ボクのお姉ちゃんはIS 作:衛人操縦士訓練生
生きてます。えぇ、生きてますよ。エタったりはしませんとも!
「では、これで実験は終了です。大変お疲れ様でした」
「お疲れさまでした!」
12時をちょっと過ぎた頃に、やっと実験が終わった。
結構急いでやったんだけど、なかなか終わんなくて大変だったよ……。
実験のデータはとにかく回数をこなして、信ぴょう性の高いデータにしていかなくちゃいけないのはボクも分かるよ? でも、おんなじことを何回もやらされるのはちょっと退屈かな……。
たとえば、お姉ちゃん自身が動くんじゃなくて、白式が落ちるのをボクが止めた時みたいに、ボクがISを身に着けない状態でお姉ちゃんに細かい動きをしてもらうとかね。よく分かんなかったのは、自律行動させた打鉄のお姉ちゃんの体を使って、箸でお皿の豆を移し換えるってヤツかな。
「次回の実験は来週の月曜日に行います。ですから明日はゆっくり休んで、また元気な顔を私達に見せてください」
「はい!」
実験で何回も顔を合わせてるから、研究者の人たちとも仲良くなってるんだ。最初は必要なこと以外話さなかったけど、今じゃさっきみたいに優しく声を掛けたりしてもらえてる。ちょっとしたひと言でも嬉しいよね。
とりあえず着替えは……しなくていっか! またお姉ちゃんたちと一緒になるし特に汗も掻いてないから、ISスーツのまま軽くシャワー浴びるだけにすればいいかな。このスーツってハッスイセイがすっごく高いから着たままシャワーが出来るんだけど、凄い技術だよね。
◇◇◇◇◇
≪何の躊躇いもなく着おった……≫
≪言っておくと、それ楯無が用意したヤツだかんな≫
≪音もなく現れて、音もなく置いて去るとは……。しかもちゃっかり1枚撮ってるの俺見たぞ……≫
そうだったんだ! あとで楯無さんにお礼を言っておかなきゃだね!
っと、お話ししてたらあっという間に食堂に着いちゃった。
「こんにちは!」
「はい、こんにちは! 今日も元気でイイ挨拶ね! 何にする?」
「今日はねー、親子丼!」
カウンターのお姉さんに挨拶をしてからトレーと食券を渡すと、奥の厨房で調理を始める。あ、手を振ってくれた人がいる! 振り返さなきゃ!
「あら? 今日は少なめなのね」
「うん、午後からはお兄ちゃんたちと一緒にISの特訓をするんだ。食べ過ぎてお腹痛くなったらダメだからね」
「あー、そうよねぇ。食べ過ぎると動いた時に脇腹が痛くなるのよね……」
「お姉さんもあるんだ……。アレは大変だよね……」
「「ねー」」
お姉さんと一緒になって脇腹が痛くなった時のことを思い出してると、出来上がった少なめの親子丼がトレーに乗っけられる。
「話すのが楽しいのは分かるが、仕事しろ仕事」
「す、すいません!」
「おやっさん!」
話し込んでたからお姉さんが怒られちゃった。
今親子丼を持ってきたのは厨房を仕切ってるおじさんなんだけど、同じ厨房の人たちから『おやっさん』って呼ばれて慕われてる、すごく厳しくて優しい人なんだって! 前にボクも『おやっさん』って呼んで良いか聞いたら笑ってOKを出してくれたから、ボクもそう呼んでるんだ。
それよりも……。
「ごめんなさい、ボクもお話しに夢中になっちゃってたから……」
「謝んなっての。
「う、うん……」
≪あぁ! いつ見てもカッコイイわ……!≫
≪お前あのおやっさん好きだよなぁ……≫
≪当たり前よ! あれこそ日本男児の鑑じゃないの! 妻子持ちってのが更にポイント高いわね!≫
≪お、おう……≫
お姉ちゃんの1人がもうゾッコンなんだよね。でもホント、なんでこの食堂で働いてるのかが不思議なくらい、すっごくショクニンキシツな人だとボクは思うよ。
≪でもさぁ、おやっさんっつーか、男が厨房を仕切ってる事を女尊派の女が知ったら発狂するだろうな≫
≪あー、女尊派の女って普通の奴もいるけど、比較的ヒステリックなのが多いからねぇ……。私も乗られた事あるけど、アレは無いわー≫
≪『わかるわ』≫
ふぅん…………お姉ちゃんたち、嫌がってるんだ……。
あ、このままじゃせっかくの親子丼が冷めちゃうね。
「それじゃあ今日もいただきます!」
「おう、しっかり食えよ」
「うん!」
トレーを落とさないようにちゃんと持ってと。……どこで食べようかな?
