…取り敢えずどうぞ。
ダークリンクとの戦闘が終わってから、数分後…
「何年も前からこの世界に?」
「あぁそうだ」
アヴェルとミスティアの二人は、とある噴水広場のベンチに座って情報交換をしていた。ミスティアがアヴェルの隣に座っている為、少し離れた場所からノースが「アヴェルに近付く女豹め」という感じで彼女を睨みつけている。ちなみにヴァルにとってそれはどうでも良いらしく、アヴェルの足下で丸まってくつろいでいる。
「アヴェルと同じさ。おかしな宝石を拾った結果、気付いたらこの世界に飛んでしまっていた。思っていたよりも面白い世界だ、今ではこの世界での生活にもすっかり慣れてしまっている」
「お前のその適応力が羨ましいな。俺はこの世界については不慣れなまんまだ……で、お前は何処かに住んでたりするのか? 俺は六課に滞在してるが」
「いや、特にこれと言った拠点は無い。色々な場所を巡って休んだりしている。この前はホテルの倉庫にこっそり侵入させて貰ったな」
「ホテル……という事は、あの時のフリザドも…」
「私が召喚した。骸骨共が鬱陶しかったものでな」
「…やっぱりな」
ホテル・アグスタ近くの森で出没していた複数のフリザドは、ミスティアの放つ冷気によって生み出されたらしい。しかも襲って来たスタルベビー達が鬱陶しいという理由だけで。
合点がいったアヴェルは呆れ果てる。
「そんな理由でフリザドを出すとか……お前のそういうところは全く変わっちゃいねぇよな」
「変わってないのは、アヴェルだってそうだろう? 相変わらず傭兵なんか続けておいて」
「…他にする事が無ぇしな。俺達には戦い以外に何にもありゃしない。それはお前だって分かり切ってる事だろうに」
「…それもそうか」
アヴェルがベンチの背もたれに頭を置き、そんな彼にミスティアが寄り添う。
「なぁ、アヴェル」
「ん?」
「久しぶりに会う事が出来て、私はとても嬉しいぞ」
「まぁ確かに、昔の馴染みに会えたらな」
「馴染みなんてものじゃない……私にとっては、お前が一番なんだ。あの時からずっと…」
「…ミスティア?」
「あぁそうだ……私は昔から、いつもお前の事を求めている…」
(…あ、嫌な予感)
ミスティアの台詞に疑問を抱くアヴェルだが、途中からある事に気付き、冷や汗を掻き始める。
「さて、俺はそろそろ帰らせ…」
「逃がすと思うか」
「ぬぉうっ!?」
逃げようとしたアヴェルだが、彼女によって思い切りベンチの上に押し倒され、そこにミスティアが乗り掛かる。
「せっかく会えたんだ、久しぶりにまた付き合って貰うぞ」
「おい待て、まさか…」
「そのまさかだ……んっ♪」
「んむっ!?」
「キキィィィィィィィィッ!!?」
いきなり押し倒してきた理由を聞こうとしたアヴェルだが、その直後にミスティアが彼の唇にキスをし始めた。この光景を見たノースは、絶叫に近い鳴き声を上げる。
「ん、ちゅ、れろ…」
「ッ!? んん、んんん…!!」
引き離そうとするアヴェルだが、ミスティアのキスは止まらない。自身の舌を無理やり彼の口の中へと入れ込み、貪るように彼の涎を舐め取っていく。
(そうだ……こいつ、たまにこうしてキスしてきやがるんだった…!!)
