ボクのお姉ちゃんはIS 作:衛人操縦士訓練生
「そういえば、紹介がまだでしたね。私は
教室を出てから色んな所を見て回って、第2アリーナの横にある自動販売機の所で休憩してたら、自己紹介をされた。そうだよ、山田先生の名前知らなかったっけ。
「うん、よろしく! 真耶先生!」
仲良くなるには、名前で呼び合う事から始めるんだってお姉ちゃんも言ってたし、山田先生の事はこれから真耶先生って呼ぼうっと。
「真耶先生、顔が赤いけど大丈夫?」
「あ、だ、大丈夫ですよ! こう見えても先生ですから、体は丈夫なんです! 風邪とかも全然引きませんし!」
≪また1人、か≫
≪明日香の本当の力を知らないからに決まってる!≫
≪明日香が盗られると思って、妬いてやんのw≫
≪なっ、だ、誰が妬くか!≫
「あははっ、ボクのお姉ちゃんはお姉ちゃんたちだけだから、心配しなくてもいいよ!」
≪そ、そうか! 明日香は私達の弟だもんな!≫
≪ニヤニヤ≫
≪そこ、笑うんじゃねぇ!≫
≪『ニヤニヤ』≫
≪お、お前らー!!≫
あらら、どっか行っちゃった。あ、お姉ちゃんたちと話してて真耶先生の事ほったらかしだ!
「えっと、今のが感応なんですか?」
「感応? 良く分かんないけど、お姉ちゃんたちとお話ししてたんだよ」
「話してたって……ISと?」
「うん!」
「明日香君って凄いんですね!」
≪この先生、どっか頭のネジ外れてんじゃない?≫
≪おい、やめて差し上げろ≫
≪低身長、眼鏡、巨乳、これだけの属性を持ちながら、更なる属性があるというのか!?≫
真耶先生って、変わってるなぁ。
「ボクの事、気持ち悪く思わないの?」
「……どうして?」
「真耶先生には聞こえない声と話したり、ボクの目を見ても怖がらないし、ボクの力の事知ってるのに……どうして?」
「うぅん…………それはね、私が先生でお姉さんだからですよ!」
「え……」
何で、そんな顔で……どうして、そんな理由で、ボクに優しくするの……? だって、だって、おかしいよ。だって、ボクの■■■■は……!?
「あ、あぁ、や、やだ! やめて……やめて! ボクは、ボクは……っ!?」
「あ、明日香君!?」
≪明日香さん!? くっ、明日香さん用の機体の再構成が終わってないというのに……! 仕方ありません。打鉄参式、起動!≫
まるでテレビの電源が消えるみたいに、ボクの目の前が真っ暗になった。
◆◆◆◆◆
彼がオルコットの傍へ行くのを許可した直後、思わず我が目を疑った。本来彼が知らない筈の情報を知っている事にも驚いたが、そんな事よりも衝撃的な光景に何も言えなくなってしまった。
「雫お姉ちゃんを…………困らせたね?」
そう言った彼の背中に、数十……いや、百以上の影を見た。彼には……何が憑いているというのだ……!?
「ねぇ、どうして?」
たった二言で場の空気を支配してしまった幼い彼に、私は底知れぬ闇を感じた。これは……過去を徹底的に洗う必要があるな。
「むぅ……。お姉ちゃんたちは優しすぎるよ! そこがお姉ちゃんたちの良い所だけどね!」
思案していると先程までの雰囲気とは一転、明るく素直な性格の彼に戻っていた。自己紹介の時も誰かと会話していたようだが、もしやあれが感応と言われる能力なのか?
「ボクはね? ISを、お姉ちゃんたちを悲しませる人を…………許さないから」
またこの気配……! 一体何が彼をここまで極端に豹変させるというのだ?
