どうぞ。
青年―――アヴェルが機動六課へと案内されている一方…
「はぁ、はぁ…!!」
路地裏にて、ある魔導師の女性が走っていた。右腕からは血を流しており、息も絶え絶えの状態。おまけに彼女が所持していた杖型のデバイスは、無惨にもボロボロで使い物にならなくなっていた。
「フォッフォッフォッ…」
「逃げられると思うなよ、小娘が…」
剣と盾を装備した骸骨剣士“スタルフォス”が二体、そんな彼女を追う。
「はぁ、はぁ……あ!?」
逃げる事で精一杯な女性。しかし逃げた先には通路は無く、袋小路となっていた。
「馬鹿め、自分から追い詰められるとは…」
スタルフォス達が剣を向け、女性を壁際まで追い詰める。
「くっ…うぁぁぁぁっ!!」
女性は覚悟を決め、スタルフォス達にデバイスを向けて魔力弾を撃つ。
「下らねぇ…」
しかし一体のスタルフォスが盾で防ぎ、残るもう一体が女性に剣を振るう。女性がデバイスでガードしようとするも、スタルフォスの猛攻によって押され出す。
「な、ぐぅ…!?」
「おら、隙だらけ……だ!!」
「キャアッ!?」
スタルフォスの剣が女性の足に命中。女性は足から血を流し、その場に倒れてしまう。
「ふん、歯応えの無い奴め」
「お、お願い、助けて…!!」
デバイスも破壊され、成す術の無くなった女性はスタルフォスに命乞いをする。しかしこのスタルフォス達は、命乞いなんかでやめてくれるような魔物ではない。
「俺達に喧嘩を売った事…」
一体のスタルフォスが、剣を振り上げる。
「地獄で後悔するんだな」
その後、肉を斬り裂く音が路地裏に響くのだった。
その一方、機動六課では。
「ふぁ~…」
アヴェルは欠伸をしつつ、なのはとフェイトの二人によって部隊長室にいるはやての下まで案内されているところであった。
ちなみにスバルとティアナは途中で別れている。ティアナも大した傷は負っていない為、一度医務室に寄ってから、スバルと共に訓練場へと向かうようだ。
「それにしても驚いたな。あんなデカブツが空を飛ぶなんて普通は考えられん。一体どうやって動かしてんだか…」
先程から、アヴェルはヘリコプターに関する話題が尽きない。
「デカブツって……あれはヘリコプターですよ?」
「ヘリコ…何だそれ?」
名称を聞いても、アヴェルは全く理解出来てない。もっとも、ハイラルにはヘリなどのような便利な乗り物は存在していないので、知らないのも当然ではあるのだが。
((ヘリコプターを知らない…?))
彼の反応を見たなのはは、フェイトと顔を見合わせる。フェイトも同じ疑問を抱いていたようだ。
「…ひとまず、ついて来て下さい。アヴェルさんの知りたい事が分かるかも知れません」
とにかく、まずは彼を部隊長室まで案内しないといけない。
なのはとフェイトは考えるのをひとまず後にして、アヴェルを部隊長室まで案内する為に六課本部へと入っていく。
「キキキ…」
彼等を監視していた蝙蝠モンスター、“キース”が何処かへ飛び立っていくのに気付かないまま。
「初めまして。機動六課部隊長の八神はやてです」
部隊長室に到着した後、まずはやてがアヴェルに自己紹介する。
「私達も改めまして、高町なのはです」
「フェイト・T・ハラオウンです」
出会った時の状況が状況だった為、なのはとフェイトも改めて自己紹介する。
「(ヤガミ・ハヤテ、タカマチ・ナノハ、フェイト・T・ハラオウン、か)…俺はアヴェルだ、よろしくな。ヤガミ、タカマチ、フェイト」
「「……………あぁ」」
「?」
フェイトだけ苗字で呼ばれた事に疑問を抱いたなのはとはやてだが、すぐに彼が苗字と名前を勘違いしてる事に気付く。
「えぇっと、アヴェルさんでしたね。私となのはちゃんは、苗字と名前が逆なんです」
「ん、そうなの?」
「なので、私の事ははやて…」
「私の事はなのは、と呼んでくれれば…」
「ふむ、そうか。ハヤテ、ナノハ……これで良いか?」
「はい、それで大丈夫です」
ちゃんと訂正してくれた事に満足したはやては満足そうにウンウンと頷く。
「…あ、じゃあ俺からも頼んで良いか?」
「はい、何でしょう?」
「正直に言うと、敬語で話されるのは慣れてない。俺と話す時はタメ口で話してくれないか?」
「あぁ、そうなん? いやぁ実は敬語使うの意外としんどくてな~。じゃあそうさせて貰うとするわ」
(((順応早ッ!!!)))
