それではどうぞ。
-バサ、バサ…-
「キキキッ」
ある森の中。
一匹のキースが奥へと奥へと飛んで行く。
「ダークリンク様、キースが戻って来ました」
『……』
向かう先には、大きめの切り株の上に座っているダークリンクと、彼に付き添う一体のスタルフォス。ダークリンクの右手の上にキースが止まり、彼に状況を報告する。
「キィッキィッ」
『…!』
「キッキッキッキキィッ」
『…そうか』
キースの報告聞いたダークリンクはただそう呟き、キースを再び監視に向かわせる。
『……』
「…ダークリンク様?」
報告を聞いてなお無言であるダークリンクに、スタルフォスが恐る恐る呼びかける。
『…レリック回収は失敗に終わったようだ』
「な!? そのような事が…!?」
『我々の目的を妨害する者がいる事は確定した。今までの奴等以外の他にも、魔物達をこの世界に呼び寄せる必要がある』
ダークリンクは立ち上がる。
『“あの方”にも、伝えねばならんな…』
そう言ってダークリンクは森の暗闇の中へと消え、スタルフォスもそれに続いて消えていった。
レリック回収の完了後、メンバーは六課へと戻り、なのはとフェイト、そしてアヴェルの三人ははやてに結果を報告していた。
「まぁつまり、どうにかレリックの確保は完了したという訳やな。そりゃ良かったわ」
「うん。エリオとキャロが途中大変な事になったから、とても冷や冷やしちゃったよ」
「にゃははは、フェイトちゃん相変わらず心配性だねぇ」
「んん、うめぇな…」
「キキッ♪」
「…おいそこの一人と一匹、ちゃんと会話に入りぃや」
心配性なフェイトをなのはが宥める中、アヴェルとノースは美味しそうにリンゴを齧っており、はやてが突っ込みを入れる。
「いやそう言われてもさ、結果的に上手くいったんだからそれで良いじゃねぇか。いちいち報告に付き合わされなきゃいけない俺達の身になれっての」
「キキッ!」
「私等のやる事に付き合う言うたのは一体誰やねん……あとそこの蝙蝠、人を馬鹿にするかのような目で見るんやない!!」
「キッキッキッ♪」
はやてがビシッと突っ込みを入れまくるが、ノースは申し訳なさそうにするどころか、はやてを挑発するかのように、翼ではやてを指差す仕草をする。
「カッチーン……良ぇで良ぇで、そこまでやるんやったら…」
はやては何処からか巨大なハリセンを取り出す。
「―――今ここで、どっちが上かケリつけたろやないかぁぁぁぁぁいっ!!!」
「キッキッキッキッキィィィィィィィィィィィッ!!!」
はやてはハリセンを構えて飛び掛かり、ノースは荒ぶる蝙蝠のポーズを構えて迎え撃つ。
「また始まった…」
「まぁ、どうせノースの勝ちだろうがな。止めるだけ無駄だ、ほっとけほっとけ」
「にゃははははは…」
フェイトとなのはは苦笑、アヴェルは引き続きリンゴを齧り出した。
それから時刻は夜、医務室にて。
「キッキッキッキッ♪」
「な、何故や……何で勝てんのや…」
結局、この勝負はノースの勝利に終わった。敗北したはやては、頭にたんこぶが三つ出来た状態のままベッドでKOされている。
「諦めろ。多分余程の事が無い限り、お前がノースに懐かれる事は無い」
「り、理不尽や……ガクッ」
絶望し切ったはやてはベッドに突っ伏す。
「…ならば俺の場合はどうなんだ?」
ザフィーラは若干困惑している。何故かというと…
「キィ~キィ~キィ~…♪」
ザフィーラの上にキースが乗り、楽しそうに鳴き声を上げているからである。普段警戒心が強い筈のノースが、ザフィーラに対しては全く敵意を見せていないのだ。
「そりゃまぁ……動物同士だからじゃねぇの?」
「いや、俺としては結構複雑なのだが…」
「嫌われないだけ、ザフィーラは良い方じゃない。はやてちゃんなんて…」