完全に逃げ遅れたアヴェルは、何故すぐにそれを思い出せなかったのか後悔する。
しかし…
「んちゅ、あむ……ん、ちゅ…♪」
(…もう良いや、窒息だけしないようにしよう)
ミスティアが幸せそうにキスしてくるのを見て、アヴェルは完全に抵抗の気が失せる。
その後も、自分の口の中が彼女の舌で蹂躙されていくのを感じながら、大人しくキスが終わるのを待つ事にするのだった。
「―――ぷはっ」
ようやくキスが終わり、唇が離れる。
「ふぅ……ご馳走様だ…♪」
「…はぁ、お前という奴は」
満足したかのように微笑むミスティアに対し、アヴェルはゲッソリした表情になる。
「キキキィィィィィィィィィィィッ!!!」
「おっと」
完全にキレたノースが猛スピードで突撃するが、ミスティアは身体を反らして再び回避。攻撃は空振りに終わる。
「何だ、嫉妬か?」
「キィィィィィィィィ…!!」
「よせ、ノース。というか、せめてやってる途中で止めて欲しかったな」
ニヤついた表情で挑発するミスティアに、ノースが再び攻撃を仕掛けようとするが、アヴェルが手で制する。
「全く……キスされるこっちの身にもなれっての」
「お前に対する、私の愛情表現だ。今に始まった事じゃないのは、お前も知っているだろう?」
「…それもそうだがよ」
アヴェルはこれ以上言っても無駄と悟ったのか、諦めたような表情になる。
「…と、そろそろ時間だな」
柱時計の時間を見て、アヴェルが立ち上がる。
「む、もう帰るつもりか?」
「最初に言っただろ。俺は六課に保護されてる状況なんだ、流石に夜遅くまで外出は出来んよ」
「ふぅん…」
それを聞いた途端、ミスティアの表情が不機嫌な物になる。
「お前の事だ。どうせ自由がなくなるのが嫌で、六課に来る気はないんだろ? だったら、次に俺が会いに来るのを大人しく待て」
「…分かった」
「?」
納得のいかない様子を見せるミスティアだが、渋々了承した後にアヴェルに近付き…
-チュッ-
「ッ!?」
再び、アヴェルの口にキスをする。
「今日はこれで勘弁してやる。ありがたく思え」
「…はいはい、そういう事にするよ」
「ふふ…♪」
ミスティアは「してやったり」と笑顔になり、アヴェルはもう溜め息すらつけなくなった。
「ノース、ヴァル、帰るぞ」
「キィ…!!」
「クワッ」
ノースはミスティアをもう一度キッと睨みつけてからマントに擬態し、ヴァルはアヴェルの肩に乗る。
「次にあった時は、キスの時間をもっと長くしてやる」
「勘弁しろ。俺が窒息するわ」
最後に突っ込みを入れてから、アヴェルはその場を飛び立つのだった。
その後、森の中の小さなテント…
「~♪」
その中で、ミスティアはルンルン気分で寝転がっていた。
「何だか随分と機嫌が良いッピね、お嬢さん」
「ん、そうか? ふふふ…♪」
テントの中に、手足の生えた植物モンスターが入って来る。
「例の傭兵さんに会えたのがそんなに嬉しかったッピ?」
「ほぅ、そんなに聞きたいのか? アホナッツ」
「アキンドナッツだッピ!! いい加減ちゃんと呼んで欲しいッピ!!」
「~♪」
「…自分で聞いといて無視かッピ」
アキンドナッツはプンスカ怒るが、ミスティアは完全に上の空である。
(…そういえば、傭兵さんなら色々武器も持ってるだろうし、上手くいけば商売になるッピか…?)
アキンドナッツはそう思いながらも、手に持っていた複数の矢を順番に磨き始める。
その時…
-ガシッ-
「ピッ?」
突如、ミスティアに背後から抱きつかれる。
「お嬢さん、何を!?」
「今の私は気分が良い。今日一日、お前を抱き枕にしてやる」
「ちょ、嫌だッピよ!? お嬢さんの抱き枕になったら、間違い無く氷付けにされるッピ!!」
「う~ん……今日は何だかよく眠れそうだ…」
「下手したらオイラが永遠の眠りについちゃうッピ!! お願いだから離し…」
「すぅ、すぅ…」
「もう寝ちゃってるッピよ!? ちょ、オラばっかり理不尽だッピ!! ちょ、誰か!! 例の傭兵さんでも誰でも良いから、オイラを助けてくれッピィィィィィィィィィィッ!!!」
アキンドナッツが必死に叫ぶが、残念ながら誰もそれに答えてくれる者はいない訳である。
哀れ、アキンドナッツ。
「はぁっくしゅん!!」
一方、六課に戻ったアヴェルはくしゃみをしていたという。
…取り敢えず言いたい。
どうしてこうなった?
あとアヴェル、そこ代われ←
書いている内に、気付いたらディープキスが始まっていたいう…www
あと、アキンドナッツは哀れ。