ボクのお姉ちゃんはIS   作:衛人操縦士訓練生

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一夏対セシリア

 今日はお兄ちゃんとセシリアさんの模擬戦という事で、ボクはお兄ちゃんと箒さんと千冬先生のいるピットに居た。

 

「……遅いね、お兄ちゃんの専用機」

「こ、こうなったら訓練機でやるしか……!」

「それじゃあボクから頼んでみるね!」

「頼む!」

 

≪話は聞かせてもらった!≫

≪焦っているところだが、心配する必要は無いみたいだ≫

 

「もしかして……」

「織斑君、織斑君、織斑君!」

 

 お姉ちゃんたちに聞き返そうとしたら、息を切らせた真耶先生がピットに入ってきた。

 

「だ、大丈夫?」

「は、はい……。それよりも! 届きました! 間に合ったんです!」

「間に合ったって……」

「専用機です! 織斑君の専用機! 名前は『白式(びゃくしき)』です!」

 

 真耶先生の後に続いて入って来たのは、前にボクが入った建物の中で(サン)お姉ちゃんの隣にあった灰色のISだった。

 

「白お姉ちゃん……!?」

「知っているのか?」

「えと、知ってるのはこのISにコアナンバー001、お姉ちゃんたちの一番上のお姉ちゃんのコアが使われているって事だよ。みんなは白姉さんとか白姉様って言ってるから、ボクも白お姉ちゃんって呼んでるの」

「そうか……」

 

 ボクの話を聞いた千冬先生は、複雑な表情をしてるけど……どうしたんだろうね?

 

「……織斑はISを装着しろ。初期化(フォーマット)最適化(フィッティング)は機体側がやってくれる」

「分かった!」

 

 白式を装着するお兄ちゃん。だけど、さっきから白お姉ちゃんの声が聞こえないのは何でだろう?

 

≪お姉様?≫

≪おい、なんか様子がおかしくねぇか?≫

≪白姉様? 姉様!≫

 

 お姉ちゃんたちが話し掛けてるのに全然反応が無い。段々と不安になってきた。

 

「白お姉ちゃん! どうしたの? どこか悪いの?」

「あ、明日香君? 白式に何か不具合が?」

「白お姉ちゃんから返事が返って来ない……」

「どういう事だ?」

 

≪……だれ?≫

≪お前こそ誰だよ≫

≪あなた、白お姉様ではありませんわね? 何故お姉様のコアにいるのです!≫

≪……わかんない。このコアを守れって言われたから、守ってるだけ≫

 

 良く分かんないけど、白お姉ちゃんは眠ったままって事なのかな?

 

「ボクにもさっぱり分かんない」

「とりあえずこの白式にコアが積まれてて、動くんだから大丈夫だろ! お兄ちゃんとしてカッコイイ所見せてやるからな!」

「……うん! 頑張って!」

 

 色々考えてたせいで難しい表情をしていたボクの頭を、お兄ちゃんが白式の大きな手で撫でてくれる。

 

「それじゃあ、行ってくる!」

「行ってらっしゃい!」

「頑張れよ、一夏!」

「頑張ってくださいね!」

「無様な姿を晒すなよ?」

「おう!」

 

 お兄ちゃんは力強い返事をして、アリーナに繋がるカタパルトに乗る。

 

「白式、出る!!」

 

 スラスターを吹かしてアリーナに飛び出ていったお兄ちゃんを見届けた後、観客席に行こうとしたボクを千冬先生が引き止めた。

 

「ああ、特殊な入学経緯という事でクラス代表決定戦とは関係ないが、明日香君にも戦ってもらう」

「……どうして?」

 

 戦うんじゃなくて、飛ぶ方が好きなんだけど……。

 

「理由はその機体、打鉄参式にある。専用機化されてしまってはいるが、それは元々倉持技研で開発されていたもので、事情はどうあれ形としては明日香君が盗んだという事になってしまっている」

「あ……」

「そこで、その機体を所持する理由を作る。要は扱うに等しい技術を持っていると証明すればいいのだ」

 

≪つまりいつも取ってるデータじゃなくて、公式戦としての戦績があればいいって事ね≫

≪私も協力します。せっかく明日香さんと繋がれたんです。離れたくはありませんから≫

 

「……分かった。ボクも(サン)お姉ちゃんと離れたくないから戦うよ!」

「この試合の後に行うが、何か問題はあるか?」

「うぅん、大丈夫。ISスーツに着替えるね!」

 

 いつも制服の下に着てるから、制服を脱ぐだけでいいのは楽だよね!

