ゆっくり虐待日記   作:かまぼこあき

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間に合いました。

今回の話は虐待要素ないです。



第五話後編、やせいゆっくりのまつろなのじぇ

 

 水の流れる音が聞こえ、少しジメッとしている森の中。真夏のように熱い感じではなく、どちらかというと涼しいその場所にとあるゆっくりが二匹息を潜めていた。

 

「まりさ……」

 

 れいむがとなりにいるまりさにアイコンタクトを送る。

 それに気づいたまりさは頷くと、体勢を整え

 

「まりさはゆっくり捕まえるよ!」

 

 そう叫び、目の前の草の先に止まっていたバッタに飛びかかった。

 しかし、バッタも態々捕まえると宣言した奴に捕まるほど馬鹿ではない。自慢の脚力でまりさを躱して、雑草の奥へ消えてしまった。

 

「ゆぐぇ!」

 

 一方、躱されたまりさは勢いよく地面に衝突する。その様子を見ていた番であるれいむは急いでまりさに駆け寄る。

 

「まりさ! だいじょうぶ? ぺーろぺーろ……」

 

「すばしっこいバッタさんなのぜ!」

 

 まりさは痛む顔をれいむに舐めてもらいながら、悔しそうにそう言った。

 

「ゆ?まりさ!あっちにもバッタさんがいるよ!」

 

 ふと別の所にもバッタがいる事に気がついたれいむは焦った表情でまりさにそう伝える。

 

「ゆ!こんどこそつかまえるのぜ!」

 

 まりさは再びバッタを捕まえようするが、それを察したバッタは跳ねて森の奥へと逃げていった。

 

「まつのぜ!」

 

「まってよ!まりさー!」

 

 バッタを追いかけるまりさにそのまりさを追いかけるれいむ。森の中では割と在り来たりな光景を見ている者がいた。

 

 

 

 

 

 突然バッタが大きく跳ねた。その着地先は小川のど真ん中にある平らな岩の上。

 

「ゆぐぐ……」

 

 当然まりさも跳ねてそこに行ける訳がなく、小川の前で立ち止まってしまった。

 小川と言ってもそれは人間にとっての話で、ゆっくりにとっては深い川に違いないのだ。

 

「まりさー! ぜぇぜぇ……バッタさんはどうしたの?」

 

 遅れてれいむがその場所に到着し、まりさに状況を尋ねる。しかし、まりさは息切れしているれいむに見向きもせず、ただ岩の上に乗ったバッタを睨みつけていた。

 

「……まりさ、あきらめたほうがいいよ」

 

 まりさの視線を追い、バッタの存在に気づいたれいむはまりさにそう語りかける。

 

 その時だった。

 

「こんな所で何をしてるみょん?」

 

 先程まりさ達の姿を見かけて、跡をつけていたみょんが姿を現した。

 

「ゆ?なんでばかなみょんがここにいるの?」

 

「おちびちゃんたちはどうしたのぜ!しょくばほうきはせいっさいっだよ!」

 

 みょんの存在に気づいたまりさ達は驚きつつもいつものようにみょんに食って掛かった。

 

「そんなことよりバッタさんはいいのかみょん?」

 

「はぁあ?あそこへはいけないでしょぉー!これだからぐずは……」

 

 論点をすり替えようとするみょんの発言に腹が立ったれいむはおさげを手のように使い、バッタの所を指して不機嫌そうにそう言う。

 この小川は大体大人の人間の膝辺りまでの水深だ。不服だが確かにれいむの言う通り、普通のゆっくりでは到底行くことは出来ないだろう。

 

 そう普通のゆっくりでは……だ。

 

 元金バッジであるみょんは違った。

 何が違うか。それは身体的なものではない。いくらみょんでもこの小川を超える事は不可能だ。なら何が違うか。それは頭の良さ、即ち知力の違いだ。元金バッジであるみょんは普通のゆっくりと比べて頭が良く、それこそ天と地ほどの差だ。そんな聡明であるみょんは近くにあった大きな木の枝を咥え、その先っぽを器用にバッタがいる岩に乗せた。そこへ行く道がないのなら作ればいいのだ。

