それではど~ぞ~。
「どうかしら、うちのリムジンは」
「ほぅ……中々の乗り心地だな」
現在、すずかという人物のいる屋敷まで車で向かっているのは、アリサとアヴェルの二人だけ。この二人は今、アリサの乗っていたリムジンで移動中である。なのはとフェイトは、フォワードメンバーを率いて別行動中。
「ところであんた、すずかが言ってた赤い竜について何で知ってるの? この海鳴市どころか、地球にだって来るのは初めてなんでしょ?」
「俺のいた世界にも、同じような特徴を持ったのがいたからな。あくまでもしかしたらの話だから本当にそうかどうかは分からんが、万が一の事も考えてな……ふぁぁ」
アヴェルは眠たそうに欠伸をする。
「…はやての言っていた通り、あんたって仕事熱心なのかそうじゃないのか、よく分からないわね」
「面倒な事は素直に面倒って言うけど、協力するって言っちまったしな。一度そう言った以上、命令されたらそれに従うまで。それが俺の傭兵としての本分だ」
面倒な事は面倒だと思う、しかし命令されたならば逆らわず素直に従う。アヴェルにとっては、それが傭兵としてのあり方なのだ。
「命令されたらって……じゃあ、人を殺せと言われても?」
「殺すだろうな、それも徹底的に」
「徹底的にって……そんなハッキリOK出してどうするのよ!?」
アヴェルがあっさりと肯定したものだから、流石のアリサもこの言動には動揺する。
「今回は色々あって無理だろうけど、報酬さえ支払えばどんな命令だって従うさ。というか、俺が傭兵である時点でその辺は察しても良いと思うんだが?」
「むっ……まぁ、確かにそうかもしれないけど…」
「傭兵として生きる事が、俺にとっての全てだ。それ以外に…」
言いかけるも、途中で言葉が途切れる。
「それ以外に?」
「…いや、やっぱり何でもない。忘れてくれ」
「そ、そう…」
アヴェルが話す時の表情から何となく察する事が出来たのか、アリサも納得はいかないもののそれ以上は何も聞かない事にした。
そうしてる間に、彼等の乗るリムジンは目的地である屋敷へと到着しようとしていた。
「…でけぇな」
目の前の大きな屋敷を見て、アヴェルはそう言わざるを得なかった。
「ここが私の友達、すずかの住んでる屋敷よ。ほら、さっさとすずか達と合流するわよ」
「ほいほい、分かったよ。だから置いていこうとするな、俺一人じゃ迷子になる」
中庭へと進んでいくアリサを、アヴェルが急いで追いかける。
しかし中庭に入ったその時…
「「「「ニャァァァァァァァッ!!」」」」
「な、ちょ、のわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!?」
何処からかたくさんの猫が現れ、アヴェルに向かって飛び掛かる。突然の襲撃にアヴェルは何も対応が出来ず、猫達によってのしかかられてしまう。
「あ、言い忘れてたけど、この屋敷には猫がいっぱいいるから」
「…あぁうん、出来れば早く言って欲しかったな。そういうのは」
「「「「ニャアニャアニャアニャア」」」」
「ちょ、そんなに乗るな動けん!?」
猫達は倒れたアヴェルの上に次々と乗りかかり、アヴェルはどんどん身動きが取れなくなっていく。
「しょうがないわねぇ。あんたはここで猫達の相手して待ってなさい……って、言おうと思ったけどその必要も無さそうね」
「ん?」
「「…髪型変えた?」」
「ケーキ作りに失敗したんや」
真っ黒になってる上に髪型が見事なアフロヘアーになってしまっているはやてと、そんな椅子に座っている彼女を団扇で扇いでいるシグナムとヴィータ、シャマルの三人。アヴェルとアリサははやてのアフロヘアーを見て綺麗にハモり、はやても冷静に突っ込みを返す。
「…えぇっと、取り敢えず久しぶりねはやて。まず、何がどうなってそうなったのか、三十字以上四十字以内で詳しく答えなさい」
「無理や」
「うん、でしょうね」
「その無茶振りは置いとくとして……久しぶりやなアリサちゃん。で、何でこうなったのかは後で原因が分かるで。今すずかちゃんがその原因を探し出して来るやろうし」
はやてはテーブルに置いている紅茶を飲む。しかしアフロヘアーの所為で、飲んでいるその姿は実にシュールである。
「やっぱり、その原因ってのはあの赤いトカゲだったりするのか?」
アヴェルはどうにか立ち上がり、頭の上に乗っかっている猫を下に降ろす。
「ありゃ、何でアヴェルさんが知っとるん? ていうか何故にアヴェルさんだけ?」
「その赤いトカゲとやらに心当たりがあるみたいらしくてね。私が連れて来たの」
「万が一の事も考えてな……ちょ、いちいちこっち来るなっての」
アヴェルは今もなお体中に引っ付こうとする猫達を一匹ずつ引き離そうとする。
「「「「ニャアニャアニャアニャア」」」」