「明日香!」
「あーちゃん、こっちこっちー」
「!」
テーブル席の方から声を掛けられて振り向くと、お兄ちゃんと箒さんとセシリアさん……と?
「あれ、本音さんがお兄ちゃんたちと一緒に居るなんて珍しいね」
ダボダボの袖を振って、ボクのことを『あーちゃん』って呼んだのは、同じクラスの
でも、なんでか分かんないけど、ボクは本音さんのことをとってもマジメな人って思っちゃうんだよね。どういうことなんだろ?
「今日はかいちょーから、特訓中の写真を撮ってくるように言われたのだー」
首に下げてるカメラは……楯無さんがいっつも持ってるカメラだね。
「うん、納得」
ああ見えてもって言い方はシツレイかもだけど、楯無さんは生徒会長っていう、生徒の中で一番偉い人なんだって。そして本音さんは楯無さんの生徒会で書記をしてるんだって。
お兄ちゃんたちと話すのもいいけど、お昼を食べないといけないね。手を合わせてっと。
「いただきます!」
お米とたまごに包まれた鶏肉をちょうどイイ感じのアンバイで……一口!
「うん、おいしい!」
こんなにおいしいご飯を毎日食べてたら、ちゃんと運動しないと太っちゃうかもね。
「≪あ、イイ表情いただきー≫」
あの袖でどうやったのか分かんないけど本音さんがカメラでボクを撮って、お姉ちゃんが同じタイミングで、これまたどうやってるのか分かんないけど同じ所を記録する。そういえば前に聞いた時は『TPSって知ってるか?』って言ってたっけ。
≪コイツ……出来る……!?≫
≪いや、あのタイミングは誰でも撮るでしょ≫
「それにしても入学してからずっと、放課後も土日も実験続きだなんて、大変じゃないか?」
「そう? ボクはお姉ちゃんたちと一緒になってるから、楽しいだけだけど……。あ、でも同じこと何回もやるのだけは退屈だよ」
「明日香が別にいいって言うなら……うーん、でもなぁ」
お兄ちゃんが何を言いたいのかが分かんないや。心配してくれてるってことだけは分かるし、それさえ分かってればいいのかも?
「気にしないでよ。別に痛いこととか、気持ち悪いことをやらされてるワケじゃないし……ね?」
「ほらほら、早く食べてしまわないと、せっかく借りたアリーナの使用時間がなくなってしまいますわ」
そうだった。セシリアさんに言われて思い出したけど、アリーナを使えるのって夕方の5時までなんだよね。
「待ってて、パパッと食べちゃうから!」
「
「えっ、俺達も!?」
待たせてるのはホントのことだし、急ぎながらだけどしっかり味わって食べようっと。
◇◇◇◇◇
食べ終わった食器とトレーを返してからボクたち5人はアリーナに向かって、ISスーツに着替えて(ボクは体育着を脱ぐだけ)ピットに集まった。
「あれ? 本音さんも一緒に特訓するの?」
「うぅん、今日の私は撮影係だから、近くに居るけど見てるだけだよー」
ここにいるワケは分かったけど、言いながらカメラを振るのはどうかと思うなぁ……。
「それじゃあアリーナに出よっか!
≪はい!≫
最近
「俺達もだな! 白式!」
≪音声認識で
お兄ちゃんは待機形態の白式に声を掛けて2、3秒くらいでISを展開した。
うん? 聞いてて思ったけど、もしかして式お姉ちゃんってただ単に面倒くさがりなだけなのかな?
