それではどうぞ。
時空管理局、機動六課にて。
「「―――妙な怪物?」」
「そや」
ここの部隊長室に、三人の女性がいた。
機動六課の部隊長である八神はやて。
戦技教導官で『エースオブエース』でもある高町なのは。
執務官を務めているフェイト・T・ハラオウン。
彼女達は今、ある事件の事について話していた。
「ここ最近、ガジェット以外にも何やら変なのが出てくるようになってな。民間人からの目撃情報がいくつも出てるんや」
部屋のモニターには、ガジェットと呼ばれる機械だけでなく、あのスタルチュラの姿も写っていた。その他にも、右手だけのモンスターや四速歩行のカニみたいなモンスター、頭がオレンジ色をしたカラスのようなモンスターの姿も写っている。
「今の所、発見すると同時にすぐ退治されてるから、まだこれと言った被害は出とらん。せやけど、いつ厄介な怪物が出てくるか分からへん。二人も十分注意してな」
「うん、分か……ッ!!」
なのはとフェイトが頷こうとしたその時、突然アラームが鳴り響く。
アラームが鳴り響くという事は、ガジェットあるいはモンスターが出たという事だ。
「またガジェット!? それとも…」
「とにかく、早く行こうなのは!!」
「二人共、気をつけてな!!」
なのはとフェイトは部隊長室を出た後、すぐさま現場へと向かうのだった。
首都クラナガン。
『ピピピ…』
カプセル型の形をした機械、ガジェットが動いていた。
-グシャアッ!!-
そのガジェットを、謎の巨大な足が踏み潰す。
「ギシャァァァッ!!」
硬い甲羅、その上部に生えた二本の鋏、オレンジ色の一つ目。
“甲殻寄生獣ゴーマ”が、踏み潰したガジェットを踏み台に高く吼える。
『……』
そのゴーマを、隠れて監視する一人の影。しかし数秒後、影はすぐに路地裏へと姿を消す。
-ドシュウッ!!-
「ギシャ?」
吼えていたゴーマに魔力弾が直撃する。しかしゴーマは全くダメージを受けていない。
「ねぇティア、何だろうこの怪物!?」
「私が知る訳無いでしょ、馬鹿スバル!!」
ゴーマの前に、青髪のボーイッシュな少女とオレンジ髪でツインテールの少女の二人が駆けつける。
青髪の方はスバル・ナカジマ、オレンジ髪の方はティアナ・ランスター。どちらも、機動六課に所属している魔導師である。
「ギシャァァァァァッ!!!」
攻撃されたのが気に入らなかったのか、ゴーマは二人に向かって突進する。
「うわぁぁぁこっち来たぁぁぁぁぁっ!?」
「スバル、かわして!!」
二人はゴーマの突進を横に回避し、ティアナは拳銃型デバイスのクロスミラージュから魔力弾をゴーマに向かって発射する。やはりダメージは無いのか、ゴーマは建物の壁によじ登る。しかしゴーマは途中で登るのをやめ、動かなくなる。
「ギシャァァァ…!!」
そして壁に登ったまま、ゴーマは地面にいくつかの卵を産み落とし始めた。
「あれって、卵…?」
「スバル、油断しないで!!」
ティアナが注意した時、産み落とされた卵が一斉に割れ、中から幼生ゴーマが出現する。
「ギシャアッ!!」
「おぉっすごい、もう産まれてきた!?」
「そこ、関心しない!!」
スバルの天然な発言にティアナが突っ込み、跳びかかって来る幼生ゴーマを撃ち落としていく。
「えぇっと…ごめんね、せっかく産まれてきたのに!」
そう言いつつ、スバルも襲って来た幼生ゴーマを一体ずつ殴り飛ばしていく。
「クロスファイア……シュートッ!!」
ティアナが放つ魔力弾で、最後の一体も撃破。幼生ゴーマを全滅させる。
「もう、一体何なのよこいつ等…」
「ティア、危ない!!」
「え…がっ!?」
「ギシャァァァァァッ!!」
ティアナがスバルの声を聞いて振り返った瞬間、いつの間にか後ろにいたゴーマが鋏を振るい、ティアナを殴り飛ばす。ティアナはそのまま建物の壁に叩きつけられ、気絶してしまう。
「ティア…きゃあっ!?」
駆け寄ろうとしたスバルだが、ゴーマに足で押さえつけられてしまう。
「ギシャァァ…!!」
ゴーマは目の色がオレンジ色から赤色になり、ギロリとスバルを睨みつける。
(こ、殺される!!)
「やだ、やだ…!!」
恐怖を感じたスバルは涙目になり、何とかして抜け出そうとする。しかしゴーマの押さえる力の方が強過ぎて、なかなか抜け出せない。
ティアナは今も気絶したまま。正に絶体絶命だ。
「ギシャァァァァッ!!!」
「嫌ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!?」
そしてゴーマが鋏を振り上げ、スバルに向かって振り下ろす。
スバルが悲鳴を上げる。
その時だった。スバルの耳に…
「弾けろ、黒夜叉」
そんな言葉が聞こえてきたのは。
「ギシャァァァァッ!?」
突如飛んできた黒い炎の矢がゴーマに命中、ゴーマは大きく吹き飛ばされる。
「え?」
突然の出来事に、スバルは呆然となる。
「全く…こんな訳の分からん街にまで、魔物が出てくるとはな」
そんなスバルの下に、クロスボウを構えた黒髪の青年が歩み寄る。
「お前、怪我は?」
「え、あ……大丈夫です」
「…そうか」
それだけ言ってから、青年は落ちていた手の平サイズの瓦礫を拾い、ゴーマの方に振り返る。
「ギシャァァァ…!!」
完全に機嫌を悪くしたのか、ゴーマは赤い目で青年を睨みつける。
「ゴーマ、ねぇ。こんな奴には」
「ギシャァァァァァァッ!!」
ゴーマが青年に鋏を振るい…
「…矢は勿体無かったな」
青年はその攻撃を回避。そしてゴーマの目に向かって瓦礫を投げつける。
「ギィッ、ギシャァァァァッ!!?」
予想外の攻撃に、ゴーマはのた打ち回る。
「目潰し。卑怯ではあるが、殺し合いでは立派な戦法だ」
青年はクロスボウをホルスターに納め、左腰の鞘から大剣を抜く。
「さて、これで…」
青年はゴーマの目に狙いを定め…
-ザシュッ-
「終わりだ」
「ギ、シャァ…」
一閃する。
目を縦に斬られたゴーマはその場に崩れ落ちる。
「弾けろ」
そして青年が大剣を鞘に納めた直後に、ゴーマは青白い炎と共に消滅するのだった。