海の沖合に建てられた、人間や遥かに大きいノーマルやネクストすら凌駕する高さの壁に守られたこの世界で最も重要拠点であり、粗大ゴミと化した場所だ
アルテリア・カーパルス、世界各地に点在し人間の骨の名を冠された超巨大発電所兼、クレイドルを高度7000mの空を半永久的に飛ばし続ける為の、エネルギー送信施設だ
カーパルスは、陸地からの連絡路は真ん中へと延びる連絡橋が1つ、また内側には旧世代の最大の戦艦の46cm砲より大きい500mm砲が無数に存在し、また無人機ノーマルやミサイル砲台が針のように守護している
『よう、相棒』
その近くの海を、俺と、俺の愛機は浮いていた
その近くにもう一つ、特徴的な逆脚のネクストが浮かんでいる
オールドキングのネクスト、「リザ」である
「お前か……。 よく受けたもんだな、お前も。 そもそもありゃあ隠す気がねぇな」
数日前、クレイドル03を落とし、セレンにすら教えてなかった隠れ家へ追っ手を撒き帰ったときカラードからミッションのブリーフィングが届いていた
内容は先述した、目の前のアルテリア・カーパルスの占拠、インテリオルの特徴の『重要な事は伝えない』が輪にかけて酷く、細かなミッションプランは無し、自由にやれ、料金前払い……しかもミッション協賛企業に敵対企業が首を揃えて並んでいた
『あぁ、どうせ罠だろうなぁ……』
ぎちり、と音が聞こえそうな邪悪な笑顔を見せる
その通信が切れると同時にリザはOBを展開、カーパルスへと入っていく
「鬼が出るか、蛇が出るか……」
その呟きはOBの爆音にかき消された
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
『来たぞ……気が乗らんなぁ……』
はぁ、と溜息を漏らしたのはカラードランク4、ローディーだった
『嫌なら降りていいんだぞ、ローディー。 だが奴らが起こしたこと、忘れたとは言わせない』
怒気を隠すことなく喋るのはランク3、ウィン・D・ファンションである
『あいつらを引き合わせたのは私の責任だ。後で何なりと罰を受けよう。 だが奴らは止めないと駄目だ。もう奴らは人ではない、人を殺すだけの、獣だ』
ランク1、オッツダルヴァは表面上は平静を装って居るがORCA、ひいてはレイレナードの理想すら壊され怒り心頭を通り越し、最早鬼の佇まいである
『……リリウムは……』
ランク2リリウム・ウォルコットは恨みの連鎖の中にか細声を挟もうとするがそれも叶わない
『全く……彼には期待してたんだがなぁ。悪い奴、しかもとんでもない奴に引っかかるとは……本当に勿体無い……』
ローディーが苦い後悔の様に呟く、誰に宛てた訳でもなく
『あんな奴にひっかかる馬鹿に育ててしまった……。せめて、私が落とす……』
リンクス戦争の生き残り、彼、首輪付きの元オペレーターの霞スミカは最早以前の様な表情は見られない
リリウムは思う、『どうしてこうなってしまったのか』
『さあ、作戦を開始しよう』
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
『……偽りの依頼失礼しました。 あなた方には此処で果てていただきます』
カーパルスの中央、電力送信用アンテナが乱立したエリアに入ると聞きなれた、あの声が無線機から聞こえた
「やあ、久しぶり。 リリウム」
メインブースターを吹かし、壁上の海へ出っ張った部分に降り立ち、アリーヤの特徴的な縦3列の複眼を細める
『……っ』
「元気無いねぇ。久し振りの再会だってのにさ」
苦笑しながら背中のグレネードを展開しながらレーダーに映った6機の機影を確認する
「他にいるんでしょ? 例えば、リリウムが居るんならオッツダルヴァ、いやテルミドールか」
『ああ、久し振りだな。 カラードのリンクス。 いや獣か』
テルミドールの声に続くのはランク3、ウィン・Dだろう
『貴様、よく抜け抜けと来れたものだ。 ORCAを貶めておいて』
懐かしい声を聞きながら笑みは深くなっていく
ああ、この最高の連中を壊せるのか、楽しみだ、ああ、楽しみだ
『……お前か。 こんなことを起こした落とし前、付けさせてやるからな』
一際目立つ、初心者の頃、対戦相手として戦っていてくれた桜色のネクスト
「セレンさん……!」
一番聞き覚えのある、声、あの目標だった人
「さあ、やろうよ」
『勿論だ、相棒』
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
先ほどから続いていた爆発音が止んでから数分経った
カーパルスを覆う壁の中に火花を散らすジャンクが7、残って立っているのは旧世代と言えるアリーヤと最先端のBFFの063AN
アリーヤは機体が激しく損傷し、片腕は千切れ、あちこちからオイルが漏れ、今すぐにでもジャンクの仲間入りを果たしそうな雰囲気を纏っていた
一方、063AN_アンビエントはほぼ無傷で持ったレーザーライフルを構えていた
「……さあ、やれなよ。 BFFのお姫様から人類救世のお姫様になれるんだ……」
AMSの処理に取られ、脳神経は幾つもパンクしかけ激しい頭痛を訴え、更には深くAMSと接続したせいで腕が無くなったフィードバックにより片腕の感覚が亡くなっていた
アンビエントの身体が動き、ゆるゆると腕を上げるが一向に撃つ気配が無くなる
『どうして』
『どうして、こうなってしまったのでしょうか……』
彼女は今まで、自分が聞いたことのない声色で尋ねる
「……元々おかしかった。 それだけだよ」
その言葉をやっとの思いで吐き出すとシートに身を沈ませ、彼女と出会った時のことを思い出し始めた
ちなみに各話のタイトルは好きな曲名から取っていきます
後書きにアーティスト名も含めて書きますので良かったらお聞き下さい
Green day/Minority