リリカルなのは ~駆ける怪刃~   作:ロンギヌス

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十七話目です。

それではどうぞ。


第十七話 構わんさ

その後、すずかとエイミィの二人は後から駆けつけた高町士郎によって無事に保護された。アヴェルによって倒された誘拐犯達の内、かろうじて死んでいない者は全員病院へと搬送され、死んだ者についてはアヴェルが死体を火葬しており、その事は他の皆には伝えていない。

 

結果として、身代金を目的とした誘拐事件はどうにか解決。それからアヴェル達はコテージに戻り、他のメンバーに今回の件を伝える事になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「すずかちゃぁぁぁぁん!!」」

 

なのはとはやては涙を流しながら、すずかに抱きつく。

 

「うぅ~無事で良がっだぁ~」

 

「ごめんなぁ~私等が助げに行げなぐで~」

 

「ふ、二人共。私は大丈夫だから…」

 

泣きながら抱きつく二人を、すずかはどうにか泣き止ませる。

 

「エイミィ、大丈夫!?」

 

「怪我とかしてないか!?」

 

「落ち着いて二人共、私も大丈夫だから。服が一枚駄目になっちゃったけど…」

 

心配そうにするフェイトとアルフを、エイミィが落ち着かせる。現在エイミィは、事情を聞いた高町桃子によって用意された服に着替えている為、ノースは既にアヴェルの下に戻っている。

 

「それで、誘拐犯達はどうしたの?」

 

「士郎さんの話だと、アヴェルさんが全員倒したんだって。私達はすぐにノースちゃんとヴァルちゃんに外へ連れ出されたから、よく見てはいないんだけど」

 

「そうだったんだ…」

 

「アヴェルさん。二人を助けてくれて、本当にありがとうございました」

 

はやて達は頭を下げ、アヴェルに礼を言う。

 

「礼を言うならヴァルに言ってくれ。スズカとエイミィの居場所を特定出来たのは、匂いを辿ったヴァルのおかげだからな」

 

「クワ?」

 

アヴェルはリンゴに齧り付いていたヴァルを指差す。

 

「そうなんだ。ありがとね、ヴァルちゃん」

 

「クワァ~♪」

 

フェイトに頭を撫でられ、ヴァルは気持ちよさそうに鳴き声を上げる。

 

「ホンマありがとな、ヴァルちゃ…」

 

「ガゥッ!!」

 

はやてが頭を撫でようとした途端、ヴァルは素早くはやての手をすり抜け、アヴェルの後ろに隠れてしまう。

 

「…撫でようとしただけやん」

 

ノースだけでなくヴァルにも拒絶されたはやては、体育座りでズ~ンと落ち込む。

 

「ヴァルにすら避けられるとは、お前は本当に動物運が無いな」

 

「「ごめん、私達も否定出来ない」」

 

「うわぁぁぁぁぁん!! 味方が誰もおらへぇぇぇぇぇぇん!!」

 

なのはとフェイトにまで言われ、はやては泣きながらコテージまで走り去ってしまった。

 

「ちょ、はやてちゃん!?」

 

「もうすぐ帰るのに、いきなり引き篭もらないで!?」

 

なのはとフェイトははやての後を追う羽目になった。

 

 

 

 

 

「本当に騒がしい奴等だよ、全く…」

 

アヴェルは周りを見渡し、座るのにちょうど良い大きさの岩があったのでそこに座り、持って来ていたキセルを取り出す。

 

「少し、良いかな?」

 

「ん?」

 

アヴェルの下に、高町士郎が歩み寄って来た。

 

「ナノハの親父さんか。ノースとヴァルを預かってくれた件についてはどうも」

 

「いやいや、困った時はお互い様さ」

 

アヴェルは銭湯にいる前にノースとヴァルを高町家に預けており、その際に士郎と対面している。顔を覚えていた為、アヴェルは相手が士郎である事にすぐに気付いた。

 

「ところで、何か話でも?」

 

「あぁ、あの誘拐犯達の事なんだけどね…」

 

 

 

 

 

「何人、殺したんだい?」

 

 

 

 

 

「!」

 

士郎の一言が予想外だったのか、アヴェルの眉が一瞬だけピクッと動く。

 

「…何の話だ?」

 

「二人が誘拐される所を目撃した際に、メンバーの顔を何人か覚えていてね。奴等が病院に搬送されていった時、何人か知ってる顔が見当たらなかった」

 

「…単なる勘違いじゃないのか?」

 

「最初はそう思ったんだけどね。実際に現場を確かめた時に………焼け死んだ者がいるって、ある程度確定が出来たんだ」

 

「…!?」

 

焼け死んだ。

 

その一言で、アヴェルは驚きの表情を見せる。

 

「人は焼けると、脂肪が空気中に飛散する。新しく出来た焼死体の場合だと、口元の辺りがその脂肪でべたつくから何となく分かるんだ。実際に死体は無かったから、君が何かしらの方法で死体を丸ごと焼却したと考えられる」

 

士郎の推理に、アヴェルは目が丸くする。

 

「そこまで気付くとはね……ていうか、焼死体とか随分詳しいな」

 

「昔はボディガードの仕事をやっていてね。過去に、似たような経験があったんだ」

 

「…なるほど、経験から察したって訳かい」

 

アヴェルは吸った煙を吹く。

 

「数まで数えちゃいないが……リーダーっぽい奴の顔面を潰してやったのは覚えてる」

 

「! …否定はしないんだね」

 

「まぁな。あと、この事は他の皆には伝えちゃいない」

 

アヴェルは今回、人を殺した事を他の皆には伝えてはいなかった。すずかとエイミィの場合は、アヴェルと誘拐犯達が戦い始めた直後にノースとヴァルが隙をついて外に連れ出した為、その事については何も知らされていないのである。

 

「職業上、俺は今までに何度も人を殺してきた。今更、傭兵だからと言い訳をして、どうにかなる訳でもない。今回の事がバレて人殺しだって言われても、俺は何も言い返せんよ」

 

「…君は、それで良いのかい?」

 

「あぁ、構わんさ」

 

アヴェルはあっさり即答する。

 

「言われた命令に従い、ただ遂行するだけ。それが、傭兵である俺の全てだ」

 

アヴェルはキセルの灰を捨てた後、キセルを懐にしまって立ち上がり、六課メンバーの下に向かおうとする。

 

「…君は」

 

「ん?」

 

士郎の言いかけた言葉に、アヴェルは立ち止まる。

 

「…いや、やっぱり何でもない」

 

士郎は何かを思ったのか、それ以上は何も言わなかった。

 

「? そうか」

 

アヴェルは首を傾げつつも、再び歩を進め、六課メンバーの下に向かって行った。

 

「…どうして」

 

アヴェルが六課メンバーの下に向かった後、士郎は小さく呟く。

 

「どうしてなんだい? 口ではそう言っておいて…」

 

 

 

 

「何故、そんな悲しそうな表情をしているんだい?」

 

 

 

 

もちろん、そんな士郎の言葉に返事を返す者はいなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、六課一同は地球側のメンバーに別れを告げてから、ミッドチルダへと帰還した。ちなみに、コテージに引き篭もったはやてを引っ張り出すのには数分の時間がかかったという。

 

 




今回で派遣任務編は終了、次はホテル・アグスタ編です。

ホテル・アグスタ編では『みんなのトラウマ』とも言えるモンスターを登場させます。
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