馬鹿な雰囲気を楽しんで笑っていただけたら幸いです。
「やあ、ぼくはきのこ」
目の前に突然現れた物体はそう自己紹介をした。
(・・・は?)
わけがわからなかった。
自己紹介の内容にも驚かされたが、なによりも目の前の物体が言葉を話したことが何より驚いた。
そしてさらに思ったことがある。
「・・・お前、しめじなのか?」
「ちがうよ、ぶなしめじだよ、ほこりたかき“ぶな”しめじだよ」
(・・・やべぇ、心底どうでもいい)
「ぶなしめじ・・・そうか」
とりあえず納得したフリでも見せた方が良いだろう。
よくわかんないけど。
「わかったならいいよ」
それで、だ。
「お前は何で俺の前に現れたんだ?」
目の前の物体はゆったりと話し始めた。
「それはね~きみがきのこすきーだからだよ」
(・・・え?違うけど)
特に好きでも嫌いでもない。
飯として出されたら、あ、きのこだ、くらいしか思わないくらいしかきのこを考えたりなんかしていない。
「きみにはきのこのおうこく“The great kinoko kingdom”をすくってほしいんだ」
待て・・・今なんて言った?
「だから、きみにはきのこのおうこく“The great kinoko kingdom”をすくってほしいんだ」
(何で中間やたらと流暢に話してんだよ・・・)
しかも、中間がmushroomじゃなくてkinokoなのも不思議すぎる。
「やだよ・・・」
「なんで?」
(何故聞いたこともない国の一大事なんかを救わなきゃならないんだ)
「それはね~きみがきのこすきーだからだよ」
「違うっつのっ!!」
「じゃ~きらい?」
(好きでもなければ、嫌いでもない、答えにくいな・・・)
「いや、そうじゃないが・・・」
「なら、きのこすきーなんだね?」
「それは違うっ」
即座に返答をすると、目の前の物体はむ~、と悩み始めた。
「・・・」
正直、かなり目障りだ。
しかも、悩む声とのダブルパンチで耳障りでもある。
「なあ・・・」
それがどうにも鬱陶しくて、つい声を掛けてしまっていた。
「帰れよ」
「え~やだ~」
「どうしたらいなくなってくれるんだ?」
目の前の物体は嬉々として語り始める。
「きみがきのこのおうこく“The great kinoko kingdom”をすくってくれるなら、ひとまずいいよ~」
「・・・それ以外で」
「じゃあ、だめかな~」
・・・よし。
「これは何かの悪い夢だ。うん、俺はきっと疲れてるんだ。よし、コンビニにでも行って、缶コーヒーでも買ってくるか」
時間は既に日を回っていて、もはやスーパーなんかは開いてはいない。
(少し割高になるが、この緊急事態だ、仕方ないか・・)
極力あの物体を視界に入れないように、財布をズボンのポケットに詰め、家を出た。
玄関を出て、外の空気を目いっぱい吸ってから、ホッと溜息を吐いた。
(ようやく解放された)
あの異常な空間は少しづつ精神を侵食し、蝕んでいた。
あと一分でもあの場にいれば、精神が崩壊していたかもしれない。
「ん~おそともきもちいいね~」
「・・・」
(・・・)
・・・!!!
「何故、お前がここにいるんだ」
肩に乗る物体は嬉々として語り始めた。
「きみにきのこのおうこく“The great kinoko kingdom”をすくってほしいからさ」
(勘弁してくれ・・・)
了
ありがとうございました。
短く拙い文章ですが、良ければ今後もよろしくお願いします。