 

「なにしてるんだぜ?」

 

 みょんの行動を理解出来ないまりさは訝しそうに首を傾げ

 

「ぐずのこうどうはりかいできないよ!」

 

 れいむは野次を飛ばした。

 

 しかし、それでもみょんは手を休めない。一本一本大きな木の枝を着実に岩へと架けていき、やがてそれはゆっくりが通れる程の橋へとなった。

 そこでやっとみょんが何をしていたのか、まりさ達は理解した。

 

「これで通れるみょん!」

 

 やっと完成した橋にみょんは嬉しく思い、まりさ達の方に向いた。

 この嬉しさは別にまりさ達の役に立てたから等という仕様もない事ではない。これから起こりうる惨劇を嬉しく思ったのだ。

 

「ふん!だからってしょくばほうきはゆるさないのぜ!」

 

「さっさとむらへかえってね!」

 

 一方でみょんの本当の目的を知らないまりさ達は信じられないといった表情をしていたが、すぐにいつも通りに戻ると橋を渡った。

 

「まりさ、バッタさんがいるよ……」

 

「わかってるのぜ。バッタさんをつかまえるよ。そろーりそろーり……」

 

 まりさはれいむにそう返事をするとバッタへと近づいていく。それもまたご丁寧に宣言をした。先程の失敗を活かしていない所か、そもそもなぜ失敗したかも考えていないのだ。

 

「あ、まつのぜ!」

 

 がばがばなまりさのスニーキングに気づかない筈もなく、身の危険を感じたバッタは対岸へ大きく飛んだ。

 

「ゆぐぅ……」

 

 まりさは対岸にいるバッタを悔しそうに睨みつける。

 

「こんどこそもうむりだよ……」

 

「あきらめるのぜ……」

 

 また橋を作るという手や小川を迂回して対岸に行くという手もあるが、ゆっくりがそんな手を思いつく筈もなく、まりさ達は大人しく諦める事にした。

 

「ゆ?」

 

 突如何かが崩れるような音がして、まりさとれいむは硬直する。それは背後から聞こえており、まりさとれいむは恐る恐る振り返った。

 

「ふぅ……」

 

 そこには自分で作った橋を崩し、一息ついたみょんの姿があった。

 それを目の当たりにしたまりさ達は激しく動揺し、絶句する。

 

「な、なにしてるのおおお!」

 

 先に我に返ったのはれいむだった。れいむはまるで信じられない何かを見るようにみょんを怒鳴る。

 それもその筈橋を崩されたと言うことは、即ち退路を断たれた事を意味している。このままではまりさ達は岩の上から離れられないのだ。

 

「さっさとあたらしいはしをつくるのぜ!」

 

「はやくしてね!ぐずはきらいだよ!」

 

 その状況に焦ったまりさ達はみょんに命令するが、みょんはそれを頑として聞き入れなかった。

 何故ならまりさ達の態度がなっていないからだ。今まりさ達の命はみょんが握っていると言っても過言ではない。それなのに何故かまりさ達はまるで自分達の方が偉いと言っているかのように上から目線だ。みょんはそれが気に入らなかった。

 

「土下座するみょん!」

 

 気がついたらみょんは苛立ち、ついそう口走っていた。

 言われたまりさ達は一瞬固まるが、すぐにその意味を理解すると笑い出す。

 

「なにいってるのぜ!さっさとはしをつくるのぜ!」

 

「はやくしてね!」

 

 みょんの要求を受け入れない所か、まりさ達は更にヒートアップする。

 

「じゃあみょんは帰るみょん……」

 

 まりさ達が土下座を受け入れないとわかったみょんはこれ以上ここにいても無駄だと判断し、立ち去ろうとする。

 するとどうだろうか。まりさ達の顔色は一気に悪くなった。

 