「わ、分かりましたわ! 分かりましたから、その『目』を、やめて下さいまし!」
「分かってくれたならいいんだ!」
……『目』? 彼の目は日本人らしい黒い瞳だった筈だが、それがどうかしたのか? いや、『
「え、えっと……」
「あ、ああ、私は織斑千冬だ」
考え込みすぎていたせいで、彼の接近に気付かなかった。いくら彼が小さい子供だからといっても反応が遅れるのはいかんな。気を引き締めなければ。
「千冬先生、ごめんなさい。時間いっぱい使っちゃったから……」
「何、気にすることはない。オルコットにとってもいい教訓になっただろうからな」
申し訳なさそうにする彼に小さい頃の一夏を重ねてしまい、つい頭を撫でてしまったが、嫌がられてないようで少し安心した。
その後は彼を山田先生に任せLHRの続きを始めたが、状況を良く呑み込めていない愚弟と、彼に中てられてすっかり意気消沈してしまったオルコット他数名と、彼の明るく素直な雰囲気に骨抜きになった生徒に活を入れ、クラス代表を愚弟とオルコットの模擬戦で決める事を無理矢理了承させ、改めて今後の予定を説明していると、血相を変えた山田先生が教室に入ってきた。
「お、織斑先生!」
「山田先生?」
「あ、明日香君が、明日香君が!」
「落ち着いて下さい。深呼吸してから、何が起こったのかを説明……っ!?」
開けっ放しのドアから、ISが侵入してきた。
「明日香君……!? これは……姿形は変わっているが、倉持技研から強奪されたISか?」
「それもありますけど、そうじゃありません! 急に明日香君が怯え始めて、意識を失っちゃったんです! ISは明日香君の言うお姉ちゃんが動かしているんだと思います」
「何……? そこのIS、今言った事は事実か?」
ISが意思を持って動かしているのなら返事をする筈と思い質問してみると、彼の意識が無いのにも関わらず頷いた。感応能力はIS側からも干渉可能と実証されたが、今はそれどころではない。
「もしや、明日香君を護っているのか?」
再び頷く。成る程、彼とISの間には、確かな信頼関係が築かれているようだ。
「山田先生、そこのISと彼を医務室まで案内して下さい」
「分かりました! こっちです!」
とりあえず医務室に寝かせれば大丈夫だろう。走り去って行く山田先生と、その後ろに寄り添うように付いて行くISを見送る。む、あのISは医務室の場所を知っているのでは? ……まあいいだろう。山田先生には彼の看病でもしていてもらおう。
◆◆◆◆◆
目が覚めたら、また同じベッドに居た。うぇ、シャツとパンツが汗でぐちょぐちょになってる……。
「あ、目が覚めたんですね! 良かった……。大丈夫? どこも痛くない?」
目の前には真耶先生が居て、ボクを心配そうに見てる。
「あれ、真耶先生とIS学園の探検してたんじゃ……?」
「倒れた時の事、覚えてないの?」
「ボク、倒れたの?」
「覚えてないなら、無理に思い出さなくてもいいんですよ。今はゆっくり休んでてね」
優しく頭を撫でてくれる。……気持ち良いなぁ。
「せんせー……」
「ん、どうしたの?」
「汗掻いちゃったから、お風呂に入りたい……」
「え、ええ!?」
ああ、お布団も汗で汚しちゃった。ちゃんと洗っておかないと怒られちゃう……。
「ちょ、ちょっと待っててね!? 今着替えとか持ってくるから!」
「うん」
真耶先生が出て行ってから気付いたけど、着替えとか持ってないし、お金もおにぎりとジュース買って無くなっちゃったんだった。どうしよう……体で払わないといけないのかな?
「ボクの体に興奮してくれるかな?」
≪あ、明日香!? 急に何を言い出すのさ!≫
≪そうですわ! お金の心配をしているのなら問題ありませんわ。ここの人達は明日香に対してあの人達みたいな事はしませんし出来ませんわ!≫
≪それに私達が居る限り、明日香さんに手出しはさせません≫
「お姉ちゃん……ありがとう……」
≪あの
≪我等とて、伊達に訓練機をやっておらんわ。もし手を出そうものなら……ふふふ≫
「駄目だよお姉ちゃん。真耶先生は優しいから傷付けたくないんだ」
≪だけどねぇ……≫
≪私達は明日香の事が心配で心配で……!≫
「うん、分かってるよ。でも、真耶先生になら……」
優しくしてくれそうだし……。
≪分かりました≫
≪おいおいおいおい! 何言ってんだよ!≫
≪何かあった場合、私が処理します≫
何も無いと思うけどね。
「それにしても、大変な事になっちゃったね。ボクの事、皆に知られちゃって……これからどうなるんだろう……?」
≪何があろうと、私は明日香さんを全力で護ります!≫
≪お姉様だけではありません。コアネットワークに顔を出している
≪たとえ世界中が敵になっても、私達はお前の味方だよ≫
「そんな事言われても……。ボクはお姉ちゃんたちに何もしてあげられないのに……」
≪それでいいんです。私達は、明日香の元気な姿を見ていられるだけで幸せなんですから≫
≪そうそう! 明日香の笑顔がオレ達の活力ってね!≫
≪私達という存在を創りだしたのがお母様なら、私達に存在する理由を与えてくれたのが明日香なの≫
お姉ちゃん……!!
≪『笑って』≫
「うん……うん!!」
≪ええ、その笑顔! その笑顔こそ、私達の宝物よ!≫
≪電子ドラッグよりも中毒性高し≫
≪クソ、最後の最後でブチ壊しやがった!≫
うん、いつもの楽しそうにお話しするお姉ちゃんたちだ!
「ボクも、お姉ちゃんたちが笑ってくれるだけで幸せだよ!」
≪ま、結局いつも通りって事で!≫
≪せやな≫
何だか楽しくなってきた! IS学園に居れば安全だし、お姉ちゃんたちもいっぱい居るし、不安なんて消えちゃいそうだよ!
あ、真耶先生……遅いなぁ……。