それではどぞ~。
「―――という訳で、ヴァルバジアこと名づけてヴァルだ。よろしく」
「「いやどういう訳で!!?」」
「ガゥッ!」
あれからアヴェル一同はコテージに戻り、先に戻って来ていたなのは達と合流。しかし突然ヴァルバジア(以下ヴァル)の紹介をされたなのはとフェイトは同時に突っ込みを入れ、ヴァルも「よろしく!」と言うかのように前足を振っている。
「ふわぁぁぁぁぁ、ヴァルちゃん可愛いよぉぉぉぉぉぉ♪」
「何この子、癒される!! 凄い癒されるわ!!」
「クワ、クワーッ♪」
一方でスバルとティアナは完全にメロメロ状態になっており、全力でヴァルを可愛がっている。
「ん? じゃあ、はやてちゃんが大変な目に遭ったのって…」
「出会った時にヴァルを可愛がろうとして驚かせちまったもんだから、それが原因で警戒される羽目になったんだと」
「「あぁそれは仕方ないね」」
「二人して酷ぅないか!?」
なのはとフェイトに口を揃えて言われ、料理中だったはやては再び涙目になる。
「…ていうかあれ!? 部隊長が自ら料理を!?」
「部隊長、私がやりますって!!」
「あぁ良ぇって良ぇって。料理は得意やし、元々私の趣味やし…」
「いや、精神的に大丈夫かお前」
「何で私がこんな惨めな思いしとると思うとるんや!!」
「「「いやヴァル(ちゃん)を驚かすからでしょうに」」」
「ひ、酷い……私に味方はおらんのか…」
はやては精神的にKOされ、体育座りでいじけ始める。
「今になっていじけんな。料理作るなら作るで、最後まで作ってから一人で勝手にいじけてろ」
「言い方がいちいち酷い!?」
((((鬼だ、悪魔だ…))))
スバル達は心の意見が一致し、ヴァルはよく分かってないのか不思議そうに首を傾げる。
するとそこへまた一台の車がやって来て、中から茶髪の女性、眼鏡をかけた黒髪の女性、そして犬耳の生えた子供の三人が出てきた。
「ヤッホー!」
「皆、仕事してるか~?」
「お姉ちゃんズ、ただいま参上!」
「エイミィ、アルフ!?」
「そして美由希お姉ちゃん、さっき会ったばっか!!」
「…また面子が増えて訳が分からなくなってきたな」
アヴェルは聞こえない程度に愚痴を零した。
「おいシグナム、それあたしの肉だぞ!!」
「残念だったなヴィータ、世の中早い者勝ちなのだ」
「自分の分は急いで取りなさい!! 大食いメンバーに取られる前に!!」
「って、あぁ!? 私が取ろうとした肉が!!」
「くぉら馬鹿スバル!! 人の焼いてた肉まで食おうとするな!!」
「痛い痛い、痛いよティア~!?」
「エリオ、そんな一気に食べたら…」
「んぐっ!?」
「エリオ君、大丈夫!?」
「あぁほら、言わんこっちゃない」
「はやてちゃん、人の肉まで食べないで欲しいな…?」
「スミマセンデシタ……ちょ、なのはちゃん怖い!! オーラが怖いで!?」
「落ち着いてなのはちゃん!!」
「むぐむぐ……うん、美味いな。お前等も食うか?」
「キキッ!」
「ガゥッ!」
その後は夕食として、皆で焼肉を食べる事になった。しかし肉の取り合いがあったり、横取りしたメンバーに制裁が加えられたり、まとめて食べようとした所為で喉に詰まらせたりと、いつの間にか大騒ぎになってしまっている。
その中でアヴェルは珍しく落ち着いて食べており、ノースとヴァルにも肉を分け与えている。隣に座っているシャマルは不思議そうに話しかける。
「あら、アヴェルさん今日は大人しく食べてるわね。いつもはスバルやエリオ君みたいに豪快に食べてるのに」
「人数が多いんでね。流石に、今回は自重しようかと思って……お、野菜も中々」
「美味しいでしょ? はやてちゃんは昔から料理上手だから」
「さっき精神的に折れかかってたのを除けばな。そういえばシャマルは料理中いなかったが、何してたんだ?」
「私も本当は調理に参加したかったのよ。そう、参加したかったんだけど…」
「…料理が致命的とか?」
-グサッ-
「…良いわよ、どうせ私は下手くそよ。私は調理場に立っちゃいけないのよ……ブツブツ」
何かが刺さったような音が鳴り、シャマルはその場で凹み何やらブツブツと唱え始める。
「(言っちゃいけない事言ったか俺?)…まぁ、それはさておき。普段のお前等って、いつもこんな感じなのか?」
「え? ま、まぁね。普段は仕事で忙しいけど、皆それなりに楽しくやってるわ」
アヴェルが何とか話の軌道を変えた事で、シャマルも何とか立ち直る。
「ふぅん、なるほど……羨ましい連中だよ」
「え…?」
「いや、何でもない。ほれお前等、まだ食いたいか?」
「キィーッ!」
「クワーッ!」
アヴェルが肉をちらつかせ、ノースとヴァルが欲しそうに涎を垂らす。
(アヴェルさん…?)
