それではど~ぞ~。
ミスティアと会って数日後。
機動六課では、フォワードメンバーがいつものように訓練に励んでいた。ティアナも今までのような無茶をする事はなくなり、全員がキレの良い動きをするようになってきている。
「皆、お疲れ様」
「「「「はい!」」」」
そして、この日の訓練が終了する。
「実はこの訓練、第二段階クリアの見極めテストだったんだけど…」
「「「「えっ!?」」」」
「それで、結果は…」
なのはがフェイトの方を振り向く。
「うん、合格」
「「早っ!!」」
フェイトのアッサリとした合格発言に、ティアナとスバルがずっこける。
「まぁ…あれで不合格だったら、基礎を最初っからやり直す羽目になってたぞ」
「「あはは…」」
ヴィータの一言に、エリオとキャロは苦笑する。
「…そして、“地獄の火炎弾フルコースの刑”を二倍の殺傷力にしてるところだ」
((((良かった合格で!!))))
アヴェルがさらりと言ってのけた恐ろしい一言に、フォワードメンバーの心の意見が一致する。
「全員良い線いってるし、見極めテストはこれで終了!」
「明日からはセカンドモードで訓練するからな」
「「「はい!!」」」
「……え?」
キャロを除く三人は大きく返事をするが、キャロはヴィータの台詞を聞いてある事に気付く。
「あの…明日って?」
「今日は私達も待機予定だし、皆も今まで訓練漬けだったし」
「訓練については明日」
「今日一日、皆はお休みです♪」
「「「「やったーっ!!」」」」
それを聞いたフォワードの四人は大きく喜ぶ。
「まぁ、街にでも行って息を抜いて来ると良い」
「「「「はい!!」」」」
その後は皆、それぞれに散らばっていった。
「ガツガツガツガツムシャムシャムシャムシャ」
食堂にて、アヴェルは再びその大食いっぷりを発揮していた。彼の目の前には既に何枚もの皿が重なっており、ノースとヴァルも次々と料理を食い荒らしていっている為、その食費はとてつもない事になっているのは間違い無いだろう。
「またいっぱい食べてる…」
「いつもとやってる事が一緒じゃねぇか」
フェイトは苦笑し、ヴィータが呆れ果てる。
「ムグ…いやだってよぉ。美味いもんは美味いんだし、仕方ないだろ?」
「だからって、食堂の料理を次々と平らげようとすんな。食料がなくなりそうな気がして本気で怖ぇんだよ」
「ガツガツガツ……あ、すんません。おかわりもう一杯」
「いや聞けよ!!」
「「バクバクバクバク」」
「そして汚すなそこの動物共!!」
料理をおかわりしようとするアヴェルや、料理を食べてテーブルを汚すノースとヴァルに、ヴィータの渾身の突っ込みが炸裂する。
『当日、首都防衛隊代表のレジアス・ゲイズ中将による、管理局の防衛思想に関しての表明が行われました』
「たく……ん?」
その時テレビでは、太った男性が何やら演説みたいな事をしていた。
「あのおっさん…まだあんな事を言ってんのか」
「レジアス中将は古くからの武闘派だからな、仕方あるまい」
「あ、三提督も映ってる」
レジアスという人物の隣に、更に三人の老人の姿が映る。
「何だ? この老人共」
「アヴェルさん、駄目ですよ。あの人達は三提督と言って、偉大な方達なんですから」
「管理局の黎明期から今の形まで整えた功労者達だもんね」
「へぇ~…」
フェイトが注意し、なのはが説明に補足を加える。しかしアヴェルは特に興味を持っているような様子は見せない。
「ガツガツゴクン……ふぅ、だいぶ食った」
「キキィ~…ゲプッ」
「クァァ~…ゲプッ」
ようやく料理を食べ終わったアヴェルはフォークを皿に置き、ノースとヴァルもげっぷをかます。
「食べ過ぎだろう、お前達…」
アヴェルの目の前にある大量の皿を見て、シグナムが唖然とする。
「あ、そういえばアヴェルさんはこれからどうしますか?」
「? 何が?」
「休みですよ。今日は訓練が休みなので、アヴェルさんも休む事が出来ますよ?」
「…あぁ、そうなのか。どうするか」
アヴェルは考え始める。
模擬戦は……シグナムがしつこいので却下。
料理の大食いは……もう充分食べたので却下。
昼寝は……特に眠い訳でもないので却下。
外出は…
(あ、そうだ。ミスティアがいたんだった)
外出について考える中、数日前にミスティアに会っていたのを思い出す。よく考えれば、会える時に会いに行くと彼女にそう言ってしまっている。
(…嫌な予感しかしねぇが、仕方ない)
「まぁ取り敢えず、外出でもして来るとしよう」
「へ、外出?」
「…おいコラ。アヴェルさんが外出だなんて意外だなぁ、的な顔で見てんじゃねぇ」
なのは達全員に意外だという感じの顔で見られ、流石のアヴェルも一瞬だけ血管が切れそうになる。
「あ、いや……アヴェルさんって、派遣任務の時は慣れそうにないからと言って最初は待機に徹しようとしていたものだから、つい」
「俺だって色々考えたんだよ。流石にこのミッドチルダでは、街は一通り確認しておいた方が迷子にならんで済むだろうって。という訳で、俺は後で外出するからそのつもりで」
そう言って、コップの水を一気に飲み干すのだった。
「―――で、出たのは良いがどうするか」
その後、アヴェルは街中を歩いていた。服装は派遣任務の時と同じで、ノースとヴァルには六課で待機して貰い、何かあった時は武器も持って来て貰う事にしている。
(そういや、ダークリンクの事をハヤテ達に伝えていなかったな。まぁ、次に会った時にある程度の情報を吐かせてから、ハヤテ達に伝えりゃ良いか)
「今は考えても仕方ねぇ。のんびりする事に徹しようかね…」
「なら、私に付き合ってくれても良いだろう?」
「いやまぁ、それも別に構いはしなんだが…………へ?」
言いかけた途中で、アヴェルが気付く。
俺は今、誰と話している?