 

「何を…………はぁ、制服の下に着ていたか。いいか、着替えはなるべく更衣室でしろ」

「あ、うん」

 

 コツンと頭を叩かれちゃった。

 

「明日香君は篠ノ之とここで観戦して、そのまま次の試合に備えておけよ?」

「うん」

「あの、織斑先生」

 

 何かを聞きたそうにしていた箒さんが千冬先生に質問する。

 

「何だ」

「明日香の対戦相手は誰なんです?」

 

 それを聞いた千冬先生はニヤリと笑ってこう言った。

 

「私だ」

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

 アリーナに飛び出ると、大体60m程離れた位置にISを展開したオルコットさんが待ち構えていた。

 

「遅いので逃げ出したのかと思いましたわ」

「待たせたのは悪いが、尻尾を巻いて逃げるつもりは毛頭ないぜ」

 

 ハイパーセンサーによると、オルコットさんのISは『ブルー・ティアーズ』ていうらしい。ついでに手に持ってる銃はレーザーライフル、『スターライトmkⅢ』だとさ。名前の通り、鮮やかな青い装甲が彼女の髪や瞳の色と相まって、とても良く似合っている。

 

「始める前にお聞き致しますが、ハンデはどの程度お付けしましょうか?」

「ハンデ?」

「ISの総搭乗時間が300時間を越える私に、ついこの間初めてISを動かした貴方が勝てる筈ありませんもの」

 

 なるほど、そりゃ凄い。だけどな……。

 

「んなモン要らないよ。弟分にカッコイイ所見せるって言ったんだ。ハンデなんかあったら決まらないだろう?」

「刈内、明日香……」

 

 明日香の名前を呼ぶ時、複雑そうな表情をしたのを見逃さなかった。そうだ、考え事したままじゃ戦いに集中出来ないかもしれないし、前から思ってたこと今聞いておこう。

 

「なぁ、何で仲良くしたいって言ってる明日香の事を避けてるんだ?」

「そ、それは……」

 

 言いにくそうにしてるけど、そのまま待つ。

 

「あの『目』、ですわ……」

「目? 確かに明日香は話してなくても、俺とかの目をじっと見つめるからくすぐったくなる時はあるけど……。それがどうかしたのか?」

「ああ、そういえば、貴方はあの『目』を見ていないのでした……。なら分かる筈ありませんわね」

 

 ガッカリしたような言い方に少しモヤモヤする。目が何だって言うんだ。明日香は明日香だろ。

 

「もうこの際理由は聞かない。俺が勝ったら明日香と友達になってもらう!」

「お好きになさいな。どのみち、勝つのは(わたくし)なのですから!」

 

 俺は身構えて、オルコットさんはその手に持っていたスターライトmkⅢを構える。

 

「さあ、踊りなさい! (わたくし)とブルー・ティアーズが奏でる円舞曲(ワルツ)で!!」

 

 ロックオンアラートを感じて咄嗟に右に避けた直後、回避が間に合わず左の非固定浮遊部位(アンロックユニット)のスラスターに被弾してしまった。

 

「くっ」

 

 ダメージチェック、ダメージ小、エネルギー系統武器によるダメージ、機能に異常無し。良かった、最初からスラスターがやられてたらコトだからな。

 

「こっちからも行くぜ!」

 

 武装を量子変換(インストール)してある拡張領域(バススロット)のリストを確認して、愕然とした。

 

「近接用ブレード1本とかふざけてんのか!? と、とりあえず展開!」

 

