それではどうぞ。
ミッドチルダ、地下水道…
「ふむ、これはこれは…」
何やら大きな荷物を背負った男が、一枚の新聞を読みながら歩いていた。通路が暗い所為で、その素顔は見えない。
「面白い世界ですね……これ程技術の発達した世界は、この私でもそうそう見ない」
男は「ホッホッホ」と笑いながら、新聞を丸めて収める。
「さて……おや?」
男は何かに気付いたのか、その場に立ち止まる。
「これは……あぁ、なるほど」
男は違和感の原因に気付き、自分が歩いてきた後ろを向く。
男の視線の先には…
『ケケケケケケ…♪』
『ケッケッケ♪』
『ケケッケケッ♪』
『ケケェ〜♪』
クルクル回転しながら移動している、四体の幽霊達の姿があった。それぞれ赤、青、緑、紫の色をしている幽霊達は、その場で少しの間回転した後、フワフワと浮かんでそのまま何処かへと姿を消してしまった。
「…どうやら、この世界にも魔物達は来ているようですねぇ」
男は興味深そうに、幽霊達のいた場所まで歩み寄る。
「これから忙しくなりそうですよ……“怪刃”さん」
男は懐から一枚の写真を取り出す。
その写真には、あの黒髪の青年の姿が写っていた。
一方…
機動六課本部へと帰還する、一機のヘリコプター。
「―――ぅ、ん…」
「あ、ティアッ!」
ゴーマとの戦闘で気絶させられたティアナだが、ヘリの中でようやく目を覚ます。
「ディアァ~良がっだよぉ~」
「ちょ、いきなり抱き付かないで!! 鼻水がつく!!」
そんなティアナに涙を流しながら抱きつくスバルだが、ティアナは鼻水がつくという理由から無理やり彼女を引き離す。
「でも良かった。ティアナが無事で」
「ほんと、私達も心配してたんだよ?」
「なのはさん、フェイトさん…」
ティアナが無事だった事を喜ぶなのはとフェイト。
しかしそんな時、ティアナはある事に気付く。
「…誰?」
ティアナの視線の先に…
「ん?」
胡坐を掻きつつ、手に持ったリンゴに噛り付く黒髪の青年の姿があった。
…で、何故この青年まで乗っているのかと言うと。
それは数分前の事。
「ふぅ…」
青年はゴーマを倒した後、懐からキセルを取り出し一服する。
「さて、どうしたものか。ゴーマの気配を察知してここまで来たのは良いが……結局、この街の事についてはよく分からんな」
青年はう~んと首を捻る。
「あ、あのぅ…」
「うん?」
そんな青年に、気絶したティアナを背中に担いでいるスバルが話しかける。
「さっきは危ないところを助けて頂いて、本当にありがとうございました!」
スバルは頭を下げて礼を言い、青年は対応に困ったかのような反応を取る。
「よせよせ、俺は偶然さっきの状況に出くわしただけだ……あ、そうだ」
何か思いついたのか、青年はポンと手を叩く。
「お返しってのも何だが、この街について色々教えてくれねぇか? 俺、この街については分かんない事だらけでな」
「え? じゃあ…」
「あぁ、迷子なんだ俺」
そう言って、青年が口に咥えていたキセルを右手に取ったその時…
-ビキィンッ!!-
「「!?」」
突如、青年のキセルを持った右手にピンク色のリングが出現し、彼の右手の動きが封じられる。
「? 何だこれ…」
「そこまでです!」
「あ?」
青年の前に、バリアジャケットを纏った状態のなのはとフェイトが降り立つ。
「なのはさん、フェイトさん!?」
「スバル、ティアナを連れて下がってて」
フェイトはそう言って、なのはと共に青年と向き合う。
「時空管理局機動六課スターズ分隊隊長、高町なのは」
「同じく、時空管理局機動六課ライトニング分隊隊長、フェイト・T・ハラオウン」
「「武装解除し、速やかに投降して下さい」」
二人は自身のデバイスを青年に向け言い放つ。
「時空…何だって? お前等が一体何者なのかまでは知らんが…」
青年は頭にクエスチョンマークを浮かべつつも、右手を封じているリングに左手で掴む。
「いくら何でも、これは無いんじゃないか?」
-バキィンッ!!-
「「なっ!?」」
そしてそのままリングを引き千切り、その場に放り捨ててしまう。
「そんな、バインドが簡単に…!?」
自分達の魔法が簡単に破られた事に、なのはとフェイトは驚きを隠せない。
