The great kinoko kingdom   作:皆笠

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第十二話『とっておき』

「ハァッ!!」

椎奈は一太刀奮う。

それは確実にタモギへと当たるが、タモギはそれをダメージとして受けてはいなかった。

「んなやわな攻撃では効かんわっ!!」

むしろ弾きさえされた。

サクラ戦で行った絶対の一撃ではないが、それでも木刀相手ならば相手の動きを十分に止める程の威力だった。

(流石だな・・・攻防を兼ね備えた筋肉ってわけか)

椎奈はその事実を再確認し、仕方ないか、と呟いた。

その小声はヒラにのみ届き、ヒラは人知れず、口元を歪ませ、心の内のみで笑んだ。

 

「おいおい、椎奈。これじゃあ拍子抜けだぜ?こんなんじゃ戦場ではすぐ死ぬかもなぁ!」

あからさまな挑発に、椎奈は無言で応答する。

椎奈はそんなことに構っている余裕は無かった。

極めて冷静に、椎奈は集中を高めていた。

「・・・っ、椎奈、テメェ何か隠してんな」

あきらかな違和感を覚えたタモギは問い、椎奈は頷き、口を開いた。

「ああ、まだ秘密にしておきたかったんだが・・・此処で見せてやる」

堂々とした口調、タモギはその言葉を笑った。

嘲笑ではない、これから面白くなることへの期待を込めて笑った。

「面白れぇじゃねえか、見せてもらおう、勇者様のとっておきをよぉっ」

その言葉の終わりと同時に、椎奈の体から白い光が溢れた。

光は絶えず発せられ、椎奈の身体を包み続ける。

「これが俺のとっておきだ、タモギ」

 

「あれは・・・何ですか、ヒラ将軍」

観客兼審判のサクラが傍らに立つヒラに聞いた。

ヒラはフッと笑い、そして答えた。

「まあ、なんだ、実践的な魔術・・・否、あれは魔術では無かったな。氣功術だったか」

「キコウジュツ・・・?」

魔術さえよく分からぬサクラには更に分からない世界だった。

「万物は氣と言うエネルギーを持っている。我々の身体には勿論のこと、この何も無いような処にも氣というものはあるんだ。氣はエネルギーとも言うな、火事場のなんとやら、とあるだろう。それも氣の力に因る物よ。まあ・・・大抵の者が活用はおろか、コントロールすら出来ないがな」

「それを・・・木山はコントロールしてると言うんですか・・・?」

サクラの問い掛けに、ヒラは頷いた。

「集中することはかなり鍛錬しておったようだしな。私は勇者殿に教えてやっただけだ。まあ、勇者殿が扱えるのは氣だけではないぞ?」

ほれ、とヒラは二人の方を見るように手を動かした。

 

「ハアッ!!」

椎奈の動きは倍ほどの速さに変わった。

「ぐうっ!!!」

一撃一撃の重さも格段に上昇した。

筋肉に任せた強引な戦法は取れなくなり、タモギでさえも今の椎名相手には防戦一方を取らざるを得なくなっていた。

「やるじゃねぇか、椎奈ぁ」

だが、タモギは苦しんだ顔を見せてはいない、むしろ楽しんですらいた。

最近の模擬戦や鍛錬ではタモギに敵うような者は一切いなかった、苦戦するような状況は随分と久しぶりで、タモギは戦の感じを思い出していたからだ。

「まだ終わりじゃねぇよ」

椎奈は言いながら、剣を持たない方の手を突き出した。

「・・・なっ!?」

手のひらから放たれたのは幾つもの火球。

「ファイアボール・・・魔術まで使えんのかよっ!?」

「まだ下級魔術しか扱えないがなっ!!」

予想外過ぎる戦法にタモギは驚かされてばかりで、体力は急激に消費されていった。

 

「そろそろしまいにするか?」

息を切らすタモギに対して、椎奈はそう言葉を掛けた。

「・・・ああ、そうだな。そろそろ終わりにしようっ!!」

タモギは全身の力を集め、渾身の一撃を用意した、全力の一撃を。

ガシッ!!

そんな轟音が響いた。

全力を込めたタモギの一撃・・・ではない、椎奈の太刀が強い一撃を喰らわせた音だった。

目を白くしながらタモギは倒れ、椎奈はサクラの方を見て一言残した。

「俺の・・・勝ちだな?」

サクラはその言葉に即座に答える。

「勝者、木山椎奈っ!!」

聞き遂げた椎奈は白い光を失い、タモギの横に倒れこんだ。

 

 

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