追い切れない速度の攻防。明日香があれ程の実力を持っていたとは……」
「単純なIS適性だけでは……ってそうではありませんわ! 今は明日香と一夏さんの事ですわ!」
「そうだ! 2人の試合を見ていただけだが、あれがどうかしたのか?」
俺の事を置いてけぼりで盛り上がっていたが、思い出したかのように追及を再開してくる。
「えっと、それはだな……」
正直に答えようかはぐらかそうか迷っていると、俺達以外にもいた人達の話し声が全くしなくなっていた。
「一夏さん?」
「一夏、どうした? ……む、何だこの空気は」
「言われてみれば……」
2人も気付いたみたいだ。話し声1つ聞こえないのは、どう考えてもおかしいからな。
「お兄ちゃん!!」
『!』
食堂の入り口から、俺を呼ぶ明日香の声が聞こえた。この複雑な心境では会いづらかったが、向こうから来た以上無視は出来ない。ここは腹を
『!?』
入り口に背を向けていたので、声のした入り口の方に振り向いた俺達は……なんていうか……反応に困った。というのも、明日香の格好が原因だ。
桜色の着物に濃紺色の袴、そして茶色のブーツ。この3つが意味するのは……。
「どうして……」
「ふふんっ!」
腰に手を当て、得意げに笑う明日香。その見た目は……。
「「どうして女学生なんだ……?」」
答えに行き着いた俺と箒は揃って同じ言葉を口にした。明日香と顔を合わせた時、どうしようかなんて考えはとっくに頭から無くなっていた。
「どう? 似合う?」
袴の端をつまんで小さく屈伸……
「ブ、ブラボー……」
「これが……これが、ジャパニーズロマン……!」
「な、ななな、生あs……あっ、大正……浪漫……」
「ヤベェ、鼻血吹いて倒れた! メディック! メディーック!!」
周りが騒がしいな……。いやいや、今は明日香の事だ……あれ? セシリアが居ない!?
「まあまあまあまあ! 良く似合っておりますわ! 流石明日香、噂に違わぬ着こなしですわ!!」
「あ、ありがと!」
「「いつの間に!?」」
噂ってアレか? 明日香がIS学園に来てから、毎日色んなコスプレ(?)をして食堂に現れるっていう……。そっちじゃなくて、似合ってるかってことか。
気が付いたら明日香の手を取って絶賛してるし……。ちょっと明日香がビックリしてるぞ。
ていうかセシリア、俺の隣に座ってたのにどうやって今の一瞬で明日香のとこまで行ったんだ……?
「お兄ちゃん、どうかな?」
俺の近くまでやってきて、小首を傾げて感想を聞いてくる。かわい……ハッ!?
「あ、ああ、すっごく似合ってるぞ……!」
「今度は、ちゃんと答えてくれたね!」
感想を聞いた明日香は、嬉しそうにはにかんだ。……ん?
「え? あっ!」
つい素で答えちまった! しかも何故かついさっきまで感じてた、気まずさとかモヤモヤまで吹っ飛んでるし。
「大成功、だね!」
「ど、どういう事だ?」
事情が呑み込めてない箒が、明日香に詳しい説明を求めた。いや、俺もよく分かってないんだけどな。
「それはねぇ、真耶先生と楯無さんの作戦なんだ! お兄ちゃんには何でもいいからハッキリ答えてもらう状況を作って、スッキリさせてあげようっていうね!」
「言われてみれば……」
心が軽くなったような……。
「この服はその為に楯無さんから借りたの!」
「楯無さん……グッジョブですわ!」
「楯無さんェ」
セシリアはとてもイイ笑顔で、箒は少しげんなりしながら楯無さんの名前を呼んだ。それにしても……。
「明日香って、コスプレとか好きだよなぁ」
「うん! だってカッコイイのとか、カワイイのとか、面白いのとかいっぱい着れるもん!」
そう言いながら明日香は袴が気に入ったのか、その場でクルクル回る。ま、待て待て、袴の下に着てる
「す、ストップだ。それ以上はパンツが見える!」
『!!!!』
俺の一言で、場の空気が凍った……と思ったら一部がすぐに復帰した。
「クソッ、何で止めたのよ!」
「もう少しで桃源郷が拝めるところだったんですよ!?」
「うるさいよ!?」
ハッ、ついツッコんでしまった! いやいや、明らかに暴走してたし、問題ないよな……?