「ま、まってね!かえるならはしをつくってからにしてね!」

 

「そうなのぜ!」

 

 まりさ達の言い方はさっきと比べると優しくなったが、まだ立場がわからないようだ。

 

「土下座するみょん!」

 

「ゆ、ゆぐぐ……」

 

 そこでやっとまりさ達は自分が下だという事を理解し、その悔しさから歯軋りする。

 

「はやくするみょん!」

 

 みょんの迫力に急かされ、まりさ達はすぐ地面に頭をつける。

 

「おねがいします! れいむたちをたすけてください!」

 

「たのむのぜ!」

 

 さっきまでの態度が嘘のように下手に出るまりさ達。頭を何度も地面に擦りつけ、必死さが伝わってくる。

 その無様な姿を確認したみょんはその場から立ち去ろうと方向転換する。

 

「どこにいくのぜ!」

 

 みょんの後姿をしっかり見定めてまりさは聞く。勿論、土下座しながらだ。

 

「帰るみょん……」

 

「れいむたちはどげざしたよ! だからたすけてね!」

 

 れいむはみょんを引き留めるのに、頭どころか体も地面に擦りつける。その姿はもはや土下座には見えず、蛞蝓のようになっていた。 

 

「誰も土下座したら助けるなんて言ってないみょん! そこで野垂れ死ぬみょん!」

 

 みょんはそう言い放つと森の中に消えていった。

 残されたまりさ達は土下座したまま茫然とし、裏切られたと気づくのに数分掛かってしまう。

 

「くそみょんめ! つぎあったらせいっさいっしてやるのぜ!」

 

 まりさは怒りが込み上げてくるが、その怒りの矛先を向ける物がなく、その結果言葉が荒くなる。

 

「まりさ……どうするの?」

 

「うるさいのぜ!」

 

 れいむは不安そうな表情でまりさに聞くが、当然まりさに答えられる筈もなく、出てきた言葉は行き場のない怒りからの暴言だった。

 それからまりさとれいむは互いに黙り込んだ。辺りを漂う険悪な空気に、聞こえるのは小川の流れる音だけ。

 

「ゆ? まり……」

 

 俯くまりさの事を見つめていたれいむはある事を思いつき、その事をまりさに伝えようとするが途中で言葉が途切れてしまう。何故ならそれを実行すれば、この岩の上から脱出できるが先着一名なのだ。

 

「どうかしたのかぜ?」

 

「な、なんでもないよ……」

 

 れいむは笑ってはぐらかす。

 そんなれいむをまりさは訝しそうに見つめていた。

 

「ふんっ!」

 

 まりさは気分転換しようとれいむに背を向けて、流れる川を眺める。

 れいむが思いついたのはまりさの帽子を船のように使い脱出するという小学生が考えそうな方法なのだが、先程も述べた通り先着一名。まりさの帽子に大人のゆっくりが乗る事は難しいだろう。仮に乗れたとしても重量オーバーで沈むのがオチだ。

 

 れいむは小さい餡子脳をフル回転させ考える。選択種は三つ。自分が生き残るか、まりさを生かすか、それとも誰かが助けに来てくれるのを待つかだ。

 

「ゆぅ……」

 

 れいむはため息を吐く。助けを待つのは論外だろう。何故なら日が暮れると捕食種が活発になり、生き残る確率がぐんと下がるからだ。

 それとまりさを助けるのも論外だ。れいむには自己犠牲して他のゆっくりを助けれる程の勇気がなかった。例えそのゆっくりが家族や友達であってもだ。

 という事は残る選択種は一つ。単純に自分が助かればいいのだ。

 そう決断した瞬間、れいむの中の優しさや悲しさといった穏やかな感情は消え去り、芽生えたのはまりさを殺すという明確な殺意。その感情がれいむを支配した。

 

「ゆっくりしないで死んでね! すぐでいいよ!」

 

 れいむはそう叫びながらまりさを川へ落そうと体当たりを繰り出す。

 