シャマルの指差す先に…
「アハハハハ……ドウセワタシハコウモリイカヤネンナァ~……ドウセワタシハコダヌキガオニアイナンヤロウネェ~…ウフ、フフフ、ウフフフフフフフイヒヒハハハハハハハハハハハハ…」
床に突っ伏したまま真っ白の状態で、段々おかしい方向に壊れていっているはやての姿。
「うむ、確かに俺はマシな方だな」
「でしょ?」
最初は困惑していたザフィーラも、あっさりと意見を変える。
((どんまい…))
なのはとフェイトははやてに対し、心の中で合掌するしかなかった。
はやてを医務室に押し付けた後、アヴェル(+ノース)は一旦なのはやフェイトとは別れ、食堂で夕食を取る事にした。食堂には既に副隊長陣、フォワードメンバーも揃っている。
「「ガツガツガツガツガツガツガツガツ」」
相変わらず、スバルとエリオの大食いは健在である。
「ちょ、馬鹿スバル、それ私のサラダでしょうが!!」
「ぷぎゃあっ!?」
そしてスバルの後頭部に、ティアナの拳骨が炸裂するのもお馴染みである。
「いや~、結構食うよなぁ。あの二人」
「…お前がそれを言っても説得力が無かろう」
「全くだ」
「キィ~…ガジガジガジ」
二人の大食いに関心しているアヴェルだが、彼の目の前にも料理を食べ終わった後の皿が大量に重なっており、シグナムとヴィータに呆れられている。そしてアヴェルの隣では、ノースがひたすらリンゴに齧り付いている。
「まぁ、確かに元気に食事をしているのは良い事ではある。だが食べ過ぎても健康に悪い筈なんだがな」
「そうだったのか? 俺も今までに一杯食ってきたが、腹を壊した事は一度も無ぇぞ?」
「「規格外かお前は」」
「規格外結構、自覚はしてる」
シグナムとヴィータの台詞がちょうどハモり、アヴェルも否定しない。
「お前って本当におかしいよな。シグナムとの勝負でも勝ってる上に、怪物共を相手に戦っても全く苦戦しなかったんだろ?」
「本当にな。私も、もう一度模擬戦がしたいくらいだ」
「俺は俺のやりたいようにやってるだけだ。それに今回の場合、いくらか手柄をナノハ達に取られてるしな」
「いや、私達から見ればお前は本当に強いんだ。スバル達も、お前の強さに憧れてるくらいだしな」
「ふぅん、そう見られてたのね俺って…」
アヴェルは呑気にコップの水を飲む。
「その事でだが、お前が駄目でなければ頼みがある」
「何? やれる事ならやっても良いが」
「あいつ等の訓練、付き合える時は付き合ってやってくれねぇか?」
「…あいつ等の?」
アヴェルの眉がピクッと反応する。
「今はまだまだ力不足だが、いずれ立派な魔導師になる」
「お前が少し手伝ってくれるだけでも、だいぶ違うと思うからよ」
「立派な魔導師、ねぇ…」
二人に頼まれたアヴェルは、フォワードメンバーの方を振り向く。ちょうどティアナに頭をグリグリされるスバルの姿や、キャロに汚れた口を拭いて貰い顔を赤くするエリオの姿が見える。
「…まぁ分かった。暇な時は手伝うさ」
「あぁ、サンキュウ」
「そして良ければ、今から私との模擬戦も…」
「「それはまた今度にしてくれ」」
バッサリと断られた上にきっちりハモられてしまい、シグナムが一気に沈んだ表情になったのは言うまでもない。
「俺の強さに憧れてる、ねぇ」
男子寮の部屋に戻ったアヴェル。ノースは既に、天井にぶら下がって就寝中である。
「勘弁して欲しいな。俺は英雄なんかじゃない」
アヴェルはベッドに寝転がる。
「―――俺は、英雄と呼ばれちゃいけないんだ」
そう呟いて、アヴェルはゆっくり目を閉じた。
結局、蝙蝠には勝てなかったはやてェ……まぁ、それが狸の宿命なんだよきっと←
さて、この次は派遣任務編です。
派遣任務編では、恐らく“あいつ”が登場する事になるでしょう。