あまりの順応の早さに、他の三人が心の中で同時に突っ込む。
「…まぁ、それは別にどうだって良いとして。話題が逸れてしもうたし、そろそろ話を戻すとしようや」
はやては真剣な表情に戻り、話を進める。
「まずはアヴェルさん、アヴェルさんのいた世界は何処なのか、私達に教えてくれへんか?」
「…世界? 一体何の話だ?」
何の話か分からず、アヴェルは首を傾げる。
「(やっぱり、自分の状況に気付いてへんな)…アヴェルさん。この際、単刀直入に言わせて貰うで」
「違う世界だと…!?」
はやて達から自分の状況を教えられ、流石のアヴェルも驚きの表情を隠せない。
「嘘やないで。ここはアヴェルさんの知っている世界ではない。恐らくアヴェルさんは、何らかのアクシデントが原因でこの世界に来てしまったんや」
「…馬鹿な」
はやての話がとても信じられないアヴェルは、崩れ落ちるかのように椅子に座る。
「世界が違うだと……いくら何でもそりゃ無いだろ…」
「けど、アヴェルさんにとって、この世界にある物は違和感だらけな筈。せやろ、二人共」
「うん。ヘリコプターの事でさえ、全く知らなかったみたいだし」
「多分、アヴェルさんのいた世界には無い物だったんだと思う」
なのはとフェイトも頷く。
「嘘だろ……じゃあアレか。俺が今こんな事態に陥ってるのって、こんな小っちゃな宝石の所為だって言うのかよ」
アヴェルが懐からあの赤い宝石を取り出す。
「そう。多分アヴェルさんはその宝石のせ、い…」
言いかけていたはやての台詞が、途中で途切れる。
「―――それ思いっきりロストロギアやないかぁぁぁぁぁぁぁぁい!!?」
「ぬぉう!? 何だ何だ!?」
「アヴェルさん、その場から動かないで!!」
「今すぐそれを封印しないと、また大変な事に!!」
「え、ちょ、いやだから何だってんだよ!? おい、説明しろコラ!!」
何の前置きも無くロストロギアである宝石を取り出した事で、はやて達はパニックに陥る。この事態が落ち着かせるのに、ある程度の時間が必要になったのは言うまでもない。
「キキッ」
『……』
高層ビルの屋上。
影が戻ってきたキースを手に乗せている中、影の背後に二体のスタルフォスが現れる。
「我々を嗅ぎ回っていた邪魔者を、また一人排除しました」
『…そうか』
スタルフォスの報告に、影は振り返る事なく返事を返す。
『だが、奴等の妨害も増えてきた。レリックの回収も、急がなければならない』
「そのレリックの回収については、如何にして?」
『既に、何体かの魔物達を差し向けてある。回収されるのも時間の問題だ』
「それでしたら、我々も…」
『いや、お前達には引き続き追手の排除をして貰う。奴等の方にも、多少変化があったようだからな』
「と、申しますと…?」
『今、偵察から戻ってきたキースの報告によれば………ゴーマが、簡単に敗れ去ったそうだ』
「「なっ!?」」
影の言葉に、スタルフォス達は驚きの声を上げる。
「馬鹿な……いくらゴーマでも、弱点を知らなければ倒すのには相当苦労する筈…!!」
「それを、簡単に倒したという事は…」
『…ハイラルから、我々を追ってきている者がいるという事だ』
驚いたスタルフォス達は互いに顔を見合わせる。
キースが影の手から飛び立つ。
『我々の計画に支障が出てはならない。“あの方”の為にも、障害になる者は全て排除するのだ』
それを聞いたスタルフォス達は、影に対して平伏す。
「邪魔者の排除はお任せ下さい」
「―――ダークリンク様」
時オカに登場する中ボスの中で有名なスタルフォス、そしてダークリンクが登場。
そんな彼等に「いくらゴーマでも」と言われている辺り、中ボス達にとっても所詮ゴーマはそういう扱いなのか…w
まぁ、ゲームでもゴーマって弱点突いたら雑魚に等しいですからねぇ。正直ダークリンクやスタルフォスとかの方がだいぶ厄介だから……うん、仕方無いよね←