リリカルなのは ~駆ける怪刃~   作:ロンギヌス

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一日過ぎての更新です。

そんじゃどうぞ。


第二十一話 焦る弾丸

「くそ…」

 

ノースによって吹き飛ばされたスタルフォス。

 

あと少しで仕留められたのを、アヴェル達の妨害で失敗したのだ。今まで狙ったターゲットを何人も排除してきたスタルフォスにとって、それは屈辱以外の何物でもない。

 

「あの傭兵か……ムカつく野郎だ…!!」

 

スタルフォスは剣と盾を拾って立ち上がり、アヴェル達を睨みつける。

 

 

 

 

 

 

「どうだシグナム、まだ生きてるか?」

 

「あぁ、どうにかな…」

 

倒れているシグナムの下にアヴェルが駆け寄り、ゆっくり彼女の体を起こす。

 

「よりによって、地面からの不意打ちでピンチとはね。お前等も運が無かったな」

 

「うぐ……返す言葉が無い」

 

痛い所を突かれ、シグナムも何も言えなくなる。

 

「アヴェル」

 

「ん?」

 

一番最初に痺れから回復したザフィーラが、まだ痺れているヴィータを抱えて二人の下に駆け寄る。

 

「…誰?」

 

「…この姿で話すのは初めてだったな。ザフィーラだ」

 

「あぁ、ザフィーラね。で、ヴィータは大丈夫か~」

 

「これで、大丈夫に見え、るか、よ…」

 

「うん、喋る気力があるなら大丈夫だな……さて」

 

心配する必要は無いと解釈したアヴェルは、シグナムとヴィータをザフィーラに任せた後、スタルフォスと対峙する。

 

 

 

 

「例の傭兵か……俺達の邪魔をしてくれやがって」

 

「俺の事を知ってるかのような口ぶりだな、スタルフォス」

 

スタルフォスから向けられる殺意にも、アヴェルは動じるどころか同じように殺意を向けている。周りからすれば近寄り難い空気だ。

 

「何処まで知ってるか、ぜひ教えて貰いたいものだ」

 

「俺がそれを、お前なんぞに話すとでも思うか…!!」

 

「…まぁ、それもそうか」

 

-ズドドンッ!!-

 

「「ゴワァッ!?」」

 

「!?」

 

バラバラの状態から復活しようとしていたスタルフォスが二体、アヴェルのクロスボウから発射された矢で頭蓋骨を撃ち抜かれる。

 

「俺に気付かれないように復活を狙ってたんだろうが、残念。もう少し気配を隠してからやるんだな」

 

「「ガ、ガガ…」」

 

頭蓋骨を撃ち抜かれ、二体のスタルフォスは塵となって完全に消滅する。

 

「残るはお前だけだ。どうする?」

 

「クッ…!!」

 

アヴェルは目の前のスタルフォスにクロスボウを向ける。流石のスタルフォスも見抜かれてるとは思っていなかったのか、先程まで余裕だったその表情が、一気に焦りへと変わる。

 

「出来れば、お前から色々情報を引き出して……ッ!!」

 

スタルフォスにジリジリ迫ろうとしたアヴェルだが、何かに気付き、すぐその場から後退する。

 

-ズボボボボォンッ!!-

 

その直後、彼のいた場所から複数の白く長い手が出現。アヴェルに襲い掛かる。

 

「チィッ!!」

 

アヴェルは素早く剣を抜き、襲い来る白い手を切断していく。切断された手は地面に落ち、ビクンビクンと不気味に動く。

 

(逃げるなら今の内か…!!)

 

アヴェルの注意が白い手に向かってる間に、スタルフォスは密かにその場から撤退する。

 

「…あれ?」

 

全ての白い手を斬った後、アヴェルはその場からスタルフォスがいなくなっている事に気付く。

 

「逃げ足の早い奴…」

 

アヴェルは剣とクロスボウを納め、切断されてなお動いている白い手をグシャリと踏み潰した。

 

 

 

 

 

 

 

 

「でりゃぁぁぁぁぁ!!」

 

フォワードの防衛ラインでも、戦いは激化していた。ガジェットの殲滅はほぼ完了しているが、スタルベビー達の進行が未だ止まらず、少しずつホテルへと近付いて行く。

ちなみに、このスタルベビー達の中にはさりげなくリーデットも紛れている。少し前にフェイトがシャマルを通じてリーデットに関する情報を伝えてある為、フォワードメンバーはリーデットに攻撃を仕掛けてはいない。

 

『ガジェットの反応はほとんど消えたわ!! フェイト隊長が言ってたモンスターの事もあるし、アヴェルさんが向かうまで持ち堪えて!!』

 

『守ってばっかじゃ行き詰まります!! 私達でちゃんと全部倒します!!』

 

『ティアナ!? これはあくまで防衛戦で―――』

 

『大丈夫です! 毎日スバルと一緒に練習してきてますから!!』

 

シャマルとの念話を強制的に切り、目の前のスタルベビー達と向き合う。

 

「エリオは下がって、スバルとツートップで行くから」

 

「あ、はい!」

 

「行くわよスバル!!」

 

「うん!!」

 

ティアナはエリオを後方に下がらせ、スバルはウィングロードを展開し、スタルベビー達の真上を通過する。

 

(証明するんだ……特別な能力や、才能が無くたって……一流の魔導師のいる部隊でだって……どれだけ危険な戦いでだって…)

 

「私の……ランスターの弾丸は、何でも撃ち抜けるんだって!!!」

 

『ティアナ!! 四発ロードなんて無茶よ!! それじゃティアナとクロスミラージュが―――』

 

「撃てます!!」

 

シャマルが制止しても、ティアナは止まらない。

 

(さっき言われた、リーデットとか言うモンスターにさえ気をつければ…!!)