「と、とにかく明日香は俺の事、何とかしようとしてくれたんだよな……。ありがとな!」
「うん、お兄ちゃんが元気になってくれて良かったよ」
「それにしても……ハァ、兄貴分とか言っておいてこの体たらくだもんな……。ちょっと情けないぜ……」
改めて思い返すと、明日香は何も悪くないし、俺が傷付けてしまったのに、たった数時間で全部を元に戻しちまった。ホントに情けない……。
「うぅん、お兄ちゃんは、それでいいんだよ。そのままのお兄ちゃんがいいんだよ」
「明日香……」
「だって、ボクはそんなお兄ちゃんの事が好きなんだから!」
明日香の言葉で今度こそ場が凍った。
「す、好き……?」
「うん、好き! お兄ちゃんは、ボクの事……好き?」
こ、これは……どう答えても厄介な事になりそうだぞ……?
「もしかして……嫌い?」
な、上目使い……だと……!? 明日香は男だぞ! なにドキッとしてんだよ俺!? とりあえずここは落としどころを……それじゃあ駄目だ。えぇい、ままよ!
「お、俺も、明日香の事好き……だぞ……?」
「本当!?」
「あぁ、弟の事が嫌いな兄貴なんて……いると思う。でも俺は嫌いじゃないぜ!」
「お兄ちゃん……!」
俺には勿体無いくらい、凄い弟分だよ。ん? 今食堂の入り口に千冬姉が居た気が……? まぁいいか!
「フッフッフ、どうやら一件落着みたいね!」
落ち着きかけた所で現れたのは、明日香の衣装提供者の楯無さんだ。……もしかしてずっとそこの入り口から見守っていたんですかね?
「うん、その日の悩み、その日のうちに、って言ってたもんね!」
それってどっかで聞いたな……、とか思っていると、楯無さんは何処からともなく取り出した高級そうな一眼レフカメラを構えていた。
「はぁい、明日香君、こっち向いてー」
「いぇい!」
「うわっ!?」
明日香はノリノリで俺の腕に飛びついて、言われなくともカメラに向かって笑顔でピースサインを送る。
「いいわ! 最高よッ! さぁ、その場でターン!」
「よっと!」
気付けば明日香は俺から離れて、食堂の中央で舞っていた。
「キャアアアア! 今の明日香君は輝いてるわ!」
「こっち向いてー!」
「あ、こっちも視線頂戴ー!?」
いつの間にか楯無さん以外にもカメラを構えている人と、スマホや携帯片手にバシバシ撮影している人で溢れ返っていた。いつから食堂は明日香の撮影会場になったんだろうか……?
「あ、明日香ー!
せ、セシリアまで……! しかも何気に最前列を確保してるし!?
しかもブルー・ティアーズのヘッドパーツが出てるって事は、ISのハイパーセンサー使って録画してる!?
「なぁ、箒……」
「何だ、一夏……」
「なんか、凄いな……」
「よく分からん世界だが、凄いな……」
色々と付いて行けなくなった俺達2人は食堂の片隅に移動し、フラッシュを浴びる明日香を眺める事にした。
「なんかさ、頭とか心ん中で色々絡まってた筈なのに、明日香の笑顔を見た瞬間全部吹き飛んじまったんだよな」
「……」
箒は無言のまま視線で続きを促す。
「そしたらさっきまでゴチャゴチャ考えてたのが馬鹿らしくなってな。もしかしたらあの試合の時、あんなふうに全力で楽しそうに戦う明日香と千冬姉を見て、俺自身羨ましがってたんじゃないかって思った」
「……成る程。ただ単純に嫉妬していたと」
「うぐっ……! そ、そう……かもな」
俺の隣に座る箒は、面白いものを見るかのようにニヤニヤと笑っていた。
「そ、そんなに笑わなくてもいいじゃないか……」
「くっくくく……す、スマンな……っくく」
「箒ぃ……」
何だかんだで少しだけ、分かった事がある。要は自分に正直になれば、案外なんとかなるようだ。とりあえずは、今もフラッシュを浴びる明日香を参考にしてみようかと思う。
こうして少し騒がしい夜は更けていく。……途中明日香の衣装交換をいつどこでやったのかは、目を瞑っておこう。
あ、撮影会は少ししてから騒ぎを聞きつけた千冬姉によってお開きになったとさ。
最初、この話は医務室の保健医がO☆HA☆NA☆SIする予定でしたが、ぽっと出のキャラにO☆HA☆NA☆SIされてもお前誰だよって感じになったので没。
次に、次回以降もズリズリと引き摺ってドロドロな感じにしようかと思いましたが、正直IS関係無いわー、となったので没。
と、いうワケでササッと流させてもらいました。