ではどうぞ。
アヴェルとダークリンクの戦闘に割って入って来た謎の女性。
その女性の姿を見てアヴェルは溜め息をつき、立ち上がる。
「全く、よりによってミスティアか…」
「む……あまり嬉しくなさそうな言い方だな」
彼の言葉に、女性もとい“ミスティア”は気に食わないかのような目で彼を睨みつける。
「だってそうだろ? 戦闘中にいきなり雪女に遭遇すりゃ、誰でも面倒に思うさ」
「雪女とは失敬な。私は元いた世界では“水晶”という二つ名で呼ばれてたんだ、せめてそっちの呼び名で呼んで貰いたいものだ……っと」
-ガギィンッ!!-
言い終わると同時に、ミスティアが右手に纏っていた冷気から氷の刃が生成され、ダークリンクの振り下ろす剣を受け止める。
「私はアヴェルと話をしてるんだ、邪魔をするな」
『!? 何…!!』
ミスティアの生成した氷の刃を通じて、冷気がダークリンクの剣を少しずつ凍らせ始める。驚いたダークリンクはすぐ後方へ下がるが、剣の刃先が完全に凍り付いてしまっている。
「クリスタライズ」
ミスティアが左手をかざし、ダークリンクの真上に複数の氷柱が生成される。
『グッ…!!』
-ズドドドドォッ!!-
氷柱が一斉に投下され、ダークリンクに襲い掛かる。ダークリンクも上に盾を向けて防ごうとするが完全には防ぎ切れず、腕や足から僅かに血が噴き出す。
『ヌゥ…』
「隙ありだ」
『何、グォァ…!?』
ダークリンクの懐にミスティアが素早く潜り込み、彼の腹部に冷気を纏った蹴りが放たれる。氷柱に気を取られていたが為に対応が遅れたのか、ダークリンクは防御出来ずに攻撃を食らう。
「この程度か? つまらんな」
『ヌ、グゥ…!!』
凍り付いた腹部を押さえ、流石のダークリンクも膝をつく。そんな彼を、ミスティアは冷徹な目で見据える。
「獄炎“大車輪”!!」
『グォッ!?』
そこへ更に円状の黒い斬撃も飛び、ダークリンクを斬りつける。
「む、まだ元気だったのか」
「当たり前だ。この程度で疲れる程ヤワじゃない」
アヴェルとミスティアが並んで立つ。
(このままでは分が悪い…!!)
ダークリンクは目の前に立つ二人を睨みつける。しかし今の彼は、アヴェルと戦っている事で体力を大きく消費している。しかもそこへ、自分が詳細の知らない人物まで戦闘に加わってきたのだ。二対一では自分が不利なのが明確である。
(…一旦引くか)
そうなれば、逃げるに越した事は無い。考えるや否や、ダークリンクは足下に魔法陣を出現させ撤退を謀る。
「む、逃げるつもりか」
「チッ、させるか…!!」
アヴェルが黒い斬撃を、ミスティアが巨大な氷柱をダークリンク目掛けて放ち、爆発が起こる。
しかし煙が晴れると、ダークリンクは既に姿を消してしまっていた。
「…逃げられたか」
アヴェルは剣を納め、改めてミスティアと向き合う。
「さっきも言ったが……久しぶりだな、ミスティア」
「あぁ。本当にいつぶりだろうなぁ、アヴェル…」
ミスティアは舌なめずりをし、ゆっくりアヴェルに近付く。
「…おいおい、何のつもりだ」
「もちろん、こういうつもり……だ!」
「ぬぉう!?」
正面からミスティアに抱きつかれ、アヴェルも思わずバランスを崩して倒れかけるがどうにか踏み留まる。
「うぉい、いきなり何を…」
「ふふふ……アヴェルの匂い、アヴェルの匂い…♪」
先程までの冷徹な雰囲気とは打って変わり、抱きついたミスティアはデレデレしたような表情で彼の胸元に顔を擦りつけ始める。
(…そういえば、こういう奴だったな)
アヴェルは引き離すのを諦め、彼女にされるがままになる。
その時…
「キキィィィィィィィィッ!!!」
「おっと」
マントから実態化したノースが、翼を展開してミスティアを叩こうとする。しかしミスティアはあっさり回避し、アヴェルから離れる。
「何だ? せっかくアヴェルに会えたというのに…」
「キキキィィィィ…!!」
ミスティアの事が気に入らないのか、ノースは彼女に対して敵意を剥き出しにする。
「よせ、ノース。俺の知り合いだ」
「ほぅ、ノースというのか……可愛い奴だな」
「キキィッ!?」
ミスティアが撫でようとした瞬間にノースは素早くアヴェルの後方に下がり、「触れるな!」とでも言うかのような視線で睨みつける。
「クワァ~!」
