ほんじゃどうぞ。
アヴェルが六課から街へ移動する数分前…
「キッ」
路地裏にて、一匹のキースがダークリンクに報告をしていた。
「キキ、キィキィッ」
『…そうか。引き続き、監視を続けろ』
「キキッ!」
キースが飛び立ち、その場にはダークリンクだけが残る。
(フレアダンサーでは足止めにもならんか……もっと、強力なモンスターを呼ぶ必要があるな…)
ダークリンクは左手をかざし、正面に魔法陣を出現させようとする。
その時…
「それでよ~、その時ボコした男がさぁ~」
「そりゃ笑えるなぁ~!」
「「「ギャハハハハハハハッ!!」」」
『…!』
路地裏の奥から、不良達の笑い声が聞こえてきた。ダークリンクもそれに気付き、すぐに魔法陣を掻き消す。
「ハハハ…お? 何かいるぞ」
「あ?」
不良達もダークリンクの存在に気付く。
「おいおい、何だ兄ちゃん」
「どうしたんだ? 全身真っ黒でよぉ」
「ペンキでもかけられたのかぁ?」
ギャハハハと笑いながらダークリンクにちょっかいをかける。不良達は目の前にいるダークリンクが本物の魔物である事は知らない為、黒色のペンキで真っ黒になってるだけだと思っているようだ。
『……』
「お、何だよ」
ダークリンクの赤い目が、不良達を見る。
『……』
しかし、すぐに不良達から目を逸らす。
「おい、何だよ今の目は!」
「てめぇ…喧嘩売ってんのか!」
一人の不良がダークリンクの胸倉を掴む。
『―――ろ』
ダークリンクが小さく呟く。
「あぁ? 何だって?」
『消えろ、目障りだ』
-ザシュッ!!-
「―――へ?」
刃物で斬れる音。
その直後…
-ブシャァァァァッ!!-
「う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
ダークリンクの胸倉を掴んでいた不良が突如斬り伏せられ、鮮血が迸る。ダークリンクの手には黒い剣が握られており、その場に返り血が振り払わられる。
「く、くそ、やりやがった!?」
「こいつ、正気じゃねぇ!!」
『ふん…』
ダークリンクが不良達を睨みつける。
「く、来るな!!」
「ひぃぃぃぃぃぃっ!!」
さっきまでの威勢がまるで無くなり、不良達はその場から逃走。ダークリンクは特に追う事も無く、剣を背中の鞘に納める。
『雑魚共が―――』
「獄炎“飛鳥”!!」
『!』
突如、ダークリンクに向かって複数の黒炎の鳥が飛来。ダークリンクはそれ等をバック宙でかわし、後方へと下がる。
『……』
「僅かに感じた魔力を辿ってみりゃ、こりゃ予想外な奴と出くわしたな」
ダークリンクの前に、六課から飛んで来たアヴェルが着地。ノースの翼がマントへと戻る。
『まさか、お前がここへ来るとはな…』
「こちとら、ちょっとした魔力にも敏感でな。場所もある程度は分かっちまうんだよ」
『…ほぅ』
「とは言っても、今はそんな事はどうでも良い。何でこの世界にいるのか、色々教えて貰おうか。ダークリンク」
「グルルルルル…!!」
アヴェルは右手に黒炎を纏わせる。ヴァルも目の前にいるのが自身の友の偽者だと気付いてるからか、敵意を剥き出しにして威嚇する。
『俺がそれを、貴様に話すとでも?』
「…ま、だよなぁ。ヴァル、何処か隠れてろ」
「クワッ!」
ヴァルがアヴェルから離れた後、アヴェルの右手から放つ黒炎が複数の火炎弾を生成する。
「ならいつも通り……潰すだけだ」
『…良いだろう、来い』
ダークリンクも背中に担いでいた盾を右手に装備し、姿勢を低くして構える。
「……」
『……』
一瞬の静寂。
「―――はぁっ!!」
先に動いたのはアヴェルだった。
ダークリンクに向かって、火炎弾が次々と発射される。
『フッ!』
それに対してダークリンクも後方へジャンプする事で火炎弾をかわし、自身に命中しそうな火炎弾だけを盾で防ぐ。防いだ直後に左手には数個の小型の爆弾を持ち、アヴェルに向かって投げつける。
「ノース、飛べ!!」
「キキィッ!!」
ノースの翼が展開され、アヴェルは壁沿いを飛んで爆弾を回避。爆弾が連続で爆発する勢いを利用して壁を蹴り、一気にダークリンクへと接近する。
「獄炎“鬼弾”!!」
『ッ…!!』
アヴェルが黒炎を纏った右手で殴りかかり、ダークリンクは盾で防御。しかし攻撃はこれだけでは終わらない。
「まだだ!!」
右手だけでなく、左手も黒炎に包まれる。
「獄炎…“鬼弾乱掌”!!」
『グ、ヌゥ…ッ!!』
両手での連続パンチに、盾で防御していたダークリンクも少しずつ押され出す。
「ぜりゃぁぁぁぁぁっ!!」
-ドゴォンッ!!-
『グッ!!』
アヴェルの一撃を防いだダークリンクが後方へ吹き飛ばされる。しかし吹き飛ばされたダークリンクも空中で体勢を立て直し、すかさず弓を構えてアヴェルを狙う。
『ハッ!!』
「うぉわ!?」
発射された矢を、アヴェルは擦れ擦れで回避。その間にダークリンクは地面に着地し、再びアヴェルに向かって複数の爆弾を投げつける。
『爆ぜろ』
「何…どぁぁぁぁぁっ!?」
そしてダークリンクの弓から発射された矢が、投げられた爆弾の一つに命中。それを引き金に他の爆弾も連鎖で爆発し、爆風がアヴェルを吹き飛ばす。
『フッ!!』
「チィ…!!」
爆風の中から飛び出したダークリンクが、左手に持った剣を振り下ろす。アヴェルも鞘から剣を抜き、攻撃を受け止める。
『どうした、この程度か?』
「はん、こんなんで俺に…!!」
アヴェルは力ずくでダークリンクを押し返し、剣に黒炎を纏わせる。
「勝ったつもりになるな!!」
『!!』
アヴェルの剣から黒炎の斬撃が飛ばされる。しかしダークリンクは体を反らして回避すると同時に再び弓を構え、矢先に赤い炎を纏わせる。
「何…!?」
『燃えろ』
炎の矢が発射され、高速でアヴェルに迫った…
その時だ。
「凍て付け、スノウマン」
『「!?」』
アヴェルの目の前に、青色の魔法陣が出現。魔法陣を通過した矢が炎ごと凍り付き、アヴェルに命中せずに地面に落ちる。
「これは…」
「珍しいものだな、お前が苦戦するなど」
「!」
後ろから呼びかけられる声にアヴェルが振り返る。
そこには、群青色の髪を靡かせたノースリーブの女性が、右手に白い冷気を纏わせた状態で立っていた。
「…なるほど、やっぱりお前だったか」
アヴェルは女性の姿を見て溜め息をつく。
「久しぶりだな。ミスティア」
「あぁ、随分と久しぶりだ。アヴェル」
女性―――“ミスティア”は口元をニヤつかせながら、アヴェルの名前を呼んでみせた。
今回は街中でダークリンクとの戦闘、そして謎の女性ミスティアとの遭遇です。
ミスティアの詳細については、次回以降で。