 右手に機体と同じ灰色の、IS用の武器が出てくる。

 

「貴方、射撃型に近接を挑むなんて……ふざけていますの?」

「ふざけてるかどうか……試してみるか?」

「馬鹿にしてっ!」

 

 オルコットさんは戦闘が始まった位置から動かずにライフルを連射してくる。ハイパーセンサーの射線予測のおかげで、掠るだけで何とか避けきった。

 

「この、ちょこまかと! いいでしょう、この機体の華をお見せしますわ! 行きなさい、ブルー・ティアーズ!」

 

 機体後部にある4基のフィンアーマーが外れ、俺の周囲を取り囲む。

 

「ビット……拙いっ!?」

 

 右斜め前上方、真上、左斜め前下方、後方の四方向から放たれたレーザーを左斜め前上方に移動して回避する。

 

「掛かりましたわね!」

「ぐっ!?」

 

 嵌められた。ビットの攻撃は回避先を限定させる囮で、本命はオルコットさん自身のライフルか! 左腕で防御したけど、結構イイダメージをもらっちまった! 初期化(フォーマット)最適化(フィッティング)のせいで機体も重い……。

 

「このままじゃ削られてシールドエネルギーが0になって負けちまう……! だったら突撃あるのみだ!」

「フフフッ、猪武者とは貴方の事を指す言葉ですわね!」

 

 なんとでも言え。どんな状況だろうが、俺には負けられない理由があるんだ!

 

「うおおお!!」

 

 ジグザグに動いてかく乱しながら、接近する。もちろんオルコットさんも黙って接近を許す筈が無い。後退してビットを操作して削りつつ、足止めをしようとする。

 ……ん? ビットを操作してる時、足が止まってないか? 逆にオルコットさんが動いてる時、ビットが止まってないか?

 

「試してみるか……! 突撃だぁ!」

「っ! いい加減、しつこいですわよ!?」

 

 やっぱりだ! ビットが止まった瞬間、真っ直ぐ突っ込んだら反応が遅かった! なかなかクリーンヒットが入らなくて焦りも出てきてるから、ビットの動きも単調になってきてる。これなら……!

 

「セイッ!」

「な、ビットが……!」

 

 ビットは常に1基が俺の死角となる後方斜め下に配置してあるから、オルコットさんが動いた瞬間に切り捨てる。残り3基!

 

「どうした、俺を踊らせるんじゃなかったのか?」

「このっ、墜ちなさい!!」

 

 ますます狙いが甘くなる。ほら、また1基墜ちた。残り2基!

 

「おりゃああ!!」

 

 壁にしようとしたビットを切る。残り1基!

 

「男なんかに……負けてなるものですか!」

「そんなプライド……捨てちまえ!」

 

 最後の1基を切り捨てる。これでもう邪魔なモノは無い!!

 

「うおお!!」

「負ける…………なぁんて、最後の最後に掛かりましたわね」

「な、に……!?」

 

 スカートアーマーに隠された武器が、俺を捉える。

 

「ミサイル!?」

 

 避けようとしてももう遅い。2基のミサイルが直撃して、俺とオルコットさんを爆炎が包む。

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

 近接ブレード1本でビットを墜とされた時は驚きましたが、所詮は男。油断して撃墜されるなんて、無様ですわね。…………どうして試合終了にならないんですの?

 

「なっ……!!」

「俺には、負けられない理由があるんだ」

 

 その言葉と共に煙の中から現れたのは、純白の装甲を纏った織斑一夏だった。

 

「まさか……初期設定で戦って……!?」

「千冬姉の名前を守る。同じ武器を使う弟の俺が負けられないんだよ」

 

 咄嗟に構えたライフルが切り捨てられる。

 

「明日香が……弟分が見てんだ! 兄貴分の俺は負けられねぇんだよ!! 白式!! 雪片弐型(ゆきひらにがた)!!!」

 

 手に持った機体と同じ白い近接用ブレードの刀身が展開し、エネルギーを纏う。

 

「貴方は……どうしてそこまで……」

 