 

「クロスファイアー…」

 

スタルベビー達に狙いを定める。

 

「シュートッ!!!」

 

そして、無数の魔力弾がクロスミラージュから発射される。暴れ狂うかのように魔力弾が飛び、スタルベビーを次々と撃ち砕いていく。

 

しかし、それもここまでだった。

 

一発の魔力弾が、スタルベビーではなく別の方向へ飛んでいく。

 

その飛んでいく先に…

 

「―――え?」

 

滑降中のスバルはいた。

 

 

 

-ドォォォォンッ!!-

 

 

 

「うわぁっ!?」

 

魔力弾がそのままスバルに向かっていき、爆発が起こった。

 

「え…」

 

それを見たティアナは呆然とする。

 

私が撃った…?

 

私が、スバルを…?

 

「スバルッ!!」

 

ティアナはまだスタルベビーが全滅してないにも関わらず、スバルの下まで駆け出した。

 

 

 

 

 

 

「あぅっ!」

 

スバルは地面に落下する。

 

滑降中に攻撃が命中して落ちたのだ。受け身なんてまともに取れはしない。

 

いや、落ちるだけならまだマシな方かもしれない。

 

そう、落ちた場所に…

 

 

 

 

 

「キェェェェェェェェェッ!!」

 

 

 

 

 

リーデットさえいなければ。

 

 

 

 

「ッ…!?」

 

リーデットの視界に入る場所に落ちてしまったが為に、スバルはリーデットに睨まれ、金縛りのように動けなくなってしまう。

 

「スバル!!」

 

ティアナが魔力弾を撃つ。

 

「ゥゥゥゥ…」

 

しかし魔力弾はリーデットの身体をすり抜けるだけで、リーデットが止まる気配が無い。

 

「止まれ、止まれ、止まれ!!」

 

焦ってる所為か、ティアナはシャマルから聞かされていたリーデットの対処法を忘れ、ただ我武者羅に撃ち続ける。

 

「止まれぇぇぇぇぇぇぇっ!!!」

 

それでも、リーデットは止まらない。

 

「あ、ぁぁぁ…!?」

 

「ウゥゥゥゥゥ…」

 

リーデットがとうとう、スバルの目の前まで迫る。リーデットはスバルを捕まえる為に、ゆっくりと彼女に向かって両手を伸ばそうとした。

 

「スバルッ!!!」

 

「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!?」

 

 

 

 

「獄炎“一文字”!!!」

 

 

 

 

-ズバァァァァンッ!!-

 

「ゥゥゥ…」

 

アヴェルの斬撃で、リーデットの身体が一刀両断される。

 

「ティアナ、伏せろ!!」

 

「!?」

 

ティアナがその場に伏せると同時に、アヴェルのクロスボウから複数の矢が発射され、彼女の背後にいたスタルベビー達を全て粉砕する。

 

「アヴェル、さん…」

 

「ふぅ」

 

アヴェルは一息ついた後、二人を見据える。

 

「全く、二人だけで無茶ばっかしてんじゃねぇ。俺が来なかったらどうするつもりだ」

 

「あ、あの…」

 

「アヴェルさん! これはその、作戦の一つで…」

 

「味方に撃たれて、その結果敵に殺されかける羽目になったのを作戦と言うのか?」

 

「「う…」」

 

有無を言わせない声に、二人は何も言えなくなる。

 

「…まぁ、今は戦闘中だし、説教は後でナノハ達にして貰え。後は俺で全部仕留めるから、お前等は後ろで待機してろ」

 

それだけ言って、アヴェルは残ったモンスターを殲滅すべくその場を駆け出す。

 

二人は何も言えず、ただ黙って後退する事しか出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん?」

 

感じ取った気配を追って、ホテルから少し離れた森の中を駆け抜けていたアヴェル。

 

しかし彼の視界には、思わぬ光景が映っていた。

 

「…何じゃこりゃ」

 

複数の氷像型モンスター“フリザド”によって凍らされる事で、辺り一面が雪景色と化していた。

 

それだけならまだ何の問題も無い。

 

「クカカ…」

 

「カ、カァ…」

 

よく見ると、地面や木だけでなくスタルベビーまで凍らされており、それがアヴェルに疑問を抱かせる。

 

「何でスタルベビーまで…? いや、このフリザドの魔力は…」

 

考えた結果、アヴェルは一つの結論に至る。

 

 

 

「…まさか、あいつもこの世界に?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「!」

 

一本の大木の上で眠っていた女性。

 

何かに気付き、ホテル・アグスタの方を振り向く。

 

「どうしたッピ?」

 

「…いや」

 

 

 

 

「少し、懐かしい匂いがしただけかな」

 

女性は小さく笑みを浮かべ、自身の親指をペロリと舐めた。

 

 




さて、毎日更新が若干きつくなってきたかも…。

それじゃ、感想待ってま~す。
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