隠れていたヴァルもひょっこり顔を出し、アヴェルの下に駆け寄って来る。
「やれやれ……で、そろそろ良いか? 色々と聞きたい事もあるしな」
「ふむ、アヴェルが言うなら私は別に構わん……ただし」
ミスティアはアヴェルの右腕に抱きつく。
「しばらくの間、この状態でいさせて貰う」
「お前なぁ……いや、もう良い。好きにしろ」
「そうこなくっちゃ、ふふふ…♪」
「…はぁ」
ミスティアが動物のように甘えてくるのに対し、アヴェルは疲れたような表情になり、ノースは険悪な視線でミスティアを睨みつける。
当然、ヴァルはどういう状況なのか分かっておらず、目の前の光景を見て首を傾げるのだった。
『……』
とある真っ暗な一室にて…
「随分と無様な姿だな、ダークリンク」
『…申し訳ありません』
戦闘から撤退したダークリンクは、目の前に立っている人物に対し、膝をつき頭を下げていた。
「それにしても、怪刃以外にも妨害をしてくる者が現れた、か……全くもって面倒な…」
『ご安心を。邪魔者は、我々の手で排除して見せます』
「追い詰められて逃げ帰って来たような奴が、本当に勝てるとでもいうのか?」
『……』
「…まぁ良い。邪魔者は全員消せ。俺はまだ、動ける状態ではないからな」
『…はい』
「本来の目的も忘れるなよ。レリックと聖王の器……それ等も確保しなければ、俺の計画に大きな狂いが出る」
『お任せ下さい。レリックも、聖王の器も、現在スカリエッティが捜索中です』
「抜かりは無いだろうな?」
『問題ありません。今の彼は、我々に逆らえるような立場ではありませんので』
「…ふん、しっかりやれ」
『はい』
場所は変わり、とある研究所…
「ふむ、これが怪刃の実力か…」
科学者であり、次元犯罪者でもある“ジェイル・スカリエッティ”が、目の前にある複数の映像を見ていた。どの映像にも、アヴェルがフレアダンサーや赤バブルを相手に戦っている姿が映っている。
「彼の戦闘力はかなりのもの……果たしてどうするか…」
『しっかりやっているようだな、ケケケケ…』
「!」
そんなスカリエッティの後ろから、幽霊モンスターの“ポウ”が現れる。スカリエッティは相手がポウだと分かると、不機嫌そうに彼(?)を見る。
「…君か。何の用だい?」
『ケケケ……我々の主が業を煮やしていてな。さっさとレリックと聖王の器を回収しろとの事だ。俺は今回、それを伝えに来ただけ…ケケケッ』
不気味に笑うポウに対し、スカリエッティは嫌悪感を隠さない。
「用件はそれだけかい? ならばさっさと、目の前から消え失せて欲しいところだね。私だってこれでも忙しいんだ」
『おやおや、手厳しい。ケケケ』
ポウの体が少しずつ消え始める。
『だが忘れるな。お前は……いや、お前達は常に監視されているという事を…』
「安心したまえ。私達は君達を裏切ったりはしない」
『その言葉、信じてるぞ? ケケケケケ…』
ポウは不気味に笑いながら、姿を消すのだった。
「…ふぅ」
『大丈夫ですか、ドクター?』
スカリエッティの下に通信が入り、映像に紫髪の女性の姿が映る。彼女の名はウーノ、スカリエッティによって生み出された戦闘機人“ナンバーズ”の一人で、彼の研究をサポートしている。
「あぁ、私の事なら心配無いよ。ウーノ」
『しかし、ドクターにもしもの事があったら…』
「大丈夫だ、私だっていつまでも奴等の駒でいるつもりは無い。何とかして出し抜くさ……大事な娘達に、危害を加えられる訳にもいかないからね」
『ドクター…』
心配そうにするウーノに、スカリエッティは力の無い笑顔で返す。
「今、ドゥーエが奴等の事を探っている。彼女が上手くやってくれる事を祈ろう。それに彼……怪刃君が、私達にとって一番の希望になってくれるかもしれないしね」
スカリエッティは再び、アヴェルの映っている映像に目を向けるのだった。
戦闘が終わって早々、ミスティアに抱きつかれる羽目になったアヴェルに言いたい……おいアヴェル、そこ代われ…と←
ダークリンクを従える謎の人物、これについて分かるのはもう少し先に。
そしてスカリエッティ達も、とある理由でダークリンク達に逆らえないでいます。そう、とある理由で。
これもまた、詳細は後ほどに。
取り敢えず次回は、アヴェルとミスティアの会話になります。
次の更新は、少々お待ち下さい。