「いや、おい、だからやめろこらっ!!」
しかし、猫の数はどんどん増えていく。
「「「「ニャアニャアニャアニャアニャアニャアニャアニャア」」」」
「うぉわっ!? おい待て、何か増えてる!! ちょ、やめ……ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!?」
結局猫達の勢いは止まらず、アヴェルは再び猫達によってのしかかられる羽目になった。
(((((懐かれてるなぁ…)))))
アリサ達からすれば、誰かがここまで懐かれてるのも中々珍しいようだ。
「! ニャアッ」
その時、一匹の猫がとある方向を見て鳴き声を上げる。
「どうしたんや?」
「あ、何か走って来るぞ!」
ヴィータの指差す方向から、小さな赤いトカゲが走って来る。更にその後から、紫髪の女性とメイドの二人が走って来る。
「「すずか(ちゃん)!?」」
走って来たのは、はやてとアリサの友人である月村すずか、そしてそのすずかに仕えるメイドのファリン・K・エーアリヒカイトだった。
「ちょっと待って、お願いだから逃げないで下さ~い!!」
「皆お願い、その子捕まえるの手伝って!!」
「えぇ!? ちょ、いきなり何なの!?」
「あぁぁぁぁぁぁぁっ!? そいつや、そいつにやられたんや!!」
「はやてちゃん、無理はしないで!!」
「ヴィータ、そっちに行ったぞ!!」
「無茶言うな!? こいつ思った以上にすばしっこ過ぎるんだって!!」
すずかから赤いトカゲを捕まえるように言われ、一同はトカゲの捕獲に回る。しかしあまりにすばしっこい所為で全く捕まえる事が出来ない。
「シグナム、挟み撃ちや!!」
「承知!!」
はやてとシグナムが二方向から回り、トカゲを追い詰める。
「さっきの仕返しやぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
はやてが思いっきり飛び掛かる。
しかし…
「ガゥッ!!」
トカゲは素早くはやての足元を抜ける。
「「…あ」」
その結果、はやてはそのままシグナムに突っ込み…
-ゴチィィィィィンッ!!-
「「~~~…ッ!!」」
互いに頭を打ってしまう訳である。
「この、いい加減捕まれっての…」
「ガルルルルッ!!」
「イデデデデデッ!? ちょ、噛むな痛ぇっ!!」
ヴィータが捕まえようと手を伸ばすも、回避された上に手を噛まれてしまう。
「もぅ、何やこいつ、全然捕まらへん!!」
「グルルルル…!!」
「落ち着いてトカゲさん、大丈夫だから!」
すずかが落ち着かせようとするが、トカゲは威嚇をやめようとしない。はやて達もいい加減体力が尽きかけている。
そんな時だった。
「俺の予想通りだったな」
アヴェルがトカゲの首根っこを掴んで捕まえたのは。
「安心しろ。何もするつもりは無ぇよ」
「ガゥッ!!」
-ボォォォンッ!!-
「おっと」
トカゲが口から火を吹くも、アヴェルは首を逸らすだけで簡単に回避する。
「グゥゥゥ…!!」
「少しは落ち着けっての。良いか? 俺は…」
「お前の友達“リンク”の知り合いだ」
「…!」
“リンク”の名を聞いた途端、トカゲは急に大人しくなる。
「リン、ク…?」
トカゲがゆっくり呟く。
「そうだ。お前も、リンクの事は知ってるだろ? 俺はアヴェル。あいつの知り合いだ」
「…アベ、ル! し、り、あい…!」
「そう、知り合いだ」
「アベル……リン、ク、しりあ、い!」
トカゲは言葉を繰り返し喋る。その目からは、敵意は完全になくなっている。
「安心しろ、何も悪い事はしねぇよ」
「ア、ベル…!」
トカゲはアヴェルの腕をよじ登り、彼の肩の上に乗る。
「良い子だ」
「クルルル…♪」
アヴェルはトカゲの頭を撫で、トカゲは嬉しそうに鳴き声を上げる。
「凄い、手懐けた…!」
すずか達はトカゲがアヴェルに懐いているのを見て目を丸くする。
「な、何で……アヴェルさんはあぁなのに、私ばっかり…」
はやてはどんよりとしたオーラを放ちながら落ち込み、シグナムとヴィータが彼女を慰める。
「クルルルル…♪」
「全く、お前も別世界に移動していたとはな」
トカゲはアヴェルの肩から頭の上へと移動し、楽しそうに鳴き声を上げる。
「なぁ、ヴァルバジア」
「ガゥッ♪」
アヴェルの言葉に、“ヴァルバジア”は短い鳴き声で返事を返すのだった。
ゲームでは炎の神殿のボス、漫画版では主人公リンクの友達でもあった、ヴァルバジアがようやく登場です。
ヴァルバジアがこんなあっさり心を開いたのは、ヴァルバジアの中で『リンクの知り合い=良い奴』という公式が出来上がっちゃってるからです。
ただし、ちゃんと優しく接してあげないと今回のはやてのような目に遭います←
さてさて、次回もお楽しみに~。