「な、なにするのぜ!」

 

 突然の味方の裏切りに対応出来る訳がなく、まりさは体当たりを諸に喰らってしまった。

 岩の上から吹き飛ぶまりさの身体。れいむは勝ったと確信するが、いつまで経っても水飛沫が聞こえない。

 不思議に思ったれいむは確認しようと岩の上から水面を見下ろした。

 

「しぶといよ! さっさとしんでね!」

 

 そこには岩の出っ張りに必死になって噛みつくまりさの姿があった。

 

「あ、これはれいむがもらうよ!」

 

 れいむは岩に噛みつくことに精一杯なまりさが何も出来ない事に気づき、まりさの帽子を取り上げて、本人の目の前で見せつけるかのように被った。

 

「ゆ! ゆぐぐ!」

 

 まりさは涙目で「かえすのぜ!」と訴えるとれいむは急に微笑みだす。そのれいむの殺意が籠った笑顔にまりさは恐怖を覚えた。

 

「じゃあさっさと死んでね!」

 

 れいむはまりさの口を踏んづけた。まりさはそれにただ耐える。激痛だが、口を離すと川の中に落下だ。

 

「ふん! ふん!」

 

 耐えるまりさに嫌気が差したれいむは一心不乱に何度も何度もまりさの口を踏みつける。すると直ぐにまりさの口はぼろぼろになり歯もなくなって見るに堪えない顔になり果てた。

 

「さっさとしね!」

 

 最後のれいむの渾身の一撃でまりさの口は完全に潰れ、まりさは川の中に落下した。

 

「れ、れいむー!……さ……ぃ……」

 

 まりさは川の中でれいむに向かって憎しみを叫ぶが、流れが速く声は掠れて聞こえ、終いにはまりさは溺れながら流されて見えなくなった。

 

「さて、れいむはゆっくりだっしゅつするよ!」

 

 まりさの死亡を確認したれいむは岩を下り、ぎりぎりまで水面に近づく。

 

「よいしょ……」

 

 そして被っていた帽子を浮かべ、飛び乗った。帽子の船は特に浸水もなく、れいむが大きな動きをしない限りは沈まないだろう。

 

「これでだっしゅつだよ!」

 

 れいむはこれなら脱出出来ると確信する。しかし、それは束の間の自信だった。

 

「ゆ……?」

 

 船が思い通りに動かないのでれいむは固まる。

 普通ならば木の枝か何かをオールに見立てて使い流れをコントロールするのだが、それがない帽子の船はただ川の流れに身を任せるだけだった。

 

「そっちじゃないよ!」

 

 れいむは必死に物である帽子に言い聞かせるが、当然応えてくれる筈もなく、どんどん流されていく。

 

「れ、でいぶぅぅー!」

 

「ま、まりさ!」

 

 突如水面下からまりさが飛び出してくる。その姿は一言でいうならゾンビのようで、皮は所々切れ、目玉も片方無くなっていた。

 

「ご、ごろしてやるぅ!」

 

 まりさは最後の力を振り絞り、口だった部位を使い帽子に噛みついた。

 

「や、やめてね!」

 

 帽子の船はまりさによって揺らされ、浸水してきていた。まりさを何とかしないといけないが、動けばもっと浸水するだろう。そのためれいむはただ静止の言葉をまりさに投げかける事しか出来なかった。

 

「ゆ?」

 

 背後から何かが水面から飛び出す音が聞こえ、れいむは振り向いた。そこには大きな魚がいた。鯉という魚なのだが、普通よりも大きい。それも大きな口を限界まで開いている。

 

「たす……」

 

「や……」

 

 れいむとまりさはその鯉を見て食べられると思った頃には既に食べられていた。

 鯉は水飛沫を上げ、水中に戻ると帽子を吐き、満足したのか何処かへ消えていった。

 

「やっぱりバカみょん……」

 

 地上でその様子をこっそり見ていたみょんがそう呟いた。

 

 

 





じかいはみていなのじぇ!



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