しかしシャマルは気付いていた。
アヴェルがほんの一瞬だけ、憂いの表情を見せていた事に。
それから夕食後。まだロストロギアに反応は無い為、一同は先にある事を済ませようとしていた。
「―――何だここ」
「スーパー銭湯、大人数の風呂に最適や!」
そう、入浴である。
一同は汗を綺麗さっぱり流すべく、とある銭湯までやって来ていた。当然、アヴェルやフォワードメンバーは銭湯についてはよく知らないので、頭の上にクエスチョンマークを浮かべている。
「簡単に言えば、公共で使う大きなお風呂って感じかな?」
「コテージにはお風呂は無いし、かと言って水浴びする時期でもない。となると、利用すべきはここのスーパー銭湯って訳よ」
「「「「へぇ~」」」」
「そんなのがあるとはな。本当に世界は広い…」
「さぁ、皆行くで!」
一同は銭湯へと入り、まずは受付で人数を確認する事に。
「えぇっと、人数は…」
「大人は十三人、子供は四人だね」
大人はアヴェル、なのは、フェイト、はやて、シグナム、ヴィータ、シャマル、スバル、ティアナ、アリサ、すずか、エイミィ、美由希の十三人。
子供はリイン、エリオ、キャロ、アルフの四人である。
「…え、ヴィータは大人だったのか?」
「うるせぇ、チビで悪かったなこの野郎!!」
「ちょ、蹴るな痛ぇ!!」
ヴィータの蹴りが、アヴェルの足に命中した。
「ふぅ~…良い湯ですね」
「あぁ、悪くない」
男湯にて、アヴェルとエリオが湯船に浸かる。
「しかし、まさか動物禁止とは……あいつ等も一緒に入れてやろうと思ったのに」
「まぁまぁ。あの二匹は今、なのはさんの家に預かって貰ってますから」
そう。ペット禁止という事で、今この場にはノースとヴァルはいない。一同が風呂に入ってる間は二匹は高町家に預かって貰う事になったのだ。アヴェルも最初は大丈夫かと思っていたのだが、なのはの両親は優しい性格なので、少なくとも二匹を怒らせるような事はしないだろう。
「それにしてもアヴェルさん、背中どうしたんですか?」
「ん、あぁこれか?」
エリオはアヴェルの背中を見て問いかける。アヴェルの背中には、刃物で切りつけられたかのような大きな傷跡があり、それ以外にも腕などにも僅かに傷跡がついている。
「俺だって万能じゃないんだ、戦いが多いんじゃ、時には大怪我しちまう事だってあるさ。今はもう古傷が疼くような事は無いが」
「へぇ~…アヴェルさんは確か、ハイラルって国から来たんですよね。どんな国なんですか?」
「う~ん……モンスターも出るけど、それを除けば結構良い国だ。町も盛んだし、景色も良いし、色々な伝承があるし。そして何より、種族がたくさんいる」
「種族って、どんなのがいるんですか?」
「ん~…俺が知っているので、岩のような体を持ったゴロン族、水中などで暮らすゾーラ族、子供が大人に成長しないコキリ族、女性しかいないゲルド族、ハイラル王家に仕えていたシーカー族など、色々いるぞ。ちなみに、ハイラルに住む人間はハイリア人と呼ばれている」
「という事は、アヴェルさんもハイリア人なんですか?」
「いや、違う」
「へっ?」
「俺はハイラルで傭兵として活動してはいるが、生まれ自体はハイラルとは全く、違う別の国だ。これが証拠」
アヴェルは自分の耳を指差す。
「ハイリア人は基本的に、神の声が聞こえるようにという理由で耳が尖ってるんだ。俺はハイラル出身じゃないから、耳は普通の形なのさ」
「そうなんですか……じゃあ、アヴェルさんは自分が生まれた国では何をしていたんですか?」
「さぁ、何をしていたと思う?」
「えぇ~、教えて下さいよ~」
「ハッハッハッ、知りたければ当ててみろ……っと、エリオ。お客さんだ」
「…えっ?」
「エリオ君~♪」
アヴェルの指差した方向から、キャロが体にタオルを巻いた状態でやって来た。
「え、えぇっ、キャロ!? 何でここに!?」
「何でって、十一歳以下ならどっちに入っても良いんだよ。エリオ君も一緒に入ろうよ」
「え、え、えぇっと…アヴェルさん!!」
エリオはアヴェルに助けを求める。
しかし、アヴェルから返ってきた言葉は…
「良かったなエリオ、行って来いよ。子供じゃないととてもそんな事は出来んぞ」
エリオを絶望に陥れるのに充分だった。
「そういう訳で、行こうか♪」
「え、ちょ、助けて下さいアヴェルさぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!」
「行ってらっしゃ~い」
結局、エリオはキャロに手を引っ張られてそのまま女湯へと連行され、アヴェルは軽く手を振って見送るのであった。
「さて」
エリオが連行された事で、男湯はアヴェルただ一人になる。
「エリオに聞かれた時はひやりとしたな」
「ふぅ」と小さく息を吐く。
「…あんまり、子供に言って良い話じゃないしな」
アヴェルはそう言って、湯船から上がる事にした。
ちなみに…
「ほ~ら、たくさん食べなさ~い♪」
「キキィ~♪」
「クワァ~♪」
高町家に預かって貰っていたノースとヴァルは、なのはの母親“高町桃子”によって可愛がられ、エサを与えられて上機嫌になっていた。
「やれやれ、ほんの数分ですっかり懐いちゃったな…」
桃子の夫でなのはの父親“高町士郎”はこの光景を見て苦笑しつつ、コーヒーを淹れるのであった。
結局、ノースにもヴァルにも嫌われる事となったはやてェ…。
そして意外にも、アヴェルはハイラルではなく別の国の出身である事が判明。ちなみに彼の過去にも若干関係しています。
では次回もお楽しみに。