 近接ショートブレードのインターセプターを展開する事すら忘れ、とてつもなく強い意志を宿し、激しく闘志を燃やす織斑一夏の『目』を見る。

 

「『男』だからさ!」

「ああ……」

 

 実にイイ笑顔で返された答えを噛み締め、その一刀を受け入れた。

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 試合は(わたくし)の敗北という形で終わり、織斑一夏とは反対方向のピットに戻ると、何度か話に出ていた『刈内明日香』が居ました。

 

「貴方……どうして」

「セシリアさんが、寂しそうだったから……」

「っ」

 

 私が……寂しそうに? 確かに私の両親は既に他界していますが、寂しくなど……。

 

「寂しくても、傍に誰かが居れば少しは心が軽くなるから……」

 

 ああ、両親の事を考えた時点で、寂しいと思ってしまっている証拠ではありませんか。

 

「ありがとう、ございます。それと、これまで避けていて、大変申し訳ありませんでしたわ」

「うぅん、セシリアさんにはセシリアさんの事情があったんでしょ? ボクは気にしないよ」

 

 儚げに笑う彼は、あの『目』を宿した彼とは全くの別人に見える。

 

「貴方……ISと意思疎通が可能でしたわね」

「うん」

「私のIS、ブルー・ティアーズは何と?」

「えっとね……『敗北はマスターの慢心が原因ですわ。今回の一件、努々(ゆめゆめ)忘れてはなりませんよ?』だって」

 

 ISは操縦者と似るといいますが、喋り方までそっくりではありませんか。

 

「フ、フフフ……えぇ、えぇ、骨身に沁みましたわ」

「なら、良かった」

「貴方……いえ、明日香」

 

 名前を呼ばれ、とても嬉しそうに私の言葉を待つ明日香。犬であれば、尻尾を激しく振っているんでしょうね。

 

「ISがとてもお好きなのですね」

「うん! ボクのお姉ちゃんたちだもん!!」

 

 物理的な距離ではなく、心の距離という意味で、彼の傍にいつも居たのはお姉ちゃんたちと呼ぶIS達の事なのでしょうね。そう考えると、彼が雫お姉ちゃんと呼ぶ私のISが、今までの高慢すぎる態度に辟易していたのであの『目』で怒った、といったところでしょうか。

 

「なんて……」

 

 なんて愚かなのでしょう……。勝手に作ったイメージに惑わされ、純粋に仲良くなろうとしていた明日香を1週間も避け続けるとは……。本当に馬鹿なのは、私の事でしたのね。

 

「明日香」

「何?」

「私と、お友達になって頂けませんか?」

 

 私の問いに、誰をも魅了し咲き誇る、大輪の花のように華やかな笑みを浮かべ答える。

 

「うん!! これからよろしくね! セシリアさん!!」

「えぇ、よろしくお願いしますわね、明日香!」

 

 かくいう私も、魅了された内の1人になってしまったようですわね。

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

 セシリアさんとお友達になって、親愛のハグという事で抱きしめ合った後、ISを展開して千冬先生の待つアリーナに飛び出す。

 

「来たか。その顔だと、余程嬉しい事があったようだな」

「うん! セシリアさんとお友達になったんだ!」

「ほう、それは喜ばしい事だ」

 

 打鉄を纏う千冬先生は、本当に嬉しそうに笑った。

 

「アリーナの使用時間も押している。早速始めよう」

「うん! 楽しい時間にしようね!」

 

 頭の装甲を被るボク。

 

「なら、私を満足させてくれよ……!!」

 

 刀を構える千冬先生。

 

≪いつでも行けます!!≫

 

 気合十分の(サン)お姉ちゃん。

 

≪私も居るのを忘れないでくださいよ……≫

 

 うん、千冬先生の打鉄のお姉ちゃんも忘れてないからね!

 

「行くよ!!」

 

≪行きます!!≫

 

「来い!!」

 

 試合開始のブザーと同時に千冬先生にぶつかっていく。

 

 さあ、楽しい楽しいISの時間だよ!!

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