「さて、先に武器を向けてきたのはそっちだ。それはつまり」
青年はキセルを懐にしまい、ホルスターから抜いたクロスボウを左手に構える。
「―――返り討ちに遭う覚悟は出来ている、という事で良いんだな」
「「ッ…!!?」」
そう言い放った直後、青年は二人に向けて強大な威圧感を放つ。なのはとフェイトはこの尋常でない威圧感を真正面からぶつけられ、思わず圧倒される。
「やるからには……加減はせんぞ」
「「…!!」」
青年がクロスボウを向け、二人もデバイスを握る力が強まる。
「ストップ、ストップ、ストォォォォォップ!!」
「「「!?」」」
そんな彼等の間に、スバルが大慌てで割って入る。
「スバル、今すぐ離れて!! その人は危険…」
「違います、彼は私達の恩人です!! 私達はこの人に助けられたんです!!」
「「…へ?」」
スバルの言葉に、なのはとフェイトは硬直する。
「あなたも、武器を納めて下さい!!」
「ん? お、おぅ…」
青年もひとまずクロスボウを納める。
「え、えぇっと…」
「どういう事なの、スバル?」
なのはとフェイトが恐る恐るスバルに訊ねる。
「はい、実は…」
スバルは先程起こった出来事について説明する。
取り逃がしたガジェットを追っていたら、巨大な怪物に遭遇した事。その怪物に危うく殺されそうになった事。その危ない状況を青年によって助けられた事。そしてその青年がこの街については何も知らず、自分の事を迷子だと言っていた事など、スバルは何とか二人に説明する。
「え、ていう事は…」
「あの人…次元漂流者って事…?」
スバルの話を聞いて、なのはとフェイトは顔を青ざめる。
「お~い、そっちの話は終わったのか~…?」
一人話の輪から外されている青年は彼女達に呼びかける。
「「すいませんでした!」」
「うぉう!?」
なのはとフェイトは青年に向かって頭を下げて謝罪する。突然の謝罪に青年は戸惑う。
「まさか部下を助けてくれていたとは知らず…」
「本当に、申し訳ありませんでした!」
「い、いや、それは別に良いんだっての…」
青年は再びキセルを取り出し、口に咥える。
「とにかく、この街の事について教えてくれ。まずここが何処なのか俺には全く分からん」
そう言って、青年は人差し指でキセルをトントンと叩き、中の灰を捨てる。
が…
-ジュゥゥゥゥ…-
足元に捨てようとしたのが災いし、青年の履いてるブーツの上に落ちてしまう。
「「「「……」」」」
数秒間、硬直。
「―――熱チャチャチャチャチャァァァァァァァァッ!!?」
「「「反応遅い!?」」」
そしてやっとのた打ち回り始めた青年に、他三人は同時に突っ込みを入れる。
(な、何だろこの人……でもスバルの言う通り、悪い人ではないのかな…?)
のた打ち回る青年を見て、なのはは苦笑する。
その後、なのは達は青年を連れて、一度機動六課へ帰還する事になるのだった。
「―――で、今に至る訳」
「は、はぁ…」
なのはから一部始終説明された後、ティアナもひとまず納得し、青年に向き合う。
「えぇっと……助けて頂いて、ありがとうございました」
「だから礼は良いって……いや、もう良いや」
青年は照れ臭そうに目を逸らし、なのはとフェイトはそれを見てクスリと笑みを浮かべる。
「隊長方、もうじき六課に着きますぜ!」
ヘリの操縦士であるヴァイス・グランセニックがなのは達に呼びかける。ヘリの前方には、既に機動六課の本部が見えていた。
「…あれ?」
ここでティアナはまたある事に気付き、青年に訊ねる。
「どうした?」
「あ、すいません…まだ、あなたの名前を聞いていなかったなと思って」
「あぁ、そういえばお前にはまだ名前を言ってなかったな」
「怪刃のアヴェル……そう呼ばれている」
青年―――アヴェルはそう名乗り、手に持ったリンゴに噛り付いた。
『時のオカリナ』に登場するモンスターの中で、「こいつに登場して欲しいな」なんてモンスターがいたら、感想に書いて下さい。
出来る限りは頑張って書きますので。
ただし、物語の様々な都合上、書けないモンスターもいますのでご了承下さい。
では、感想お待ちしてます。