ボクのお姉ちゃんはIS 作:衛人操縦士訓練生
次の日の朝起きると、ちゃんと体が動くようになっていた。
「んぅ……おはよー」
≪おはようございます、明日香さん≫
≪ぐっもーにん≫
≪良く眠れた?≫
≪体は大丈夫?≫
「大丈夫!」
「おはよう、明日香」
「おはよう」
「おはよう!」
お兄ちゃんと箒さんは制服を着てて、ちょうどボクを起こそうとしてるところだった。
「ちょうど良かった。これから食堂に朝ごはん食べに行こうと思うんだけど、明日香も行くか?」
「うん、行く!」
「待て、寝起きで寝癖も酷い。顔を洗って髪を梳かして来るんだ」
「箒がお姉さんしてる……」
「な、何を言うか! ……明日香は自分を怒らせた私とも、仲良くなりたいと言っていたんだ。なら、私も明日香と仲良くなる努力をするしかないじゃないか」
なんか箒さんが別の人みたいにイイ人に見えるよ。
「……ISで押さえつけられた事は完全に忘れる事は出来ないが、あれは私にも非があった。少々高めの授業料だとでも思っておくさ」
≪……誰これ?≫
≪普通にしてればすっごいイイ奴なんだけどなぁ……≫
≪おっぱいの付いたイケメソ?≫
≪カッコイイ要素無いだろ≫
「あの、昨日は本当にごめんなさい」
「それは私もだ。すまなかった」
「はいはい、とりあえず待ってるから顔洗ってこいって」
「うん」
洗面所で顔を洗って、軽く濡らした手で撫でて髪を整えて戻ると楯無さんがいた。
「おはよう、体は大丈夫?」
「おはよう! ぜっこーちょーだよ!」
「良かったわ。明日には制服が届くと思うから……はい、今日の着替え」
渡してきたのは……青いドレスみたいな鎧?
「ありがとう、着替えるね!」
「え、マジ?」
「えっ」
「えっ」
……どういう事?
≪きっと冗談のつもりで渡したんでしょうけど、明日香が真に受けて逆に驚いてるってところね≫
≪普通の服も用意してるだろうし、別に着たくないなら着たくないって言ってもいいのよ?≫
≪でも明日香のまともなコスプレは見てみたいかも≫
≪ま、全部明日香に任せるよ≫
この服着たところ、見たいんだね? こういうのなら、着てもいいかな。
「これ、どうやって着るの?」
「「え゛」」
「そ、それはね……」
着替えを手伝ってもらって、ドレス姿で食堂で朝ごはんを食べに行ったけど、やっぱり遠くから見てるだけの人が多かったなぁ。
「明日香君はまだ小学生だから、ISの授業以外は普通に小学校の勉強をしてもらうわよ?」
「みんなと同じ授業を受けられないのは残念だけど、我慢するよ」
「素直に聞いてもらって助かるわ。少し不自由な思いをさせるわね……」
「全然不自由なんかじゃないよ。お姉ちゃんたちと一緒だし、楯無さんたちは優しいし、ご飯はおいしいし、お布団はふかふかだし!」
もう、あの場所には戻りたく……ないかなぁ……。
「いい子ね……。それじゃあ、お姉さんも授業に行くわ。明日香君も勉強頑張ってね」
「うん!」
こうしてちゃんと言うことを聞いていれば、ずっとここに居られるかな?
◇◇◇◇◇
楯無さんが出て行って少ししてから来た真耶先生から電子ノートと電子教科書を渡されて、医務室の隅っこに机と椅子を置いて勉強している。だけど何でだろう? 問題がとっても簡単なんだよね。算数で言うと、初めて見る式なのに解き方も分かるし、他の式と組み合わせた応用問題も簡単に解けちゃう。まるでもう知ってるみたいに……。
その事を昼休みに顔を出した千冬先生に言ったら試しにテストをする事になったんだけど、そのテストもスラスラ解けちゃって満点を取っちゃったんだ。点数を聞いた後に、このテストは私立中学の入試レベルの問題だって言われたけど、何でいきなりそんなレベルの高い問題をやらせようと思ったんだろう? まぁ、解けたからいいけど。
それと今日はもう休んでいいって言われたから、3時過ぎからはずっとお姉ちゃんたちとお喋りして過ごしてたけど、ホントに良かったのかなぁ?
◆◆◆◆◆
刈内明日香。彼の小学校での成績は、平均80点といったところか。なかなか優秀……だからと言って、彼が『IS学園入試、筆記試験』の問題を全問解いた事には全く関係無いだろう。一体何があれば小学4年生修了程度の学力が、IS学園入試レベルにまで跳ね上がるというのだ?
