桐ちゃんからの爆弾発言から一週間。
あれから俺は友達の家に一週間泊まり込んで同人誌制作のお手伝いをしていた。
結果、予定より三日ほど早く終わって「流石は千葉の天才だね☆」と嬉しくもない感謝をされたのだった。
「兄貴、ちょっといいか?」
ようやく家に帰りついたら今度は弟からの呼び出しである。
そろそろ俺はゆっくり寝たいんだが、そうもいかないだろう。
気怠そうな雰囲気とは裏腹に、目が本気だからだ。
「桐ちゃんのことか」
「ああ、実はな・・・」
何でも、京介なりに考えた結果桐ちゃんには「オタクの友達」が必要だと考えたんだそうだ。
それでそういう友達にも縁がある俺を頼りたいんだと。
とりあえず桐ちゃんの部屋に行って三人で条件をつけていく。
一つ、学校の友達に絶対ばれない事。
一つ、男ばっかりのコミュニティは断固反対。
一つ、同じ年頃が望ましい。
ん?これはもしかしたらいけるかもしれんな。
「ホント!?」
桐ちゃんはスゴイ期待の眼差しでこちらを見る。
「ちょっと待っててくれるか?連絡してみるよ」
部屋を出て“とある人物”に電話を試みる。
『はい、槇島ですが』
「もしもし、高坂と申しますが、沙織さんは御在宅でしょうか?」
『はい、少々おまちくだ「信介さんですか?」お、お嬢様!』
どうやらこっそりと後ろに近づいて驚かせたらしい。
あのころの
『信介さん、お久しぶり・・・というほどではありませんわね』
「そうだな、ちょっと沙織に聞きたいことがあってさ」
『まぁ!信介さんが人を頼るなんて、明日は嵐でしょうか?』
「バカなことを言うな。
実は妹がそっちの世界に入ってな。そっち限定の友達を作りたいんだと。
お前ならアテがあると思ってな」
『あらあらそうでしたか。
女の子ならわたくし、ちょうどいい“サークル”を運営しておりまして。
もう少ししたら“オフ会”の予定もありますから御一緒にどうでしょう?』
「ほう、詳しく聞かせてくれ」
と、奇跡のようなタイミングで最高の話しを聞いたのである。
電話を終えて部屋に戻ると、両者とも期待と不安が入り混じった目でこちらを見てきた。
「心配するな、桐ちゃんに最適なサークルを見つけてきたぞ」
「ど、どんなところ?」
「女性限定のオタクサークルだ。年齢は10代が中心で桐ちゃんの一つ年上の人が運営している。
20人くらいの小規模サークルだから大歓迎だそうだ」
「シンにぃ、もしかしてそのサークルの運営者さんと友達なの?」
「あぁ、あるサークル運営者の妹なんだ。
そこはもう終わっちゃったけど、妹が独自のサークルを作ってる。
えーっとURLは――――――――――――――」
沙織のコミュニティ『おたくっ娘あつまれー』の
電車や街中でナンパでもされたら折角の楽しみがなくなると、俺達は了承し(京介はしぶしぶだったが)大都会東京へと足を運んだ。
桐ちゃんは家族で来たなんてばれたくないと俺達を先に行かせ、メンバーが集まった時に来るようだ。
一見普通の喫茶店に見える「プリティガーデン」という店が待ち合わせの場所らしいが、ここに来るのは実は初めてではない。
『カランカラン』
「おかえりなさいませ~ご主人様!」
『バタン!』
「おい京介、何で扉を閉める」
「・・・いや、そういえば秋葉原だったなと実感しただけだ」
なるほど、京介は
今まで自分とは全く縁がなかった世界に戸惑うのも無理はなかろう。
「いいから入るぞ」
「あ、あぁ」
『カランカラン』
「おかえりなさいませ~ご主人様!」
先程と全く変わらずに出迎えてくれる
教育はちゃんとしているようだな、アイツ。
「二名だ、端のテーブルに頼む」
「かしこまりました~こちらへどうぞ!」
席へと案内してもらい、メニュー表を差し出される。
「メイド長はいるか?高坂と言えばわかる」
「はい!ただ今呼んでまいりますね!」
先程の金髪メイドが奥に引っ込むと、入れ替わりで黒髪ツインテールの痛いメイドが小走りでやってきた。
「いらっしゃいシン君!今日はお友達と一緒かな?」
「いや弟だ、紹介するよ」
目線で「挨拶しろ」「まじかよ」という話をして、
「ども、高坂京介です」
「いらっしゃいませ!じゃあ呼び方はきょうちゃんで決定!
ご主人様は今まで通りでいいよね!」
「あぁ、今日は沙織も別枠でくるから忙しくなるぞ」
「連絡は入ってるよ!ではご注文をお伺いします!」
「俺は『メイド長特製カルボナーラ』でこいつには『幼馴染のラブラブカレー』どっちも大盛り。あと『
「はい!(小声)ご主人様、実は新メニューで『メイドからのラブコールパフェ』なんてものが」
「おう、じゃあそれもくれ」
実は『メイドからのラブコールパフェ』なんてものはなく、隠語である。
意味は「今夜ご主人様にメイド長の女体盛りパフェプレイのプレゼントがあるけど、どうかな?」である。
注文を取り厨房に戻った直後、女性団体のお客が入ってきた。
その中には俺の知り合いと、妹である桐ちゃんもいる。
さて、うまくいくかねぇ―――――――――――――――――――