そう思いつつ、ギギギと首を後ろに向ける。
「会える時に会うと言っていたよな、アヴェル」
視線の先に、ニヤリと怪しい笑みを浮かべるミスティアの顔があった。
「う~ん、美味し~い♪」
「…はぁ」
一方、スバルとティアナは二人で街中を歩いていた。スバルの手には五段アイス、ティアナの手にはジュースの入ったペットボトルが握られている。
「アンタねぇ、そんなにアイス食べてお腹壊さないのかしら」
「え? だって美味しいじゃん。ティアナも食べる?」
「いや、遠慮しとくわ」
「えぇ~…アイス美味しいのに…」
(…こいつの身体の仕組みは色んな意味でおかしいわ)
そう言ってまたアイスを食べるスバルを見て、ティアナがハァと溜め息をつく。
その時…
「あ、ティア」
「何?」
「あれ見て、あれ」
「だから何かって言ってんのよ」
「ほらあれ、アヴェルさんがいるよ」
スバルの指差す方向に、確かにアヴェルの姿があった。
「アヴェルさんも休みで来てるだけって事でしょ、特に驚くような要素なんて何も無いわ」
「え? じゃあ、あの隣にいる女の人は誰なんだろう?」
「…はい?」
ティアナがアヴェルのいる方向を向き、そして絶句する。
「…誰あれ?」
「まさか、街に出て早々出くわす事になるとは…」
「~♪」
そのアヴェルは今、結局ミスティアに捕まり一緒に行動する羽目になっていた。ミスティアがアヴェルの右腕に抱きついた状態で歩いている所為で、周りの男達からの敵を睨みつける視線がアヴェルに集中している。
「…ミスティア、取り敢えず離れてくれ。歩きにくい」
「駄目だ、諦めろ」
「…はぁ、分かった。今日は出来る限りまでは付き合ってやるよ」
「ふふ、そうこなくっちゃな♪」
(ノースは連れて来ないで正解だったかもな…)
結局、アヴェルは諦めてミスティアと共に過ごす事にするのだった。
「…嘘でしょ、まさか本当に?」
「凄いよティア。アヴェルさん、この世界で彼女まで作っちゃったんだよ」
一方でスバルとティアナは、陰からアヴェルとミスティアの様子を見ていた。
どうやら二人共、アヴェルがミッドチルダで彼女を作ったと盛大に勘違いしているようだ。
「ねぇねぇ、ちょっと後を追ってみようよ。面白い事になるかも」
「いや、そう言われても…」
スバルに尾行を提案されるティアナだが、どうでも良いという考えと気になるという考えでイマイチ決心が揺らぐ。
「あぁっこのままじゃ見失っちゃう! 行こうティアナ!」
「ちょ、腕を引っ張らないで痛い!? 分かった分かった、私も行くから!!」
無理やりスバルに引っ張られ、結局ティアナも一緒に尾行する事になった。
『……』
とある地下水路。
『…行け』
ダークリンクが手に持つビンから、何かが水中へと解き放たれる。
-ザザザザザザ…-
そして地下水路の水が、一本の触手のように変化し始めるのだった。
さて、次回はまたアヴェルとミスティアのデートシーンになりそうだな…。
ところで、勝手にカップルだと勘違いしてるスバルとティアナの行く末は如何に?
ティアナ「え、ちょ、私達どうなるの?」
……次回もお楽しみに~。
ティアナ「無視するなぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」