「織斑先生」
「山田先生……随分早い戻りですね」
「私もびっくりです。明日香君のIS学園の入学がほぼ2つ返事で許可されるなんて……」
昨日のIS稼働データと筆記試験の解答結果を渡しただけとはいえ、流石にこれは早すぎる。既に全世界に存在を知られている彼を逃がさない為、確実にIS学園に縛り付ける為、あらゆる機関から圧力が掛かったとしか考えられない。
「それにしても、どうしてこんな急に学力が上がったんでしょうか?」
「それは……いや、まさか……」
彼の変化の原因は1つしか思い浮かばない。
「IS……?」
「え……?」
ISに搭乗した事で感応能力が最大限に発揮され、他の搭乗者のISと繋がり、その中にある情報を自身の情報として取得した結果がコレだとしか思えない。所詮は一教師の戯言と笑い飛ばしてしまうのだろうが、そうでもなければ彼の操縦技術等説明がつかない事ばかりだ。
「彼、明日香君についての考察レポートを作成しようかと。協力してくれますね?」
「あ、はい!」
私の予想が外れていなければ、彼の体は……。
◆◆◆◆◆
次の日、ボクはIS学園の生徒になっていた。何で急にって思ったけど、みんなと同じ授業を受けられるから気にしなくていいや。
「IS学園1年1組に入学した、刈内明日香だよ! 今日からみんなと一緒に勉強する事になったんだ。よろしくね!」
「よろしくー!」
「カワイイヤッター!」
「お、男の娘……! これは捗りそうね……!」
≪うーん、一部が昨日の事引き摺ってて、もう一部が私達の濃いのと似たような感じね≫
≪反応としては悪くないんじゃね?≫
≪まぁ、前よりはマシでしょ≫
「席は織斑の隣だ」
「はーい」
「よろしくな、明日香」
「うん、よろしく! お兄ちゃん!」
『ブフォッ』
「ん?」
≪まあ、そうなるな≫
≪そんな君には特別な瑞う≫
≪いらないよ≫
≪……≫
なんかクラスの人たち、お姉ちゃんたちみたいな反応するね。
◇◇◇◇◇
それから1週間はあっという間に過ぎていったんだ。何回かセシリアさんとお話しようと思ったんだけど、避けられちゃってお話し出来なかったんだよね……。
変わった事と言えば、お兄ちゃんが箒さんに剣道でやられまくってたくらいかなぁ。楯無さんともあんまり会えなかったし、ちょっと寂しかったな。でもお姉ちゃんたちがいっぱいいる格納庫に、毎日行ってたからいいもんね!
◆◆◆◆◆
明日香君のIS学園入学が決まった日の夜、私の下に彼の身辺調査結果が届いていた。今はそれを織斑先生とどうしても知りたいと言った山田先生を、生徒会室に呼んで検めているところだ。
「何よ……これ……」
「思った以上に酷い、な……」
「あんまりですよ……」
彼の両親は既に死亡しており、3歳の時点で養護施設へ預けられたは良いものの、施設の母親とも言える存在が問題だった。その母親役は典型的な女性至上主義者であり、幼い少年に対する特殊な性癖を持ち合わせていた。
素直で疑う事を知らない彼は、色白で中性的な容姿となかなか成長しない体のせいでその性癖の捌け口になっていて、夜な夜な私室に呼び出されては奉仕という名目で性的な行為をさせられていたらしい。更に質の悪いことに、彼という存在を同じ性癖の持ち主同士で共有し合う事までしていた。
これが救いと言えるかは不明だが、精通を経験していないという事で所謂『本番行為』は無かったらしい。尋問結果によると、精通と同時に事に至ろうと計画していたようだ。
しかし度重なる行為の影響で性に関する忌避感がほとんど無くなってしまい、一時期は母親役に言われて奉仕による商売を経験していたという。
「っ!!」
思わず拳を机に叩きつけていた。そうでもしなければ今頃ISを起動してでもその女を消しに行っているところだ。
「更識」
「……なんですか」
「彼の、本当の両親については無いのか」
「……はい、おかしいんです。更識家の力を使っても彼の両親の情報が、役所に届けられている名前以外分からないんです。戸籍情報とかも探ってみたんですが、彼の親戚すら見つけられませんでした」
彼の性格は施設に預けられて以降に形成されたもので、IS感応能力とは全く関係が無い。となると能力自体は先天性のモノか、何者かによって植え付けられたモノという事になる。
ここで出てくるのが、名前以外の全てが不明の彼の両親だ。死体の確認もされていて死亡している事は確実だが、その両親が彼に何かをしたのは『現時点では』確実と見るべきだろう。
「さ、更識さん、この施設の母親役って……」
「処分しましたよ。それに加担した存在も」
「え……?」
「じゃなきゃ私がこの手で!!」
彼にそんな事を経験させた奴等なんか、生かしておく理由が無い。裏の事情を探れば分かるが、体で稼いでいるのはなにも彼に限った事ではないとは言っても、許せる筈が無い。
「その顔、明日香君には見せるなよ?」
「勿論です。こっちだって伊達に裏のプロなんかやってませんよ」
「山田先生も、ですからね。子供は本当に聡い。すぐに見破るぞ」
「うっ……は、はい」
明日香君には、IS学園で平和に過ごしてほしいわね……。さて、その為にも溜まっている仕事を片付けてしまいましょうか。
あぁ、明日香君の笑顔が見たいわね……。