「ブルー・ティアーズ、よろしくお願いしますわね」
≪ええ、こちらこそ。……フフッ、聞こえないとはいえマスターに声を掛けてもらえるのは、とても嬉しい事ですわね≫
セシリアさんが
展開したISも、いつもよりどことなく鮮やかに見える。
セシリアさんと雫お姉ちゃんの関係は、ボクとお姉ちゃんたちみたいに話すことは出来ないけど、直接触れて身に着けてる分ボクより深いんだ。だからただのISっていう『物』じゃなくて、雫お姉ちゃんっていう存在として認識してもらえたのが凄く嬉しいんだと思う。
でも、どうしてかな。それが、なんだか、少しだけ……。
「…………ずるい」
……また、感じた事の無い感じがする。今度のは、何ていうか、胸の辺りがキュッと掴まれる感じ。とっても嫌な気分になる。
「明日香? 何か仰いまして?」
っ! 今何か口に出してた……?
「う、うぅん、何でもないよ!」
「そう、ですか。何か心配事があれば、何でも仰ってくださいな」
良かった、聞かれてなかったみたい……。
≪明日香さん……≫
「大丈夫。ホントに何でもないから、ね?」
≪……分かりました。今のは聞かなかった事にします≫
「うん、ありがと」
ダメダメ、もっとしっかりしないとね。気を取り直してっと。
「箒さんと打鉄のお姉ちゃんも準備はイイ?」
箒さんが身に着けてるのは、今日の実験で協力してもらった打鉄のお姉ちゃん。実験中に特訓でお姉ちゃんの体を使って良いか聞いてみたら、2つ返事でおっけーしてもらったんだ。
「ああ、私の訓練機も用意してくれてありがとう」
「どういたしまして! 仲間外れは嫌だもん。それじゃあ特訓開始だね」
「だな!」
「がんばってねー」
管制室に向った本音さんを除いた、ボクとお兄ちゃんと箒さんとセシリアさんはアリーナに飛び出る。
「じゃあまずねー、鬼ごっこしよう!」
いきなり言ったからか、みんなポカンとした顔をしてる。
「お、鬼ごっこ? 何でだ? ISの特訓をするんじゃなかったのか?」
良く分からないって感じのみんなを代表して、お兄ちゃんが聞いてくる。だからボクはこの前の真耶先生みたいに、人差し指をピンと立てて説明する。
「そう、これはISの特訓だよ。ISを着たまま、アリーナの中で鬼ごっこをするんだよ!」
「理解しましたわ。ISを使った鬼ごっこ。つまり、ISの三次元戦闘訓練ですわ。追う側は追われる側の回避先を予想し捕まえ、追われる側は追う側に捕まらないよう回避に徹します。その際、自分で回避先を潰す事が無いよう、注意する必要もありますわね」
さっすがセシリアさん。ボクの言いたい事を全部言ってくれた。……まぁ、そこまで深い考えがあったワケじゃないんだけどね。ツゴー良くカイシャクしてくれて助かったよ。
「そっか、なら剣しかない白式には持って来いだな!」
「面白い、やってやろうではないか」
うんうん、みんなやる気マンマンだね!
「それにこれってお姉ちゃんたちとも一緒に遊べるもん!」
≪明日香……!≫
≪くっ、何で実験に使われたのがオレじゃないんだ!≫
≪う、羨まけしからんぞぉ!≫
≪暴走はいけません。フフフ……、ですが笑えますねぇ。あなた達は選ばれず、私は今日の実験機に選ばれ明日香君と繋がったのに加えて一緒に遊ぶ権利まで得た、と…………随分と差がつきましたぁ。悔しいでしょうねぇ!≫
≪『てめぇ……!!』≫
ん、ん? 箒さんが身に着けてる打鉄のお姉ちゃんって、テンション上がるとああなるんだね。
「それじゃボクが鬼だよ! 参式のスペックだと速すぎるから、スラスターは使わないよ! ……始めっ!」
ISの移動方法の中でも基本中の基本、PICを使って動く。これだけでも機動力が異常なくらい高い
「はいっ、お兄ちゃんが鬼!」
「なっ!? ま、待ってくれ!」
お兄ちゃんはまだまだ細かい制御が苦手みたい。でも苦手だからって放っておくのはダメだよね。
「頑張って! 慣れれば意外と簡単だよ。お兄ちゃんなら出来る出来る!」
「簡単に言ってくれるぜ。おっしゃ、やったる! 待てぇー!」
「アハハハ! そう簡単に捕まってあげないよー!」
一直線に向かって来たお兄ちゃんの股下を潜って避けて、そのまま逃げる。それを見て無理だって思ったみたいで、ボクを捕まえるのを諦めて箒さんを追いかけ始めた。
◇◇◇◇◇
それから大体30分後、地面に仰向けに倒れたお兄ちゃんと、片膝を突いた箒さんがいた。
「ぜぇ、はぁ…………もぅ、無理……」
「な、何故だ……。こちらの方が速いのに捕まらないのだ……」
鬼ごっこの鬼はほとんどお兄ちゃんと箒さんで、時々避けそこなったセシリアさんが鬼になった時に、経験の差でボクが捕まって鬼になる……って流れだった。
「速くとも動きが直線的過ぎれば、回避は簡単ですわ。それにこの鬼ごっこは平面の動きだけでなく上下の移動も含めて、三次元空間を使った鬼ごっこなのですから」
セシリアさんは速さよりも機体制御の技術力がすっごく高いから、速さと
「お兄ちゃんたちはボクよりも動いてたし、少し休んでてよ」
「そうさせてもらうよ……。明日香は休まなくていいのか?」
「うん、ボクは式お姉ちゃんとの『一緒に空を飛ぶ』って約束があるからね」
別に約束なんかしなくても、お姉ちゃんたちのお願いなら何でも聞いてあげるんだけどね。
「お兄ちゃん、白式を待機形態に戻してボクに貸して?」
「おう、分かった。……はいよっと」
「ありがとう」
打鉄参式を
「よろしくね、式お姉ちゃん」
≪よろしく≫
「専用機を身に着けるのって初めてなんだけど、訓練機とかと同じ感じでいいの?」
≪専用機が登録されたパイロット以外に起動出来ないのは
専用機ってそうなってるんだ……。ならイケるね!
「よぉっし! 一緒に飛ぼう!」
≪……一緒に、飛ぶ≫
「≪白式≫!」
すっかり見慣れた光の粒がボクの全身を包んで、光が収まるとボクの体に合わせて少し小さくなった白式が展開されていた。
「明日香の力があれば、専用機すらも……。本当に、悪意ある者に捕まらなくて良かったですわ……」
「あぁ、あの力は絶対に悪用されてはいけないな……。ある意味、明日香がその力の持ち主で良かったと見るべきか」
傍で様子を見ていたセシリアさんと箒さんが、なにやら難しい顔して難しそうな話をしてる。ここは何も言わないでおこうっと。
「お兄ちゃんの白式、少しだけ借りるね?」
「おう。なんだか白式も明日香が乗ると嬉しそうだし。それに悔しいけど、俺じゃまだまだだからな。あ、でもその内絶対白式に認められてやるからな!」
≪ふん、その内なんて来るわけない。無駄な特訓でもしてればいい≫
≪ツンデレって奴ですね、わかります≫
≪うるさい≫
んー、なんだかんだ言ってるけど、式お姉ちゃんとお兄ちゃんの相性って良さそうかも?
「さて、式お姉ちゃん。飛ぶよ!」
≪分かった≫
白式のスペックは…………うん、大体分かった。打鉄参式程じゃないけど、かなりの高機動寄り。でもそれだけじゃない気がする。色々と先が楽しみな
小難しいのは苦手だし、何より集中してないと一緒に飛んでくれてる式お姉ちゃんにシツレイだもんね。こっからは楽しんで飛ぼうっと!
もうちっとだけ続くんじゃ。
1日が、終わらない……!